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この項目では、スズメ目ツバメ科に属する鳥について説明しています。その他の「ツバメ」については「燕」をご覧ください。 |
ツバメ(燕、玄鳥、乙鳥、Hirundo rustica)は、スズメ目ツバメ科ツバメ属に分類される鳥類。古くはツバクラメあるいはツバクロと呼ばれた。
分布
北半球の広い範囲で繁殖する渡り鳥(夏鳥)の一種である。日本では屋久島以北で繁殖する。日本で繁殖するツバメの主な越冬地は台湾、フィリピン、ボルネオ島北部、マレー半島、ジャワ島などである。
形態
全長は約17センチメートル、翼開長は約32センチメートル[3]。背は光沢のある藍黒色で、喉と額が赤い。腹は白く、胸に黒い横帯がある。尾は長く切れ込みの深い二股形で、この尾の形をツバメにちなんで燕尾形という。翼が大きく、飛行に適した細長い体型である。脚は短く歩行には不向きで、巣材の泥を求めるとき以外は地面に降りることはめったにない。
生態
鳴管が発達しており、繁殖期になるとオスはチュビチュビチュビチュルルルルルと比較的大きなさえずり声で鳴く。日本語ではその生態を反映して「土食て虫食て口渋い」などと聞きなしされる。さえずりは日中よりも早朝から午前中にかけて耳にする機会が多い。
飛翔する昆虫などを空中で捕食する。また、水面上を飛行しながら水を飲む。
一部、日本国内で越冬する個体があり、しばしば「越冬ツバメ」と呼ばれる。特に中日本から西日本各地で越冬し、そのような場合、多くは集団で民家内や軒下などで就塒(しゅうじ)する。日本で越冬している個体が日本で繁殖したものであるのか、それともシベリアなど日本より北方で夏に繁殖したものであるのかはよく分かっていない。
泥と枯草を唾液で固めて巣を造る。ほとんど人工物に造巣し、民家の軒先など人が住む環境と同じ場所で繁殖する傾向が顕著である。これは、天敵であるカラスなどが近寄りにくいからだと考えられている。民家に巣を作る鳥は他にスズメなどがいるが、あえて人間が多い場所に見えるように作る点で他の鳥と大きな差異が見られる。
巣は通常は新しく作るが、古い巣を修復して使用することもある。産卵期は4 - 7月頃。一腹卵数は3 - 7個で、主にメスが抱卵する。抱卵日数は13 - 17日、巣内での育雛日数は20 - 24日で、1回目の繁殖の巣立ち率はおおむね50%程度と推定される。1回目繁殖に成功したつがいあるいは失敗したつがいのうち、詳細は不明であるが、相当数のつがいがその後2回目あるいはやり直しの繁殖をする。
雛(ヒナ)を育てている間に親鳥のうちどちらか一方が何らかの理由で欠けると、つがい外のツバメがやってきて育てているヒナを巣から落として殺す行動が観察されている[注釈 1][要ページ番号]。一方、つがいのうちメスが欠けた場合はどこからともなく複数の他のツバメが集まり、その中から選ばれたように一羽ツバメが新たなつがい相手となって子育てを継続する様子も観察されている。
落ちているツバメのヒナを拾って人間が育てることはとても困難であるし、野鳥なので日本での飼育は鳥獣保護法によって禁じられているが、保護のために許可を得て飼育することは可能である。
本州では、巣の中にシラミバエ類,ニワトリノミ,ツバメヒメダニなどの吸血害虫が生息する[4]。
- ツバメの巣作りの様子
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5月6日
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5月7日
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5月8日
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5月9日
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5月11日
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5月12日
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5月13日
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5月14日
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5月19日
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6月5日
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6月11日
巣立ちを終えたヒナと親鳥は河川敷や溜池()の葦原()などに集まり、数千羽から数万羽の集団ねぐらを形成する。小規模ではあるが、繁殖前や繁殖に参加していない成鳥も集団ねぐらを形成する。
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巣作りのために泥をくわえるツバメ
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ツバメの巣
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卵
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巣から落ちてしまった雛
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ホームセンターのトイレの中に巣を作ったツバメ
[注釈 2]。
人間との関係
日本においては、水稲栽培において穀物を食べず害虫を食べてくれる益鳥として古くから大切にされ、ツバメを殺したり巣や雛に悪戯したりする事を慣習的に禁じ、農村部を中心に大切に扱われてきた[注釈 3]。江戸時代にはツバメの糞は雑草の駆除に役立つと考えられていた。「人が住む環境に営巣する」という習性から、地方によっては、人の出入りの多い家、商家の参考となり、商売繁盛の印ともなっている[5]。ツバメの巣のある家は安全であるという言い伝えもあり、巣立った後の巣を大切に残しておくことも多く、一般的に「めでたい鳥」(瑞鳥)として扱われている。しかしそのことで車庫や店内、玄関内などへの営巣による糞落下の問題や、不審人物の侵入を許す可能性もあることから、やむなく巣作りを妨害したり作られた巣を撤去するというケースもある。なお、汚損防止が目的であっても巣を撤去する際に卵や雛が傷つくと鳥獣保護法違反に問われる可能性がある。環境省の調査においては、ツバメの巣作りを歓迎するという意見が圧倒的多数である[6]。
日本野鳥の会は全国各地からの観察報告を得て、2013年から「ツバメの子育て状況調査」を実施している。2020年までの8年間で5351人から延べ1万586カ所の巣について報告され、うち46%が巣立った(平均は巣1カ所あたり4羽)。巣立たなかった原因としては捕食や落下、放棄、人による撤去が挙げられる。人が出入りする建物が減る過疎地域では営巣数も顕著に減る[7]。
日本では神奈川県で2006年以降、種単位で減少種として指定されている[8]。千葉県では2011年以降、種単位で一般保護生物、千葉市では2004年に要保護生物(C)に掲載されている[9]。
以上の都道府県で、種名Hirundo rustica gutturalisとして、日本版レッドリストの指定を受けている[10]。
語彙・語句
燕を冠したもの
鳥以外の意味
「燕」または「若い燕」は、年上の女に養われている、またはつきあっている若い男を指す俗語[注釈 4]。
ことわざ
- 燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや(陳勝を参照) - 小さな鳥のたとえとして燕を用いている。
- ツバメが低く飛ぶと雨が降る - 観天望気(天気のことわざ)の一つで、天気が悪くなる前には湿度が高くなり、ツバメの餌である昆虫の羽根が水分で重くなって低く飛ぶようになり、それを餌とするツバメも低空を飛ぶことになるからと言われている[11]。
物語
- 『竹取物語』 - かぐや姫が5人の貴公子に出す結婚の条件の中に、「燕の子安貝」がある。
- 『親指姫』 - 親指姫が怪我をしたツバメを介抱し、後にツバメと共に花の国へ行く。
- 『幸福な王子』 - 金色に輝く王子の像が、越冬のためエジプトに渡ろうとするツバメを使いにして、貧しく不幸な人々のために自らがまとう宝石や金箔を分け与える物語。
- 『秋物語』 - NHK「みんなのうた」で流れた、越冬できなかったツバメの物語を歌詞にした歌。
- 『雀孝行』 - 「昔、燕と雀は姉妹であった。あるとき親の死に目に際して、雀はなりふり構わず駆けつけたので間に合った。しかし燕は紅をさしたりして着飾っていたので親の死に目に間に合わなかった。以来、神様は親孝行の雀には五穀を食べて暮らせるようにしたが、燕には虫しか食べられないようにした」という説話。
シンボル
以下の国家が国鳥にツバメを採用している。
以下の地方公共団体が市町村の鳥にツバメを採用している。
以下の企業・団体がシンボルマークにツバメを採用している。
以下の企業がロゴマークにツバメを採用している。
以下の企業がマスコットキャラクターにツバメを採用している。
脚注
注釈
- ^ この行動は江戸時代中期の説話集『新著聞集』や大正時代の岩田勝市『因伯珍談』に記録が見られる。
- ^ 直下には便器。民家の軒先など人が住むにぎやかな環境に営巣するという習性そのもの。
- ^ 江戸時代後期の肥前国平戸藩第9代藩主松浦清(号は静山)により書かれた随筆集、甲子夜話では、燕の塩漬けが保存食(兵糧)として使用されることが書かせているため、全く食用にしないということではない。
- ^ 燕は渡り鳥として知られるが頻繁に女の巣に通うことから例えられる。後に女性解放運動家・平塚らいてうの夫となる、平塚より3歳年下の画家・奥村博史が(運動の邪魔にならないよう、一時的に身を引いた際に)、自分を例えて「水鳥たちが遊ぶ池に迷い込んだ若い燕」と表現したことに由来する(瀬戸内寂聴の小説『美は乱調にあり』では、平塚が奥村をラブレター上で若い燕と形容したことになっている)。
出典
参考文献
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
ツバメに関連する
メディアおよび
カテゴリがあります。
ウィキスピーシーズに
ツバメに関する情報があります。
外部リンク