ルシ語 (ルシご、Lusi)あるいはカリアイ・コヴェ語 (カリアイ・コヴェご、Kaliai-Kove、Kaliai-Koβe )とはニューブリテン島 西部で話されている言語 である。系統的に近い言語にはコヴェ語 (英語版 ) やバリアイ語 (英語版 ) がある。またルシ語話者と非オーストロネシア系言語であるアネム語 話者の居住区域は非常に近く、両者の比較研究がなされている[4] 。
分類史
1969年 、デイヴィッド・R・カウンツ (David R. Counts)はカリアイ・コヴェ語の一方言Kandoka-Lusi語としてルシ語の文法書 を世に出した[1] 。カウンツが文法書を出版した当時、カリアイ・コヴェ語とバリアイ語はコヴェ・バリアイ亜語族(英 : Kove-Bariai sub-family )に分類されていた[5] が、同じ頃アン・チャウニング (Ann Chowning )はこの亜語族に同じくニューブリテン島西部の言語であるキレンゲ語(Kilenge)とマレウ語(Maleu) (英語版 ) を加えた「バリアイ語族」(英 : Bariai family )という系統関係説を唱えた[6] 。これを受けてカウンツはデータ不足であると断りは入れつつニューブリテン島西部とシアッシ諸島 の間の交易 関係を手掛かりとして、バリアイ語族(とりわけカリアイ・コヴェ語)とシアッシ語 (Siassi; 別名: Arop-Lokep )が密接な関わり合いを持っているのではないかと推測を行っている[6] 。『世界民族言語地図』でもコヴェ・カリアイ語 (Kove-Kaliai)がオーストロネシア諸語シアッシ言語科バリアイ下位言語科コヴェ・バリアイセクションに分類されている。しかし現在Ethnologue 第18版やGlottolog 2.7 において、コヴェ語はあくまでもルシ語と系統的に近い別言語の扱いとなっている。
音韻論
子音
上表のうち/ɡ/ は音声学 的に近い/ŋ ɡ/ ではなく、あくまでも/ɣ/ の異音 として現れる[12] 。また無声閉鎖音は語幹の語頭で帯気音 、それ以外の箇所では無気音となる(例: /kanika/ → [kʰ ànik a] 〈取っ手つきバスケット〉)[12] 。
母音
強勢
ルシ語において強勢 の位置の違いは意味の弁別 にかかわる類のものではない[15] 。
形態論
所有の接辞
ルシ語の所有 接辞 一覧[16] [17]
単数
複数
一人称
包括
-γu
-ra
除外
-mai
二人称
-mu
-mi
三人称
ai-, e-
-ri
これらの接辞は親族 名称や身体 部位を表す語彙に用いられる[18] 。
例: /tamaɣu/ 〈私の父〉; /mataɣu/ 〈私の目〉[19]
統語論
語順
SVO型 である[20] 。
脚注
^ a b Counts (1969 :3).
^ a b c d e f g h Lewis et al. (2015).
^ a b c d e f g Hammarström et al. (2016).
^ Thurston (1982) .
^ Counts (1969 :4).
^ a b Counts (1969 :5).
^ Counts (1969 :17).
^ Thurston (1982 :92–93).
^ カウンツによる表に従えば[ɕ] となる。Thurston (1982 :93)ではvoiceless groove fricative となっている。
^ Thurston (1982 :93)では/β/ や/ɣ/ と共にvoiced slit fricatives の一つで、調音位置は歯茎であるとされている。
^ Thurston (1982 :93)では歯茎で調音される有声のふるえ音、つまり[r ] のことであるとされている。
^ a b Counts (1969 :18).
^ Counts (1969 :21).
^ Thurston (1982 :93).
^ Counts (1969 :28).
^ Counts (1969 :71).
^ Thurston (1982 :90).
^ Counts (1969 :71, 100–101).
^ Counts (1969 :101).
^ Dryer (2013).
参考文献
R. E. アシャー、クリストファー・マーズレイ 編、土田滋、福井勝義 日本語版監修、福井正子 翻訳『世界民族言語地図』東洋書林、2000年。ISBN 4-88721-399-9
Counts, David R (1969). A Grammar of Kaliai-Kove . Honolulu: University of Hawaii Press
Dryer, Matthew S. (2013) "Feature 81A: Order of Subject, Object and Verb ". In: Dryer, Matthew S.; Haspelmath, Martin, eds. The World Atlas of Language Structures Online . Leipzig: Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology. http://wals.info/
Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Lusi” . Glottolog 2.7 . Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/lusi1240
"Lusi ." In Lewis, M. Paul; Simons, Gary F.; Fennig, Charles D., eds. (2015). Ethnologue: Languages of the World (18th ed.). Dallas, Texas: SIL International.
Thurston, William R (1982). A comparative study in Anêm and Lusi. Pacific linguistics, Series B-83 . Canberra: Australian National University
外部リンク
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