「バースデイ 」(Birthday )は、ビートルズ の楽曲である。レノン=マッカートニー 名義となっているが、主にポール・マッカートニー によって書かれた楽曲で、ジョン・レノン も一部手伝ったとされている。1968年に発売された9作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ザ・ビートルズ 』に収録された。1990年にマッカートニーによるライブ演奏がシングルとして発売され、全英シングルチャート で最高位29位を記録。
背景
「バースデイ」の大半は、1968年9月18日にEMIレコーディング・スタジオ で行われたレコーディングセッションで、レノンとマッカートニーの2人によって書かれた。歌詞についてマッカートニーは「あれは50対50でジョンと僕。誰かの誕生日だったのか記憶にないけど、あれをやったもうひとつの理由は、クリスマスや誕生日がらみの曲があると、その曲の寿命が長くなることだった。もしそれが良い曲なら、みんなが誕生日会で歌ってくれるからね」と語っている。また、1994年のインタビューでは「僕らは何か作ってみようと思ったんだ。それからリフを作って、このリフを中心にアレンジしたんだよ。これはジョンと僕の半々でその場で作って、その日の夜に録音したんだ」と語っている。
本曲のセッションが行われた同日の21時5分からBBC で、1957年初頭にイギリスで公開された音楽映画『女はそれを我慢できない 』の放送が予定されていた[5] 。マッカートニーはこの映画を「どうしても見たかった」と語っており、マッカートニーをはじめとするメンバーとスタッフは、同日の17時からレコーディングを開始し、マッカートニーの自宅で映画鑑賞を行うために一旦セッションを中断。鑑賞後、再びスタジオに戻り、セッションを再開した。歌詞は鑑賞後スタジオに戻ってから考えられたもので、マッカートニーは「前もっては全然考えていなかった歌詞だし、それもあって僕のお気に入りの一つになっている」と語っている。
本曲に関して、レノンは1980年の『プレイボーイ 』誌のインタビューで「ポールは50年代のヒット曲の『Happy, Happy Birthday Baby 』みたいな曲を書こうとしていたんだと思う。ゴミみたいな曲だよ」と批判している。
レコーディング
「バースデイ」のレコーディングは、1968年9月18日にEMIレコーディング・スタジオ のスタジオ2で行われた。ベーシック・トラックは、20テイク(演奏ミスや中断したテイクも含む)で録音された。ベーシック・トラックを録音した4トラック・レコーダーのトラック1にレノンのエレクトリック・ギター 、トラック2にリンゴ・スター のドラム 、トラック3にマッカートニーのベース 、トラック4にジョージ・ハリスン のエレクトリック・ギターが録音されており、テープ・ボックスにもこのように記されていた。マッカートニーのドラムのブレイク部分で、ギターが再び入って来るミドル・セクションまでの8小節をカウントした。
オーバー・ダビング用にテイク19が使用され、8トラック・レコーダーに移し替えられたのち、トラック6にタンバリン 、トラック7と8にスターとマル・エヴァンズ の手拍子がバックとしたレノンとマッカートニーのボーカル が録音された。なお、サビの「Birthday 」というコーラスは、後にレノンの妻となるオノ・ヨーコ と当時のハリスンの妻であるパティ・ボイド が歌った。
その後、トラック5に追加のタンバリンとスネアドラム 、ピアノ が録音された。なお、ピアノの音は、エンジニアのケン・スコット (英語版 ) のアイデアによりヴォックス 製のギター・アンプとスピーカー・キャビネットに通された。
2018年に発売された『ザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム)〈スーパー・デラックス・エディション〉 』のCD6にテイク2が収録された。この音源において、レノンのギターはステレオ音像の左寄りに、ハリスンのギターは右寄りに配置されている。
クレジット
「バースデイ」でメンバーが担当した楽器については、いくつか論争が起きている。音楽評論家のイアン・マクドナルド (英語版 ) は、2005年に出版した著書『Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties 』で、リードギター を演奏したのはマッカートニーとレノンで、ベース(6弦ベース )を演奏したのはハリスンとしている。作家のブルック・ハルピンは、リードギターを演奏したのはレノンで、ベースを演奏したのはハリスンとしている[8] 。
以下、「誰が何をプレイしていたかに関する、一部の神話を完全に打ち砕く」テープ・ボックスの注釈をもとに、ケヴィン・ハウレットが提示したクレジットを記載する。
ビートルズ
外部ミュージシャン
カバー・バージョン
ポール・マッカートニーによるセルフカバー
ポール・マッカートニーは、イギリスで1990年10月8日にライブ音源をシングルとして発売した。アメリカでは8月16日にシングル・カセット で発売された。翌月に発売されたライブ・アルバム『ポール・マッカートニー・ライブ!! 』にも収録された本作は、全英シングルチャート で最高位29位[9] 、イタリアのシングルチャートで最高位3位を記録した[10] 。
日本でも1990年11月9日に8センチ シングル が発売された。なお、邦題はビートルズ版が「バースデイ 」となっているのに対し、こちらでは「バースデー 」となっている[11] 。
シングルのB面には、同じくビートルズ時代のセルフカバー曲「グッド・デイ・サンシャイン 」のライブ音源が収録され、マキシシングル と8センチシングル にはこのほかに「P.S.ラヴ・ミー・ドゥ[注釈 1] 」と「幸せのノック 」のライブ音源も収録された。
また、2010年7月7日、アメリカのラジオシティ・ミュージックホール で行われた70歳の誕生日を迎えたスターのバースデーライブにマッカートニーが飛び入り参加。本曲を二人で披露した[12] 。
シングル収録曲
収録曲の作詞作曲は「幸せのノック」を除き、レノン=マッカートニー 。
マキシシングル、8センチシングル、12インチシングル、シングル・カセット # タイトル 作詞・作曲 時間 1. 「バースデー」(Birthday ) 2:43 2. 「グッド・デイ・サンシャイン 」(Good Day Sunshine ) 2:14 3. 「P.S.ラヴ・ミー・ドゥ」(P.S. Love Me Do ) 3:17 4. 「幸せのノック 」(Let 'Em In ) ポール・マッカートニー 5:21 合計時間:
13:35
7インチシングル # タイトル 作詞・作曲 時間 1. 「バースデー」(Birthday ) 2:43 2. 「グッド・デイ・サンシャイン 」(Good Day Sunshine ) 2:14 合計時間:
4:57
クレジット(ポール・マッカートニー版)
チャート成績
その他のアーティストによるカバー
メディアでの使用
脚注
注釈
出典
^ Sound & Vision, Volume 67, Issues 2-5 . Michigan: Hachette Filipacchi Magazines. (2001). http://www.soundandvision.com/content/guitar-george-page-2 . "Go forward to 1968 and The Beatles (a.k.a. The White Album) and you get a veritable hard-rock clinic on what used to be, in the days of vinyl. Side 3: "Birthday," "Everybody's Got Something to Hide Except Me and My Monkey," "Helter Skelter""
^ Gibron, Bill (1968年12月21日). “An in-depth Look at the Songs on Side-Three ”. Rolling Stone . The White Album Project. 2018年10月29日 閲覧。
^ “BBC2 Schedule Wednesday 18th September 1968 ”. Genome BETA Radio Times 1923 - 2009. 2018年10月29日 閲覧。
^ Halpin, Brooke. Experiencing the Beatles: A Listener's Companion . B0743X593F. p. 50. ASIN B0743X593F . https://books.google.co.jp/books?id=P5MtDwAAQBAJ&pg=PA50&dq=Birthday+Beatles+Lead+guitar&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwjy35m-pbLuAhUHPnAKHRWnBc4Q6AEwAHoECAUQAg#v=onepage&q=Birthday%20Beatles%20Lead%20guitar&f=false
^ a b "Official Singles Chart Top 100" . UK Singles Chart . 2020年9月17日 閲覧。
^ a b “Top 3 Singles in Europe” . Music & Media 7 (46): 11. (17 November 1990). https://www.americanradiohistory.com/Archive-Music-and-Media/90s/1990/MM-1990-11-17.pdf .
^ “ポール・マッカートニー / バースデー ”. CDJournal . シーディージャーナル. 2020年9月17日 閲覧。
^ Fields, Gaylord (8 July 2010). “Paul McCartney Gives Ringo Starr 'Birthday' Present Onstage in New York” . spinner.com . オリジナル の12 September 2012時点におけるアーカイブ。. https://archive.today/20120912111324/http://www.spinner.com/2010/07/08/ringo-starr-paul-mccartney-birthday/ 25 April 2022 閲覧。
^ “Eurochart Hot 100 Singles” . Music & Media 7 (44): 14. (3 November 1990). https://www.americanradiohistory.com/Archive-Music-and-Media/90s/1990/MM-1990-11-03.pdf .
^ "Dutchcharts.nl – Paul McCartney – Birthday" (in Dutch). Single Top 100 . 2020年9月17日 閲覧。
^ “Paul McCartney Chart History (Mainstream Rock) ”. Billboard . 2022年3月19日 閲覧。
^ “The Hot 100 Chart ”. Billboard (1969年9月6日). 2020年9月19日 閲覧。
^ Yanow, Scott. Ticket to Ride - A Beatles Tribute - The Swingle Singers | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック . 2020年8月18日 閲覧。
^ Jarnow, Jesse. Live Phish, Vol. 13: 10/31/94, Glens Falls Civic Center, Glens Falls, NY - Phish | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック . 2020年8月18日 閲覧。
^ “Song Premiere: Paul Weller, 'Birthday' ”. Rolling Stone (2012年6月18日). 2018年10月29日 閲覧。
参考文献
外部リンク
1970年代 1980年代 1990年代 2000年代 2010年代