『エストランジェイロ』(Estrangeiro)は、ブラジル人ミュージシャン、カエターノ・ヴェローゾが1989年に発表したスタジオ・アルバム。録音はニューヨークで行われた[1]。
背景
当時、アンビシャス・ラバーズで活動していたアート・リンゼイとピーター・シェラーをプロデューサーに迎え[1][2]、2人は演奏でも参加したのに加えて、「ジャスパー」をヴェローゾと共作した[3]。また、ビル・フリゼールやマーク・リボーといったアメリカ人ギタリストもレコーディングに参加した。
「オス・オウトロス・ホマンチコス(その他のロマンチスト)」は、ブラジルで3千万人もの子供達が遺棄されている問題について言及しており、ヴェローゾは1989年のインタビューで「3千万人というのは決して大げさではない。もっと多いのではないかという推計もあるぐらいだ」と語っている[2]。「メイア・ルア・インテイラ(丸い半月)」は、本作のレコーディングにも参加したブラジル人ミュージシャン、カルリーニョス・ブラウン(ポルトガル語版)が提供した曲である[1]。
反響・評価
本作は、ヴェローゾの新作スタジオ・アルバムとしては初めてアメリカ盤も発売され[4]、『ビルボード』のワールド・ミュージック・アルバム・チャートで13位を記録した[5]。
John Douganはオールミュージックにおいて5点満点中3点を付け「冒険的で、奇異で、そしてしばしば美しくもあり、様々な意味で、ヴェローゾの作品としては最も問題意識に満ち、なおかつ最も絶妙な叙情が語られている」と評している[6]。また、Jorge Casunoは『シカゴ・トリビューン』紙のレビューで満点の4点を付け「彼の息漏れ声や快活なボサノヴァのリズムと、ニューヨークのアヴァンギャルドのエレクトロニック・ノイズや苛烈なビートを、易々と融合している」と評している[7]。
『Sounds and Colours』の編集者ラス・スレイターは、本作をヴェローゾの作品の中でも特に「エレクトロ色の強いアルバム」と位置付け、「分類が困難なアルバムで、エレクトロ、サンバ、ポップ、それに当時のモダン・カルチャーで漂っていたあらゆる要素を含んでいる」と評している[8]。
収録曲
特記なき楽曲はカエターノ・ヴェローゾ作。
- エストランジェイロ - "O Estrangeiro" - 6:15
- ハイ・ダス・コーリス(色彩) - "Rai Das Cores" - 2:37
- ブランキーニャ(白の少女) - "Branquinha" - 2:34
- オス・オウトロス・ホマンチコス(その他のロマンチスト) - "Os Outros Românticos" - 4:56
- ジャスパー - "Jasper" (Arto Lindsay, Peter Sherer, CaetanoVeloso) - 4:54
- エスチ・アモール(この愛) - "Este Amor" - 3:26
- オウトロ・ヘトラート(ポートレート) - "Outro Retrato" - 4:59
- エトセトラ - "Etc." - 2:06
- メイア・ルア・インテイラ(丸い半月) - "Meia Lua Inteira" (Carlinhos Brown) - 3:41
- ジェニパッポ・アブソルット - "Genipapo Absoluto" - 3:22
参加ミュージシャン
- カエターノ・ヴェローゾ - ボーカル、アコースティック・ギター
- アート・リンゼイ - ギター(#1, #3, #4, #5, #9)、ボイス(#4)
- ビル・フリゼール - ギター(#1, #6)
- トニ・コスタ - ギター(#2, #9, #10)
- マーク・リボー - ギター(#4, #7)
- ピーター・シェラー - キーボード(#1, #2, #3, #4, #5, #6, #7, #9)
- タヴィーニョ・フィアーリョ - ベース(#2, #9)
- トニー・ルイス - ドラムス(#1)
- セシーニャ - ドラムス(#2, #9)
- ナナ・ヴァスコンセロス - パーカッション(#1, #5, #6, #7, #8)、ボーカル(#1)
- カルリーニョス・ブラウン(ポルトガル語版) - パーカッション(#2, #4, #9)
脚注・出典
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スタジオ・アルバム | |
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ライヴ・アルバム |
- Ao Vivo (with ムタンチス)
- バーハ69 (with ジルベルト・ジル)
- Caetano e Chico - Juntos ao Vivo (with シコ・ブアルキ)
- Temporada de Verão - ao vivo na Bahia (with ガル・コスタ、ジルベルト・ジル)
- Doces Bárbaros (with ガル・コスタ、ジルベルト・ジル、マリア・ベターニア)
- Bicho Baile Show (with バンダ・ブラック・リオ)
- Maria Bethânia e Caetano Veloso ao Vivo (with マリア・ベターニア)
- トータルメンチ・ヂマイス
- Circuladô Vivo
- "粋な男"ライヴ〜カエターノ・ヴェローゾ・ライヴ・イン・リオ
- プレンダ・ミーニャ
- フェリーニへのオマージュ
- ノイチス・ド・ノルチ・ライヴ
- カント・ライヴ
- セー・ライヴ
- E a Música de Tom Jobim (with ロベルト・カルロス)
- MTV Ao Vivo – Caetano – Zii e Zie
- カエターノ・ヴェローゾ&マリア・ガドゥ
- Live at Carnegie Hall (with デヴィッド・バーン)
- アブラサッソ・ライヴ
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サウンドトラック | |
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コンピレーション・アルバム | |
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関連項目 | |
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