数学の集合論における配置集合[1](はいちしゅうごう、独: Belegungsmenge)あるいは集合の冪(べき、仏: exponentiation ensembliste)[注釈 1]は、二つの集合E, F に対する演算で、E から F への写像全体の集合[1]を割り当てるものである。この集合は ℱ(E, F)[1] や FE などと書かれる[2]。これはまた、E で添字付けられた F の元の族の全体 とも一致する[3]。
任意の空でない集合 E に対し、E から空集合∅ への写像は存在しない(E の元の像となるべき元の存在は、∅ がもともと元を持たないから、満たされることがない)。すなわち、∅E = ∅ (E ≠ ∅) が成り立つ。
任意の集合 F に対して、空集合から F への写像はただ一つ存在する(空写像、すなわち空なグラフを持つ写像)。従って、配置集合 F∅ = {∅} は一元集合である。
濃度
E および F は有限集合とし、集合 E の位数を |E| のように書くとき、配置集合の濃度に関して が成り立つことが示せる(重複順列の項を参照)。
E または F が無限集合のとき、上記の等式は濃度の冪の定義として用いられる。このとき、FE の濃度が E および F の濃度のみで決まる(つまり、濃度が同じならばそのような集合の取り方に依存しない)ことが示せる。
歴史
こんにち配置集合と呼ばれる構成を導入したのはゲオルク・カントールである[4]。カントールが "Belegung(ドイツ語版)"[注釈 2] と呼んだ「N の元に対する M に値をとる配置」(英: "covering"[5], 仏: « recouvrement »[注釈 3])とは、「N の各元 n に M の定まった元を割り当てる規則であって、M の元は繰り返し用いてよい[6][5]」というもので、そのような規則は今日われわれが N から M への写像と呼んでいるものに他ならない。N における個々の配置を、規則 f を明示して f(N) と書くことにすれば、すべての f(N) を元とする集合—すなわち M に値をとる N の相異なる配置全体の成す集合— を「N の M による配置集合」と呼び、カントールはこれを (N|M) で表した—すなわち (N|M) = {f(N)}[6][5]。