文藝賞(ぶんげいしょう)は、1962年[1][2]に創設された文学賞で、河出書房新社が主催[2]し、以降年1回発表されている。2023年現在、受賞カテゴリーは中編から長編である[3]。
概要
受賞は選考委員の合議によって決定され、受賞者には正賞として記念品、副賞として50万円が授与される[1]。受賞作は同社が発刊している文学雑誌『文藝』に掲載されるほか、単行本としても刊行される。締め切りは毎年の3月末日となっている。
第2回までは長編部門、中・短編部門、戯曲部門の3部門制をとっていた。また、1967年度には河出長編小説賞が存在した。
河出書房新社は同賞を小説ジャンルにおける「新人の登竜門」と位置づけて未発表の小説原稿を募集している。2000年頃から中高校生の受賞が顕著になり、それ以降の低年齢作家ブームの先駆けとされる。特に第42回には三並夏が中学3年生(発表時15歳)で受賞し、それまでで最年少の受賞者として話題を呼んだ。最終選考に残った3作品が全て受賞となることもあるなど、積極的に授賞が行われている。
純文学系の公募している新人賞には他に、文學界新人賞、群像新人文学賞、新潮新人賞、すばる文学賞、太宰治賞などがある。
受賞作一覧
第1回から第10回
回(年) |
応募総数 |
賞 |
受賞者 |
受賞作
|
第1回(1962年度) |
中短編部門 550編 戯曲部門 171編 |
【長編部門】
|
受賞 |
高橋和巳 |
「悲の器」
|
【中短編部門】
|
受賞 |
田畑麦彦 |
「嬰ヘ短調」
|
受賞 |
西田喜代志 |
「海辺の物語」
|
佳作 |
柘植光彦 |
「裏切らなかった五人」
|
佳作 |
後藤明生 |
「関係」
|
佳作 |
松尾忠男 |
「ナン」
|
【戯曲部門】
|
受賞作なし
|
佳作 |
古島一雄 |
「わが夢の女」
|
佳作 |
近藤耕人 |
「風」
|
佳作 |
松原正 |
「藤原國衡」
|
佳作 |
朴秀鴻 |
「日本の空の下で」
|
第2回(1963年度) |
長編部門 137編 中短編部門 563編 戯曲部門 147編 |
【長編部門】
|
受賞作なし
|
佳作 |
三輪秀彦 |
「内面の都市」
|
佳作 |
三枝和子 |
「葬送の朝」
|
【中短編部門】
|
受賞 |
真継伸彦 |
「鮫」
|
佳作 |
竹内泰宏 |
「見張り」
|
佳作 |
八登千代 |
「夜明けまで」
|
【戯曲部門】
|
受賞作なし
|
佳作第一席 |
藤本義一 |
「日時計の家」
|
佳作第二席 |
古島一雄 |
「青ひげ」
|
第3回(1964年度) |
|
【中短編部門】
|
受賞作なし
|
佳作 |
北小路功光 |
「ミクロコスモス」
|
第4回(1966年度) |
393編 |
受賞 |
金鶴泳 |
「凍える口」
|
佳作一位 |
加藤敦美 |
「大山兵曹」
|
佳作二位 |
樟位正 |
「塔への道」
|
第5回(1967年度) |
412編 |
受賞作なし
|
佳作 |
辻原登 [注 1] |
「ミチオ・カンタービレ」
|
佳作 |
福永令三 |
「家路」
|
第6回(1969年度) |
532編 |
受賞作なし
|
受賞辞退 |
野中周平 |
「鈍夜」
|
第7回(1970年度) |
488編 |
受賞 |
黒羽英二 |
「目的補語」
|
受賞 |
小野木朝子 |
「クリスマスの旅」
|
第8回(1971年度) |
523編 |
受賞 |
本田元弥 |
「家のなか・なかの家」
|
受賞 |
後藤みな子 |
「刻を曳く」
|
第9回(1972年度) |
546編 |
受賞 |
尾高修也 |
「危うい歳月」
|
第10回(1973年度) |
458編 |
受賞作なし
|
佳作 |
北澤輝明 |
「あわいの構図」
|
佳作 |
赤坂清一 |
「帰らざる道」
|
第11回から第20回
第21回から第30回
第31回から第40回
回(年) |
応募総数 |
賞 |
受賞者 |
受賞作
|
第31回(1994年度) |
1148編 |
受賞 |
雨森零 |
「首飾り」
|
第32回(1995年度) |
1230編 |
受賞 |
伊藤たかみ |
「助手席にて、グルグル・ダンスを踊って」
|
優秀作 |
池内広明 |
「ノックする人びと」
|
優秀作 |
金真須美 |
「メソッド」
|
第33回(1996年度) |
1542編 |
受賞作なし
|
優秀作 |
大鋸一正 |
「フレア」
|
優秀作 |
佐藤亜有子 |
「ボディ・レンタル」
|
第34回(1997年度) |
1551編 |
受賞 |
鈴木清剛 |
「ラジオデイズ」
|
受賞 |
星野智幸 |
「最後の吐息」
|
第35回(1998年度) |
1572編 |
受賞 |
鹿島田真希 |
「二匹」
|
第36回(1999年度) |
1596編 |
受賞 |
濱田順子 |
「Tiny,tiny」
|
第37回(2000年度) |
1578編 |
受賞 |
黒田晶 |
「メイドインジャパン」[注 7]
|
優秀作 |
佐藤智加 |
「肉触」
|
第38回(2001年度) |
1592編 |
受賞 |
綿矢りさ |
「インストール」
|
第39回(2002年度) |
1736編 |
受賞 |
中村航 |
「リレキショ」
|
受賞 |
岡田智彦 |
「キッズ アー オールライト」
|
第40回(2003年度) |
1862編 |
受賞 |
羽田圭介 |
「黒冷水」
|
受賞 |
生田紗代 |
「オアシス」
|
受賞 |
伏見憲明 |
「魔女の息子」
|
第41回から第50回
回(年) |
応募総数 |
賞 |
受賞者 |
受賞作
|
第41回(2004年度) |
2028編 |
受賞 |
山崎ナオコーラ |
「人のセックスを笑うな」
|
受賞 |
白岩玄 |
「野ブタ。をプロデュース」
|
第42回(2005年度) |
2281編 |
受賞 |
青山七恵 |
「窓の灯」
|
受賞 |
三並夏[注 8] |
「平成マシンガンズ」
|
第43回(2006年度) |
2317編 |
受賞 |
荻世いをら |
「公園」
|
受賞 |
中山咲 |
「ヘンリエッタ」
|
第44回(2007年度) |
2128編 |
受賞 |
磯崎憲一郎 |
「肝心の子供」
|
受賞 |
丹下健太 |
「青色讃歌」
|
第45回(2008年度) |
2031編 |
受賞 |
喜多ふあり |
「けちゃっぷ」
|
受賞 |
安戸悠太 |
「おひるのたびにさようなら」
|
第46回(2009年度) |
1974編 |
受賞 |
大森兄弟 |
「犬はいつも足元にいて」
|
受賞 |
藤代泉 |
「ボーダー&レス」
|
第47回(2010年度) |
2012編 |
受賞作なし[注 9]
|
第48回(2011年度) |
1825編 |
受賞 |
今村友紀 |
「クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰」
|
第49回(2012年度) |
2022編 |
受賞 |
谷川直子 |
「おしかくさま」
|
第50回(2013年度) |
1819編 |
受賞 |
桜井晴也 |
「世界泥棒」
|
第51回から第60回
回(年) |
応募総数 |
賞 |
受賞者 |
受賞作
|
第51回(2014年度) |
1809編 |
受賞 |
李龍徳 |
「死にたくなったら電話して」
|
受賞 |
金子薫 |
「アルタッドに捧ぐ」
|
第52回(2015年度) |
1786編 |
受賞 |
山下紘加 |
「ドール」
|
受賞 |
畠山丑雄 |
「地の底の記憶」[4]
|
第53回(2016年度) |
1692編 |
受賞 |
町屋良平 |
「青が破れる」[5]
|
第54回(2017年度) |
1714編
|
受賞 |
若竹千佐子 |
「おらおらでひとりいぐも」[注 10][6]
|
第55回(2018年度) |
1728編 |
受賞 |
日上秀之 |
「はんぷくするもの」
|
受賞 |
山野辺太郎 |
「いつか深い穴に落ちるまで」
|
第56回(2019年度) |
1840編 |
受賞 |
宇佐見りん |
「かか」[注 11]
|
受賞 |
遠野遥 |
「改良」
|
第57回(2020年度)
|
2360編
|
受賞
|
藤原無雨
|
「水と礫」
|
優秀作
|
新胡桃
|
「星に帰れよ」
|
第58回(2021年度)
|
2459編
|
受賞
|
澤大知
|
「眼球達磨式」
|
第59回(2022年度)
|
2376編
|
受賞
|
安堂ホセ
|
「ジャクソンひとり」
|
受賞
|
日比野コレコ
|
「ビューティフルからビューティフルへ」
|
第60回(2023年度)
|
2018編 短編部門 4176編
|
受賞 |
小泉綾子 |
「無敵の犬の夜」
|
優秀作 |
佐佐木陸 |
「解答者は走ってください」
|
優秀作 |
図野象 |
「おわりのそこみえ」
|
【短編部門】
|
受賞 |
西野冬器 |
「子宮の夢」
|
優秀作 |
才谷景 |
「海を吸う」
|
選考委員
脚注
注釈
- ^ 受賞時の名義は「村上博」
- ^ 応募時の名義は「柳川春町」
- ^ 応募時の名義は「東斎屋金魚」
- ^ 「あつよしの夏―四万十川」を改題
- ^ 「マネーゲームそして/あるいはランビエ紋輪上のスキップ」を改題
- ^ 直木賞受賞
- ^ 「YOU LOVE US」を改題
- ^ 最年少受賞
- ^ 受賞が内定していた作品についてインターネット上の創作からプロットの「借り物」であることが判明したためとしている。作為的でなかったこと、応募者がプロの作家ではなかったことから著者および作品名は明かされていない。優秀作や佳作も含めが受賞がないのは43年ぶりとなる。
- ^ 芥川賞受賞
- ^ 三島由紀夫賞受賞
- ^ 江藤は第33回の選考会直前に「此度の候補作四篇を通読して、自分が新人の未発表作品の審査選考に当る時期が、とうに過ぎ去っていることを改めて痛感し」たと述べて選考委員を辞任した。そのため実際にはこの回の選考に関わっていない。
出典
関連項目
外部リンク