アメリカ探偵作家クラブ(アメリカたんていさっかクラブ、英 : Mystery Writers of America、略称:MWA)は、アメリカ合衆国の推理作家の団体。「アメリカ推理作家クラブ」とも訳される。ニューヨークを基点とする。1945年に、クレイトン・ロースン、アントニー・バウチャー、ローレンス・トリート(英語版)、ブレット・ハリデイ(英語版)によって設立された。エドガー賞(MWA賞とも)を主催している。
1995年に、「史上最高のミステリー小説100冊」と題したリストを発表した。
シェイマス賞を主催するアメリカ私立探偵作家クラブ(英 : Private Eye Writers of America、略称:PWA)とは別の団体である。
主な会長経験のある会員
エドガー賞
エドガー賞又はMWA賞は、アメリカ合衆国の文学賞。アメリカ探偵作家クラブによって前年にアメリカで発表されたミステリの分野の作品から選ばれる。
長編、短編などのジャンルごとの部門に加え、小説以外のテレビや映画の部門がある。アメリカの作家エドガー・アラン・ポーにちなんで命名されたこの賞の受賞者には小さなエドガー・アラン・ポーの胸像が贈られる。
この他、ロバート・L・フィッシュやエラリー・クイーン等の小説家の名を冠した部門が存在する。
作者がアメリカ探偵作家クラブの会員でなくとも受賞できるが、アメリカで出版されている必要がある。
作品賞
長編賞
処女長編賞
短編賞
- 1951年:ローレンス・G・ブロックマン(英語版) "Diagnosis: Homicide" (短編集)
- 1952年:ジョン・コリア "Fancies and Goodnights" (短編集)
- 1953年:フィリップ・マクドナルド "Something to Hide" (短編集)
- 1954年:ロアルド・ダール 『あなたに似た人』(短編集)
- 1955年:スタンリイ・エリン 「パーティーの夜」
- 1956年:フィリップ・マクドナルド 「夢みるなかれ」
- 1957年:スタンリイ・エリン 「ブレッシントン計画」
- 1958年:ジェラルド・カーシュ 「壜の中の謎の手記(壜の中の手記)」
- 1959年:ウィリアム・オファレル 「その向こうは―闇(そのさきは―闇)」
- 1960年:ロアルド・ダール 「女主人」
- 1961年:ジョン・ダラム 「獣の心(虎よ)」
- 1962年:エイヴラム・デイヴィッドスン 「ラホーア兵営事件」
- 1963年:デイヴィッド・イーリィ 「ヨットクラブ」
- 1964年:レスリー・アン・ブラウンリッグ "Man Gehorcht"
- 1965年:ローレンス・トリート(英語版) 「殺人(ホミサイド)のH」
- 1966年:シャーリイ・ジャクスン 「悪の可能性」
- 1967年:リース・デイヴィス(英語版) 「選ばれたもの」
- 1968年:エドワード・D・ホック 「長方形の部屋」
- 1969年:ワーナー・ロウ 「世界を騙った男」
- 1970年:ジョー・ゴアズ(英語版) 「さらば故郷」
- 1971年:マージェリー・フィン・ブラウン 「リガの森では、けものはひときわ荒々しい」
- 1972年:ロバート・L・フィッシュ 「月下の庭師」
- 1973年:ジョイス・ハリントン 「紫色の屍衣」
- 1974年:ハーラン・エリスン 「鞭打たれた犬たちのうめき」
- 1975年:ルース・レンデル 「カーテンが降りて」
- 1976年:ジェシ・ヒル・フォード(英語版) 「留置場」
- 1977年:エタ・リーヴェス 「恐ろしい悲鳴のように」
- 1978年:トマス・ウォルシュ 「最後のチャンス」
- 1979年:バーバラ・オーエンズ(英語版) 「軒の下の雲」
- 1980年:ジェフリー・ノーマン 「拳銃所持につき危険」
- 1981年:クラーク・ハワード(英語版) 「ホーン・マン」
- 1982年:ジャック・リッチー 「エミリーがいない」
- 1983年:フレデリック・フォーサイス 「アイルランドに蛇はいない」
- 1984年:ルース・レンデル 「女ともだち」
- 1985年:ローレンス・ブロック 「夜明けの光の中に」
- 1986年:ジョン・ラッツ(英語版) 「稲妻に乗れ」
- 1987年:ロバート・サンプスン 「ピントン郡の雨」
- 1988年:ハーラン・エリスン 「ソフト・モンキー」
- 1989年:ビル・クレンショー 「映画館」
- 1990年:ドナルド・E・ウェストレイク 「悪党どもが多すぎる」
- 1991年:リン・バレット(英語版) 「エルヴィスは生きている」
- 1992年:ウェンディ・ホーンズビー 「九人の息子たち」
- 1993年:ベンジャミン・M・シュッツ 「メアリー、ドアを閉めて」
- 1994年:ローレンス・ブロック 「ケラーの治療法」
- 1995年:ダグ・アリン 「ダンシング・ベア」
- 1996年:ジーン・B・クーパー 「判事の跡継ぎ」
- 1997年:マイケル・マローン 「赤粘土の町」
- 1998年:ローレンス・ブロック 「ケラーの責任」
- 1999年:トム・フランクリン 「密猟者たち」
- 2000年:アン・ペリー 「英雄たち」
- 2001年:ピーター・ロビンスン 「ミッシング・イン・アクション」
- 2002年:S・J・ローザン 「ペテン師ディランシー」
- 2003年:レイモンド・ステイバー 「メキシカン・ギャッビー」
- 2004年:G・ミキ・ヘイデン 「メイドたち」
- 2005年:ローリー・リン・ドラモンド 「傷痕」
- 2006年:ジェイムズ・W・ホール 「隠れた条件」
- 2007年:チャールズ・アーダイ(英語版) 「銃後の守り」
- 2008年:スーザン・ストレイト(英語版) 「ゴールデン・ゴーファー」
- 2009年:T・ジェファーソン・パーカー "Skinhead Central"
- 2010年:ルイス・アルベルト・ウレア(英語版) "Amapola"
- 2011年:ダグ・アリン "The Scent of Lilacs"
- 2012年:ピーター・ターンブル 「鉄道運転士に帽子を掲げた男」
- 2013年:該当作品なし
- 2014年:ジョン・コナリー 「カクストン私設図書館」
- 2015年:ギリアン・フリン "What Do You Do?"
- 2016年:スティーヴン・キング "Obits"
- 2017年:ローレンス・ブロック "Autumn at the Automat"
ペーパーバック部門
ヤングアダルト部門
ジュブナイル部門
メアリー・ヒギンズ・クラーク賞
メアリー・ヒギンズ・クラーク賞は、「サスペンスの女王」として知られた作家、メアリ・H・クラークに因んで創設された。主人公が若い女性であること、その女性の日常が突然冒されることなど、クラークが7つのガイドラインを定めている[1]。
- 2001年:バーバラ・ダマート(英語版) "Authorized Personnel Only"
- 2002年:ジュディス・ケルマン "Summer of Storms"
- 2003年:ローズ・コナーズ(英語版) 『霧のとばり』
- 2004年:M・K・プレストン 『陽炎の匂い』
- 2005年:ロシェル・メジャー・クリッヒ(英語版) "Grave Endings"
- 2006年:カレン・ハーパー(英語版) "Dark Angel"
- 2007年:フィオナ・マウンテン "Bloodline"
- 2008年:サンディ・オールト "Wild Indigo"
- 2009年:ビル・フロイド 『ニーナの記憶』
- 2010年:S・J・ボルトン 『毒の目覚め』
- 2011年:エリー・グリフィス(英語版) "The Crossing Places"
- 2012年:サラ・J・ヘンリー "Learning to Swim"
- 2013年:ハンク・フィリッピ・ライアン(英語版) "The Other Woman"
- 2014年:ジェニー・ミルヒマン "Cover of Snow"
- 2015年:ジェーン・ケーシー(英語版) "The Stranger You Know"
- 2016年:ローリー・レーダー=デイ "Little Pretty Things"
- 2017年:チャールズ・トッド(英語版) "The Shattered Tree"
映画脚本部門
名誉賞・功労賞等
- 巨匠賞 (The Grand Master Award)
- 生涯に渡って推理小説に貢献し、良質の作品を多数発表した作家に対して与えられる賞。この賞は、1955年にアガサ・クリスティが受賞したのを皮切りに、1978年まで不定期に行われた。1979年からは、毎年1名が受賞している(2009年のみ、2名が受賞)。
- 大鴉賞 (The Raven Award)
- 作家以外で、ミステリーのジャンルに貢献した人に与えられる。
- ロバート・L・フィッシュ賞 (The Robert L. Fish Memorial Award)
- 1984年から。アメリカの処女短編ミステリー小説の作者に与えられる。
- エラリー・クイーン賞 (The Ellery Queen Award)
歴代の巨匠賞
日本への影響
受賞作の多くは日本で出版され、その際に宣伝として賞の名前が使用されている。
また日本人作家の作品として、2004年に桐野夏生の『OUT』が、2012年に東野圭吾の『容疑者Xの献身』がそれぞれエドガー賞長編賞に、2018年に湊かなえの『贖罪』がエドガー賞ペーパーバック部門にノミネートされた。2019年には竹内康浩の評論「マークX 誰がハック・フィンの父親を殺したか」がエドガー賞評論部門にノミネートされた。
アメリカ探偵作家クラブ傑作選
- 1946年からはじまった、MWAの会員が編者をつとめる、テーマ別アンソロジー
- 日本では以下がハヤカワミステリ文庫から刊行
- あの手この手の犯罪 ロバート・L・フィッシュ編 本国:1975年刊、日本:1982年刊
- レディのたくらみ ミシェル・スラング編
- 眠れぬ夜の愉しみ ハロルド・Q・マスア編
- 犯行現場へ急げ ジョン・ボール編
- 殺人心理学 ルーシー・フリーマン編
- エドガー賞全集 ビル・プロンジーニ編
- 密室大集合 エドワード・D・ホック編
- スペシャリストと犯罪 ローレンス・トリート編
- 犯罪こそわが人生 ブライアン・ガーフィールド編
- 愉快な結末 グレゴリー・マクドナルド編
- ショウほど素敵な犯罪はない メアリ・ヒギンズ クラーク編
- 遠い国の犯罪 ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンク編
- 動物たちは共犯者 サラ・パレツキー編
- 新エドガー賞全集 マーティン・H・グリーンバーグ編
- 私は目撃者―MWAアメリカ探偵作家協会アンソロジー ブライアン・ガーフィールド 編 日本、1979年
脚注
関連項目
出典
外部リンク
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