「スタンド・バイ・ミー 」(Stand By Me )は、ベン・E・キング の楽曲で、1961年にアトコ・レコード からシングル盤として発売された。作詞作曲は、キングとジェリー・リーバーとマイク・ストーラー [ 注釈 1] の共作で、チャールズ・アルバート・ティンドリー (英語版 ) によって作曲された黒人霊歌 「Load, Stand By Me (英語版 ) 」に触発されて書かれた。1986年に公開された同名の映画 で主題歌として使用され、映画の宣伝のためにミュージック・ビデオ が制作された。同年に再発売され、全英シングルチャート で第1位を獲得。
発売以降、ジョン・レノン 、ブルース・スプリングスティーン 、レディー・ガガ 、忌野清志郎 らによってカバーされており、カバー・バージョンの数は400を超える[ 4] 。
背景・制作
1960年、ベン・E・キングは、20世紀初頭にチャールズ・アルバート・ティンドリーが『詩編46 』の「Therefore will not we fear, though the earth be removed, and though the mountains be carried into the midst of the sea (このゆえに、たとい地は変り、山は海の真中に移るとも、われらは恐れない。)」という記述を基に作曲した「Load, Stand By Me (英語版 ) 」に触発されて、「スタンド・バイ・ミー」を書いた[ 5] 。ドキュメンタリー『The History of Rock 'n' Roll 』において、キングは当初本作をソロ楽曲としてレコーディングするつもりがなかったことを明かしている[ 6] 。本作は、当時キングが在籍していたドリフターズ のために書き下ろされた楽曲であったが、バンドのマネージャーによって却下される。同グループ脱退後、本作を自身の楽曲とすることにした。
歌詞はキングとジェリー・リーバー によって書かれたもの。マイク・ストーラー は、2人が作詞作業を行っている最中に、ピアノ でハーモニーを作り上げて曲の特徴となっているベースラインを考え出したと回想している[ 8] 。本作ではフィフティーズ進行 (英語版 ) というコード進行のパターンが使用されていて、このコード進行は本作の発売後「スタンド・バイ・ミー進行」として知られている[ 9] 。
1960年10月27日、キングはニューヨークにあるアトランティック・レコード・スタジオ で「スタンド・バイ・ミー」のレコーディングを行った。本作の演奏者および担当楽器は以下のようになっている。
「スタンド・バイ・ミー」は、1961年にシングルとして発売された後、『ビルボード 』誌のHot R&B Sides で第1位を獲得[ 11] し、全英シングルチャート で最高位27位[ 12] 、Billboard Hot 100 で最高位4位[ 13] を記録。1986年に再発売され、全英シングルチャートで第1位を獲得[ 14] し、年間チャートでは第7位を記録した[ 15] 。日本でもオリコン洋楽シングルチャート で1987年5月11日付から4週連続1位を獲得[ 16] 。
『ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500 』(2004年版)では第122位にランクイン[ 17] 。BMI 調べによる「20世紀 にアメリカのテレビやラジオで最もオンエアされた100曲」のランキングでは、700万回以上のオンエアで4位にランクインされた[ 18] 。2012年12月28日にBBC Four が放送した『ザ・リッチエスト・ソングス・イン・ザ・ワールド』で、音楽著作権で史上最も稼いだ曲の第6位に選出された[ 19] 。
2011年11月16日に発売されたアルバム『Dear Japan, 上を向いて歩こう 』には、オリジナル・バージョンとともに日本語でのセルフカバー・バージョンも収録されている[ 20] 。
チャート成績(ベン・E・キング版)
年間チャート
チャート (1961年)
順位
US Billboard Hot 100[ 44]
63
チャート (1986年)
順位
Canada Top Singles (RPM )[ 45]
63
チャート (1987年)
順位
ベルギー (Ultratop Flanders)[ 46]
79
Canada Top Singles (RPM )[ 47]
58
ヨーロッパ (European Hot 100 Singles)[ 48]
23
オランダ (Dutch Top 40)[ 49]
91
オランダ (Dutch Top 100)[ 50]
91
UK Singles (Official Charts Company)[ 51]
4
US Billboard Hot 100[ 52]
67
西ドイツ (Official German Charts)[ 53]
21
オールタイム・チャート
チャート (1958年 - 2018年)
順位
US Billboard Hot 100[ 54]
496
認定(ベン・E・キング版)
ジョン・レノンによるカバー
ジョン・レノン は、ニューヨークにあるレコード・プラント・イースト で1974年10月21日と25日の2回のセッションで、「スタンド・バイ・ミー」のカバー・バージョンを録音した。このカバー・バージョンは、アメリカで1975年2月17日、イギリスで2月21日にアップル・レコード から発売されたアルバム『ロックン・ロール 』のA面2曲目に収録された。その後アメリカで3月10日、イギリスで4月18日に同作からシングル・カットされ、B面には「ようこそレノン夫人 (英語版 ) 」(Move Over Ms. L )が収録された。同年には、BBC の音楽番組『The Old Grey Whistle Test 』用に演奏が録画されている[ 64] 。
Billboard Hot 100 では、1975年3月15日の週で初登場78位を記録し[ 65] 、その後4月26日の週で最高位20位を記録[ 66] 。全英シングルチャート では、7週にわたってチャートインし、4週目で最高位30位を記録[ 67] 。カナダの『RPM 』誌のシングルチャートでは、1975年5月24日の週から2週にわたって最高位13位を記録[ 68] [ 69] 。
また、レノンは1974年3月に行われたハリー・ニルソン のアルバム『プシー・キャッツ 』のセッションで、レノンと同じく元ビートルズ のポール・マッカートニー やスティーヴィー・ワンダー らとともに「スタンド・バイ・ミー」を演奏している[ 70] 。当時の演奏は、1992年に流通した海賊盤『ア・トゥート・アンド・ア・スノア・イン・'74 』に収録されている[ 71] 。
『ビルボード 』誌は、レノンによるカバー・バージョンについて「オリジナル版以来の最高の出来」と評している[ 72] 。『ピッチフォーク 』のライターであるマーク・ホーガン (英語版 ) は、「アコースティック・ギター によるスタッカート奏法とレノンの熱意のあるボーカル」を引き合いに「ベン・E・キングの演奏よりも(ほんのわずかに)影響力がある」と評している[ 73] 。ジャーナリストのロバート・ウェッブは、2013年に「最高のカバー・バージョン」の1つとして、レノンによるカバー・バージョンを挙げている[ 74] 。
クレジット(ジョン・レノン版)
※出典[ 75]
チャート成績(ジョン・レノン版)
プレイング・フォー・チェンジによるカバー
2002年、音楽プロデューサーのマーク・ジョンソンと映画プロデューサーのホイットニー・アン・クロエンケ (英語版 ) によって音楽チャリティープロジェクト『PLAYING FOR CHANGE (英語版 ) 』が立ち上げられた[ 81] 。ある日、カリフォルニア州サンタモニカを歩いていたジョンソンは、ストリートミュージシャンのロジャー・リドリー(2005年没)が「スタンド・バイ・ミー」を演奏しているのを耳にする。リドリーの演奏に感動したジョンソンは、機材を持ってくるからストリートで演奏しているところを録音させてほしい。その曲を持って世界中を回っていろんなミュージシャンの演奏を歌を足して編集したいんだ と申し出た[ 82] 。ジョンソンは彼の歌声は本当に情熱的で説得力があって、しかも『スタンド・バイ・ミー』は普遍的な価値を持った曲なので、ロジャーによるこの曲から始まるコンビネーションがプロジェクトを始動させるのにもっとも相応しいと と語っている[ 82] 。その後、ジョンソンは50か国をめぐり、約1000人のミュージシャンの演奏を収録した[ 82] 。
完成したミュージック・ビデオ は、ジョンソンが2008年10月にドキュメンタリー映画『Playing for Change: Peace Through Music 』の宣伝のために出演した『Bill Moyers Journal 』で取り上げられ[ 83] 、同年にニューヨークで開催されたトライベッカ映画祭 で上映された[ 84] 。同年11月にプレイング・フォー・チェンジの公式YouTubeチャンネルで公開され、2009年5月に1000万回を超える再生回数を記録した[ 84] 。
プリンス・ロイスによるカバー
プリンス・ロイス (英語版 ) は、スペイン語の歌詞でバチャータ (英語版 ) 調にアレンジして「スタンド・バイ・ミー」をカバー[ 85] 。このカバー・バージョンは、2010年にシングルとして発売され[ 85] 、『ビルボード 』誌のHot Latin Songs で最高位8位を記録し[ 86] 、Tropical Airplay で第1位を獲得した[ 87] 。ロイスによるカバー・バージョンは、ロ・ヌエストロ賞 (英語版 ) の「最優秀トロピカル・ソング賞 (英語版 ) 」を受賞した[ 88] 。
ロイスは、2016年7月のフィリップス・アリーナ 公演で男性ファンとともに本作を歌唱[ 89] 。その後、2017年のアムウェイ・センター 公演や[ 90] 、2019年の「ヒューストン・ライブストック・ショー&ロデオ (英語版 ) 」、2020年の「民主党全国大会 」でも演奏された[ 91] 。
チャート成績(プリンス・ロイス版)
年間チャート
チャート (2010年)
順位
US Hot Latin Songs (Billboard )[ 95]
16
US Latin Pop Airplay (Billboard )[ 96]
25
その他の主なカバー・バージョン
1960年代 - 1970年代
アドリアーノ・チェレンターノ は、1962年にイタリア語バージョン「Pregherò 」としてカバー。
元ボクシング 世界ヘビー級 王者モハメド・アリ は、世界王者になる前の1963年に発表したスタジオ・アルバム 『I Am The Greatest! (英語版 ) 』のB面で同曲をカバー[ 98] し、Bubbling Under Hot 100 Singles にチャートインした[ 99] 。
オーティス・レディング は、1964年に発売したアルバム『ペイン・イン・マイ・ハート (英語版 ) 』で本作をカバー[ 100] 。同年にはケニー・リンチ (英語版 ) によるカバー・バージョンも発売されており、こちらは全英シングルチャート に7週にわたってチャートインし、4週目に最高位39位を記録[ 101] 。1967年に発売されたシュパイダー・ターナー (英語版 ) によるカバー・バージョンは、『ビルボード 』誌のHo 100 で最高位12位[ 102] 、R&Bシングルチャートで最高位3位[ 103] 、カナダの『RPM 』誌のシングルチャートで最高位10位を記録[ 104] 。
デヴィッド・ラフィン とジミー・ラフィン (英語版 ) は、1970年に発売したコラボレーション・アルバム『I Am My Brother's Keeper 』でカバー[ 105] 。後にシングル・カットされ、『ビルボード』誌のHot 100において11月28日の週から2週連続で最高位61位を記録[ 106] [ 107] 。また、同誌のソウル・シングルチャートでは11月21日の週で最高位24位を記録[ 108] 。
1980年代
ミッキー・ギリー (英語版 ) は、1980年に公開された映画『アーバン・カウボーイ 』の劇中歌としてカバー[ 110] 。ギリーによるカバー・バージョンは、『ビルボード』誌のHot Country Songs で第1位を獲得し、Hot 100で最高位22位を記録した[ 111] 。9月にカナダの『RPM』誌のカントリー・シングルチャートで最高位3位を記録[ 112] し、翌月に同誌のシングルチャートで最高位51位を記録した[ 113] 。本作は、ギリーの代表曲の1つとされている[ 114] 。
モーリス・ホワイト は、1985年秋に発売したセルフタイトルのアルバム でカバー[ 115] 。同年にシングル・カットされ、『ビルボード』誌のR&B・シングルチャートで最高位6位[ 117] 、同誌のアダルト・コンテンポラリー・チャートで最高位11位を記録[ 118] 。また、カナダの『RPM』誌のアダルト・コンテンポラリー・チャートでは最高位5位[ 119] 、ニュージーランドのシングルチャートでは最高位8位を記録[ 120] (その他のチャート成績は後述 を参照)。
ジョン・レノンの息子であるジュリアン・レノン は、1985年春に行ったライブで本作を演奏しており、当時のライブ映像は映像作品『Stand By Me: A Portrait of Julian Lennon 』に収録されている[ 121] 。1987年、忌野清志郎 & The Razor Sharp が3月の中野サンプラザ 公演で演奏。6月5日に発売されたライブ・アルバム『HAPPY HEADS 』には、同公演でのライブ音源が収録されている[ 122] [ 123] 。同年にはU2 が9月25日のジョン・F・ケネディ・スタジアム 公演でブルース・スプリングスティーン とともに本作を演奏した[ 124] 。
アニタ・ムイ は、1988年に発売したアルバム『夢裡共醉 』でカバー。ムイによるカバー・バージョンは、香港国営ラジオ局RTHK と民放テレビ局TVB から「トップ10・ゴールド・ソング賞」の対象として選出された[ 125] [ 126] 。2013年12月30日に開催されたムイ(2003年没)の追悼コンサート「梅艷芳。10。思念。音樂。會 」では、ミリアム・ヨン 、デニス・ホー らによってムイのカバー・バージョンにならったアレンジで披露された[ 127] 。
1990年代
1995年に公開された『ティモンとプンバァ 地球まるかじりの旅 』には、ティモンとプンバァによる歌唱バージョンのミュージック・クリップが含まれている[ 128] [ 129] 。歌詞がオリジナルから変更されている[ 130] 。
フォー・ザ・コーズ (英語版 ) は、1998年にデビュー・シングルとして本作をカバー。このシングルは、スイスのシングルチャートで第1位を獲得し[ 131] 、オーストリアのシングルチャートで最高位2位を記録[ 132] (その他のチャート成績は後述 を参照)。
2010年代
2011年9月24日に開催された「iHeartRadio Music Festival 」(1日目)で、レディー・ガガ とスティング が本作を歌唱[ 133] 。また、ガガは自身のツアーでピアノの弾き語りを披露したことがある[ 20] 。
フローレンス・アンド・ザ・マシーン は、2016年9月30日に発売されたスクウェア・エニックス のゲーム『ファイナルファンタジーXV 』の主題歌としてカバー。このカバー・バージョンは、トレイラー映像でも使用されている[ 134] 。2016年8月12日に各種ストリーミング・サービスで『ソングス・フロム・ファイナルファンタジーXV』が発売され、本作のカバー・バージョンが2曲の新曲とともに収録された[ 135] 。フローレンス・アンド・ザ・マシーンによるカバー・バージョンは、『ビルボード』誌のHot Rock & Alternative Songs で最高位15位を記録[ 136] 。2017年2月1日にTwitch のライブストリーミング配信では、『ファイナルファンタジーXV』に声優として参加しているレイ・チェイス (英語版 ) 、アダム・クロアズデル (英語版 ) 、ロビー・デイモンド (英語版 ) らが本作を歌唱した[ 137] 。
スカイラー・グレイ は、2018年のバドワイザー のCMソングとして本作をカバー。このカバー・バージョンから発生する収益は、アメリカ赤十字社 に寄付された[ 138] 。
キングダム・クワイア (英語版 ) は、2018年5月19日に行われたヘンリー王子 とメーガン・マークル の結婚式の結婚式で本作を歌唱[ 139] [ 140] 。キングダム・クワイアによるカバー・バージョンは、『ビルボード』誌のHot Gospel Songs で第1位を獲得[ 141] 。全英シングルチャート では最高位94位を記録[ 142] 。翌年にキングダム・クワイアの同名のデビュー・アルバムが発売され、本作も収録されている[ 143] [ 144] 。
ウィーザー は、2019年にカバー・アルバム『ウィーザー (ティール・アルバム) (英語版 ) 』が発売され、同作の最後の楽曲として本作のカバー・バージョンが収録された[ 145] 。
2020年代
2020年4月19日(日本時間)に世界保健機構 とグローバル・シチズン (英語版 ) 主催、レディー・ガガのキュレートのもとで行われたチャリティー・コンサート「One World: Together At Home 」で、ジョン・レジェンド とサム・スミス が本作を歌唱[ 146] 。
2021年10月24日、スヌープ・ドッグ がボストンで開催されたコンサートで、同日の夜に70歳で死去した母親への追悼として観客とともに本作を歌唱[ 147] [ 148] 。
チャート成績(その他)
ミッキー・ギリー版
モーリス・ホワイト版
フォー・ザ・コーズ版
年間チャート
チャート (1998年)
順位
オーストリア (Ö3 Austria Top 40)[ 164]
8
ベルギー (Ultratop Wallonia)[ 165]
33
ドイツ (Official German Charts)[ 166]
7
オランダ (Dutch Top 40)[ 167]
27
オランダ (Single Top 100)[ 168]
36
ニュージーランド (Recorded Music NZ)[ 169]
28
スウェーデン (Sverigetopplistan)[ 170]
33
スウェーデン (Schweizer Hitparade)[ 171]
10
フローレンス・アンド・ザ・マシーン版
年間チャート
チャート (2016年)
順位
ベルギー (Ultratop Flanders)[ 175]
79
キングダム・クワイア版
認定(フォー・ザ・コーズ版)
脚注
注釈
^ シングル盤の作曲者クレジットでは、エルモ・グリック (Elmo Glick )という変名が使用されている[ 3] 。
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外部リンク
生前
1969年 (1969 ) 1970年 (1970 ) 1971年 (1971 ) 1972年 (1972 ) 1973年 (1973 ) 1974年 (1974 ) 1975年 (1975 ) 1977年 (1977 ) 1980年 (1980 )
死後
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"Rock and Roll People" (promo)
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