『海の上のピアニスト』(うみのうえのピアニスト、伊: La leggenda del pianista sull'oceano、英: The Legend of 1900) は、1998年のイタリアのドラマ映画。監督はジュゼッペ・トルナトーレ、出演はティム・ロスとプルイット・テイラー・ヴィンスなど。豪華客船の中で生まれ、生涯船を降りることのなかったピアニストの物語で[4]、原作はアレッサンドロ・バリッコの独白劇『ノヴェチェント(イタリア語版)』[注 1]。
ストーリー
第二次世界大戦の終戦直後、マックス・トゥーニーは愛用のトランペットを金に換えるために楽器屋を訪れた。彼はトランペットを売った後になって、店主にもう一度だけトランペットを吹かせて欲しいと頼む。彼の演奏を聴いた店主は、同じ曲がピアノで刻まれたレコードを持ち出し、曲と演奏者の名前を尋ねた。すると彼は、「1900 (ナインティーン・ハンドレッド)」と呼ばれた男の物語を語り始める。
大西洋を往復する豪華客船ヴァージニアン号。その上で産み捨てられた赤ん坊を拾った黒人機関士のダニー・ブートマンは、その子に自分の名前、捨て置かれていた箱の名前、生まれた西暦などから「ダニー・ブードマン・T.D.(Thanks Danny)レモン・1900」と名付けて大切に育てる。しかし、ダニーは1900が8歳の時に事故で帰らぬ人となった。1900はダニーの葬儀で流れた音楽に惹かれ、ピアノを弾き始める。
1927年、成長した1900は嵐の夜に船酔いで動けないマックス(コーン)と出会い、共に船内でバンド演奏をすることになる。その誰も聴いたことの無い音楽の噂は瞬く間に広がった。そんな中、ジャズを生んだというピアニストのジェリー・ロール・モートンも噂を聞きつけ、ピアノ演奏による決闘を申し込んでくるが、奇跡のようなピアノ演奏で1900は見事にモートンを打ち負かす。
ある日、レコード会社が1900の音楽を世間に広めようと録音にやってきた。1900はろくに話も聴かず演奏を始める。この時、何気なく窓に目をやると美しい女がそこに見えた。彼はすぐに恋に落ちてしまい、演奏した音楽には愛が溢れていた。録音が終わると、1900は契約を破棄してレコードを持ち去る。
1900が何も行動できずにいると、彼女が船を降りる時がやってくる。1900は勇気を出して会話をするが、レコードを渡すことは人ごみで果たすことはできなかった。1900はレコードを割り砕き、ゴミ箱に捨ててしまう。
彼女に会いに行くために1900はついに船を降りることを決意する。仲間たちが見送る中、1900は階段をゆっくりと降りていった。しかし、途中で立ち止まり、何も言わずに船の上に戻ってきてしまう。それから月日は経ち、マックスも船を降り、1900だけが船に残り続けた。
1946年、楽器屋の店主から、戦争で朽ち果てたヴァージニアン号を解体するために、船にダイナマイトが仕掛けられたと知らされたマックスは、船内にまだ1900が残っていることを必死で訴え、強引に入船する。自らがゴミ箱から拾い上げ、後に楽器屋の店主が入手したレコードを借り出して。
しかし、いくら探しても船内に1900の姿は無く、レコードを流しても応答は無い。諦めかけたその時、マックスは暗がりに人影を見つける。1900の姿だった。マックスは船から降りて一緒に音楽をしたいと説得するが、1900が船から降りられない理由を聞かされると、返す言葉が無かった。
マックスが船を降りた後、船は爆音と共に海に沈んでいった。話を聞き終えた楽器屋の店主は、去り行くマックスにトランペットを返して見送る。
キャスト
- VHS・DVD版:2000年8月16日発売のVHSに初収録。
- Blu-ray版:2020年11月18日発売の「4Kデジタル修復版 Blu-ray」に初収録[6][7]。
- テレビ東京版:初回放送2001年12月31日『年末特別ロードショー』
スタッフ
作品の評価
映画批評家によるレビュー
Rotten Tomatoesによれば、41件の評論のうち高評価は54%にあたる22件で、平均点は10点満点中6.2点となっている[8]。
Metacriticによれば、28件の評論のうち、高評価は16件、賛否混在は10件、低評価は2件で、平均点は100点満点中58点となっている[9]。
受賞歴
その他
- イタリアで公開されたオリジナル版の上映時間は170分。アメリカなどで公開された120分版はファイン・ライン・フィーチャーズによるもので、タイトルやクレジットが英語になっている。日本で公開されたのもファイン・ライン版で、米伊合作とされているのはそのためである。日本では本作のオリジナル版のDVD化はされていない。2020年に日本で劇場公開版の4Kデジタル修正版とオリジナル版が公開されBlu-rayでもリリースされた。
- イタリア盤のサウンドトラックは収録曲数が多い。通常の国際盤には、踊るようにピアノを弾く場面で流れる「マジック・ワルツ」などが収録されていない。
- ヴァージニアン号という船は実際にあり、1904年に完成し、1954年ごろに廃船となった[10]。また、船の撮影にはスタジオのセットのほかに貨物船を改造したものが使われた。
- 作中に登場するピアニスト、ジェリー・ロール・モートンは実在の人物である。
- ピアノの演奏シーンは、ティム・ロス本人によるものではあるが、演奏自体はプロのピアニストによる別撮りである。
脚注
注釈
- ^ 「ノヴェチェント」は1900のイタリア語読み。
出典
外部リンク
英語版ウィキクォートに本記事に関連した引用句集があります。
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