ニュージーランド労働党 (ニュージーランドろうどうとう、英語 : New Zealand Labour Party 、マオリ語 : Rōpū Reipa o Aotearoa )は、ニュージーランド の中道左派 、社会民主主義 政党 。社会主義インターナショナル 加盟。ニュージーランド国民党 とともにニュージーランドの2大政党 の一翼を担っている。
歴史
労働組合 を組織母体として1910年に誕生。社会民主主義政党として、労働条件 の改善や女性の社会進出、高福祉社会や人種の枠を超えた平等社会の実現を主な政策としており、先住民であるマオリ族 に対する優遇政策を採っている。またイギリス労働党 などと同様、基幹産業の国有化をめざしていた。
1929年の世界恐慌 を契機として党支持者が増え、1935年には改革党・統一党による保守連合を破り、初めて政権 を獲得した。以後1949年まで長期政権を樹立し、この間に年金 ・医療保険 の給付、公営住宅 の供給、マオリの地位向上を推進するなど、福祉国家 としての基礎が形成された。1957年から1960年のナッシュ政権、1972年から1975年のカークおよびローリング政権、1984年7月にはロンギ政権がそれぞれ誕生している。ロンギ政権の下では伝統的な社会民主主義路線からの脱却が図られ、大胆な「規制緩和 」、公営部門の民営化 、貿易の「自由」化などの新自由主義 「改革」を行った。これらの政策は、当時アメリカのレーガン 政権、イギリス のサッチャー 政権、日本 の中曽根 政権など多くの先進国 で行われていた。これにより、ニュージーランドは極めて「規制」の少ない国になった。
しかし、ロジャーノミクス と呼ばれるロンギ政権での改革は労働組合の支持を失い、党内に対立を招き、1989年にはロンギは首相を辞任。1990年には政権を国民党に譲る。「改革」路線はライバルの国民党が政権を獲得しても基本的に受け継がれ、「赤字」だった国家財政も1993年には「黒字」に変わった。
1999年には政権を奪還し、ヘレン・クラーク が首相に就任。自由化 の行き過ぎにより生じた、貧困 の拡大、社会資本 の劣化、医療崩壊 、福祉レベルの低下などといった問題に対処するため、国営銀行「キーウィ銀行 」の設立、ニュージーランド航空 への出資 、鉄道 の一部国有化などを行い、政府による介入を一部復活させている。
2008年の総選挙では議席数を43に減らし、9年ぶりに下野した。また、この選挙での敗北の責任をとり、クラークは党首を辞任した。なお、クラーク政権下で閣外協力 党の1つだったニュージーランド・ファースト党 はこの選挙で全議席を失った。また2011年の総選挙でもキー首相率いる国民党に及ばず、フィル・ゴフ 党首は引責辞任、代わってデビッド・シアラー 、2013年にデイヴィッド・カンリフ へと党首が交代している。しかしながら2014年 の総選挙でも国民党に勝ることはできず、さらに議席を減らすこととなった。そのためにカンリフは引責辞任、代わってアンドリュー・リトル が党首となった。しかし2017年の総選挙を直前に控えても支持率低迷が続いていることの責任を取りリトルは党首を辞任、後任にはジャシンダ・アーダーン が就任し、支持率を回復させた[ 6] 。2017年の総選挙 (英語版 ) では議席数を上乗せしたものの46議席(得票率36.89%)にとどまった[ 7] 。しかし国民党も過半数を獲得できなかったため連立工作が開始され、10月19日にニュージーランド・ファースト党 などと連立政権 樹立で合意、9年ぶりの政権交代 によって労働党出身の首相が誕生することとなった[ 8] 。
2020年 10月17日に行われた総選挙 で、労働党は過半数の64議席を獲得。ニュージーランドでは1996年に比例代表制 が採用されて以降、与党が単独で過半数を得ることが難しくなっており、圧勝と呼べる勝利となった[ 9] [ 10] 。しかし2020年に本格化した新型コロナウイルス感染症の流行 に対応するため行ったロックダウン や生活費の高騰などが労働党政権に対する国民の不満に繋がり[ 11] 、2023年10月14日に執行された総選挙 ではおよそ半減の34議席にとどまり敗北[ 12] 。同年11月27日に国民党党首のクリストファー・ラクソン を首班とする国民党と右派のACT党 、ポピュリスト政党のニュージーランド・ファースト党 の3党による連立政権が発足し、労働党は6年ぶりに下野した[ 13] 。
政策・その他
歴代党首
脚注
^ Boston, Jonathan (2003). New Zealand Votes: The General Election of 2002 . Victoria University Press. p. 358
^ “Voters' preexisting opinions shift to align with political party positions ”. Association for Psychological Science (2 November 2018). 26 November 2018 閲覧。
^ Papillon, Martin; Turgeon, Luc; Wallner, Jennifer; White, Stephen (2014). Comparing Canada: Methods and Perspectives on Canadian Politics . UBC Press. p. 126. ISBN 9780774827867 . https://books.google.com/books?id=WpU8BAAAQBAJ&pg=PA126 30 August 2016 閲覧 . "[...] [I]n New Zealand politics, by the centre-left Labour Party and the centre-right National Party [...]."
^ “Story: Labour Party ”. Te Ara: The Encyclopedia of New Zealand . 2021年3月3日 閲覧。
^ Busky, Donald F. (2000). “Democratic Socialism in Asia, Australia, Africa, and the Middle East”. Democratic Socialism: A Global Survey . Greenwood Publishing Group. p. 204. ISBN 9780275968861
^ “37歳、一躍時の人に=NZ首相見通しのアーダーン氏” . 時事通信 . (2017年10月19日). https://web.archive.org/web/20171019141531/https://www.jiji.com/jc/article?k=2017101901195&g=int 2017年10月20日 閲覧。
^ “NZ総選挙:国民党単独の過半数確保できず-小政党と連立模索へ” . bloomberg.co.jp (ブルームバーグ ). (2017年9月23日). https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-09-23/OWQFYJ6JIJUP01 2017年9月24日 閲覧。
^ https://www.theguardian.com/world/2017/oct/19/jacinda-ardern-new-zealand-prime-minister-labour-coalition-deal-winston-peters
^ “NZ総選挙、アーダーン首相の労働党圧勝 野党党首が敗北宣言 ”. AFP. 2020年10月17日 閲覧。
^ “New Zealand election: Jacinda Ardern's Labour Party scores landslide win” . BBC News . BBC . (2020年10月18日). https://www.bbc.com/news/world-asia-54519628 2020年10月18日 閲覧。
^ “NZ政権交代、総選挙で野党・国民党が第1党に” . ロイター . (2023年10月15日). https://jp.reuters.com/economy/2NMXDQMENVKSBLFYUJXMG4MYAE-2023-10-15/ 2024年1月24日 閲覧。
^ “Live election 2023 updates on 15 October: All the results, all the reaction” . ラジオ・ニュージーランド . (2023年10月15日). https://www.rnz.co.nz/news/political/500191/live-election-2023-updates-on-15-october-all-the-results-all-the-reaction 2023年10月16日 閲覧。
^ “ニュージーランド、新政権が発足 ラクソン氏首相就任” . ロイター . (2023年11月27日). https://jp.reuters.com/world/environment/2TYWSEKHPBPZJDENGF3YXX4QYU-2023-11-27/ 2024年1月24日 閲覧。
^ “"ニュージーランド労働党、ベーシックインカムの導入の政権公約化で検討入り - BusinessNewsline" ”. 2016年3月29日 閲覧。
関連項目
外部リンク