デマント(デンマーク語: Demant A/S)は、オーティコンやバーナフォンなどの補聴器ブランドや、聴覚診断装置など医用検査機器の製造販売を行う多国籍企業。デンマーク首都地域のスメーロム(Smørum)に本社を置き、世界30カ国以上に現地法人を持ち130カ国以上でビジネスを展開している。ナスダック・コペンハーゲン上場企業(Nasdaq Nordic DEMANT)。日本法人はデマント・ジャパン株式会社。
デマントは次の二つの点で世界唯一の企業である。
聴覚障害を持つ妻を助けることに情熱を注いでいたハンス・デマントは、デンマーク生まれのイギリス王妃であるアレクサンドラ・オブ・デンマークが1902年の戴冠式で補聴器を着用していたことを知った後、1904年にオーティコンを設立、アメリカのメーカーであるGeneral Acoustic Companyと契約し同社の補聴器の輸入販売をオーデンセで始めた[7]。1910年のハンスの死後は、息子のウィリアム・デマントが会社を引き継ぎ、1923年に会社をコペンハーゲン近郊に移転し、補聴器のライセンス生産を開始した[7]。第二次世界大戦はアメリカからの輸入を途絶させ苦境に陥ったが、戦後はアメリカの補聴器メーカーCharles Lehmanとデンマークで合弁事業を行うなど復調し、1957年にデマント家が保有していた株式をオーティコン財団に譲渡、1968年に経営幹部がデマント家以外となった[7]。
その後はスイスやノルウェーに現地法人を設立、また1973年にスコットランドに工場を新設するなど海外進出を進め、1977年にデンマークに聴覚学の研究施設であるエリクスホルム研究センター(Eriksholm Research Centre)を設立した[8]。1983年には持株会社のオーティコン・ホールディングを設立した[7]。1995年1月、スイスの同業バーナフォンを買収し傘下におさめ、同年5月に株式上場企業となり、1997年に企業名をウィリアム・デマント・ホールディングに改め、2000年に聴覚検査機器メーカーのインターアコースティクスを買収し傘下に加えた[7]。2008年にイギリスの聴覚検査機器メーカーのAmplivoxを[9]、続いて2009年にアメリカの聴覚検査機器メーカーのGrason Stadler Inc.を、2015年にはフランスの大手補聴器ディーラーのAudikaを買収した[10]。2019年に企業名をウィリアム・デマント・ホールディングから現社名に改めた[11]。
2020年、フィリップスとライセンス契約を締結し、フィリップスブランドの補聴器の販売を開始した[12]。2022年にアジア太平洋地域最大の補聴器ディーラーである中華人民共和国の声望(SWTL)の株式を段階的に買収し傘下におさめ[13]、2024年8月にはデンマークの聴覚クリニックチェーンのDansk HøreCenterを同業のGNから買収し[14]、デンマークの補聴器小売市場で第2位に浮上した[15]。
現在、同社は3つの事業部門(ヒアリングヘルスケア)に注力している。
事業別売上高構成比率は、補聴器事業が45%、聴覚ケア事業が44%、診断装置事業が11%となっている[16]。地域別では、北米とヨーロッパが各41%、アジアが10%となっている[16]。
日本では、日本法人「デマント・ジャパン株式会社」(Demant Japan K.K.)が神奈川県川崎市幸区にオフィスを置きデマント傘下の各ブランド製品の製造販売を行っている[19]。国内グループ企業にEPOS Japan株式会社、ダイアテックジャパン株式会社、Audika株式会社(それぞれ親会社が同じである兄弟会社)がある[1]。