2021年のワールドシリーズ
2021年の野球 において、メジャーリーグベースボール(MLB) 優勝決定戦の第117回ワールドシリーズ (英語 : 117th World Series )は、10月26日から11月2日にかけて計6試合が開催された。その結果、アトランタ・ブレーブス (ナショナルリーグ )がヒューストン・アストロズ (アメリカンリーグ )を4勝2敗で下し、26年ぶり4回目の優勝を果たした。
出場両球団監督の年齢はアストロズのダスティ・ベイカー が72歳、ブレーブスのブライアン・スニッカー が66歳で、合計するとシリーズ史上最高齢となる[3] 。ベイカーは監督として歴代12位、シリーズ優勝経験がない人物に限れば歴代最多のレギュラーシーズン通算1,987勝 を挙げているが[注 2] [4] 、今回も初優勝を逃した。スニッカーは、1977年に選手として入団して以来45年間ブレーブス一筋に様々な役職を担ってきたが、1995年の前回優勝時 はメジャーのスタッフから外れていたため[5] 、今回が自身にとって初の優勝となった。シリーズMVP には、第1戦・第4戦・第6戦の3試合で決勝本塁打 を放つなど、6試合で打率 .300・3本塁打・6打点 ・OPS 1.191という成績を残したブレーブスのホルヘ・ソレア が選出された。
2022年 から、MLBは指名打者(DH)制度 をアメリカンリーグだけでなくナショナルリーグにも導入した。ワールドシリーズにおけるDH制は1986年 以降、アメリカンリーグ球団の本拠地球場で行われる試合にのみ採用されていたが[注 3] 、2022年 以降は開催地に関係なく全試合で採用される[6] 。したがって、DH制なしで行われる試合は今シリーズの第5戦が最後となった。その試合で最後に打席に立った投手は、アストロズのケンドール・グレーブマン だった[7] 。
ワールドシリーズまでの道のり
両チームの2021年
10月22日にまずアメリカンリーグ でアストロズ(西地区 )が、そして23日にはナショナルリーグ でブレーブス(東地区 )が、それぞれリーグ優勝 を決めてワールドシリーズへ駒を進めた。
アストロズはエース のジャスティン・バーランダー をトミー・ジョン手術 で、正中堅手ジョージ・スプリンガー をFA 移籍で失ってシーズン開幕を迎えた。しかもこの年は、シーズンを通して敵地でブーイング を浴び続けた。というのも、2017年 ・2018年 に電子機器を用いた不正な方法でサイン盗み をしていたことが2019年のワールドシリーズ 敗退後に発覚し、2020年 は新型コロナウイルス感染症(COVID-19) の影響で全試合無観客開催 だったため、2021年が不正発覚後に観客の前で試合をする初のシーズンだったからである[8] 。それでもアストロズは勝ち星を積み重ねた。序盤はオークランド・アスレチックス に先行を許したものの、6月13日からの11連勝で逆転して地区首位に立ち、前半戦終了時には55勝36敗で2位に3.5ゲーム差 をつけた。得点数と打率 でリーグトップの強力打線がチームを牽引した[9] 。後半戦に入ってもアスレチックスやシアトル・マリナーズ を寄せ付けず、9月30日に2年ぶりの地区優勝を決めた[8] 。平均得点5.33はリーグ最高、防御率 3.78はリーグ4位。打線はOPS リーグ上位20人中5人を擁する層の厚さで得点を奪い、投手陣もバーランダーを欠きながら先発ローテーション の陣容をほぼ固定し多くのイニングを消化していった[10] 。チームはカルロス・コレア を中心に団結し、激しい憎悪を向けられた敵地でも44勝37敗と勝ち越した[11] 。地区シリーズ ではシカゴ・ホワイトソックス を3勝1敗で[12] 、リーグ優勝決定戦 ではボストン・レッドソックス を4勝2敗で[13] 、それぞれ下した。
ブレーブスはシーズン開幕から4連敗を喫し、その後も勝率.500をなかなか超えられないまま、前半戦は44勝45敗と負け越した。その間の5月には、捕手トラビス・ダーノー が左手親指靭帯損傷 で故障者リスト 入りし、左翼手マーセル・オズナ はドメスティックバイオレンス で逮捕され休職に追い込まれる。さらに前半戦終了前日にも、右翼手ロナルド・アクーニャ・ジュニア が右膝前十字靭帯断裂 の大怪我を負ってシーズンを終えた。ただ、こうして打線の主軸が相次いで戦列を離れながらも、東地区の勝ち星が他地区より伸びなかったため、地区首位ニューヨーク・メッツ とのゲーム差は4.0と挽回可能な程度にとどまっていた[14] 。7月30日のトレード 期限までには外野手の補強を重点的に行い、ジョク・ピーダーソン 、ホルヘ・ソレア 、アダム・デュバル 、エディ・ロザリオ を立て続けに獲得する。翌31日から6戦5勝で初めて勝率.500を超えると、8月15日には地区首位に浮上した[15] 。後半戦はメッツが29勝45敗と失速したこともあり[16] 、9月30日にブレーブスの地区4連覇が決まった[15] 。平均得点4.91はリーグ3位、防御率3.89はリーグ4位。オースティン・ライリー の成長などで故障者の穴を埋めた打線や、チャーリー・モートン とマックス・フリード を中心とする投手陣の頑張りに加え、5月下旬から守備シフト を積極的に用いるようになったことも功を奏した[17] 。地区シリーズ ではミルウォーキー・ブルワーズ を3勝1敗で[18] 、リーグ優勝決定戦 ではロサンゼルス・ドジャース を4勝2敗で[19] 、それぞれ下した。
両チームとも、前GM が在任時の不祥事で職を追われ、他球団から招請した新GMのもとで今シリーズ出場を果たしたという共通点を持つ[20] 。アストロズは前述の通り、電子機器を用いた不正なサイン盗みが発覚し、当時のGMジェフ・ルーノウ が2020年1月、MLB機構によって1年の資格停止処分を下されたうえに球団から解雇された。後任にはタンパベイ・レイズ 編成副代表のジェームズ・クリック が就任した。ブレーブスは、GMのジョン・コッポレラ が海外の有望アマチュア選手の獲得に際し、MLB機構が設定する契約金 上限を超過していないように見せかけて裏で金銭を渡すなど腐敗を助長したとして、2017年11月にMLB機構によって永久追放処分を受けた。その後、ドジャース編成副代表のアレックス・アンソポロス を後任に据えた。クリックもアンソポロスもチームをいったん解体して一から作り直したわけではなく、両チームとも主力選手の多くは前GMが獲得している[21] 。
ホームフィールド・アドバンテージ
ワールドシリーズの第1・2・6・7戦を本拠地で開催できる "ホームフィールド・アドバンテージ" は、レギュラーシーズンの勝率がより高いほうの球団に与えられる。ポストシーズン 進出10球団のアドバンテージ優先順位は以下の通り。
※1 同一リーグ内の地区シリーズ やリーグ優勝決定戦 では、勝率に関係なく地区優勝球団はワイルドカード球団より上位に位置づけられるが、ワールドシリーズだけはこれに当てはまらない。
※2 シーズン162試合の勝敗が同じ、かつこの年の直接対決がない場合は、それぞれの球団が同地区他球団相手に残した成績が決め手となる。アストロズがアメリカンリーグ西地区4球団相手に49勝27敗・勝率.645だったのに対し、ブルワーズはナショナルリーグ中地区4球団相手に47勝29敗・勝率.618だったので、アストロズが上位となる。
※3 レッドソックスがヤンキースに対し、シーズン中の直接対決19試合を10勝9敗と勝ち越しているため、レッドソックスが上位となる。
10月22日にまずアストロズがワールドシリーズ進出を決めた。しかしこの時点では、ナショナルリーグ のリーグ優勝決定戦 が未決着だった。対戦していたのは、優先順位がアストロズより上のドジャースと、アストロズより下のブレーブスである。したがって、アストロズとナショナルリーグ優勝球団のどちらにアドバンテージが与えられるかは、まだ決まらなかった。翌23日、ブレーブスがリーグ優勝を果たし、アドバンテージがアストロズへ与えられることとなった。
両チームの過去の対戦
2007年 9月28日の対戦の様子。二塁手 がアストロズのクレイグ・ビジオ 、走者がブレーブスのマーク・テシェイラ
アストロズは1962年 、ナショナルリーグ の新球団 "ヒューストン・コルトフォーティファイブス" として創設され、2012年 シーズン終了後にアメリカンリーグ へ転籍した。したがって1962年から51年間、ブレーブスとコルトフォーティファイブス/アストロズは同じリーグに所属し毎年対戦していた。その期間のレギュラーシーズン通算対戦成績は、ブレーブスの379勝321敗・勝率.541である[22] 。このうち、1968年 9月7日の試合では、ブレーブスの新人ダスティ・ベイカー がメジャー初出場を果たした。53年後の今シリーズでは、ベイカーはアストロズの監督として古巣ブレーブスと対戦する[23] 。アストロズがアメリカンリーグへ転籍したあとは、両球団の対戦はインターリーグ として数年に一度しか行われなくなった。転籍後の対戦は2014年 に3試合、2017年 に4試合の計7試合が組まれており、対戦成績はアストロズの5勝2敗・勝率.714である[24] 。直近の2017年は、5月にアストロズの本拠地ミニッツメイド・パーク で2試合、7月にブレーブスの本拠地サントラスト・パーク (球場名は当時)で2試合、というように分けて行われ、アストロズが全勝している。
1969年 に東西2地区制が導入されると、アストロズとブレーブスはともに西地区 に割り振られた。当時は地区優勝しないとポストシーズン へ進めない仕組みだったため、両チームがポストシーズンで対戦することはなかった。1993年 シーズン終了後に地区割の再編が実施され、両チームのポストシーズンでの対戦が実現しうるようになった。実際に実現したのは5度、全て地区シリーズ での対戦で、1997年 から2005年 までの9季内に集中している。この期間はちょうど、ブレーブスによる1991年 から2005年にかけての地区14連覇と重なる[注 4] [25] 。対戦の結果、1997年 ・1999年 ・2001年 はブレーブスが、2004年 ・2005年 はアストロズが、それぞれシリーズを制してリーグ優勝決定戦 へ進んだ。このうち、1999年のシリーズ最終戦は、アストロズにとって当時の本拠地球場アストロドーム での最後の試合となった[26] 。また、2005年のシリーズ最終戦は、ポストシーズン史上最長の延長18回までもつれた末に、アストロズのクリス・バーク が史上7人目となるポストシーズンのシリーズ勝利決定サヨナラ本塁打 を放った[25] 。ポストシーズンにおける両チームの対戦はこの試合以来、今シリーズで16年ぶりに実現する[26] 。
ロースター
両チームの出場選手登録(ロースター) は以下の通り。
※1 第1戦終了後にモートンが故障のためロースターを外れ、第2戦からはデービッドソンが代わりに登録された。
※2 第3戦終了後にカストロがMLBの新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 対策規定に則りロースターを外れ、第4戦からはスタッブスが代わりに登録された。
※3 第5戦終了後にアドリアンサが妻の出産 に立ち会うため父親産休リストに入り、第6戦からはカマルゴが代わりに登録された。
アストロズはリーグ優勝決定戦 のロースターから、外野手のジェイク・マイヤーズ に代えて内野手のマーウィン・ゴンザレス を登録した。マイヤーズは地区シリーズ 第4戦の守備中に外野フェンスへ激突して負傷退場し、リーグ優勝決定戦ではロースター入りしたものの1試合も出場しなかった。ゴンザレスはスイッチヒッター であることや複数のポジションをこなせること 、4年前のワールドシリーズ 出場経験などを買われて、今ポストシーズンで初めてロースター入りした[27] 。ただ、この年ゴンザレスの打撃は右投手相手の打率 .177・OPS .521に対し左投手相手だと打率.250・OPS.713だったが、アストロズの先発ラインナップで代打 を出せそうなタイミングは右打者のところにしかないため、代打起用はそう多くはならないとみられる[28] 。
ブレーブスはリーグ優勝決定戦 終了時のロースターから投手と野手をひとりずつ入れ替え、ジェイコブ・ウェブ とヨハン・カマルゴ を外してカイル・ライト とテレンス・ゴア を加えた。リーグ優勝決定戦では、ウェブは救援登板2試合のうち第5戦で1.0イニング4失点を喫し、カマルゴは代打4打席で無安打 2三振 に終わっていた。そのシリーズ途中で先発ローテーション 4番手のワスカル・イノア が肩の炎症 により離脱したことから、ライトにはその穴埋めとしてイニングを消化することが期待される[29] 。ゴアはこの年「生涯の夢」だったというブレーブス入団を果たし[30] 、レギュラーシーズン中は傘下マイナーリーグ のAAA級で過ごしたものの、ポストシーズンで代走 要員としてメジャーへ昇格、地区シリーズ 第2戦の1試合に出場していた[31] 。
今シリーズのロースターには、シリーズ史上初あるいは史上最多となることがらが複数ある。
2015年6月のドラフト では、ヴァンダービルト大学 のダンズビー・スワンソン が全体1位でアリゾナ・ダイヤモンドバックス に、ルイジアナ州立大学 のアレックス・ブレグマン が全体2位でアストロズに、それぞれ指名されて入団した。スワンソンは同年12月にトレード でブレーブスへ移籍し、翌2016年 には23日違いで両選手ともメジャー初出場を果たした[5] 。今シリーズは、同じ年のドラフト全体1位指名選手と全体2位指名選手が対戦する史上初のシリーズとなる[32] 。
アストロズではユリ・グリエル とヨルダン・アルバレス 、それにアレドミス・ディアス の3人が、ブレーブスではギジェルモ・エレディア とホルヘ・ソレア の2人が、キューバ 出身である。同国出身選手が5人ロースター入りするというのは、1965年 の4人を上回りシリーズ歴代最多となる[注 5] [33] 。
シリーズ開幕時点でのロースターのうち、アストロズではブレグマンが、ブレーブスではジョク・ピーダーソン とマックス・フリード の2人が、ユダヤ系アメリカ人である。ユダヤ系アメリカ人選手が3人ロースター入りするというのは、1959年 に並ぶシリーズ歴代最多タイだった[注 6] 。その後、アストロズのジェイソン・カストロ がMLBの新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 対策規定に則りシリーズ途中でロースターを外れ、ユダヤ系アメリカ人のギャレット・スタッブス が代わりに登録されたことで、記録が更新された[34] 。
開幕前の予想
MLB.comが所属記者・アナリスト76人にどちらがシリーズを制するか予想させたところ、アストロズ勝利予想が52人に対しブレーブス勝利予想が24人という結果となった[35] 。ESPN も同様の企画を自社の記者15人で実施し、アストロズ勝利を予想したのが12人と、ブレーブス勝利予想3人の4倍にのぼった[36] 。『ガーディアン 』国際版の企画では、記者3人のうちふたりがアストロズを、ひとりがブレーブスを支持した[37] 。他のメディアでは、両者への支持が拮抗した。CBSスポーツ では記者4人がふたりずつ[38] 、『USAトゥデイ 』では記者6人が3人ずつ[39] 、『スポーツ・イラストレイテッド 』でも記者6人が3人ずつ[40] 、といずれもアストロズ支持とブレーブス支持が半々に分かれた。
試合結果
2021年のワールドシリーズは10月26日に開幕し、途中に移動日を挟んで8日間で6試合が行われた。日程・結果は以下の通り。
日付
試合
ビジター球団(先攻)
スコア
ホーム球団(後攻)
開催球場
10月26日(火)
第1戦
アトランタ・ブレーブス
6 -2
ヒューストン・アストロズ
ミニッツメイド・パーク
10月27日(水)
第2戦
アトランタ・ブレーブス
2-7
ヒューストン・アストロズ
10月28日(木)
移動日
10月29日(金)
第3戦
ヒューストン・アストロズ
0-2
アトランタ・ブレーブス
トゥルーイスト・パーク
10月30日(土)
第4戦
ヒューストン・アストロズ
2-3
アトランタ・ブレーブス
10月31日(日)
第5戦
ヒューストン・アストロズ
9 -5
アトランタ・ブレーブス
11月0 1日(月)
移動日
11月0 2日(火)
第6戦
アトランタ・ブレーブス
7 -0
ヒューストン・アストロズ
ミニッツメイド・パーク
優勝:アトランタ・ブレーブス(4勝2敗 / 26年ぶり4度目)
第1戦 10月26日
第2戦 10月27日
第3戦 10月29日
第4戦 10月30日
第5戦 10月31日
第6戦 11月2日
セレモニー
第2戦開始前の式典でアメリカ合衆国 国歌 『星条旗 』を歌う海軍 一等兵曹ジアバニー・ウォーカー
試合前のアメリカ合衆国 国歌 『星条旗 』独唱と始球式 を行った人物は、それぞれ以下の通り。
第3戦の試合前、ふたつの始球式が別個に行われた。そのうち実業家の3人は、いわゆる "スモールビジネス " を立ち上げた人物である。MLBとそのスポンサー 企業であるマスターカード は、この年7月のオールスターゲーム に合わせてスモールビジネス・コンテストの開催を発表した[54] 。このコンテストはジョージア州 アトランタ とマサチューセッツ州 ボストン 、カリフォルニア州 ロサンゼルス の3都市で開催され、それぞれの優勝者へ特典として賞金1万ドルやマスターカードからの経営コンサルティング 受講権のほか、ワールドシリーズでの始球式権が贈呈された[46] 。3人のうち、結果的にはシリーズ開催地となるアトランタでコンテストを制したのはジャネット・カッツである。彼女はエルサルバドル 移民で、夫ケンとともにププサ などを供するレストラン を営んでいる。夫婦のうちどちらが始球式で投じるかについて、ジャネットは「率直に言うと議決権 の51%を握っているのは私なのよ」と冗談めかして話した[55] 。ケンはブレーブスのファンとして「投手に怪我人が出たので厳しい戦いになるが、勝ってほしい」とチームを心配していた[54] 。
第4戦で始球式を務めたエリザベス・オコナーも始球式権を贈呈された人物である。MLBは悪性腫瘍(癌) 研究支援の慈善団体 "スタンド・アップ・トゥー・キャンサー "(SU2C)に協賛しており、この年はシリーズ第4戦の始球式権をチャリティオークション にかけた。その結果、オークランド・アスレチックス 名誉会長のルー・ウルフ (英語版 ) が50万ドルで落札して、SU2Cと共同で始球式の人選を行いオコナーに白羽の矢を立てた[49] 。オコナーはブレーブスのファンであり、執刀医ダニエル・ボンホフ (英語版 ) が「1年以上生きられるのも6人に1人」というほど進行した膵癌 ――発見されたのは第2子出産 の2週間後だった――を患いながらも、化学療法 と外科手術 で克服した経験を持つ[56] 。
第6戦の始球式に登場した修道女 メアリー・オーガスティン・ファムは、アストロズの地元テキサス州 ヒューストン にある無原罪懐胎管区ドミニコ修道女会に所属する。同会は9人の修道女によって1978年に設立された。9人中7人はベトナム戦争 末期のサイゴン陥落 によってベトナム から逃れてきた修道女であり、同会はベトナム系移民の支援や低中所得世帯向けカトリック 系保育学校 の運営などを行ってきた[57] 。これを称えるため、同市内の実業家 ジム・マッキンベイル が試合の入場券 を自腹で購入し、彼女らを試合へ招待するようになった。マッキンベイルが経営する家具 店ギャラリー・ファーニチャーの施設内にも保育学校があり、同会がそこで週1回の子供向け聖書 教育を実施しているほか[58] 、マッキンベイルも同会へ家具を寄贈していた[59] 。アメリカンリーグ優勝決定戦 の初戦にマッキンベイルが彼女たちを55人ほど招待し、その試合でアストロズが逆転勝ちを収めたことで、彼女たちは "反撃の修道女"(英語 : Rally Nuns )と呼ばれるようになった[58] 。同シリーズの第6戦でも修道女のうちのひとり、メアリー・キャサリン・ドゥが始球式を行い、そこでカルロス・コレア の決めポーズを真似したことでファンの心をつかんだ[注 7] [60] 。彼女たちが観戦に訪れたときアストロズは、同シリーズ2試合ではいずれも勝利し[59] 、続くワールドシリーズでは第1戦で敗れたあと第2戦では勝利していた[61] 。そしてこの第6戦でアストロズは敗れ、4年ぶりの優勝とはならなかったが、マッキンベイルは「彼女たちは彼女たちで楽しんでたし、ファンも彼女たちと楽しい時間を過ごした。とてもいいことだった」と喜んだ[58] 。
テレビ中継
アメリカ合衆国
アメリカ合衆国 におけるテレビ中継はFOX が放送した。実況はジョー・バック が、解説はジョン・スモルツ が、フィールドリポートはケン・ローゼンタール とトム・バードゥッチ が、それぞれ務めた。バックのシリーズ中継出演は通算24回目で、これはかつての解説者ティム・マッカーバー と並ぶ歴代最多タイである[62] 。また試合前にはケビン・バークハート 進行のコーナーがあり、デビッド・オルティーズ やアレックス・ロドリゲス 、フランク・トーマス が出演して試合の見所などを語った。今シリーズ6試合でFOXが得た広告収入は総額2億ドル前後とみられる[63] 。CM 出稿状況について今シリーズを前年 と比較すると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19) の流行にともなう製品供給網混乱の影響を受けた自動車産業 が半減させたのに対し、ソーシャル・ネットワーキング・サービス のTikTok や暗号通貨 取引所のFTX などが大幅に増やすという傾向がみられた[64] 。
全6試合の平均視聴率は6.5%で、前年から1.3ポイント上昇した[65] 。シリーズを通しての、全米および出場両チームの本拠地都市圏における視聴率等は以下の通り。
試合
日付
全米
ジョージア州アトランタ
テキサス州ヒューストン
視聴率
占拠率
視聴者数
視聴率
占拠率
視聴率
占拠率
第1戦[66] [67]
10月26日(火)
6.1%
15%
1081万人
26.0%
49%
25.2%
48%
第2戦[68] [67]
10月27日(水)
5.8%
14%
1028万人
23.3%
42%
27.4%
50%
第3戦[69] [67]
10月29日(金)
6.1%
16%
1123万人
26.3%
48%
24.2%
49%
第4戦[70] [67]
10月30日(土)
5.7%
15%
1051万人
26.0%
49%
23.6%
50%
第5戦[70] [67]
10月31日(日)
7.4%
18%
1364万人
31.4%
56%
26.4%
50%
第6戦[71] [67]
11月0 2日(火)
7.9%
18%
1397万人
33.5%
54%
25.6%
47%
平均[65]
6.5%
16%
1175万人
不明
不明
不明
不明
第6戦の7回表、フレディ・フリーマン のソロ本塁打 でブレーブスが7-0とリードを広げた。試合がこのまま進めばブレーブスの勝利でシリーズが決着し、フリーマンはブレーブスとの契約を満了してFA となる。この場面でバックは以下のように実況した。
1-1 pitch. Flies into left center field… well hit… back at the wall… it is gone! A home run for Freddie Freeman! How about that!? In what might be his last at-bat for the Atlanta Braves he just made it 7-0 with a shot into left-center field.
(
カウント 1-1からの投球、
打球 は左中間へ上がりました…打球が伸びる…
外野手 が下がる…入りました! フレディ・フリーマンのホームラン! なんということでしょうか!? これがブレーブスでの最後の
打席 になるかもしれない、その場面で左中間へ一発を打ち込んで試合を7-0としました)
— ジョー・バック[72]
これに対し、フリーマンの残留を信じるブレーブスのファンから「せっかくの場面が台無し」「ブレーブスがフリーマンを流出させるわけがない」などとTwitter 上で批判が相次ぎ、炎上 状態となった[73] 。ただ、この試合の直後にはフリーマン自身も残留希望を明言していたものの、契約交渉は結局まとまらず、この試合を最後にフリーマンはロサンゼルス・ドジャース へ移籍することとなった[74] 。またバックも、残り1年となっていたFOXとの出演契約を破棄してESPN へ移籍したため、ワールドシリーズ実況を行うのは今シリーズが最後となった[75] 。
日本
日本 での生中継の放送は、日本放送協会(NHK) の衛星放送 チャンネル "BS1 " で行われた。この年の放送では、アメリカ合衆国 在住の高橋尚成 が第6戦を除く5試合で球場から随時リポートしたが、実況アナウンサーと解説者は前年 同様に現地へは行かず、現地からの映像をスタジオで観ながら実況・解説を行う形式がとられた。上原浩治 は第3戦の中継に解説者として出演した翌日、第4戦を映像観戦しながら、現地にいる高橋を羨むつぶやきをTwitter に投稿した[82] 。
脚注
注釈
出典
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