王立化学会(おうりつかがくかい、英: Royal Society of Chemistry、略称: RSC)は、化学の推進を目的としたイギリスの学術機関(専門機関)である。1980年に、イギリス王室の新しい勅許により、化学会 (Chemical Society)(英語版)、王立化学協会 (Royal Institute of Chemistry)(英語版)、ファラデー協会 (Faraday Society)(英語版)、および分析化学会 (Society for Analytical Chemistry)(英語版)が合併し、学術機関および専門機関という2つの役割を持って設立された。設立時の会員数は国内3万4千人、国外8千人であった[2]。
本部はロンドン、ピカデリーのバーリントンハウスにある。ケンブリッジのトーマス・グレアムハウス(化学会の初代会長であるトーマス・グレアムにちなんで名づけられた)にもオフィスがあり、そこでは出版事業を行っている。その他、アメリカ合衆国、フィラデルフィアのユニバーシティー・シティー・サイエンス・センター (University City Science Center)(英語版)、中国の北京と上海、インドのバンガロールにもオフィスがある[3]。
国内外とも対象地域と地理的区分に基づいて9つの部門で構成されており、イギリスとアイルランドを取り扱っている35の地域支部がある。イギリス連邦の国々やその他の多くの国々では、それぞれ地域の代表がおり、活動している。
王立化学会は研究を行い、雑誌や書籍、データベースを出版するとともに、会議、セミナー、ワークショップを開催している。
また、王立化学会はイギリスの化学のための専門機関であり、チャータード・ケミスト(Chartered Chemist、公認化学者、CChem)(英語版)の資格を授与することができる。また、サイエンス・カウンシル(Science Council、王室公認の学術会議)(英語版) を通じて適切な有資格者に対し、チャータード・サイエンティスト (Chartered Scientist、公認科学者、CSci)(英語版)、レジスタード・サイエンティスト (Registered Scientist、登録科学者、RSci)、およびレジスタード・サイエンス・テクニシャン (Registered Science Technician、登録科学技術者、RScTech) の称号の授与を行う。
「FRSC」は会のフェローの中から、化学や生物化学など他の分野への顕著な貢献があったグループに対して授与される。会のフェローの名前は毎年タイムズ誌で公表される。アナラリー・フェローシップ・オブ・ザ・ソサイアティー (Honorary Fellowship of the Society、名誉フェロー、HonFRSC)(英語版) の称号は、化学分野で特に際立った貢献をした者に対し授与される。
王立化学会は主に化学領域をカバーする大規模なライブラリーを備えている。これはバーリントンハウスの化学センターにあり、会員はオンラインでアクセスすることができ、また一般にも公開されている。
会員の階級とそのポスト・ノミナル・レターズは以下の通りである[4]。
王立化学会は非営利の出版事業を行っている。この事業で得られた剰余金は、化学の推進を目的とした支援のために投資されている。
主力雑誌である「Chemical Communications」、「Chemical Science」および、「Chemical Society Reviews」などの学術雑誌に加えて、下記の通りの出版を行っている。
王立化学会は化学分野での功績に対し、毎年様々な賞を授与している [8]。
王立化学会は基金により金融支援やボランティアの支援、助言や指導を通じて会員やその家族の困難な時期の支援を行っている。この制度のスタートは第一次世界大戦で亡くなったメンバーに対する化学協会 (Institute of Chemistry)(後の王立化学協会)の支援体制が確立した1920年にさかのぼる[10]。
王立化学会は独自の紋章を持っている。2種類の紋章があり、一つはライオンとユニコーンが描かれており、ラテン語の標題「Pro scientia et humanitate」(知識のために、人類の利益のために)が記されている。もう一つは簡易版で王立化学協会の紋章と同様、中央に盾だけを配したものである。
会長は隔年で選出される。会長はジョゼフ・プリーストリー(Joseph Priestley、1733-1804、イギリスの自然哲学者)の立ち姿が描かれて中央に六角形の宝石があしらわれた記章を身につけている。