森 達彦(もり たつひこ、1954年5月1日 - )は、日本のシンセサイザー・プログラマー、サウンド・デザイナー、マニピュレーター、レコーディング/ミキシング・エンジニア、音楽プロデューサー、編曲家。長崎県長崎市出身。
人物・来歴
16歳の時、遠足の前日たまたま立ち寄ったレコード店で『クリムゾン・キングの宮殿』と『いたち野郎』のレコードを手に取り、15分ほど熟考したのち『クリムゾン・キングの宮殿』を購入。その後メロトロンにのめり込み現在に至る。ブリティッシュ・ロックに傾倒しており、中低域を重視した音作りが特徴である。
1978年に株式会社レオミュージックに入社[1]、シンセサイザーの打ち込みを習得する。1984年にムーンライダーズ・オフィスと共同出資で、プログラマーのマネージメントを主たる業務とする株式会社 hammerを設立[2]。シンセ・サウンドを多用した歌謡曲やニューミュージック全盛の時代で、一時は "日本で最も高級舶来機材を所有するプログラマー集団" と言われた。1987年にはハーフトーンミュージックの機材班と統合し、社名をHAMに変更[1]。hammerの名は1991年から開始した自身のインディーレーベル(hammerlabel)に継承される。
その少し前にレコーディングで訪れたイギリスで、ストロベリー・スウィッチブレイドや日本ではのちにCHARAなどを手掛け、友人となるプロデューサー・デヴィッド・モーションに出会い、デンマークのバンド・Gangwayを紹介される。気に入った森は、彼らの住むデンマークに赴き契約を交わし、hammerlabel 初リリースとなる彼らの日本盤CDを発売[3]。特に渋谷の外資系CDショップなどでは、異例の売り上げを記録した。
1980年代から作曲家・編曲家の鷺巣詩郎、山川恵津子、武部聡志、萩田光雄、瀬尾一三、十川知司など[4]多数のアレンジャーが手掛ける楽曲にシンセサイザー・プログラマーとして従事し、アイドル、歌謡曲、シティポップ、フュージョン、アニメやゲーム音楽、映画音楽など多岐に渡るジャンルの音楽制作に関わった。洋楽のカテゴリーにおいても、ノーランズ、ピエール・ポルト、アラベスク、ドン・グルーシンなどの制作に参加している。携わった楽曲の総数は15年余りで3000曲を超えると言われる。
1990年代に入るとシンセサイザー・プログラマーの仕事の傍ら、所有していた渋谷のセンター街に位置するプライベートスタジオ[3]において、のちに渋谷系と呼ばれるCrue-L Records、エスカレーターレコーズのエンジニア部門(ラヴ・タンバリンズ、カヒミ・カリィ、Bridgeなど)をサポートした。それを皮切りに、レコーディング/ミキシング・エンジニアとしての仕事も増加、プロデューサー業務も行うことになる。(※ 詳細は仕事アーカイブ[出典無効]、森達彦 -Tatsuhiko Mori- Works 参照) また、山岡広司らと共にプロデュース・ユニット『u.l.t.』としての活動も開始した。
レコーディング/ミキシング・エンジニア/プロデューサーとしての主な参加作品
- coba『Conscious Posi』『Conscious Nega (Subconscious)』『Sweet Poison』『Elecute』『旅する少年 Stay Gold』(プログラマーとしても参加)
- coba & 宮沢和史「ひとりぼっちじゃない」(アニメ映画『劇場版ポケットモンスター 水の都の護神 ラティアスとラティオス』ED)
- ムーンライダーズ「オー何テユー事ナンダロウ」「月面讃歌」「幸せの場所」「彼女はプレイガール」「酔いどれダンスミュージック'98」(ミキシング・エンジニア)
- 原田知世「チム・チム・チェリー」(『Disney Tribute Album / We Love Mickey ~Happy 70th Anniversary』より)
- CHAGE「トウキョータワー」「僕が見つけた気持ちのいい場所」(ミキシング・エンジニア)
- 柿原朱美『Living Together』(サウンド・プロデュース)
- ラヴ・タンバリンズ全作品 「Love is Here」「Spend The Day Without You」 「it's a brand new day」「Love Is Life To Women」(エンジニア)
- Ellie「So I」「Shirley King」
- 野宮真貴「大人の恋、もしくは恋のエチュード」「太陽の真下」(ミキシング・エンジニア)
- カヒミ・カリィ[Crue-L Records作品]「Candyman」(ミキシング・エンジニア)「Mike Alway's Diary」(ミキシング・エンジニア、口笛)他
- コーネリアス「Cannabis」(ミキシング・エンジニア)
- Bridge「Change」(ミキシング・エンジニア)
- カジヒデキ「Walkin’After Dinner」「SUMMER SUNDAY SMILE」「5時から7時までのマキ」「秘密の夜会」(ミキシング・エンジニア)
- three berry icecream 「Go pit-a-pat days」(エンジニア)
- marigold leaf(橋本由香利によるユニット)「さよならの月」(エンジニア)
- エスカレーターレコーズ/コンピレーション・アルバム
- 篠原ともえ「地下鉄に乗って」(プロデュース/エンジニア、口笛)
- 大石恵「Jour de Neige」(ミキシング・エンジニア)
- レピッシュ『POP』(プロデュース/エンジニア)
- 上田ケンジ『フォーエバーラブ』(エンジニア)
- 加藤いづみ「オンナトモダチ」「泳ぐ。」「愛について」「星合の空まで」「ワルツ」(エンジニア)
- Plum Planets「白い色は恋人の色」(2003年度さくらんぼテレビイメージソング : 編曲/エンジニア)
- Gangway「Going Away~Yell More Rugby」(プロデュース/エンジニア)
- Eri『Blue』『Fall in loving time』(プロデュース/エンジニア)『Happy Ending Story』(ミキシング・エンジニア)
- YUKARI FRESH「I'LL BAKE ME A MAN」「SNAPSHOT」(ミキシング・エンジニア)
- 都築恵理「Treasure」「嘘」「Fly Away」
- 太田貴子「大・恋・愛β」
- hal「ひこおきぐも」「color as biginning」
- Sheen「積木の汽車」「flowers」(プロデュース/エンジニア)
- パレード(エンジニア)
- 桃梨(ミキシング・エンジニア)
- 野佐怜奈『don't kiss, but yes』(ミキシング・エンジニア)他
- Fovourite Marine「Flowers Bloom」「Small Parade」(ミキシング・エンジニア)
- THE LOVE MUSHROOMS「FUNNY SUNNY DAY」(ミキシング・エンジニア)
- freedom suite「Daydream of the past」(ミキシング・エンジニア)
- shinowa 『Flowerdelic』(プロデュース/エンジニア)
シンセサイザー・プログラマーとしての主な参加作品
- 他多数
エピソード
- 森本人は自らの仕事を「シンセサイザー・プログラマー」「サウンド・デザイナー」と呼ぶことが多い。「マニピュレーター」という呼称については、「イギリス人の友人に "良い意味ではない" と教わったので自分では使わない」との旨を『ラグジュアリー歌謡』(藤井陽一監修/DU BOOKS刊)のコラムで明かしている[1]。レコードやCDなどのクレジットにおいて、前述の呼称の他に「シンセ・オペレーター(Synthesizer Operator)」と表記されることも多い。
- 1980年代前半には鷺巣詩郎が編曲した楽曲にも多数参加しているが(関係者によると約1000曲にも及ぶ)、当時はシンセサイザー・プログラマーがクレジット表記されることは稀少であり、当事者の間でも多忙を極めていた(しかも曲名は仮タイトルや数字/記号で呼ばれることが多かった)ため、確認・検証することが非常に困難である。なお、当時すでに大御所作曲家であった筒美京平の作品に森が初めて関わったのは、"鷺巣さんの仕事だった" と筒美の追悼記事におけるインタビューで言及している[4]。
脚注
出典
- ^ a b c d ラグジュアリー歌謡 (((80s)))パーラー気分で楽しむ邦楽音盤ガイド538 単行本(DU BOOKS)– 2013/2/21。
- ^ ムーンライダーズ『アマチュア・アカデミー 40周年記念盤』【森達彦氏インタビュー】 .WebVANDA (2024/11/30). 2024年12月9日閲覧。
- ^ a b Bepop 1/WORLD FAMOUS GUITAR POP (Bepop VOLUME 1) (音楽之友社)– 1998/12/10。
- ^ a b 『追悼・筒美京平を讃えるベストソング』【森達彦氏インタビュー】 .WebVANDA (2020/11/22). 2024年9月16日閲覧。
- ^ 72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶 (RealSound Collection) 単行本(blueprint)– 2023/12/26。
- ^ ニッポンの編曲家 歌謡曲/ニューミュージック時代を支えたアレンジャーたち 単行本 (DU BOOKS)– 2016/3/4。
- ^ 編曲の美学 アレンジャー山川恵津子とアイドルソングの時代 単行本(DU BOOKS)– 2024/5/17。
外部リンク