経験過程(けいけんかてい、英: empirical process)は、経験測度の中心極限定理の一般化のひとつである。経験過程の理論は、ノンパラメトリック統計学などに応用される。
ある一定の条件のもとで、経験測度Pnが、確率測度へ収束するという結果はよく知られている(Glivenko-Cantelliの定理)。経験過程の理論によって、この収束の速さを説明することができる。 中心化・基準化された経験測度は、
となる。これによる、適当な可測関数fの像は、
と書くことができる。中心極限定理により、適当な可測集合Aに対して、 G n ( A ) {\displaystyle G_{n}(A)} は、正規確率変数N(0, P(A)(1 − P(A)))へ分布収束する。同様に、適当な関数fに対して、 G n f {\displaystyle G_{n}f} は、正規確率変数 N ( 0 , E ( f − E f ) 2 ) {\displaystyle N(0,\mathbb {E} (f-\mathbb {E} f)^{2})} へ分布収束する。
経験過程に関する有名な結果のひとつに、Donskerの定理がある。この定理は、ある一定のガウス過程へ弱収束する経験過程のクラス(Donskerクラス)についての研究につながった。DonskerクラスはGlivenko-Cantelliクラスになるが、その逆は一般的に正しくない。
例として、経験分布関数を考える。i.i.d.確率変数 X 1 , X n , … {\displaystyle X_{1},X_{n},\dots } において、これは、
と与えられる。この例では、経験過程は C = { ( − ∞ , x ] : x ∈ R } {\displaystyle {\mathcal {C}}=\{(-\infty ,x]:x\in \mathbb {R} \}} のクラスによって特徴づけられる。この C {\displaystyle {\mathcal {C}}} はDonskerクラスであることを示すことができ、特に、: n ( F n ( x ) − F ( x ) ) {\displaystyle {\sqrt {n}}(F_{n}(x)-F(x))} はブラウン橋 B(F(x))に弱収束する。