アエロ L-159 ALCA
チェコ空軍のL-159A
アエロ L-159 ALCA(チェコ語:Aero L-159 ALCA)は、チェコで開発されたジェット練習機・攻撃機。ALCAとはAdvanced Light Combat Aircraft(先進軽作戦機)の略である。
1994年、チェコ空軍の軽多用途戦闘および練習機の要求に合わせて、L-59の発展型として開発が始まった。1995年4月7日にチェコ政府が正式に開発を承認、1997年7月4日に72機の量産契約が交わされ、同年8月2日には試作初号機が初飛行した。1998年8月8日には単座型が初飛行し[2]、2000年に量産初号機の引き渡しが始まった。翌年11月に技術的な障害が電子システムで発見されたが問題はその後修正され[3]、2002年までに72機全機の納入が完了した。生産は2003年に終了したが、2016年にイラク空軍のために生産を再開することが発表された[4]。
基本形でL-159Aは単座型、L-159Bは複座型。チェコ空軍でモスボールされていたL-159Aを改修したドラケン・インターナショナル向けの輸出仕様はL-159E、イラク向けに提案されていた練習機仕様はL-159BQと呼称される。単座型は後席部分に電子機器を搭載することで単座化が図られている。
L-59より僅かに延長された機首にはイタリアのFIAR(現Selex ES)社が開発したグリフォL(英語版)多モードレーダーが搭載され、兵装投下/航法システムは西側標準のMIL-STD-1553Bデジタルデータバスで統合化されている。ハードポイントは胴体下1個所、主翼下片側3個所とL-59より増加し、西側製兵器の運用が可能になった。搭載可能兵器には、顧客の要望に応じてサイドワインダーなどの空対空ミサイルやAGM-65 マーベリック空対地ミサイル、レーザー誘導爆弾、胴体下への偵察ポッドやジャミングポッドなどを装備させることが可能である[5]。これらの装備によりL-159は、近接航空支援、国境監視、実用機転換用戦闘機、戦術偵察、対暴動鎮圧、対艦ミッション、兵装訓練といった用途に使用できるとされている。
アルバトロスIIとも呼ばれるL-159Bは単座型と同様のシステムを備え、軽攻撃だけでなく中/高等訓練やLIFT(戦闘機前段階練習機)といった用途を想定しているが、レーダーは搭載せず燃料搭載量も減少している。
エンジンはハネウェル/ITEC F124を搭載しL-59よりも更なる推力増強が図られ、二重のFADECを備えている。コックピットはグラスコックピットとなり、HOTAS概念やINS/GPS航法装置、機上酸素発生装置も導入され、さらに複合材料とセラミックで装甲されている。また、火災鎮火用に機上不活性ガス発生システムが採用されている。これらのアビオニクスにはアメリカ製のものが多く、供給と機体への統合はボーイング社が行っている[6]。
L-39の特性を受け継いだ頑丈な着陸装置によって未舗装滑走路が運用ができるほか、高揚力翼のおかげで、優れたSTOL能力とBAe ホークよりも優れたパフォーマンスを誇る[7]。また、オプションで空中給油用のプローブも装備させることが可能である[5]。
L-159の西側諸国への輸出活動についてはボーイング社がアエロ社に協力する契約を結んでいるほか、2008年には販売・製造に関してグリペンインターナショナルとの間で相互協力協定に署名している[8]。
当初複座型を採用しなかったチェコ空軍では、2006年から1年かけて少数のL-159Aを複座型に改修しL-159T1と呼称している。これは2007年3月8日に初飛行した[9]。L-159T1では後席のディスプレイに前席のヘッドアップディスプレイの映像が表示されるほか、ディスプレイ自体も4インチのバルコ(英語版)社製に換装されている[10]。
L-159T2はL-159A互換のアビオニクスシステムをL-159T1に移植したもので、レーダーが搭載され、2席のコックピットは独立した計器を持ち、暗視スコープに対応している[11]。2019年6月4日に3機がチェコ空軍に納入された[11][12]。
L-169 AJT(チェコ語版)は、L-159をベースに輸出の弊害となったコンポーネントを代替した上で改良を加えたモデルで、2015年の初飛行を予定していたが、後にL-39NG計画に取って代わられた[13]。
FA-259は、L-159をベースにした単座の近接航空支援機のモデル。2018年7月にファーンボロー国際航空ショーでイスラエル・エアロスペース・インダストリーズとの共同開発計画が発表された[14][15]。エンジンは変わらないが、L-39NGと同様の翼端燃料タンクを排した新設計の主翼を採用し、要望により機首にレーダーを搭載する。兵装の最大搭載量は2,722kgの予定[16]。
L-159は当初200機販売できるとされたが、輸出は振るわなかった。理由としては
などが挙げられている[19][20]。
出典: Jane's All The World's Aircraft 2003–2004[44]
諸元
性能
武装