長崎県交通局(ながさきけんこうつうきょく)は、長崎県で「長崎県営交通事業の設置等に関する条例」(昭和41年12月20日長崎県条例第51号)に基づきバス事業を運営している地方公営企業である。通称長崎県営バスまたは県営バス。およそ400両の車両を保有するバス事業者(公営バス)であり、道府県が運営するバス事業としては日本唯一の存在である。
1934年(昭和9年)3月16日、全国初の国立公園である雲仙国立公園が誕生した際に、旅客輸送の手段として設立された。長崎県の観光振興という設立目的から、公営事業者でありながらも貸切・高速バス事業を展開しており、九州内の公営バス事業者では唯一の九州高速バス予約システム運営委員会発足当時からの加盟事業者でもある。
都道府県単位で公共交通機関を運営しているのは東京都(東京都交通局[6])と長崎県のみであり、県営としては日本唯一である。地元では単に県営バスとも称され、公式サイトのURLも「www.keneibus.jp」である。
営業キロ数は2013.69kmで、全国の公営バスの総営業キロ数の2割を占め、第1位である[いつ?]。
所在地は廃止時点のもの。
長崎市、諫早市、大村市など、長崎県南部一帯に路線を持つ。長崎、諫早から長崎空港への空港連絡バスも運行している(後述)。
発足の経緯から、かつては島原半島でも雲仙・小浜地区を中心に多くの路線を有していたものの、1990年代以降の乗客減少が著しく、2005年(平成17年)11月30日をもって雲仙 - 島原(大手)間が廃止。更に2007年(平成19年)3月31日をもって長崎 - 雲仙間(特急)を除く島原半島の全16路線が廃止され、島原半島から撤退した。路線の多くは島原半島一帯で路線バスを運行する島原鉄道による単独運行となったが、雲仙市内で運行する「上岳線」と「山領線」の2路線については、市内のタクシー事業者4社でつくる「雲仙市タクシー事業組合」が代替運行する。また、同じく雲仙市内の「仁田峠線」についても、一旦廃止となった後、2007年8月から雲仙観光協会が市内タクシー事業者に依頼して「仁田峠乗合タクシー」を運行している。
主要都市間や観光地には特急・急行バスも運行している。「やまびこ号」(長崎 - 佐世保線)や「ありあけ号」(長崎 - 熊本線)など愛称を設定した路線も存在した。1980年代後期以降、高速道路の開通に伴い、高速バス路線への移行が進められる一方で、一般道経由の路線は格下げや減便などで縮小している。
1998年(平成10年)3月からは、通勤時間帯に高速バス用車両や空港リムジン用車両の出庫運用を活用して住宅地域 - 市内中心部間で着席・速達輸送を行う「通勤シャトルバス」[18]を、長崎市矢上地区 - 市内中心部間で運行開始した。この手法はその後、より長距離の高速道路を経由する区間にも採り入れられ、後述の諫早・大村 - 長崎間高速シャトルバスの設定につながることとなった。
2011年(平成23年)12月3日より、JR長崎駅と夢彩都、中央橋を循環運行する、「ながさきお買いものバス」を日中に約20分間隔で運行していた。運賃は1乗車150円(小児80円)。当初は土日・祝日のみの運行であったが、2014年4月1日よりルートを一部変更したうえで毎日運行となった。その後、2015年3月31日に廃止となった。
数次にわたる経営改善の取組みの結果、バス運行コスト自体は近隣民間バス事業者をも下回るレベルとなっており[52]、運賃の賃率自体は、全国レベルの比較では低い水準にある。運賃は1キロ当たり31円50銭と全国的に見れば安い部類だが(全国平均は39円台、県内でも長崎自動車(長崎バス)に次いで2番目に安く、全国で見ても大手177社中15番目の安さ[52])、競合する長崎バスの1km当たり27円50銭[53]や路面電車の全区間一律150円の関係で割高感を持たれている。2012年(平成24年)11月に長崎自動車が東長崎地区に路線を開設してからは特に顕著である。このため、2014年(平成26年)4月の消費税率引き上げに伴う運賃改定では、東長崎地区では逆に値下げに踏み切ることになった。なお2014(平成26)年4月の運賃改定後も一部区間で長崎自動車との運賃格差を生じたため、2014年5月に一部区間で再値下げされた[54]。2015年(平成27年)10月1日と2018年(平成30年)12月1日に長崎自動車の運賃改定に伴い、それぞれ運賃改定を実施している[55][56]。また2019年(令和元年)10月の消費税率引き上げの際も運賃改定を実施している。
長崎県交通局と長崎自動車が競合路線を有する長崎市内路線は、モータリゼーションや人口減少による利用者減少に加え、2020年には新型コロナウィルス感染症拡大の影響で事業環境が急速に悪化し、数年後には両事業者とも路線バス網を維持できなくなることが懸念されていた[33]。競合するバス事業者間でのダイヤ編成などの調整は、カルテルに該当する行為として独占禁止法により禁止されていたが、全国的な乗客減によるバス事業者の経営悪化を受けて、2020年11月に同法の適用を除外する特例法が施行され、国土交通省の認可を受けた場合は可能となった[33]。特例法施行を受けて、長崎県交通局と長崎自動車は2021年6月に長崎市内路線の共同経営の検討を開始[33]。2022年1月に計画案がまとまり、2月に国土交通省に認可を申請。3月に認可された[34][35]。認可に基づく4月1日からの両事業者の路線・ダイヤ再編により、重複路線のうち、東長崎地区・日見地区は長崎県交通局、滑石地区は長崎自動車による運行に原則として一本化し、日見地区ではさらに日中の便数・運行間隔を調整[34][35][36][41]。これらにより効率化が図られることとなった。両事業者は、この効率化による経営改善効果を2022年度で約2億8500万円と見込んでいる[34]。
2022年10月1日からは、長崎市中心部において商業施設や公共施設を周遊する新路線「まちなか周遊バス」が、長崎県交通局と長崎自動車の共同運行で開設された[40][41][42]。また、同日以降は、東長崎地区に長崎自動車運行で残っていた地域線が長崎市コミュニティバス東部線[39]に転換の上、運行事業者は長崎県交通局となり、これにより東長崎地区のバス運行が長崎県交通局に完全に一元化された[40][41]。
2024年3月には共同経営計画が改訂され、本原地区・矢の平地区・目覚地区・立神地区を計画区域に追加し、これらの地区においても重複路線の運行事業者一元化、運行便数適正化等の効率化が図られることとなった[47]。具体的には、本原地区・目覚地区は運行事業者を長崎県交通局に、矢の平地区・立神地区(昼間時間帯のみ)は長崎自動車に、それぞれ一元化することとされた[47]。この計画は2024年4月1日付のダイヤ改正に反映された[48]。
※長崎県内のみの運行
島原市からは2005年(平成17年)12月1日に、南島原市からは2007年(平成19年)4月1日に撤退した。
基本的に系統番号は採用していないが、長崎市内の「循環」線に関しては行き先表示に番号を表示している。 これは、西山台団地内・三原団地内の一部の停留所では運行経路の関係で右回り循環と左回り循環が同一方向停留所で客扱いをするため、誤乗防止のために表示している[57]。
番号は、奇数が左回り(三つ山口→本原→長崎駅→中央橋→三つ山口)、偶数が右回り(三つ山口→中央橋→長崎駅→本原→三つ山口)となっている。
なお現在は、1・2・4・7・8・10の番号の便は設定されていない。
県営バスの路線がある長崎市東側の地域は、地形の関係で主要道路のルートが国道206・202・34号線沿いに市街地北方 - 中心部 - 市街地東方に抜ける一帯に固まっている。このため県営バス路線の運行経路もほぼこれに沿って北部及び東部から中心部に向かい、中心部では平和公園 - 長崎駅前 - 市役所前 - 中央橋 - 諏訪神社前のルート又は平和公園 - 長崎駅前 - 大波止 - 中央橋 - 諏訪神社前のルートに大半の路線が集中する[58]。運行パターンは、北部からの路線は概ね平和公園、東部からの路線は概ね諏訪神社前までにそれぞれ収れんして上記の中心部のルートに入り、中央橋又は長崎駅前に発着あるいは北部と東部を相互に直通という形態がほとんどである[59]。このため循環線のケースを除くと、終点と主な経由地の表示で路線は特定でき、同一行先に経由地パターンが複数あるような、経路の識別が必要なケースは少ない。
市東部への郊外路線は、諫早市方面と直通運行するものも多い。
諫早市内でも系統番号は使用していない。ただし、大村地区で系統番号が使用されている関係で、大村市方面への直通路線は諫早市内でも系統番号を表示して運行している。
諫早地区の路線は、概ね諫早市中心部から各方面に放射状に広がる形態で、同一行先に経由地パターンが複数あるケースは少ない[60]。中心部での主な発着地は諫早駅前及び東厚生町である。諫早市の中心市街地は諫早駅付近よりも東南寄りの地域にあり、このため諫早駅以西からの路線は、諫早駅前を経由して東厚生町に発着する形態で運行されるものが多い。東厚生町にはかつて諫早営業所が所在した[61][62]。諫早駅以東、以北からの路線では、諫早駅前発着のほか、諫早駅前から西諫早ニュータウン内を経由して諫早営業所に発着する運行形態も多い。
2015年(平成27年)4月1日から、一部の路線にフリー乗降区間が新設された[28]。
郊外路線は、市北部では大村市方面と、西部では長崎市方面と直通運行するものも多い。
2012年4月1日より、大村市内の路線に系統番号が設定された。詳しくは以下のとおり。
前述の通り、公営バスとしては珍しく、高速バスや特急バスの運行に積極的に関与している。待機所は本局・長崎営業所(共同運行会社も含む)。過去には本州(大阪・京都・広島)行き夜行便も運行していたが現在は全て廃止されている。
()内は共同運行会社。
この他、九州急行バスが運行する九州号の続行便の運行を受託している。
諫早市・大村市の住宅街と長崎市内を長崎自動車道・ながさき出島道路経由で連絡する路線を運行している。マイカー通勤者の公共交通機関への転移を促進し、長崎市中心部の交通渋滞緩和を図る施策の一環として、2010年4月1日より運行を開始した。JRや既存の路線バスに対し、全ての乗客が諫早市内・大村市内と長崎市街とを着席で行き来できる点を優位性としている。
長崎市内・諫早市内・大村市内と長崎空港を結ぶリムジンバスを運行している。長崎市内発着で2系統、諫早市内発着で1系統がある。いずれも予約は不要。長崎市内発着系統は、高速道路を経由するため満席の場合は乗車できない。
国土交通省九州運輸局の統計[70]によると、「長崎 - 長崎空港」路線(5系統)合計の輸送人員は、2006(平成18)年度で869,663人、2007(平成19)年度で918,923人であり、1日あたり2,400人前後の乗車がある。九州の高速バスの路線内での輸送人員順位としては上位5位(同18年度)、上位4位(同19年度 長崎市内 - 長崎空港線(出島道路経由ノンストップ便))に位置する。
長崎県交通局では、1975年(昭和50年)5月の長崎空港開港時から、長崎市内 - 空港間で専用車を使用したリムジンバスを運行している。当時は長崎自動車道が未開通であり、一般道を経由し諫早・大村地区を経て運行する形態だった。その後、1982年(昭和57年)11月に、長崎自動車道の一部開通によりノンストップ便等が同道路経由に移行し、後の浦上・昭和町経由系統となった。また、2007年(平成19年)3月の島原半島の路線撤退以前は雲仙・小浜 - 長崎空港系統も運行していた[64][71]。
2007年(平成19年)4月以降は、以下の3系統(長崎市内発着2系統、諫早・大村市内発着1系統)を運行している。
なお、諫早市内と長崎空港の間では、県営バスの他に島原鉄道の単独運行による諫早駅前経由島原港発着の特急バスが運行されていたが、2019年(令和元年)10月1日より本諫早駅前行きとなる。この島原港 - 諫早駅 - 長崎空港線については、県営バスの島原半島撤退以前は1990年代後半まで県営バス担当便もあり、競合路線だった[77]。
かつては定期観光バスも運行していたが、現在は廃止され運行されていない。
土曜日、日曜日及び祝日に、県営バスの有効期限内の通勤定期券(片道、往復及び通勤団体定期券のいずれでも可)所持者、その配偶者及びその子供は、大人100円(小人50円)で、路線(一部例外あり。後述)や運賃を問わず、県営 ・県央バスに乗車できる制度だったが、2014年9月末で終了した。なお、一部例外もあった。
2007年(平成19年)4月現在で63台の車両を所有しており、県下最大の貸切バス事業者でもある。 積極的な営業活動(東京と福岡に案内所がある)を行っており、県内だけに限らず県外にも足を伸ばす事も多く、本州でも見られることがままある。
2009年(平成21年)2月に、福岡県筑紫野市に福岡営業所を開設し福岡県内の貸切事業に参入した。福岡空港や新幹線(博多駅)経由で九州入りする長崎県内向け団体ツアーなどの誘致・集客強化を図る目的の施策である[22]。
1934年(昭和9年)の県営自動車発足時は、18台のシボレー製バスで運行を開始した[78]。1953年(昭和28年)には九州内の他社に先駆けてリアエンジン車(三菱 ふそうR23型)が導入されている[79]。
1970年(昭和45年)までは、三菱・日野・いすゞ・日産ディーゼル(現・UDトラックス)の日本の4メーカー全社の車両が導入されていたが、1971年(昭和46年)以降は三菱・日野のみの導入となっていた。しかし、日産ディーゼル製は2000年(平成12年)から、いすゞ製は2001年(平成13年)から再び導入されるようになった。
九州の事業者らしく、西日本車体工業(西工)ボディを架装する車両も多いが、2000年(平成12年)以降は日産ディーゼル製のみ西工ボディで導入している。一方、富士重工業ボディを架装する車両は長く在籍していなかったが、2009年に富士重工業ボディを架装する車両が横浜市営バスから移籍してきている(詳細は後述)[80]。三菱製の大型純正車については、1971年、1972年の貸切車には呉羽自動車工業(のち新呉羽自動車工業、三菱自動車バス製造を経て現・三菱ふそうバス製造)製も導入されたが、1973年以降三菱自動車バス製造に車体架装が一本化されるまでは、三菱自動車工業名古屋大江工場製が導入されてきた[81]。
コスト削減のため、2009年(平成21年)以降は路線車・貸切車とも中古車両[82]の導入が増加している。
全般的な傾向として、三菱製は貸切バスや長距離路線バス、空港連絡バスに、日野製は市内路線用に投入されていたが、1985年(昭和60年)以降は三菱製の市内路線用車も見られるようになった。以下、タイプ別に記す。
※ここでいう「長距離路線用」とは、長崎市内 - 長崎空港連絡バスを除く、一般道のみで都市間を結ぶ路線(「ありあけ号」を含む)に使用される車両や、高速道路経由で長崎県内を結ぶ路線に使用される車両のことを指す。
長崎県交通局にも、独自の車両番号が存在する。
(例)9E20
※「-」は導入の有無不詳。
なお、平成21年度以降の製造車両の年式が元号から西暦に変更されるとともに、1桁目と2桁目の表記が入れ替わった。(例、S052 ・・・西暦2010年に製造された、いすゞ製シャーシ車(ジェイ・バス)の2台目)
バスガイドらが古くから歌い続けている県営バスの愛唱歌は「走れ青バス」である。現在も貸切や高速バスは青基調の車体であるが、真っ赤な路線バスのイメージとは違うものとなっている。
なお、カラーについては、長崎県交通局サイト内の「70周年記念誌サイト」掲載の写真を参照されたい。
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