ビコール語(ビコールご、Bikol,Bicol)はフィリピン諸語の語群の一つ。オーストロネシア語族、ヘスペロネシア語族、中央フィリピン諸語、中央フィリピン語群に属する。Bicolanoとも言う。Vicol とつづられることもあるが、一般的ではない。
フィリピン、ルソン(Luson)島南東部のビコル(Bikol)半島の大部分の地域、および、カタンドアネス(Catanduanes)州で話される。「ビコル」という名称は、普通、ビコル半島の全域、タガログ語地域の南部とその東部、および、カタンドアネス島をさすが、ソルソゴン(Sorsogon)州には、中部ビサヤ語塊に属するマスバテ・ソンソゴン語とワライ・ソルソゴン語が分布している。
1975年の国勢調査によると、いわゆる「ビコル」語の話者数として292万8245人が記載されており、フィリピン第5番目の大言語ということになる。アルバイ州、南カマリネス州、カタンドアネス州、ソルソゴン州で、それぞれ支配言語を、北カマリネス州では多数言語を形成している。上記の話者数は、ビコル小語群に属する下記の4言語のほかに、ソルソゴン州の中部ビサヤ語塊に属する前述の2言語の話者数27万人をも含んでいる。
ビコル小語群は、同じ中部フィリピン語群に属する、タガログ語、および、北ビサヤ小語群と、密接に関係している。ナガ・ビコル語、リンコナダ・ビコル語、アルバイ・ビコル語、カタンドアネス・ビコル語の4言語が認められるが、内陸部では方言差が大きい。
エスノローグによれば、ビコール語はマクロランゲージであり、さらに以下の5つに分類する。
文字
ラテン文字が用いられている。
代名詞
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絶対格
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能格
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斜格
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1人称単数
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ako
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ko
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sakuya, sako
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2人称単数
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ika, ka
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mo
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saimo, si-mo
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3人称単数
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siya
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niya
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saiya
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1人称複数 inclusive
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kita
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nyato, ta
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satuya, sato
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1人称複数 exclusive
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kami
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nyamo, mi
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samuya, samo
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2人称複数
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kamo
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nindo
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saindo
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3人称複数
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sinda
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ninda
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sainda
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音韻的特徴
母音は、a,e,i,o,u
子音はp,t,k,b,d,g,m,n,ng,s,l,r,w,y が認められる。
形態論
語構成は、接辞、重複(一種の接辞)、合成による。接辞は、時制、相、態(焦点)、数などを表す。多くの接頭辞が共起する。それに対して、接中辞、接尾辞は種類が少なく、1~3種類が限度である。
重複には、語幹の一部の繰り返し(部分重複)、全体の繰り返し(完全重複)、あるいは、その組み合わせがあり、接辞とともに活発に用いられる。相、反復性、多量性、縮小性などを表す。
基本表現
おはよう。 marhay na aga.
こんにちは。 marhay na hapon po.
こんばんは。 marhay na banggi.
参考文献
- 亀井孝・河野六郎・千野栄一『言語学大辞典 第3巻 世界言語編』三省堂、1992年。
関連項目
外部リンク