ミント・ジュレップ
ミント・ジュレップ (英: mint julep)は、バーボン・ウイスキー をベースとする冷たいタイプのロングドリンク (ロングカクテル)。競馬 のケンタッキーダービー のオフィシャルドリンクとなっていることでも知られる[ 1] 。(詳細は「競馬とミント・ジュレップ 」の節を参照)
冷たいタイプのカクテルとしては起源が古く、南北戦争 時代には飲まれていたと言う記録があり[ 2] 、一説によれば、18世紀末〜19世紀初頭には存在していたという[ 3] 。ただし、当時のレシピは現在の標準的なレシピとは異なるともいわれる。なお、ジュレップとは、カクテルのスタイル の一種。
標準的なレシピ
バーボン = 45〜60ml
ミント の若芽 = 3〜6本分 (飾る分も含む)(「備考」の節も参照のこと。)
砂糖 = 1〜2tsp
ミネラル・ウォーター 又は炭酸水 = 20〜30ml
クラッシュド・アイス(砕氷) = 適量
作り方
ロング・ドリンクは、先に氷 を入れたグラスに他の材料を入れて作るのが一般的[ 4] であるが、ミント・ジュレップの場合は、以下の「作り方 その1 」のように、氷を後から入れるという作り方も広く行われる。
作り方 その1
コリンズ・グラス(ゾンビ・グラス)、または、タンブラー 、もしくは、ゴブレットにミントと砂糖と水(または炭酸水)を入れる。ミントはバー・スプーン で潰して香りを出し、砂糖はよく溶かす。なお、この時に使用するグラスの容量は、240〜360ml程度である。
そこにバーボンを加え、クラッシュド・アイスをいっぱいに詰め、よくステア する。
ステアの際、氷が融けて減るので、適量のクラッシュド・アイスを追加する。
最後にミントの若芽を飾り(このミントは潰さない)、ストロー を添える。
作り方 その2
ミキシング・グラス やオールド・ファッションド・グラス などの別なグラスに、ミントと砂糖と水(または炭酸水)を入れ、ミントはバー・スプーンで潰して香りを出す、砂糖はよく溶かす。なお、この時に使用するグラスの容量は、作り易いサイズのものを選択すれば良い。
クラッシュド・アイスをいっぱいに詰めたコリンズ・グラス(ゾンビ・グラス)、または、タンブラー、もしくは、ゴブレットに注ぎ、さらにバーボンを加えて、よくステアする。なお、この時に使用するグラスの容量は、240〜360ml程度である。
ステアの際、氷が融けて減るので、適量のクラッシュド・アイスを追加する。
最後にミントの若芽を飾り(このミントは潰さない)、ストローを添える。
その他の作り方
ミントの葉をバーボンにしばらく浸して、ミントの味と香りを酒に移す方法もある。
ミントの葉、砂糖、水を一緒に煮て作ったシロップ を使用する作り方もある。
備考
使用するグラスについて
予めグラスも冷却 しておくことが望ましい[ 1] 。
カクテルを供する時に使用するグラスの容量は、240〜360ml程度であるが、300ml以上の大型のグラスを指定するレシピもしばしば見られる。
使用するミントについて
ミントの若芽ではなく、ミントの葉が付いた大き目の茎を飾る場合や、ミントの葉しか飾らない場合もある。使用するミントの量は、飲む人の好みなどにあわせて構わない。
ミントの種類は特に決まっていないが、スペアミント やペパーミント などを使用するのが一般的。漫画『BARレモンハート 』においては「ミントの葉はペパーミント」とマスターが説明しており、「スペアミントでは苦味があり葉も厚いのでアクも出る」とも語っている。
香りを強くするために、少量のミント・リキュール(色の付けられていない無色透明のもの)を加えることもある[ 1] 。なお、リキュールには糖分 が含まれているので、リキュールを使った場合、砂糖は使用しないこともある。
このカクテルは、ミントの葉が無ければ、作ることができない[ 5] 。これは、ミント・リキュールを使用した場合も同様である。
飾ったミントに、パウダー・シュガー(粉糖)を振り掛けることで、ミントの葉に雪 や霜 が付いているように見せ、涼しさを演出することもある[ 6] [ 7] 。
これは酒全般に言えることだが、使用する水は、塩素臭 の無いものでなければならない。このため、基本的に水道水は使わない(井戸水や湧水 をそのまま水道水として使っている場合は、塩素臭が無いので使用することもある)。
レモン やオレンジ やパイナップル やマラスキーノ・チェリーなどを飾ることもある。なお、レモンやオレンジは、適切なサイズと形に切ること。ただし、ミントの若芽(葉のみの場合や、葉の付いた大きな茎の場合もある)を飾るのが必須であるのに対し、果物を飾るか否かは完全に任意である。果物は飾らないとするレシピも、しばしば見られる。
ストローの他に、マドラー も添える場合もある[ 8] [ 9] 。
バリエーション
ベースのバーボンを、ラム (ホワイト、または、ゴールド)に変えると、「ラム・ジュレップ」となる。なお、ホワイト・ラムを選択するか、ゴールド・ラムを選択するかは、飲む人の好みによるので、ラム・ジュレップを注文する際は、ラムのタイプの指定をすることが望ましい。
ベースのバーボンを、ブランデー に変えると、「ジョージア・ミント・ジュレップ」となる。
ベースのバーボンを、シャンパン に変えると、「シャンパン・ジュレップ」となる。
ベースのバーボンを、ジン に変えると、「ジン・ジュレップ」となる。
レシピの変遷
現在、ミント・ジュレップはバーボンベースのカクテルとして定着しているが、このカクテルが誕生した当初はワイン をベースとして作られていた[ 1]
[ 7] 。一説によれば、それはポート・ワイン を使用したものだったとも言われている[ 3] 。
競馬とミント・ジュレップ
このカクテルは、競馬のケンタッキーダービー のオフィシャルドリンクとなっている。同ダービーが開催されるチャーチルダウンズ競馬場 でのダービー・レース開催当日はもちろんのこと、その開催前に催される社交パーティやランチョン 時に、こぞって提供されるカクテルでもある。なお、同ダービー・レース当日、同競馬場内でミント・ジュレップは売り歩かれており[ 10] 、同競馬場では何万杯ものミント・ジュレップが飲まれるとの話もある[ 7] 。
映画『007 ゴールドフィンガー 』の中で、悪役オーリック・ゴールドフィンガーが、拉致したジェームズ・ボンド に対し自身の所有するケンタッキーの競走馬育成の馬舎でミントジュレップを振る舞い、「甘味はどうかね?」とと問うシーンがある。
文学、映像作品とミント・ジュレップ
関連項目
出典
^ a b c d 上田和男 『カクテル』西東社 、2001年、79頁。ISBN 4-7916-0994-8 。
^ 若松誠志 監修『ベストカクテル250』日本文芸社 、2003年、161頁。ISBN 4-537-20211-4 。
^ a b 福西英三 『カクテルズ』ナツメ社 、1996年、70頁。ISBN 4-8163-1744-9 。
^ 福西英三 『カクテル入門』保育社 、1982年、138頁。ISBN 4-586-50563-X 。
^ 稲保幸『カクテルガイド』新星出版 、1997年、40頁。ISBN 4-405-09629-5 。
^ 今井清 『たのしむカクテル』(改訂版)梧桐書院 、1988年、200頁。ISBN 4-340-01204-1 。
^ a b c 澤井慶明 監修『カクテルの事典』成美堂出版 、1996年、24頁。ISBN 4-415-08348-X 。
^ アンテナハウス編集『カクテル物語』同文書院 、1991年、45頁。ISBN 4-8103-7043-7 。
^ 桑名伸佐 監修『カクテル・パーフェクトブック』日本文芸社 、2006年、245頁。ISBN 978-4-537-20423-0 。
^ a b 福西英三 『ウイスキー入門』保育社 〈カラーブックス 834〉、1992年、76頁。ISBN 4-586-50834-5 。
^ 福西英三 『カクテル入門』保育社 、1982年、17頁。ISBN 9784586505630 。
参考文献
忘れられないもの The Unforgettables 現代の古典 Contemporary Classics 新時代の飲み物 New Era Drinks 参照