「探偵物語/すこしだけやさしく」(たんていものがたり/すこしだけやさしく)は、薬師丸ひろ子通算2枚目のシングル。1983年5月25日に東芝EMIより発売された。「探偵物語」は、薬師丸自身が出演した同タイトルの角川映画『探偵物語』の主題歌。ジャケット写真は3種類存在している。
映画『探偵物語』の主題歌と、TBS系TVバラエティ『わくわく動物ランド』のエンディング・テーマ曲が収録された両A面シングル。両曲とも作詞が松本隆、作曲は大瀧詠一によるもの。
当初は、「すこしだけやさしく」が「探偵物語」として同映画の主題歌に、「探偵物語」がカップリング曲「海辺のスケッチ」となる予定だったが、薬師丸が前者の曲調を気に入らなかったため、後者の題名を変更した上で主題歌にした[5][6]。薬師丸が熱心だった「探偵物語」の録音は15テイクにも及び、歌が良くなっていくと作曲者の大瀧も興奮したという[5]。
映画を製作した角川春樹は、南佳孝のファーストアルバム『摩天楼のヒロイン』の歌詞を気に入り、アルバムをプロデュース・作詞した松本に作詞を依頼した[7]。しかし、当時の松本はバイク事故で負傷し、足にギプスをはめた状態で2曲の歌詞を書いた[8]。そのため、歌詞にはまるで日記のように怪我の要素が入っている[8](「探偵物語」には、「身動きもできない」、「昨日からはみ出した」、「すこしだけやさしく」には、怪我と包帯[8])。
また、松本が小学4、5年生の頃、多摩川へ遠足に行った際に、同級生が川底のビンか何かの破片で足を切り、ザックリと切れた傷から大量の出血する出来事があった[9]。松本は川底にガラスの破片があるとは思えなかったこと、先生から「気を付けなさい」と注意されたこと、それらの記憶が「探偵物語」の歌詞に込められている[9]。
レコーディングに使用した東芝EMIの広い第3スタジオでは居場所がなく、薬師丸は部屋の隅に行ってしまった[10]。そんな彼女をリラックスさせようと、大瀧はピアノで発声練習を指導した[8]。
2016年3月、薬師丸は大瀧を追悼する『SONGS』に出演し、再現されたナイアガラ・サウンドをバックに「探偵物語」を歌唱した[11][12]。
音楽雑誌『レコード・コレクターズ』(2014年11月号)の特集「80年代女性アイドル・ソング・ベスト100」で13位になった[13]。大瀧のアルバム『EACH TIME』と同じ演奏陣による本曲を「雨のウェンズデイ」の姉妹曲とも指摘している[13]。
セカンドシングルである本曲で松本と大瀧に出会ったことで、薬師丸は歌うことやアルバム作りの楽しさを知り、「今後も俳優と並行しながら歌手として歌い続けたいと思った」と述べている[14]。さらに、「もし二人に出会っていなかったら、歌手との両立など考えずに、女優だけをしていたかもしれない」とも述べている[14]。
予約枚数だけで50万枚以上を記録した[15]。
前作の「セーラー服と機関銃」に続いて1位を記録。ソロでのデビューシングルからの2作連続首位は清水健太郎の「失恋レストラン」「帰らない/恋人よ」に続いて史上2人目の快挙である(後に沢尻エリカも達成する)。
オリコン週間ヒット・チャートで7週にわたって連続1位を記録した。これは、1982年にあみんが「待つわ」で、また1983年に中森明菜が「1⁄2の神話」でそれぞれ連続6週1位を獲得して以来の好記録であった。次いで1989年に工藤静香が「黄砂に吹かれて」で6週連続1位を獲得しているが、これ以降女性ソロ・アーティストの6週を超えるシングル・チャート連続1位記録は更新されていない(2008年現在)。オリコンチャートの登場週数は21週、累計84.1万枚のセールスを記録した[1]。
1983年のオリコン年間ヒットチャートでは、第4位にランクインした。前年の1982年には「セーラー服と機関銃」が年間第2位にランクインしたため、2年連続でベスト10入りを果たしたことになる。ほか、TBS系音楽番組『ザ・ベストテン』では番組出演こそ1回のみ[16]だったが、最高1位(4週連続)を記録し、13週連続でベストテンにランクインした。
全曲作詞:松本隆/作曲:大瀧詠一/編曲:井上鑑