フジ属 (フジぞく、学名 : Wisteria )は、マメ科 の属 の一つ。フジ (藤)と総称するが、「フジ」は属の下位分類の種 の一つである日本固有種のWisteria floribunda (ノダフジ) の和名 でもあるため、属と種の混同に注意が必要である。異名に「さのかたのはな」、「むらさきぐさ」、「まつみぐさ」、「ふたきぐさ」、「まつなぐさ」などがある。なお、中国語の藤はヤシ科 のトウ (籐、ラタン)に相当し、フジ属は紫藤、ノダフジは日本紫藤(あるいは多花紫藤)という。
形態・生態
つる性 の落葉 木本 である。
毎年4月 から5月 にかけて淡紫色 または白色 の花 を房 状に垂れ下げて咲かせる。
分布
日本 、東アジア 、北アメリカ に自生する[ 1] 。フジ (ノダフジ)とヤマフジ の2種が日本固有種 で、シナフジ などが中国固有種であり、アメリカフジ が北アメリカ固有種である。アメリカには1816年に中国原産のシナフジが、1830年に日本原産のフジ(ノダフジ)が園芸目的で持ち込まれ、この2種は、その花の多さ、大輪の房、花色の豊富さ、香りのよさなどから現地のアメリカフジなどより遥かに人気を博し、その成長力から特に南東部で侵略的外来種となった[ 2] [ 3] 。
下位分類
フジ属には8種 前後が属する。
フジとヤマフジ
フジ(ノダフジ)とヤマフジは日本の固有種である[ 4] 。フジ(ノダフジ)とヤマフジは万葉集 では区別なく歌の題材となっており[ 4] 、日本では固有種のフジ(ノダフジ)とヤマフジの両種をフジと総称することもある[ 5] 。
利用
盆栽
日本では園芸植物 として藤棚 や盆栽 に仕立てられることが多い。
山林に自生するフジは、つる性であるため、樹木に絡みついて上部を覆い光合成 を妨げるほか、幹を変形させ木材の商品価値を損ねる。このため、植林地など手入れの行き届いた人工林 では、フジのつるは刈り取られる。これは、逆にいえば、手入れのされていない山林で多く見られるということである。近年、日本の山林でフジの花が咲いている風景が増えてきた要因としては、木材の価格が下落したことによる管理放棄や、藤蔓を使った細工 (籠 )を作れる人が減少したことが挙げられる。
食用・薬用
若芽 - ゆでて和え物 や炒め物。
花 - 湯がいて三杯酢 や天ぷら 、塩漬け して「花茶」に用いる。
種子 - 花後に剪定 すると、実がならない。入手が困難でもちもちした食感は珍味となっている。江戸時代 には貴重な糖質として重宝された。
蔓
家具(いすや籠など)
藤布(繊維から)
藤紙(茎皮の繊維から)
文化
日本では古来より、花の鑑賞や籠などの道具の材料などに用いられてきたため、各所でフジに因んだ名称や意匠を目にすることができる。
日本人の姓
名字ランキング100番目以内に多い順から佐藤 、伊藤 、斎藤 、加藤 、後藤 、近藤 、藤田 、遠藤 、藤井 、藤原 、工藤 、安藤 、藤本 の13種類の名字がランクインしている[要出典 ] 。
藤原氏 [ 6] を出自としてその流れを汲む十六藤 (じゅうろくとう) - 佐藤、伊藤、斎藤、加藤、後藤、近藤、遠藤、工藤、安藤、内藤 、須藤 、武藤 、進藤 、新藤 、神藤 、春藤 の名字(読みは音読みで「とう」または「どう」、人口の多い順)。多くは旧国名・役職名+藤と言うパターンが多い(例:佐藤は「佐渡」または「佐野」の藤原の意)。この、十六藤以外にも江藤 、衛藤 、斉藤 、首藤 、権藤 、尾藤 などの名字も存在する。
「○藤」系は北日本 ・東日本 、東海地方 に多く分布しており、「藤○」系は西日本 の近畿地方 や中国地方 瀬戸内海 側を中心に多く分布している。ただし、徳島県 と大分県 では例外で、前者は佐藤・近藤、後者は佐藤・後藤・工藤が多く集中しており、大分県独特の名字に江藤・衛藤・首藤姓がある。
家紋
藤紋 (ふじもん)は日本の家紋 の一種。ヤマフジのぶら下がって咲く花と葉を「藤の丸」として図案化したもので、元来は「下り藤」である。家紋として文献に載ったのは、15世紀 ごろに書かれた『見聞諸家紋 』などである。『吾妻鏡 』や『太平記 』には登場しないことを根拠として武家 の間では14世紀 後半の室町時代 末期に流行したと考えられており[ 7] 、また江戸時代 には武士における使用家が170家におよび[ 8] 、十大家紋 の一つに数えられている。図案には、上り藤、下り藤、一つ藤巴、藤輪、利久藤、三つ追い藤、黒田藤などがある。
文学・芸術
『古事記 』
『万葉集 』
「藤浪の花は盛になりにけり ならのみやこを思ほすや君」 - 防人司佑(さきもりのつかさのすけ)大伴四綱(よつな)の歌。
『枕草子 』
木の花は - 「藤の花は、しなひ長く、色濃く咲きたる、いとめでたし」
あてなるもの - 「薄色に白襲の汗衫。かりのこ。削り氷にあまづら入れて 新しき金まりに入れたる。水晶の数珠。藤の花・・・」
『源氏物語 』
俳諧
「くたびれて宿かるころや藤の花」(芭蕉 )
「昔絵の春や辨慶藤娘」(子規 )
絵画・工芸
「色絵藤花文茶壺」 野々村仁清 作
衣装
藤布(ふじぬの) - 庶民用布、ござの縁布。
藤衣(ふじごろも) - 公家の喪服にもちいられた。
染色
襲色目 藤[ 9] - 淡紫から白のグラデーション。毎年3月から4月にかけての春に着用。
着物の文様
花簪(かんざし) - フジの花序をかたどったものがある[ 10] [ 11] 。
その他
天道花・花折節供
自然暦・勧農鳥の止まる木
朝藤夕縄
名木
牛島のフジ
「迫間のフジ(はさまのふじ)」(栃木県 足利市 ・あしかがフラワーパーク 。) 2021年時点で樹齢 160年とされ、2本の木から伸びた枝は計2,000m2 (1,200畳 分)の日本最大の面積 の藤棚に広がる
長泉寺 の樹齢650年の骨波田の藤(埼玉県 本庄市 )
唐津城 のフジ(佐賀県唐津市)
ヤマフジの大群落(千葉県成東町)
市町村の花
フジと名のつく植物
つる性、花序が穂状、あるいは小さな花が寄り集まっているなど、形状がフジと似ているところから名づけられたものと考えられる場合が多い。
脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
フジ属 に関連するカテゴリがあります。
ウィキスピーシーズに
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