ホーチミン・メトロ (Ho Chi Minh City Metro、ベトナム語 : Đường sắt đô thị Thành phố Hồ Chí Minh )は、ベトナム ・ホーチミン市 で運行している鉄道である。計画では、高速都市鉄道8路線、路面電車1路線、そしてモノレール2路線を整備する予定である。1号線 は2012年に建設が始まり、2024年 12月22日 に開業した。
概要
ベトナム最大の都市であるホーチミン市は、人口 の急激な増加及び急激な経済発展に伴い、1957年のサイゴン市電 (ベトナム語版 ) 廃止以降に市民の足であったバイク や自動車 による大気汚染 と交通渋滞 が社会問題 化していたが、鉄道 を軸とした新たな交通手段 の切り札として都市鉄道建設が登場した。ベトナム国営ゼネコンと住友商事 などの日本企業が共同事業体 を組み発注したことで、現地の雇用 創出も期待されている[ 1] 。
2016年1月現在、ベンタイン市場 から スオイティエン駅までの1号線 (19.7 km)、ベンタイン市場からタンソンニャット国際空港 経由、タムルオンの車両基地までの2号線 (11.3km) の2本の工事に着工している。さらなる延伸が計画されており、最終的に8本176の駅ができる予定。終着駅は地方へ向かうバスターミナルと接続される予定[ 1] 。
2006年 11月28日 、アジア開発銀行 は、日本国政府 の拠出による日本 特別基金から、ホーチミン市地下鉄建設事業に対し、170万米ドル の援助を行うと発表した。
2014年 11月 、ホーチミン市人民委員会はグエン・タン・ズン 首相に対し、同市都市鉄道(メトロ)1号線(ベンタイン - スオイティエン間)の完工時期を2019年 に、運行開始時期を2020年 に延期する旨の報告書を提出した。同案件は、2011年 の時点で2017年 に完工、2018年 に運行開始とされていたもので、予定より更に2年先送りされることとなった[ 2] 。
なお、同年7月にベンタイン駅の建設が着工しており[ 3] 、完成すれば、地下道を通って商業ビル「ザ・ワン」と接続する予定である[ 4] 。
その後同市の都市鉄道(メトロ)1号線(ベンタイン - スオイティエン間)の開通時期が、当初の予定より1年遅れて2021年 初めになるとの見通しを発表した[ 5] 。更に2020年11月段階では、2021年末[ 6] 、2021年10月段階では、2023年以降と伝えられている[ 7] [ 8] 。
1号線の車両 と車両基地 の検修設備は日立製作所 が納入する。また、同社は5年間の車両保守 も請け負う包括的な契約を結んでいる[ 9] 。2020年10月、最初の車両が納入された[ 6] 。
整備中の路線
ホーチミン市にて計画中の路線網
2013年4月8日に承認された決定No.568/QĐ-TTg によると、ホーチミンで計画されている路線は以下の通りである[ 10] [ 11]
記号
路線番号
路線名
区間(所在地)
開業日、開業予定年
駅数
長さ(km)
状況
メトロ
S
1号線
サイゴン線
ベンタイン(1区 )
スオイティエン(トゥドゥック市 )
2024年 12月22日 [ 12]
14
19.7
開業済み
B
2号線
バクェオ線
北西市街地(クチ県 )
トゥーティエム(トゥドゥック市 )
2030[ 13]
42
48
工事中[ 14]
K
3A号線
タンキエン線
ベンタイン(1区)
タンキエン(ビンチャイン県)
2031(第1期)[ 15] 2034(第2期)[ 15]
17
19.8
計画中
N
3B号線
ティンゲ線
コンホア交差点(3区)
Hiep Binh Phuoc(トゥドゥック市 )
未定
11
12.1
計画中
G
4号線
ゴーヴァップ線
タインスアン(12区)
ヒエップフオック(ニャベ県 )
未定
32
36.2
計画中
T
4B号線
タンソンニャット線
ザーディン公園(ゴーヴァップ区 )
Lăng Cha Cả(タンビン区 )
未定
3
5.2
計画中
T
4B-1号線
タンソンニャット線
Hoàng văn Thụ(タンビン区 )
タンソンニャット国際空港 (タンビン区 )
未定
2
1.5
計画中
C
5号線
カンジュオク線
サイゴン橋(ビンタン区 )
Bến xe Cần Giuộc mới(ビンチャイン県 )
2030[ 16]
22
26.0
計画中
Đ
6号線
ダムセン線
Phú Lâm(6区 )
バクェオ(タンビン区 )
未定
7
5.6
計画中
路面電車
T1
トラム1号線
トラム1号線
バソン(1区 )
新東部バスターミナル駅(ビンタン区 )
未定
23
12.8
計画中
モノレール
M2
モノレール2号線
モノレール2号線
Thanh Đa(ビンタイン区 )
グエン・ヴァン・リン(ビンチャイン県 )
未定
17[ 17]
27.2
計画中
M3
モノレール3号線
モノレール3号線
ゴヴァップ (ゴーヴァップ区)
タンチャインヒエップ(12区)
未定
8[ 17]
16.5
計画中
合計
175
225.5
参加企業
モスクワ地下鉄 建設総公社(ロシア) - 鉄道建設計画準備委員会から建設案作成の許可を得た。どの路線案を作成依頼するかは市が決定し、費用はロシア側が負担する。
Jobrus社(ロシア) - 地下鉄建設計画について市や関連当局と話し合う。
シーメンス (ドイツ) - グループは市と協力し、投資総額8億7,600万ドルで建設の提案している。
三井 (日本) - ホーチミン市人民委員会委員長にプロジェクト参加の意向を伝えた。
住友商事 - 高架土木および車両基地など土木工事。総延長19.7 kmの1号線建設計画のうち、11駅を含む17.2 kmの高架土木および車両基地の建設[ 1] 。
サムスン (韓国) - ロテム 社と共同で参加の意向を表明。
カントリーリスク
2024年の開業は、当初計画から約10年の遅れとなった。煩雑な行政手続きなどによる工期の遅れ、日本企業への工事費支払い遅延などが主な理由であり、日本の駐ベトナム大使は「外国企業がリスクとみなし、市場参画に尻込みする可能性がある」と釘を刺した[ 18] 。参画した企業の一つである日立製作所 は、2023年 に工事の遅れで費用がかさんだなどとして、ベトナム国際仲裁センターを介してホーチミン市側に4兆ドン(約240億円)を請求する申し立てを行っている[ 19] 。
新東部バスターミナル
サイゴン交通運輸機械総公社(SAMCO=サムコ)により、ホーチミン市9区には既存の東部バスターミナル に替わり、16ヘクタール の規模の新たなバスターミナルが建設される。敷地全体のインフラ 整備とともに、バスターミナルのほか駐車場 、乗降場、廃水処理場 を併設し、2017年 末をめどに竣工。完成後は、都市鉄道1号線(ベンタイン - スオイティエン間)および各路線バスと接続し、利便性が大幅に向上する。既存バスターミナル跡地には、路線バス 、観光用車両の駐車場、ホテル 、ショッピングセンター 、賃貸オフィス などを併設する複合商業施設 を建設する計画[ 20] 。
脚注
外部リンク