相鉄12000系電車 (そうてつ12000けいでんしゃ)は、2019年 (平成 31年)4月20日 に営業運転を開始した相模鉄道 (相鉄)の通勤型電車 。
本項では個別の編成の表記について、同社での公式文書等で用いられるものに基づき「横浜方先頭の車両番号×編成両数」(例:12101×10)とする。
概要
本線 およびいずみ野線 に加え、2019年(令和 元年)11月30日 開業の相鉄新横浜線 の一部区間(西谷駅 - 羽沢横浜国大駅 間)およびその先のJR直通線 での運用を想定し投入された。同年度末[ 注 1] までに全6編成[ 注 2] が製造されている[ 6] [ 7] 。
相鉄デザインブランドアッププロジェクト の一環として、開発コンセプトに「安全×安心×エレガント」を掲げており、デザイン設計は20000系 に引き続き、株式会社PRODUCT DESIGN CENTER(代表:鈴木啓太 )が手がけている[ 6] [ 8] 。本系列車両は、相鉄の車両では2016年の「9000系リニューアル車両 」、2018年の「20000系」に続き3例目となるグッドデザイン賞 (2019年度)を受賞した[ 9] [ 10] 。
車両の製造は総合車両製作所 が行っており、第1編成は2018年 (平成30年)12月18日 に同事業所の回送線 から搬出された後、逗子駅 より甲種輸送 が行われ[ 11] 、3日後の同月21日 には全車両がかしわ台車両センター に到着した[ 12] 。
その後、2019年(平成31年)4月13日 に相模大塚駅 構内で撮影会 [ 13] 、翌14日 に一般公募による試乗会が開催され[ 14] 、同月20日には海老名駅 10時53分発の急行横浜 行きより営業運転が開始された[ 15] 。新型車両としては平成最後のデビューとなった[ 4] [ 注 3] 。
車両概説
JR線直通列車に使用されるため、車両の仕様はJR東日本E233系電車 と極力合わせられており、同じく同系列をベースにしている11000系 と同一の基本仕様になっている[ 16] 。
車体
車体はE233系・E235系 および11000系に準じた幅広車体 (2,950mm) のオールステンレス車両 (先頭部を除く)で、総合車両製作所製のsustina S24シリーズを採用しており[ 17] [ 18] 、E235系に準じた雨どい が外側に出ない車体断面となっている。先頭部については独特な形状であることから、加工性に優れる普通鋼 製とされた[ 3] 。
20000系 とは異なり、地下鉄 路線に直通することがないため正面は非貫通構造を採用している[ 3] [ 16] 。
デザインは能面 の「獅子口」をイメージした先頭形状に「YOKOHAMA NAVYBLUE 」の一色塗りを採用する[ 18] など、20000系との共通点が多く見られる。
車内設備
この節の
加筆 が望まれています。
(2019年4月 )
灰色 系を基調として荷棚 や袖仕切りに金属 とガラス を多用する相鉄デザインブランドアッププロジェクト に即したデザインである。
前年に登場した20000系と共通点が多く(「相鉄20000系電車#車内設備 」も参照)、アシストレバー付きの車両間貫通扉 や自社開発の卵形つり革 の採用、始発駅などで乗客による客用ドアの開閉操作を可能とする個別ドアスイッチ (半自動機能)の導入、朝〜日中と夜で色が変わる調色調光式LED照明 、空気清浄機 (パナソニック 製「ナノイー」)、Wi-Fi接続サービス 機器(Wi-Fi 利用には通信事業者 との契約が必要だった。2023年3月31日をもってサービス終了[ 19] )の設置、通常より座席を少し高くしたユニバーサルデザイン シート[ 注 4] および車椅子 ・ベビーカー 用スペースとなるフリースペースの全車両導入、車内鏡 の設置が挙げられる。
20000系と異なる点としては、車内客車ドア上部に設置された2基のLCD (案内・運行情報表示用と広告 表示用の17インチ案内表示器 「Sotetsu Infovision System (SIS)」)や11000系と同じく車両に対して並行に取り付けられたラインデリア (補助送風機 /横流ファン)など設置位置に変更点が見られるほか、20000系の第1編成で省略されたユニバーサルデザインシート上の荷棚も本形式では設置されていること、側窓のブラインド (遮光カーテン)が省略された[ 3] [ 6] [ 16] [ 20] 点が挙げられる。
この他、本形式で初めて前方監視カメラ および車内防犯カメラが採用された[ 6] [ 16] (その後、20000系や21000系にも導入)。
車内全景
優先席とフリースペース
ユニバーサルデザインシートの一般席
LCD式車内案内表示器と防犯カメラ
車内の半自動スイッチ
車外の半自動スイッチ
乗務員室
運転台 は11000系と同様に速度計 ・圧力計などの計器類や表示灯類を廃し、これらを3枚の液晶モニターに表示するグラスコックピット 構造を採用している[ 21] 。主幹制御器 は左手操作式のワンハンドルマスコンである[ 21] 。車両情報制御装置 には、直通先であるJR東日本と同様のTIMS を採用している[ 22] 。
主要機器
クハ12000の床下機器の一部左から、ATACS車上無線装置・ATC/P統合型車上装置・TIMS箱
車体や車内設備にはE235系に準ずる仕様や独自仕様が見られるのに対し、主要機器については埼京線のE233系7000番台 に極力合わせられている。そのため編成内の機器配置が11000系とは異なる。
主制御器 は三菱電機 製[ 21] 、IGBT 素子によるVVVFインバータ 装置 (ST-SC85A1[ 22] ) となる。1つのインバータで4台の電動機を制御するユニットを2群備える1C4M2群方式で、M1・M3・M5に各1台搭載する。
制動装置は応荷重装置 付きの回生ブレーキ 併用電気指令式 空気ブレーキ 方式としている(停止電気ブレーキ 対応)。常用ブレーキ は編成一括でブレーキ制御を行う編成ブレーキ制御としている。この他にも非常ブレーキ 、直通予備ブレーキ 、耐雪ブレーキ 、抑速ブレーキ を装備している[ 22] 。
台車 は軸梁式ボルスタレス台車とし、牽引装置は1本リンク式で11000系やE233系とほぼ同等だが、軸箱支持装置の吊り金具が変更され、形式末尾に-1が付与されている。排障器形状は従来車と異なり、E233系などに揃えられている[ 注 5] 。形式は電動台車のST-DT71A-1と付随台車のST-TR255A-1を基本に、両先頭車の運転台側がST-TR255-1[ 注 6] 、重量の軽いM6車はST-DT71B-1となっている。基礎ブレーキ装置は、電動台車がユニット式踏面ブレーキ 、付随台車が直動式[ 注 7] 踏面ブレーキ とディスクブレーキ の併用としている[ 22] 。
主電動機 は出力140 kW の自己通風型冷却式三相かご型誘導電動機 (ST-MT75[ 22] ) 、駆動装置はTD継手式平行カルダン駆動方式 で歯車比 は6.06である。
集電装置 はE233系7000番台に搭載されているPS33Dではなく、東洋電機製造 製のシングルアームパンタグラフ (PT7103-E[ 22] ) を採用した。電磁かぎ外し・ばね上昇・空気下降式で上昇検知装置を備えており、10000系や11000系に搭載されるものと同一である。M1・M3・M5の横浜方に常用のものを搭載、M3の海老名方に予備を搭載している。
補助電源装置は東洋電機製造 製で定格出力は三相交流 440 V ・260 kVA [ 21] 、IGBT 素子による待機2重系のSIV装置 (ST-SC91) となる[ 21] 。M2・M4に各1台搭載する[ 22] 。
空気圧縮機 は、ドイツ ・クノールブレムゼ [ 21] 製で吐出量1,300 L/minのオイルフリーレシプロ式 (VV180-T-851) を採用、M2・M4・M6に各1台搭載する[ 22] 。
冷房装置 は屋上集中式 で58.1 kW (50,000 kcal /h) のST-AU726A-G4が各車に1台搭載されており、カレンダー 機能(季節 など)と乗車率 の検知を基に冷房 ・暖房 ともに年間を通しての全自動運転を基本としている[ 22] 。
保安装置はATS-P とATACS を搭載[ 22] 、床下機器箱はATC/P統合型車上装置に集約している。また相鉄の車両では初めて、登場時よりTASC装置 を搭載した。
導入時からの変更点
種別・行先表示
車内
案内表示器 (SIS )における全種別表記の路線図の情報を廃止(2019年11月半ばより)。
2019年11月30日のダイヤ改正にあわせ、女性専用車 が従来の4号車から海老名方先頭車(本系列では10号車)へ変更された。同時にステッカーの内容も変更となりJR線直通用の案内が追加、さらに本系列ではJR線内用も別で貼られている。
2019年11月30日より、自動放送装置の英語放送にナンバリング放送が追加された。
編成表
10両編成 [ 18]
入籍日[ 23]
号車
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
形式
クハ12100 (Tc2)
モハ12200 (M6)
< モハ12300 (M5)
モハ12400 (M4)
< >モハ12500 (M3)
サハ12600 (T2)
サハ12700 (T1)
モハ12800 (M2)
< モハ12900 (M1)
クハ12000 (Tc1)
搭載機器
SB
CP
VVVF
SIV,CP
VVVF
SIV,CP
VVVF
SB
車内設備
♿︎
♿︎
♿︎
♿︎
♿︎
♿︎
♿︎
♿︎
♿︎弱冷房車
♿︎女性専用車
自重
31.6 t
31.1 t
33.1 t
34.0 t
34.0 t
29.7 t
30.3 t
34.0 t
33.4 t
31.3 t
定員
140
159
159
159
159
159
159
159
159
140
座席定員
39
51
51
51
51
51
51
51
51
39
車両番号
12101×10
12101
12201
12301
12401
12501
12601
12701
12801
12901
12001
2019.02.26
12102×10
12102
12202
12302
12402
12502
12602
12702
12802
12902
12002
2019.05.20
12103×10
12103
12203
12303
12403
12503
12603
12703
12803
12903
12003
2019.06.24
12104×10
12104
12204
12304
12404
12504
12604
12704
12804
12904
12004
2019.07.16
12105×10
12105
12205
12305
12405
12505
12605
12705
12805
12905
12005
2019.09.25
12106×10
12106
12206
12306
12406
12506
12606
12706
12806
12906
12006
2020.02.25
1号車
2 - 8号車
9号車
10号車
運転台
♿︎
優
UD
優
UD
優
運転台
弱冷房車
女性専用車
優
♿︎
優
♿︎
優
♿︎
凡例
運用
相鉄線内では特急 ・通勤急行 ・快速 ・各停 に使用される。現在、JR線直通の4運用(運行番号70 - 73)は本系列のみで運転される。そのため常時4編成が稼働、また残る2編成についても自社線内完結運用に入ることがある。なお相鉄新横浜線の羽沢横浜国大駅 - 新横浜駅での運用については設定されていない。
JR線内での定期列車としての運転は、当初は新宿駅 [ 注 8] までであったが、2021年3月13日のダイヤ改正以降は平日のみ池袋駅 まで乗り入れる[ 26] 。埼京線池袋以北および川越線 [ 注 9] やりんかい線 への乗り入れは通常は行われない[ 27] 。
このほか直通開始前の試運転の際、品川駅 、根府川駅 (東海道貨物線経由)[ 28] 、川越車両センター などへ乗り入れた実績がある。
脚注
注釈
^ 2019年度は5月1日 に平成から令和へ改元 されたため、元号 表記の場合、第2編成以降は令和元年度に導入となる。なお、相鉄12000系(第1編成)は全国の鉄道で平成最後の新型車両デビューとなった[ 4] 。※車外に取り付けられている総合車両製作所 (J-TREC) の製造年銘板 では、第1編成が「平成31年」、第2〜4編成が「2019」(西暦 表記)、第5編成が「令和元年」、第6編成が「2020」(再び西暦表記)となっている(車内の銘板〈ステッカー〉は全編成とも西暦表記)。
^ 相鉄・JR直通線の運用は4編成で行い、残りの2編成については予備車とする方針[ 4] 。また、このうち5編成は代替車両の置き換えも目的とした増備で、残りの1編成は開業に伴う純粋な増備とされている[ 5] 。
^ 譲渡車両も含めた平成最後の新形式車両は2019年4月27日にデビューした養老鉄道 の7700系 である。また、令和最初に営業運転を開始した新型車両は2019年5月18日にデビューしたWILLER TRAINS のKTR300形 である。
^ 座席の高さは20000系のものより少し (30mm) 低くした[ 3] 。
^ 相鉄形ATSの使用を終了したため。
^ 踏面ブレーキがユニット式・排障器あり・速度発電機が1つ多いなどの差異がある。
^ ただし、ST-TR255-1はユニット式。
^ 新宿駅には同年9月2日に試運転で初めて乗り入れた[ 25] 。
^ 代走などの場合および回送列車による板橋駅電留線入線の場合[ 26] を除く。
出典
関連項目
「YOKOHAMA NAVYBLUE」塗装車両
外部リンク