『映画ドラえもん 新・のび太の大魔境 〜ペコと5人の探検隊〜』(えいがドラえもん しん のびたのだいまきょう ペコとごにんのたんけんたい)は、2014年の日本のSFコメディアニメ映画。藤子・F・不二雄の漫画『ドラえもん のび太の大魔境』を原作とした、映画「ドラえもん」シリーズの第34作目である。監督は八鍬新之介、脚本は清水東が務める。
テレビアニメ第2作2期声優陣としては第9作目で、1982年3月13日に公開された『ドラえもん のび太の大魔境』のリメイク。藤子・F・不二雄生誕80周年、テレビアニメ35周年、テレビ朝日開局55周年記念作品となっている。
2013年12月26日に、お笑いコンビのCOWCOWが応援隊長として就任、同時に当作品にゲストとして出演することが決定[2]。さらに2014年1月22日にはゲスト声優の追加が発表され、サベール役に『ドラえもん のび太と奇跡の島 〜アニマル アドベンチャー〜』で出演経験のある小栗旬、スピアナ姫役はフリーアナウンサーの夏目三久が演じることが決定した。
『ドラえもん のび太の新魔界大冒険 〜7人の魔法使い〜』以来7年ぶりに、オープニングアニメーション内でタイトルロゴが表示された。その一方、『のび太の新魔界大冒険』を除くリメイク作品同様、今作自体の漫画版やアナザーストーリーである超特別編は描かれておらず、第1期を含めると『ドラえもん のび太のパラレル西遊記』[注 1]以来、映画に関する新作ストーリー漫画が描かれない作品となった[注 2]。
エンドロールでは、藤子プロのクレジット表記の隣に、社名ロゴタイプが映画ドラえもん史上では初めて使用された[注 3]。また、「おわり」の文字が『ドラえもん』のロゴタイプを模した意匠が凝らされている。
2014年6月14日には上海国際映画祭に本作が出品され、衡山電影院で行われた舞台挨拶には監督の八鍬と声優の水田わさびが登壇した[3]。
これまではDVD、ブルーレイは通年12月に発売されていたが、2014年は『STAND BY ME ドラえもん』の公開(8月8日)に合わせる形で8月6日にスペシャル版、通常版がDVD、ブルーレイそれぞれで発売され[注 4]、本作以降も8月上旬に発売されるようになる。また、『ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜』で登場したDVDとブルーレイが同封されたファミリーパックは本作以降発売されない。
第2期映画シリーズとしては『ドラえもん のび太の恐竜2006』と同じくドラミが登場しない作品でもある。ドラミの未登場も含め、これまでのリメイク作品のような主要な新キャラクターは後述のバーナードとブルテリの2人であるが、この2人はモブキャラクターに多少の個性が付いた程度であり、主要完全オリジナルキャラクターは登場しない。これについて監督の八鍬は「新しいキャラクターを加えるよりも原作に描かれているキャラクターを深く掘り下げていく」[4]とし、中心となるジャイアンやペコたち登場キャラクターの心情や、舞台となるバウワンコ王国の情景描写などを新たに描き込んでいる。物語もほぼ原作(大長編ドラえもん)を踏襲した展開をしており、これまで主要新キャラクターや新展開という大幅なアレンジを取り入れて制作された過去のリメイク作品と比較すると一線を画す作りとなっている。
テレビシリーズおよび原作とのつながりを感じさせる要素も特徴で、これまでの映画作品ではキャラクターデザイン・背景美術がテレビシリーズと作風の差別化が図られていたが、本作ではテレビシリーズとほぼ同様の作風で描写されている。音楽面では各キャラクターソングのアレンジBGMや、オープニングテーマ『夢をかなえてドラえもん』の合唱バージョンが流され、本作のオリジナルシーンである夜中にのび太とペコが会話する場面では、のび太が「な、なんと!!のび太が百点とった!!」[5][注 5]を思わせる話をしている。またリメイク同様、未来から本編終了後のドラえもんたち5人が助っ人として加わり、「10人の外国人」が成立する。そのため終了時には5人が前述通り、過去の自分たちに助っ人として応援に行くところで話は終了するため、物語の冒険は終わらずに終了する。
夏休みのある日、前人未到の大魔境を探検したいと思い立ったジャイアンとスネ夫は、ドラえもんに未知の大魔境を探させようとする。無理な要求かに思われたが、のび太が空き地で拾った犬のペコが自家用衛星のカメラを操作した結果、写真の中からアフリカの秘境 “ヘビー・スモーカーズ・フォレスト” に佇む謎の巨神像が発見される。前述の4人にしずかとペコを加えた探検隊はどこでもドアでアフリカに向かい、目標地点の100km手前から探検を開始する。
初日、探検ムードを出すためにドラえもんはひみつ道具を使用し、アフリカのジャングルで猛獣たちと戦いスリルを味わいながら冒険した[注 6]。夕方になり空き地に戻ったドラえもんたちだが、猛獣たちから襲われる役ばかりでご機嫌斜めになったジャイアンは「探検ごっこはもうやめだ!!」と探検の中止を宣言して家に帰ってしまう。その夜、ジャイアンは自身の部屋で幻の巨神像を目の前にする。巨神像はジャイアンにサインペンで書いた宝の地図を授けて消えていった。
次の日、宝の地図の真偽には半信半疑ながらも、一行は再び大冒険へ出発する。しかし、「探検ムードを壊すひみつ道具は全部空き地に置いて行こう」というジャイアンの提案で、前の日に使ったひみつ道具を全て空き地に置いていくことになった。船で川を遡上して目的地に向かおうとする一同だが、巨大なワニの群れが現れた上、ジャイアンが舵を忘れたせいで船は沈没し、どこでもドアは空き地の粗大ごみと間違われて破壊され、脱出手段も日本へ帰る手段も失ってしまう。しかし、そこに現れた原住民がワニを退治して一行を救った。その夜、原住民の長老から巨神像があるというバウワンコの謎について話を聞くことができたが、ジャイアンの神にそむく言葉に怒った原住民たちは一行を村から追放する。やむなくキャンピングハットの中で、一夜を明かすことになった一行だが、ジャイアンは自分のせいで皆を窮地に追いやった責任を抱えて苛立ち、部屋に閉じこもって号泣してしまった[注 7]。
翌日、少ないひみつ道具を駆使してサバンナを越え、「オドロンドロの谷」に辿り着き「死霊の国」の謎を解いたその時、ペコが突然二足歩行になって話し始める。ペコの正体は進化した犬の国・バウワンコ王国の王子クンタックだった。彼は大臣のダブランダーに父を暗殺され、王国から命からがら逃げ出した末に日本へ辿り着いたという。王国を乗っ取ったダブランダーは封印されていた古代兵器を復活させて、人間世界をも侵略するための計画を開始したという。
ドラえもんたちはペコを助けることを決意し、「国が乱れるとき、10人の外国人が現れ、巨神の心を動かす」という予言に従って巨神像内部への侵入を企む。しかし、待ち伏せを受けた一同は古代兵器の空爆によって窮地に陥ってしまう。覚悟を決めたペコは1人で巨神像へ向かうが、意を決したジャイアンがそれに続くと、ドラえもんら4人も後を追い、遂に全員が心を一つにする。巨神像へ突入する直前、のび太の「予言の外国人、あとの5人はとうとう来なかったね」という言葉を聞いたしずかちゃんは「先取り約束機」を使ったアイデアを思い付き、5人の外国人……すなわち未来から来た自分たちを呼び出す事に成功する。
新たに5人の味方とひみつ道具を手に入れたドラえもんたちは激戦の末に巨神像を動かしてダブランダー軍の古代兵器を一掃。敗走したダブランダーは蜂起した市民に追い詰められ、巨神像の攻撃で気絶する。こうして遂にペコは王として復権し、バウワンコ王国は救われた。ドラえもんたちは王国の歓待を受けたあと日本へ帰国するが、「過去の自分たちを救う」という約束を果たす為に、タイムマシンでもう一度戦いに向かうのだった。
監督はテレビシリーズの演出を手がけてきた八鍬新之介が初監督を務める。前作『ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』に引き続き、脚本は清水東、キャラクターデザインは丸山宏一が担当し、前作では不在だった総作画監督に『ドラえもん のび太と奇跡の島 〜アニマル アドベンチャー〜』でキャラクターデザインを務めた大城勝が登板している。また、演出は『ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 〜はばたけ 天使たち〜』より担当していた山岡実から、テレビシリーズおよび映画で作画監督や原画を務めてきた岡野慎吾に交代し、美術監督もテレビシリーズを担当してきた清水としゆきが務めている。清水が映画ドラえもんで美術監督を務めるのは『ドラえもん のび太のワンニャン時空伝』以来10年ぶりとなる。
第2期映画シリーズでは恒例となった、エンドロール後のおまけ映像の内容は、ドラえもんの鈴に星が重なり、赤いマスクを身に付けたドラえもんのシルエットが映し出されるというもので、宇宙を背景に2015年春の公開が告知された(これまで通りブルーレイやDVDにも収録)。その後、『ドラえもん のび太の宇宙英雄記』であることが正式に発表された。おまけ映像後は「春ドラの次は、夏ドラです。」というキャッチフレーズとともに、『STAND BY ME ドラえもん』[注 9]の予告映像が流された(こちらはブルーレイやDVDには未収録)。
全国361スクリーンで公開され、2014年3月8、9日の初日2日間で興収6億35万6700円、動員53万554人となり、映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第1位を記録[10]。また、ぴあの調査による初日満足度ランキングでは満足度92.0を獲得し、第1位となっている[11]。翌週に『アナと雪の女王』に首位を阻まれても、4週連続で2位をキープした。最終興行収入は35億8000万円だった[12]。
小学館各誌や各企業で募集された、犬にちなんだイラストコンテストで最優秀賞はエンディングで紹介。
今映画と藤子・F・不二雄生誕80周年記念として、ドラえもんが2014年2月15日から4月7日まで発売の小学館の雑誌全51誌の表紙を飾った[13]。
『大人だけのドラえもんオールナイト@お台場シネマメディアージュ』は2014年3月7日に今作と共に『のび太の魔界大冒険』『のび太の日本誕生』を上映[14]。
ポッドキャスト『Do-Radio 映画チャン★ドラジオ』が映画記念として期間限定で復活。(現在は公開終了)
『ドラえもんといく「日本最南端」大自然の島々へ!ぼくらのおきなわ離島大魔境ツアー 〜家族でわくわく大冒険!〜』は2014年3月15日から4月7日まで映画に関連した石垣島観光ツアー。
ニンテンドー3DSソフト『ゲームドラえもん 新・のび太の大魔境 〜ペコと5人の探検隊〜』。フリューより2014年3月6日発売。映画を題材にした、ペコやドラえもんたち6人を操作するアクションゲーム。
藤子・F・不二雄ミュージアムにおいて、2014年1月30日から6月30日までの間、藤子・F・不二雄作品に登場する「犬」のキャラクターを集めた原画展。