『A LONG VACATION 30th Edition』(ア・ロング・バケイション サーティース・エディション)は、2011年3月21日に発売された、大滝詠一のアルバム『A LONG VACATION』のリイシュー・アルバム。
1981年 (1981)リリースのアルバム『A LONG VACATION』[注釈 1]発売30周年を記念してリリースされたアニバーサリー・エディション。今回は現行CDフォーマットにおける最高のシステムで状態のよいオリジナルマスターを発掘しリマスター。今までもリクエストの多かった純カラオケとボーナス・トラックとして「君は天然色」の未発表テイクを収録したボーナス・ディスクとで構成。初回盤は三方背ケースによる限定仕様。
大滝詠一によれば「20周年盤はあの時点でできる限りのことをして評判も良かったわけですから[注釈 2]、今回30周年盤を出すにあたっての最優先課題は“20周年盤を超える”ということでした。それができなければやる意味はないということです。で、さんざんあれこれ試してみましたけど、なかなか難儀していたんです。そんな時に、1回だけ選書盤で使ったマスターが浜松工場の奥のほうに置いてあることをスタッフが見つけてきたんです。取り寄せてみると、“選書盤で1回使用”と箱に書いてあって、開けてみるとでっかい字で『ロング・バケイション、シングル・ボックス用マスター』って紙が入っていたんです」[book 1][book 2]という。このマスターはオリジナル・マスターから1世代落ちるものの、ほぼ再生されていない状態というのは、アナログ・テープにとっては好条件だった。そして、30周年盤の目玉として純カラオケがボーナス・ディスクとして付けられたが、このマスターは『ロンバケ』のミックス・ダウン時、正規のマスターを作った直後に、ボーカルだけを抜いたカラオケ用ミックス・ダウンも行われていた。これが正真正銘のオリジナル音源によるカラオケ(純カラ)だった。大滝は「純カラはすごいですよ。何しろほぼこすっていない(テープ・ヘッドを通過していない)。しかも世代はオリジナル・マスターと同じ。つまり、この純カラをオリジナル・マスター・テープの基準クオリティに見立てて、あとはこれに一番近い音が合格ということでオーディションをしたんです。その結果、勝ち残ったのが1991年の選書盤で使ったマスターでした」[book 1]という。
マスタリングはまずアナログ信号をDSDに変換し、それをSBMダイレクト方式でPCMへ変換する方法がとられた[2]。大滝はDSDは前から良いと思っていたがガッツがないと感じており、「幸せな結末」からトライしていたものの選ばれない状態が続いていたが、世界に3台だけあるDSDからPCMへ変換するマシンの試作品が功を奏したという[book 2]。
本作のリリースに合わせてCD12枚組のボックス・セット『NIAGARA CD BOOK I』も同時発売された。W購入者特典として、2タイトルを購入して応募した人の中から抽選で「『A LONG VACATION』30周年祝賀パーティー」への招待が行われた。2011年6月5日 (2011-06-05)に開催された当日は200名の招待枠に対し、50倍の応募があったという。大滝の出演はなかったが、本人の語りによる、秘蔵デモテープを交えた『ロンバケ』が出来るまでの「ロード・トゥ・ロングバケイション」(後に2021年 (2021)リリースのボックス・セット『A LONG VACATION VOX』[注釈 3]および通常盤CD2枚組『A LONG VACATION 40th Anniversary Edition』[注釈 4]に収録)と、1977年6月20日 (1977-06-20)渋谷公会堂にて行なわれた「First Niagara Tour」のライブ映像が放映された(後に2019年 (2019)リリースの『NIAGARA CONCERT '83』初回生産限定盤に付属のDVDに収録[注釈 5])。
また“品番取得、新譜案内までいきながら企画倒れに終わった”『A LONG VACATION SINGLE VOX』は、想定されていたジャケット・デザインと曲順で、2014年 (2014)発売のCD12枚組ボックス・セット『NIAGARA CD BOOK II』に組み込まれた。