これに対し、オイラーの方法では必ずしも n 個の集合の図で 2n 個の領域を持つとは限らず、領域が存在しないことは元が存在しないことを意味する。例えば、先の例では A に属して B に属さない元は存在しない。このオイラー流の図も、現代ではしばしばベン図と呼ばれるが、厳密に区別したいときは、オイラー流の図をオイラー図、2n 個の領域を持つ図をベン図と呼び分ける。
ベンの方法では、黒塗りの領域や斜線の領域は元が存在しないことを意味したが、現代では逆に斜線を引いたり色を付けたりして、その領域に注目することが多い。例えば、図3の赤い部分は左の円を集合 A、右の円を集合 B としたときの、A と B の共通部分A ∩ B を意味する。
論理演算をベン図で表す場合、円は論理演算の入力値を表す論理変数に対応し、円の内部はその変数の値(真理値)が真(1、もしくはT)であること、円の外部は偽(0、もしくはF)であることを表す。論理演算の出力値を真にする入力値の組に対応する領域に斜線を引いたり色を付けたりすることで、入力値と出力値の関係を表す。例えば、図4は左の円をP、右の円をQとして、PとQの論理積 (AND) P ∧ Q をベン図で表したものである。これは集合 A と集合 B の共通部分A ∩ B を表すベン図と見かけは同じだが、論理演算 P ∧ Q を表すものとみなす場合、円は集合を意味するものではないことに注意が必要である。