1985年、化石ハンターパトリック・マクシェリーはワイオミング州ジョンソン郡の放牧場で剣竜類の化石を見つけた。彼は標本についていた固い石をうまく除去できなかったので、ウェスタンパレオントロジカルラボラトリー株式会社のロナルド・ミオス Ronald Mjos とジェフ・パーカー Jeff Parker に助力を乞うた。彼らはブリガムヤング大学の古生物学者ディー・ホール Dee Hall にも協力を求めた。当初、それはステゴサウルス・ステノプス Stegosaurus stenops であると考えられた。しかしクリフォード・マイルズ Clifford Miles は化石を補修した際、新種である可能性に気づいた。
1995年より、ワイオミング州ビッグホーン郡のハウ・スティーヴンス採石場(かつてバーナム・ブラウンによって調査されたハウ放牧場と新しい所有者のスティーブンス誌に因んだ名前)にて、スイスの古生物学者 Hans Jacob Siber は剣竜の標本を発掘している。最初のものは SMA 3074-FV01(SMA M04)という標本番号でマックスとモーリッツに因み「モーリッツ」と呼ばれる部分的な骨格である。なぜマックスとモーリッツに因んだのかというと、先にその地層で発見されていた竜脚類ガレアモプスの標本がマックス[要曖昧さ回避]と呼ばれていたからである。1995年9月、標本番号SMA0018(これも間違ってSMA M03と言及されることがある)が発見され、元の「ビッグアル」が政府に押収された後に「ビッグアル2号」を発見した際の調査隊の勝利感から「ビクトリア」と名付けられた。ビクトリアには皮膚と角質の鞘の印象が保存されており、頭骨を含んだかなり完全な骨格である。第3の標本は2002年に発見され、標本番号は SMA L02で、ボランティアとして発掘を支援したニコラ・リリックとラベア・リリックの姉妹に因み「リリー」と名づけられた。リリーは、スイスのアータール恐竜博物館 (Aathal Dinosaur Museum) のコレクションの一部となっている。当初、それらは全てステゴサウルスの標本とみなされた。2001年には「モーリッツ」と「リリー」のみがcf(参考標本)ヘスペロサウルス・ムジョシとして再分類された[4]。2010年、「ビクトリア」は Nicolai Christiansen によってヘスペロサウルス・ムジョシに帰属させられた[5]。
2015年、エヴァン・トーマス・セイタ Evan Thomas Saitta はJRDI 5ES採石場で見つかった標本を分析し、ヘスペロサウルスに性的二形を見出した。採石場で見つかったプレートには2つのタイプがあった。高いタイプと低いタイプである。これら様々な個体のプレートは関節していなかったが、セイタはどれが頸椎、胴椎、尾椎のどの列に位置していたものか、その形状によって判断した。分析の結果、プレートの配置部位に関係なく、一部の個体は上下に高いプレートのみをもっていたのに対し、他の個体は前後に広いプレートしか持たなかったことが示唆され、過去に見つかった標本においても一つの個体は1種類のプレートのみを有することが確認された。セイタは、高いプレートはメスであることを表し、オスは低いプレートを備えていたと主張している。低いプレートの方が面積が広く、ディスプレイにおいて有利であることが根拠とされる[8]。論文化された正式な反論はまだないものの、古生物学者ケヴィン・パディアン Kevin Padian とケネス・カーペンターはこの結論に疑問を呈している[13]。
脚注
^ abcdefCarpenter K.; Miles C.A.; Cloward K. (2001). “New Primitive Stegosaur from the Morrison Formation, Wyoming”. In Carpenter, Kenneth. The Armored Dinosaurs. Indiana University Press. pp. 55–75. ISBN0-253-33964-2
^Foster, J. (2007). "Appendix." Jurassic West: The Dinosaurs of the Morrison Formation and Their World. Indiana University Press. pp. 327–329.
^Siber, H.J., & Möckli, U., 2009, The Stegosaurs of the Sauriermuseum Aathal, Aathal: Sauriermuseum Aathal, pp 56
^ abcdN.A. Christiansen and E. Tschopp, 2010, "Exceptional stegosaur integument impressions from the Upper Jurassic Morrison Formation of Wyoming", Swiss Journal of Geosciences103: 163-171
^ abMaidment, Susannah C. R.; Norman, David B.; Barrett, Paul M.; Upchurch, Paul (2008). “Systematics and phylogeny of Stegosauria (Dinosauria: Ornithischia)”. Journal of Systematic Palaeontology6 (4): 367–407. doi:10.1017/S1477201908002459.
^ abCarpenter, K., 2010, "Species concept in North American stegosaurs", Swiss Journal of Geosciences, 103(2): 155-162
^ abSaitta E.T., 2015, "Evidence for Sexual Dimorphism in the Plated Dinosaur Stegosaurus mjosi (Ornithischia, Stegosauria) from the Morrison Formation (Upper Jurassic) of Western USA", PLoS ONE10(4): e0123503
^ abPaul, G.S., 2010, The Princeton Field Guide to Dinosaurs, Princeton University Press p. 224
^Galton, P.M., 2007, "Teeth of ornithischian dinosaurs (mostly Ornithopoda) from the Morrison Formation (Upper Jurassic) of the western United States", In: Carpenter, Kenneth (ed.), Horns and Beaks: Ceratopsian and Ornithopod Dinosaurs, Bloomington and Indianapolis: Indiana University Press. pp. 17–47
^Hayashi, S., Carpenter K., Watabe M., and McWhinney L., 2012, "Ontogenetic histology of Stegosaurus plates and spikes", Palaeontology55: 145-161