『タクティカルロア』は、日本のアニメ作品。2006年1月から4月までUHFアニメとして放送された。全13話。略称は「タクロア」。護衛艦で戦う少女達の奮闘を描いた作品で、主に護衛艦「パスカルメイジ」を中心にストーリーが展開された。バンダイチャンネルによるストリーミング配信や、インターネットラジオ番組『たくろあ航海日誌』の配信、『コミックキラリティー』(学習研究社発行)にコミカライズ作品が掲載されるなどのメディアミックスも展開している。
本作は海上自衛隊全面協力により、事前に護衛艦はるさめ(DD-102)を実際に乗艦取材を敢行しており、その成果はそれをモチーフにしているパスカルメイジや各所の表現に活かされている。そのため、パスカルメイジの艦番号は海自の承諾の上DD102はるさめに敬意を表して「102」とされている。
西太平洋に巨大な停滞性台風が発生した。その名は「グランドロア」。その台風はアジア各国に甚大な被害をもたらし、様々な影響を与えた。その自然災害を「ケースオメガ」と呼ぶようになったのだ。
それから約半世紀近くのこと。復興を成し遂げて、海洋航路の重要性が再認識されるようになった。しかし海洋時代に暗躍するかの如く、テロリストグループ・所謂海賊が目立つようになった。それに対応するため、民間自衛機関を組織することになったのだ。本作はそれら民間自衛機関の1つであるharu-nico警備保障に所属する、女性のみをクルーとした護衛艦「パスカルメイジ」、そしてそのクルー達の日々の戦いの物語である。
キャラ名の殆どが、海洋用語や海の生物など、海に関係する名前がモチーフとなっている。
パスカルメイジ(Pascal Magi)は、ハルニコ警備保障実務船舶部第7課所属の護衛艦。艦番号は102。南波島のハルニコ埠頭を母港とする。本作品の主役メカであり、物語の大半は本艦が海賊やテロリストと繰り広げる戦い、および航海中または停泊中の本艦内外で営まれるクルー達の日々である。
本艦の原型となったのは、イタリア海軍にて退役、長らく動態保存されていたスキピオ級高速フリゲート4番艦「シルド ブレイブ(Shield Blave)」(イタリア海軍籍であるが、同級の建造はヨーロッパ連合により設立された「地中海正常化委員会」が推進しており、4番艦は主にイギリスの出資により建造されたため英語で命名された)である。この老朽艦をハルニコ社実務船舶部が格安で購入、グランドロア周辺の海賊に対抗する民間護衛艦として艤装を施した。この際、艦長となる美咲七波の意見を多く取り入れ、故に旧式小型であるにもかかわらず、この規模としては異例の重武装艦であり、その戦闘能力は高い(速度だけは原型(50ノット)より若干低下している)。こうした背景を持つため劇中に登場する他の艦艇に比べ現代の同種艦艇に近い艦影を持つ。なお、シルドブレイブがパスカルメイジに改装される経緯などはアニメ本編では触れられていないが、DVD添付ブックレットや後に出版された『タクティカルロア COMPLETE BOOK』などに詳述されている。後者にはシルドブレイブ時代を描いたラフ画も掲載されており、それによると艦橋などパスカルメイジの面影を持ちながら棒マスト1本でバルジも無いなど、より現代の艦艇に近い姿をしていた。建造は21世紀中盤とされ、一方で同艦の艦齢は50年以上との記述が見られるが、パスカルメイジへの改装は物語数年前の慶良間事件以降、七波のハルニコ着任時とされているため、その生涯の大半はシルドブレイブとして動態保存されていた年月である。
同社における主力護衛艦ラジダエ級ではなくわざわざ軍払い下げの艦を改修したこと、およびその改修について七波の希望が採用された理由は、彼女が元洋衛軍エリート「マーキュリーズ」の一人としてヘッドハンティングに応じた際に出した条件に基づく。その条件とは即ち、「理想の艦」「理想のクルー(個々に対する面談の上での登用)」「理想の副長(ターニャの同伴乗艦)」などである。この要求に従って彼女の理想として誕生したのが本艦であった。加えて、彼女自身によって選抜されたクルーにより、本艦は時としてカタログスペック以上の性能を発揮する。
元となった「シルド ブレイブ」は(現代のMEKO型フリゲートのような)モジュール構造を持ち、パスカルメイジもその特徴を継承している。故に本艦は整備や修理・改修などの利便性に優れている。七波の希望通りの改修を施すことができたのも、劇中に幾度か損害を受けつつ早期に復帰できたのも、このモジュール構造によるところが大きい(修理は破壊部分をモジュールごと交換する形で行われるため)。
また、精密機器メーカー・小笠原技研とハルニコ社との間に結ばれたモニタリング契約の対象艦となっており、技研で開発された先端技術をいち早く搭載している。これは技研において開発された新システムの実地試験およびフィードバックを行う見返りに、安定性未確認ながら最新の技術を安く提供される、という契約であり、技研の技術者である凪宮漂介が本艦にやってきたのもこの契約に基づくものであった。
元洋衛軍エリートの艦長、社で型式の唯一異なる艦、乗員全てが女性クルー、といった側面を持つためか、本艦はハルニコ社で最も目立つ艦である。劇中の大規模電子掲示板には「【パスカル】アリスブランド観測版【メイジ】」なるスレッド(劇中のままの表記だが「版」は「板」の間違いと思われ、現代電子掲示板などにおける当て字文化と共通するものであろう)が立てられ、「蓮刈」のあだ名が与えられているほど。同スレッドにレーゲンが現れ、ハッキングにより混乱する艦内が盗撮動画として公開されると盛り上がったが、その騒ぎが収まったかと思いきや同艦が軍潜水艦と遭遇すると掲示板にはパスカルメイジを心配する書き込みが行われ、それがハッキングプログラムの残滓による幻影であり本艦が無事であると知れると現実世界で安堵するファンの姿が描かれていた。そのほかにも、劇中webでの検索では数多くの記事が見つかったらしい。
ハルニコ社においても、本艦は広告塔としての役割を担っている。国際観艦式においてコールマンと共に同社展示の目玉として選ばれ[1]、また雑誌表紙や同社CMなどにも登場している。さらに、損傷を受けた際に復帰が早かった理由としても、上記のモジュール構造による整備性の高さと並び、社が広告塔としての本艦修理を優先させたことによるところが大きいとされる。そうした事情や先に述べた背景、あるいは小笠原技研の最新技術を真っ先に導入していることへのやっかみもあってか、僚艦の男性クルーや本艦を良く思わない濱口担当監などからは“少女趣味の艦”を意味する「アリスブランド」と揶揄されることがある。
DVD各巻収録の映像特典であるピクチャードラマ。全7話。本編では描かれなかったサイドストーリー。
全7巻が2006年3月24日 - 2006年9月22日にかけ月1巻ずつ発売。第1巻は第1話のみ収録、第2巻以降は2話ずつ収録。各巻とも本編以外に映像特典として静止画と音声によるサイドストーリー「ピクチャードラマ」および各出演者による本編解説「オーディオコメンタリー」を収録。他に特典として登場兵器解説映像、劇中戦術解説映像、ノンテロップオープニング/エンディング、海上自衛隊取材映像などを各巻別に収録。各巻初回特典は、各巻ごとパッケージに描かれた女性クルーの着替えシーン(第7巻のみ幼少時の七波&漂介)を描いた「ドッキリ生写真・プライベートショット」と称するイラストカードを封入。第1巻のみ、これに伊藤岳史描きおろし全巻収納DVD-BOXが付いた。各巻パッケージは順に七波、翼、さんご、真秋&真夏、美晴、ターニャ&クレイオ&看取、七波&漂介を描き、背景にそれぞれパスカルメイジやカモメ、ヴェッケン艦などメカの線画を配していた。
発売レーベルはいずれもランティス