『月』(つき)は、辺見庸原作の日本の小説。2017年にKADOKAWA(のち角川文庫)より発表。2023年に映画化された。
あらすじ
映画
2023年10月13日に公開された。監督・脚本は石井裕也、主演は宮沢りえ[2][3]。企画・エグゼクティブプロデューサーの河村光庸は本作が遺作となった[4]。PG12指定。
あらすじ (映画)
元・有名作家の堂島洋子は、深い森の奥にある重度障害者施設で職員として働き始める。だが洋子は働き始めて早々、他の職員による入所者への心ない扱いや暴力を目の当たりにする。洋子はそれを訴えるが聞き入れてもらえず、自分ではどうすることもできずに無力感を募らせる。
だが、彼女の同僚で絵の好きな青年・さとくんはそのことについて、彼女以上に憤っていた。さとくんは正義感や使命感を徐々に増幅させていき、ついに狂気の行動に走る…。
※原作は障害者の一人称で語られる。堂島洋子は映画オリジナルの主役。
キャスト
スタッフ
- 原作:辺見庸『月』(角川文庫刊)
- 監督・脚本:石井裕也
- 音楽:岩代太郎
- 企画・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
- 企画:角川歴彦
- 製作:伊達百合、竹内力
- プロデューサー:長井龍、永井拓郎
- アソシエイトプロデューサー:堀慎太郎、行実良
- 撮影:鎌苅洋一
- 照明:長田達也
- 録音:高須賀健吾
- 美術:原田満生
- 美術プロデューサー:堀明元紀
- 装飾:石上淳一
- 衣装:宮本まさ江
- ヘアメイク:豊川京子、千葉友子(宮沢りえ)
- 特殊メイク・スーパーバイザー:江川悦子
- 編集:早野亮
- VFXプロデューサー:赤羽智史
- 音響効果:柴崎憲治
- 特機:石塚新
- 助監督:成瀬朋一
- 制作担当:高明
- キャスティング:田端利江
- 制作プロダクション・配給:スターサンズ
- 制作協力:RIKIプロジェクト
- 製作:『月』製作委員会
製作
監督石井裕也は、プロデューサーの河村光庸の企画を聞いて、障害者施設の問題は「この問題はあらゆる社会問題に共通している。逃げることはできないと思いました」だと考え、作品を引き受けた。その後、河村が死去し製作陣がすることになるが、最終的に河村の遺志を継ぎたいという思いから製作を続けることになる[4]。
もともとはKADOKAWAとの共同配給の予定だった。これはKADOKAWAの担当プロデューサーが「障害者を映画に出すな」と撮影に反対したものの、当時の会長角川歴彦が賛成したもので、角川が企画の中心となり2022年の夏に撮影が始まった[5][6]。撮影には和歌山県内の復数の施設が協力し、障害者も出演しているが、映画の中の出来事のほとんどは製作陣がそれらの施設で見た光景であった。一方、製作陣からの依頼を断った施設もあった[7]。しかしその角川が、2020東京オリンピックを巡る事件で逮捕されたことで、社長の夏野剛は角川が中心となって勧めてきた映画の企画を仕分けすることを表明、製作陣に製作中止を伝えた。結果KADOKAWAが配給を辞退したため、インディペンデント映画としてスターサンズが単独配給することとなった。こうした一連の事情から、石井は映画の公開に対して河村と角川に感謝の意を表し、また角川歴彦は新藤兼人賞を受賞した[5][6]。
反響
10月16日に発表された10月第2週の映画初日満足度ランキング(Filmarks調べ)では2位を獲得[8]。また、11月6日に発表された11月第1週のアクセスランキング(映画.com調べ)でも2位を獲得[9]。
本作は韓国の釜山国際映画祭でも上映され、本作の監督の石井裕也は本作がその中でも女性の興味を集めているように感じたと語っている。石井監督は、「社会から蔑ろにされている障害者の立場をより感覚的に理解できるのは女性なんだ」と後のインタビューに答えている[7]。
キネマ旬報社が運営するKINENOTEの「キネ旬Review」では、映画評論家の和泉萌香は「スクリーンに向かって同じ方向を見つめるだけではなく、他人事としてではなく、起こること/起こったことを正面から対峙する姿勢を問う」とコメントし、谷昌親は「その問いに対する明確な答えはおそらくない。だが、迷いつつも、問い続けることが大事なのだ」と評価、吉田広明も「見たくないものは隔離(排除)という社会の意志は、我々自身のそれではないのかと本作は問う」と満点評価をつけた[10]。
受賞
脚注
関連項目
外部リンク
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- 剥き出しにっぽん(2005年)
- 反逆次郎の恋(2006年)
- ガール・スパークス(2007年)
- ばけもの模様(2007年)
- 君と歩こう(2009年)
- 川の底からこんにちは(2009年)
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