『LUNATIC LION 』(ルナティック・ライオン)は、日本のシンガーソングライター である吉川晃司 の7枚目のオリジナル・アルバム 。
1991年 5月17日 に東芝EMI のイーストワールドからリリースされた。前作『GLAMOROUS JUMP 』(1987年)よりおよそ4年半ぶりにリリースされた作品であり、布袋寅泰 との音楽ユニット であるCOMPLEX の活動休止後にリリースされたソロ復帰作となっている。
SMSレコード 所属時代のアルバムに多く参加した後藤次利 の全面協力による吉川初のセルフ・プロデュース作品となっており、レコーディングにはDER ZIBET のギタリストである吉田光、ホッピー神山 、小田原豊 、山木秀夫 、大村憲司 などが参加している。SMSレコード時代のアルバムと打って変わったルナティック(月光狂)をテーマにしたコンセプト・アルバム となっており、全体的にゴシックホラーを思わせる雰囲気となっている。
本作はオリコンアルバムチャート において最高位第2位となった。本作からは先行シングルとして三貴 「ブティックJOY」のコマーシャルソング として使用された「Virgin Moon 」がシングルカット されたが、本作にはアルバム・バージョンが収録されている。
背景
1988年5月6日および5月9日に日本武道館 における単独公演「武道館スペシャル "BACK TO ZERO"」を実施した吉川晃司 は、同公演を最後に渡辺プロダクション から事務所を独立させることになった。同年12月10日にはBOØWY を解散しソロ・デビューを果たしていた布袋寅泰 とともに音楽ユニット であるCOMPLEX の結成を発表する。契約上の問題で1年程度活動が不可能となっていた吉川は、日本武道館公演の翌日から音信不通となり1年程度は海外旅行など休暇を取ることに専念していた。その後吉川はCOMPLEXとして1989年4月8日にデビュー・シングル「BE MY BABY 」、4月26日にファースト・アルバム『COMPLEX 』をリリースした。オリコンチャート においてはシングルおよびアルバム両方で最高位第1位を獲得。しかし両者の音楽に対する価値観の違いから確執が生まれ、2枚目のアルバム『ROMANTIC 1990 』(1990年)は両者が全く顔を合わさずに分業体制で制作が行われた。1990年11月8日には東京ドーム において最終公演となる「ROMANTIC EXTRA」を実施、同公演を以ってCOMPLEXは活動休止となった。1991年1月23日には前述の公演を収録したライブ・アルバム『19901108 』がリリースされ、4月12日にはソロ復帰作となるシングル「Virgin Moon 」がリリースされた。
制作、音楽性
デジタルなものから、もっとプリミティブなものへっていう変化の始まり的なアルバムだな。正直言って、プレッシャーはきつかった。何か作んなきゃいけないんだろうなっていう…。(中略)何か、テーマを決めよう、決めようと思ってたんだよね、たとえば月 (MOON) とか。ちょっと固執しすぎたなっていう感じ。テーマめいたものに寄っていくっていうのは、初めてだった。
吉川晃司, 月刊カドカワ 1993年3月号
本作はベーシスト の後藤次利 が全面協力した上での吉川初のセルフ・プロデュース作品となった[11] 。吉川によれば本作はデジタルな制作方法からプリミティブなものへ変化する最初のアルバムであるという。COMPLEX活動休止後初のアルバムということもあり、制作時における「プレッシャーはきつかった」と吉川は述べ、「もう怒涛の中で作ったっていう感じよ。怒涛の中で作った怒涛のアルバムで、うるさくてしようがないっていう(笑)」とも述べている。しかしCOMPLEXから尾を引いている部分はなく、吉川曰く「むしろ一人になって“ヨッシャ!”って言ったら、その“ヨッシャ!”の声が大きすぎてつんのめっちゃったって感じ」と述べている。本作はテーマありきで制作が進められ、「月」というテーマなどを決定したものの、後に吉川は「固執しすぎた」と述べており、テーマを決めた上での制作は初めてのことであったが、「頭のいいことをしようと思ったのが、先ずは僕らしくないね。雑食が、ちょっと焼き肉ばっか食って腹こわしちゃった状態(笑)」と述べている。
本作では後藤とSMSレコード所属時代以来の共同作業となったが、吉川によれば以前の後藤とは全く異なる人柄となっており、当時ロック から離れていた後藤はここぞとばかりに主張するようになっていたという。スタジオでの作業においては後藤とホッピー神山 が厭味の飛ばし合いで殺伐とした雰囲気になっており、吉川はかなり疲弊したと述べている。最終的にはトラックダウン において余計な音を全部取り払った上で吉川が自身の好む音にまとめた結果、後藤と神山は「ない! 音が!」と激怒したと吉川は述べている。音を大幅に削除したことについて吉川は「それをやるしかなかった」と述べ、ベース の後にキーボード を録音した後に、さらに新たにベースを録音すると後藤が言い出しいつまでも終わらない状態に陥っており、吉川は「後々勉強になった」と述べた上でその時は「勘弁してくれよ、ホント冗談じゃねぇよ」という感想を持っていたと述べている。
吉川は本作を「個人的には好きなアルバム」であると述べつつも、客観的に自身を見られなかった結果「サウンドに絞り込みが足りない」ことや、「間口が開いたまんま」の作品であり、「吉川晃司の王道からちょっとハズレてるんだろうなって今は思う」と後に述べている。吉川はCOMPLEXからの脱却を目指すために「一回それを全部吐き出したかったんだと思う」と述べた他、「この怒涛の感じっていうのがないと、COMPLEXからスコンと抜けられなかったかもしれない気がする」とも述べている。収録曲である「ONLY YOU」に関して吉川は、「木陰で愛を語らうふたり」というシチュエーションについて「これはもう自分の憧れみたいなもんですね」と述べており、憧れでありながらも実際に自身がそのシチュエーションにいることを想像すると嫌悪感や羞恥心を覚えるとも発言している。吉川によれば同曲はモータウン・サウンド 系のリズムで日本人にとっても受け入れやすい曲調となっているが、コード進行 に趣向を凝らしているため「簡単そうに聞こえて演奏も歌もけっこうたいへんだったんですよね」と述べている。
リリース、チャート成績
本作は1991年 5月17日 に東芝EMI のイーストワールドレーベルからCD およびCT の2形態でリリースされた。初回生産盤は特殊ホログラフィジャケット仕様になっており、通常盤と同様の金色基調のブックレットを内包している。本作からは三貴 「ブティックJOY」のコマーシャルソング として使用された「Virgin Moon 」が先行シングルとしてリリースされた。本作はオリコンアルバムチャート において、最高位第2位の登場週数9回で売り上げ枚数は23.1万枚となった。
CD盤はその後2006年12月13日にCD-BOX 『THE EMI BOX 』に収録される形でデジパック 仕様のデジタル・リマスタリング 盤として再リリースされた[13] 。2007年3月14日には紙ジャケット 仕様として再リリースされ、2014年5月14日には24bitデジタルリマスタリングが施されたSHM-CD 仕様にて再リリースされた[14] 。2014年5月28日にはCD-BOX 『Complete Album Box 』に収録される形で紙ジャケット仕様のデジタル・リマスタリング盤として再リリースされた[15] [16] 。
ツアー
本作を受けたコンサートツアーは「Lunatic LUNACY TOUR 1991」と題し、1991年5月10日の渋谷ON AIR 公演を皮切りに、7月24日の日本武道館 公演まで21都市全25公演が実施された[17] 。バンド演奏への願望が残っていた吉川はレコーディング時とほぼ同じメンバーをツアーに帯同させたが、個別にプロ意識があるミュージシャンが集合することとバンド活動は異なるものであると実感したと吉川は述べている。同年12月11日および12日、31日には単独公演「1991 LAST SPECIAL EVENT "ROLLING VOICE-Noise1-"」を日本武道館および大阪城ホール にて実施した[19] 。
批評
専門評論家によるレビュー レビュー・スコア 出典 評価 CDジャーナル 否定的[11]
音楽情報サイト『CDジャーナル』では、本作が吉川によるセルフ・プロデュースによる力作であると指摘、テクニカルなミュージシャンが参加していることや吉川のボーカルに対して「サウンドはパワー全開。ヴォーカルも気合い十分」と好意的な評価を下したが、一方で歌詞については「薄味すぎる」と指摘した上で「思わせぶりが裏目に」と否定的に評価している[11] 。
収録曲
SIDE A # タイトル 作詞 作曲 編曲 時間 1. 「VOICE OF MOON 」 菅原弘明 、後藤次利 菅原弘明、後藤次利 1:45 2. 「LUNATIC LUNACY 」 吉川晃司 吉川晃司 吉田光、後藤次利 4:32 3. 「不埒 ( ふらち ) な天国 ( ヘブン ) 」 吉川晃司 吉川晃司、後藤次利 後藤次利 3:46 4. 「Jealousy Game 」 吉川晃司 吉川晃司 ホッピー神山 5:31 5. 「虚ろな悪夢 」 吉川晃司 吉川晃司、後藤次利 後藤次利 3:55 6. 「DUMMY 」 吉川晃司 吉川晃司 ホッピー神山 4:38 合計時間:
24:07
SIDE B # タイトル 作詞 作曲 編曲 時間 7. 「Weekend Shuffle 」 吉川晃司 吉川晃司、後藤次利 後藤次利 5:03 8. 「ONLY YOU 」 吉川晃司 吉川晃司 菅原弘明、後藤次利 4:12 9. 「Barbarian (LUNA MARIA) 」 吉川晃司 吉川晃司 後藤次利 4:42 10. 「永遠 ( ねむり ) につくまえに 」 吉川晃司 吉川晃司 後藤次利 4:56 11. 「Virgin Moon 〜月光浴 」 吉川晃司 吉川晃司、後藤次利 後藤次利 6:10 合計時間:
25:03
スタッフ・クレジット
参加ミュージシャン
KOJI KIKKAWA AND THE CRIMES
スタッフ
吉川晃司 – プロデュース
後藤次利 – コ・プロデュース
ラリー・アレキサンダー – ミキシング・エンジニア
村瀬範恭 – レコーディング・エンジニア
高橋寧 – レコーディング・エンジニア
伊藤康弘 – レコーディング・エンジニア
いとうやす – アシスタント・エンジニア
高橋尚哉 – アシスタント・エンジニア
福島芳樹 – アシスタント・エンジニア
飯島周城 – アシスタント・エンジニア
ふくいひろき – アシスタント・エンジニア
松村茂 – アシスタント・エンジニア
安部弥生 – マスタリング・エンジニア
神崎真雄(セブンス・エンタープライズ) – A&R ディレクター
菅谷憲(東芝EMI ) – A&Rディレクター
いけむらたかあき(セブンスエンタープライズ) – マネージメント
きくちよしお(セブンスエンタープライズ) – マネージメント
折重静子 – トランスレーター
松木直也 – スペシャル・サンクス
ANT (荒木一三) – スペシャル・サンクス
成澤彰三(ヒップランドミュージック) – スペシャル・サンクス
渡部洋二郎(ヒップランドミュージック) – スペシャル・サンクス
河村嚴生(セブンスエンタープライズ) – エグゼクティブ・プロデューサー
石坂敬一 (東芝EMI) – エグゼクティブ・プロデューサー
下河辺晴三 (東芝EMI) – エグゼクティブ・プロデューサー
リリース日一覧
脚注
参考文献
外部リンク
シングル
CD リミックス コラボレート 配信
1.NOW
2.光と影 〜SEMPO LIVE ver.〜
3.あの夏を忘れない
4.SAMURAI ROCK 〜義風堂々!! ver.
5.The Sliders
6.せつなさを殺せない2014
7.Over The Rainbow
8.The Last Letter
9.Lucky man
10.Brave Arrow / 焚き火
11.BLOODY BLACK
アルバム
オリジナル ミニ ベスト セルフカバー ライブ BOX サウンドトラック 参加作品
映像作品
1.KIKKAWA KOJI '84 FLYING PARACHUTE TOUR
2.'85吉川晃司 LIVE for Rockfeeling Kids in BUDOKAN
3.'85 JAPAN TOUR FINAL IN 東京昭和記念公園
4.DRASTIC MODERN TIME Tour Tokyo 8Days live
5.ZERO -KIKKAWA KOJI HI-VISION LIVE WORLD '88
6.VOICE OF MOON
7.Lunatic LUNACY
8.ACTIVE OVERDRIVE
9.SHYNESS OVERDRIVE 1992
10.Cloudy Heart's
11.CONCERT TOUR 1994 My Dear Cloudy Heart
12.LIVE GOLDEN YEARS EXPANDED 0015 GIGANTIC 2DAYS LIVE Vol.1
13.LIVE GOLDEN YEARS EXPANDED 0015 GIGANTIC 2DAYS LIVE Vol.2
14.HOT ROD MAN LIVE
15.HOT ROD MAN DOCUMENT
16.SOLID SOUL 2001
17.SMASH THE PANDORA FINAL! TOKYO CIRCUS
18.The Gundogs Perfect DVD Plus!
19.LIVE JELLYFISH
20.LIVE GOLDEN YEARS 20th Anniversary PRELUDE at BUDOKAN
21.LIVE GOLDEN YEARS Thanks0201 at BUDOKAN
22.THE FIRST SESSION KIKKAWA KOJI LIVE 2005 “エンジェルチャイムが鳴る夜に”
23.KIKKAWA KOJI LIVE 2006 ROLL OVER the DISCOTHEQUE! From Club Jungle
24.THE STORY OF TARZAN 〜2007 TOUR FINAL & DOUBLE TV DOCUMENTS〜
25.THE SECOND SESSION KIKKAWA KOJI LIVE 2007 CLUB JUNGLE EXTRA TARZAN RETURN
26.LIVE archives 25
27.KIKKAWA KOJI 25th ANNIVERSARY LIVE FILM COLLECTION 『LIVE=LIFE』
28.25th ANNIVERSARYLIVE GOLDEN YEARS TOUR FINAL at 日本武道館
29.KIKKAWA KOJI LIVE 2011 KEEP ON KICKIN' & SINGIN'!!!!! 〜日本一心〜
30.KIKKAWA KOJI 2013 SAMURAI ROCK -BEGINNING- at 日本武道館
31.KIKKAWA KOJI 30th Anniversary Live "SINGLES+" & Birthday Night "B-SIDE+" 【3DAYS武道館】
32.KIKKAWA KOJI 30th Anniversary Live "SINGLES+ RETURNS"
33.KIKKAWA KOJI Live 2016 "WILD LIPS" TOUR at 東京体育館
34.KIKKAWA KOJI LIVE 2018 "Live is Life"
35.KIKKAWA KOJI 35th Anniversary Live TOUR
36.LIVE archives 35
37.KIKKAWA KOJI LIVE TOUR 2021 BELLING CAT
テレビドラマ 関連人物 関連項目