Macintosh互換機の登場によりApple自身もMac OSという呼称を使うようになり、System 7.5.1からは起動画面で Mac OSロゴが表示されるようになった。Mac OSという呼び名が通称から正式なものになったのは、1997年1月、Mac OS 7.6がリリースされた時である。互換機の普及とともに、MacintoshのハードウェアとOSを明確に区分する必要が生じたことによる。その後Appleの方針転換により互換機は市場から姿を消したが、Mac OSという名前はその後のAppleのOS製品に引き継がれている。1998年に発売されたiMac以降のMacintoshでは、Toolbox ROMの内容の大半がMac OS側に移されたNew World ROMマシンとなって、ほぼハードウェアから独立したOSとなった。
Mac OSは組版・デザイン・写真・イラストレーションといった分野で好んで利用された。これは、PC/AT互換機では多色高解像度へ満足のいく対応が行われた時期が遅く、それまではMacintoshが事実上唯一の存在であったことが最大の理由である。また、色調管理など多色画像処理に必須とされている機能にも早くから対応しており、完成度の高い WYSIWYG を当初から実現していたことも大きい。
画像処理を得意とする理由としては、Lisaのためにビル・アトキンソンが中心となって開発したグラフィックルーチンLisaGrafがMacintoshに移植され、 QuickDrawとして初めの機種からROMの状態で搭載された点が大きい。また当初よりある程度先を見て広いメモリ空間を確保しており、いわゆる「640KBの壁」に悩まされていたMS-DOS系システムに比べて大きな画像を扱いやすかったという要素も挙げられる。グラフィックルーチンはMac OS XからPDFをベースとしたQuartzに替わったが、互換性を考慮してMac OS X v10.3まではQuickDraw関連の開発が続行され、Mac OS X v10.4で非推奨となった。
デスクアクセサリは起動と終了の手間を省くための手段として用意された。わずかなメモリしか使わないため、使用中のアプリケーションとは別に起動しておくことができ、このころのMacintoshには欠かせないものだった。サードパーティーからは小物の位置づけであるにもかかわらず多機能なデスクアクセサリが多数開発された。Mac OSにあらかじめ搭載されていたデスクアクセサリもある。Mac OS 9まで残された「計算機」や「スクラップブック」がそうである。
System 7でMacが疑似マルチタスクになるとデスクアクセサリは単なる一アプリケーションとなり、Font/DA Moverも姿を消した。Appleメニューはアプリケーションやファイルを起動するためのランチャーとなった。Mac OS 9まではデスクアクセサリのランチャーであったことの名残だということがうかがえる。
Macintosh互換機のサポートはSystem 7.5.1で最初に発表され、オリジナルの起動アイコンであるHappy MacをもとにしたMac OSのロゴが初めて使われた。Mac OS 7.6からは名称をSystemからMac OSに変更した。この名称変更はOSがApple純正のMachintosh専用ではないことを示すために実施された[8]。
ファイルシステム
Macintoshが最初に採用したMachintosh File System (MFS) はサブフォルダのないフラットなファイルシステムだった。発売直後の1985年にはきちんとディレクトリに対応したHierarchical File System (HFS)に置き換えられた。両者には互換性があった。改良版であるHFS Plus("HFS+"または"Mac OS Extended")が1997年に発表されて1998年に提供された[9]。
System 1.0、1.1、2.0ではMachintosh File System (MFS) というディレクトリのないファイルシステムを採用していた。Finderにはファイルを整理できるフォルダがあるが、このフォルダは仮想的なものであり、他のアプリケーションからは見えず、実際にはディスク上に存在していなかった。
System 2.1 (Finder 5.0) ではディレクトリ機能を持つHierarchical File System (HFS) が採用された。Hard Disk 20をサポートする目的で開発され、HFSはRAM上に実装された。起動ディスクやほとんどのフロッピーディスクは400KBのMFSのままだった。
System 3.0 (Finder 5.1) がMacintosh Plusから導入された。公式にHFSが採用され、起動ディスクは800KBで、SCSIやAppleShareなどの新技術が導入されたほか、削除したいファイルをドロップされたゴミ箱のアイコンが膨らむようになった。Mac OSという名称ではなく漢字Talkとして日本語版に対応した。
1987年後期にAppleはApple Macintosh System Software Update 5.0のタイトルでパッケージを公開した。49ドルの価格で800KBのフロッピーディスク4枚の形態で販売され、MachintoshのOSが小売販売されたのはこの時が初めてだった。ソフトウェアはユーザーグループやネットの掲示板などでも引き続き無料で配布された。製品の箱にはバージョン 5.0と表記されていたが、このバージョンナンバーは画面のどこにも表示されなかった。4枚のディスクのうち、システムツール1、システムツール2、ユーティリティ1の3枚はいずれも起動可能で、ユーザーは使いたいツールが含まれているディスクから起動できた。例えばプリンタドライバが入っているのはシステムツール2だけであり、Disk First AidやApple HD SC Setupが入っているのはシステムツール1だけだった。これらのディスクにはシステムツールズと書かれていたことから、ユーザーやマスコミはこのバージョンをシステムツールズ5.0と呼ぶことが多かった。
System 5の最も大きな変更点は複数のプログラムを同時に実行できる機能拡張のMultiFinderを搭載したことだった。OSはノンプリエンプティブな設計だった。この設計ではフォアグラウンドアプリケーションが制御を返した時だけバックグラウンドアプリケーションが動作できた。アプリケーションはイベントを処理するためにOSの関数を呼び出しており、OSの関数が勝手に制御を返すようにすることで、既存のアプリケーションの大半は修正せずとも自動的にバックグラウンドのアプリケーションとCPU時間を共有できた。MultiFinderを使用しない選択も可能だった。この場合は複数のアプリケーションを同時に実行できなかった。1990年にInfoWorld誌が実施したテストでは、PCとMacで4つのマルチタスク処理をテストし、MultiFinderを高く評価したが、一方でSystem 6上のMultiFinderを使わないシングルタスク構成と比べてファイルの転送や印刷の速度が半分になったことを指摘した。
1996年12月20日のAppleがNeXT買収発表後のWWDC '97で発表されたRhapsody計画(後のMac OS X Server 1.0)を経て、2000年のMacworld Expo/San FranciscoでMac OS X(後のOS X)が発表され[19]、それまでのつなぎとしてシステムの近代化、インターネットへの親和性強化が図られる。Coplandプロジェクトで開発されたもののうち、使えそうな技術から順次採用を進め、半年ごとにマイナーアップデートとメジャーアップデートを繰り返すという方針が発表された。
コードネーム:Starlight。Power Mac G4 (Mirrored Drive Doors 2003) を起動できる[29]旧Mac OSであり、Classic環境向けとしても最後のリリース。アップデータも公開された[30][31]。
Mac OS Xへの移行
macOS (当初はMac OS X、2012年から2016年まではOS X[32])は、Appleの2021年1月時点のMac用OSであり、2001年にClassic Mac OSの後継OSとして登場した。Mac OSのバージョン10として宣伝されていたが、Classic Mac OSとは全く別のOSである。
Classic Mac OSの設計を引き継いだ後継OSはMac OS 9であり、そのさらなる後継は存在しない。Classic Mac OSと異なりUnixベースのOSで[33]、AppleがNeXT社を買収してスティーブ・ジョブズがAppleのCEOに復帰した際に、1980年代後半から1997年までに開発されたNeXTがNeXTSTEPを経てからmacOSになった[34]。macOSはBSDのコードやXNUカーネルも利用しており[35]、そのコア部分はAppleのオープンソースプロジェクトであるOSのDarwinがベースになっている。
最初はサーバ用OSのMacOS X Server 1.0として1999年にリリースされた。このバージョンから初めてAquaユーザインタフェースが採用された一方で、Classic Mac OSのプラチナスタイルも残されており、部分的にはOPENSTEPの名残もあった。デスクトップ版のMacOS X 10.0が続けて2001年3月24日にリリースされ、Aquaユーザインタフェースがサポートされた。これ以来複数のバージョンがリリースされている。Mac OS Xは2012年にOS Xに、2016年にmacOSに改名された。
従来のMacユーザーの多くがMac OS Xへアップグレードしたが、ユーザーフレンドリーではない部分がある、旧Mac OSの機能が完全に再現されていない、同じハード(特に旧機種)で遅い、旧OSとの互換性が不完全など、最初の数年は批判に晒された[36]。旧Mac OS用のドライバ(プリンタ、スキャナ、タブレットなど)はMac OS Xと互換性がなく、Mac OS Xで古いOS用のプログラムを動かすためのClassic Environmentがきちんとサポートされず、1997年以前のマシンをサポートしておらず、Macintoshユーザーの一部はMac OS Xがリリースされた後も数年間にわたりClassic Mac OSを使い続けた。スティーブ・ジョブズは2002年のWWDCでMac OS 9の葬式を開催してMac OS Xへのアップグレードを人々に促した[37]。
Classic
Mac OS XのPowerPC版は旧Macのアプリを動かす互換レイヤーであるClassic EnvironmentをMac OS X 10.4 Tigerまでサポートしていた。元々はブルーボックスのコードネームで開発され、Mac OS Xのアプリケーションとして動作し、Mac OS 9のバージョン9.1以降の実行環境をほぼ再現していた。Mac OS XのCarbon APIに移植されていないアプリケーションをMac OS Xで実行できた。ほぼシームレスに動作したが、ClassicアプリケーションはMac OS 9の見た目のままで、Mac OS XのAquaな外観にはならなかった。
New World ROMを搭載したPowerPCベースのMacは当初、Mac OS 9.2に加えてMac OS Xを同梱した。Mac OS X 10.4以降からは旧OSがプリインストールされなくなり、旧OSを使いたいユーザーはMac OS 9.2を別途手動でインストールする必要があった。Classic Mac OS用に書かれたアプリケーションで行儀のよいものは新OSでもほぼ動作し、ハードウェアに依存した処理がなく、全てOSを通してハードを操作するソフトウェアだけが互換性を保証された。Mac OS 9はx86で動作しないため、IntelベースのMacではClassic環境を使用できない。
^“System 7.5 and Mac OS 7.6: The Beginning and End of an Era” (2014年6月27日). 2016年9月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月23日閲覧。 “Mac OS 7.6 deserves some special mention. The most obvious difference is the name change; this was for the Mac clone manufacturers, who weren’t making Macintoshes but “Mac OS Computers”.”