この項目では、自動車メーカーについて説明しています。ドイツのバンドについては「ヴァンデン・プラス 」をご覧ください。
ベントレー・4½リッター バンデン プラ トゥアラー(1930年)
バンデン・プラ (Vanden Plas )は、イギリス 、ベルギー にかつて存在した自動車 メーカー、もしくはそのブランドである。現在では北米以外の地域での商標権を南京汽車 が、北米での商標権をフォード が所有している。
発音と表記
名は創業家の姓から取られたものである。発祥地ベルギーでは主にオランダ語 とフランス語 が話されているが、前者では「ファンデン・プラス」と発音され、後者では「ヴァンデン・プラ」となる。創業者一家の第一言語 がどちらであったか定かではないが、van den Plasという姓自体は「池 の」という意味のオランダ語である。
日本ではヴァ ンデン・プラやヴァンデン プラス [ 1] と表記される場合もあるが、本項ではバ ンデン・プラで統一する。
概要
プリンセス 4リッター(1965年)
1898年 にベルギー で馬車 の車体を製造するコーチビルダー Carrosserie Van den Plasとして発足し、1913年 、イギリス に自動車のボディを制作する支社 を設立した。イギリスのバンデン・プラは本国とは別に独自の経営を促進し、ロールス・ロイス やベントレー 等のボディ制作を請け負い、地位と名声を得ていった。
第二次世界大戦 後、世界的不況 の中でイギリスの自動車産業 は打撃を受け、他の中小自動車メーカーが大手に吸収合併 される中、バンデン・プラもオースチン に吸収され、オースチンの大型セダンをベースにした高級車 をリリースした。これが最初の「バンデン・プラ・プリンセス(写真)」である。
歴史
3リッター / 4 リッター / 4リッターR
プリンセス 4リッター(1967年)
バンデン・プラの工場である「Princess Cars」で作られた最初の車は、大型セダンのオースチン・A99ウェストミンスター(
Austin Westminster )をベースにしたもので、それぞれ3リットルと4リットルのエンジンを積んだ「バンデンプラ・3リッター」(英語版 )と「バンデンプラ・4リッター」であった。両者にはオリジナルのフロントマスクが与えられ、内装はベースである大衆車 とは大きく異なり、元コーチワーカーとしての仕事が存分に生かされた豪華で高級なものであった。その後ロールス・ロイス製直列6気筒 エンジンを積んだ「4リッターR」(独語版 )も生産された。
ADO16
プリンセス Mk-I 1100
プリンセス Mk-I 1100
プリンセス Mk-III 1300
プリンセス 1300
やがてオースチンも、モーリス を代表とするナッフィールド・グループ との合併が決まり、1952年 にブリティッシュ・モーター・コーポレーション (BMC) が発足した。BMCではウーズレー とともに、高級 部門としての役割が与えられた。
BMCが1962年 にモーリスブランドから発売したADO16 (ADOはA ustin D rawing O fficeの略)は、徐々にそのシリーズを拡大していき、最終的にはBMCの6部門のすべてから少しずつ趣向を変えて販売されることになり、1964年 にはバンデン・プラ版となる「プリンセス1100 」が登場した。大衆車 ブランドのオースチン やモーリス 、スポーツカー ブランドのMG などとの差別化を図るべく、思い切った高級化の手法が採られ、それまでの小型車の常識を覆すものとなった。
外装は以前のバンデン・プラと同じフロントマスクや、荘厳なフロントグリル 、フォグランプ などにより、他ブランドのADO16とは異なる高級感を醸し出していた。内装はあらゆる部分を柔らかなモケットで覆い、ダッシュボード にウォールナット のウッドパネルを使用、ドアトリム 上端にウッドキャッピングを施し、シートにはコノリーレザー をあてがい、分厚いクッションを使った上質なものを使用するなど、全長3.7 m、排気量1,100 ccの小型サルーン に、それまでの大型高級車で培ってきた手法をそのまま持ち込んだ。また、前席背面には後席用の折り畳み式ウォールナット製ピクニック テーブルが組み込まれるなど、このサイズでショーファードリブン カーを思わせるしつらえとなっていた。小型ながら優美なスタイルと豪華な内装を持つことから「ベビーロールス 」とも呼ばれた。後に1,275 ccエンジンが追加されている。
その後、ADO16のマイナーチェンジにあわせた改良とコストダウンが行われた。リアコンビネーションランプ の大型化、よりファストバックが強調されたスタイリング、内装の小変更などに加え、エンジン排気量 を1,300 ccに統一するなどの変更が行われる。これに伴い、マイナーチェンジ以前のモデルをMk-I 、それ以降をMk-II と呼ぶことで区別されるようになった。Mk-Iのみテールフィン の存在が顕著で、リアコンビランプが小さく、その角度も直立気味なため、識別は容易である。
最終型となるMk-III は最後まで残ったADO16のひとつとして、1974年 まで生産が継続された。
ADO67
プリンセス 1500 / 1700
その後オースチン・アレグロ をベースにしたプリンセス1500へとフルモデルチェンジされたが、ベース車が設計的に失敗作であったことや、バンデン・プラらしい特色にも乏しく、不人気のまま販売終了となった。これが「プリンセス」を冠した最後のモデルとなった。
その後の動向
ジャガー XJ8 バンデン プラ
1968年 以降はジャガー の上級仕様車のグレード名となり、現在、ジャガーの親会社、フォード が北アメリカでのブランド使用権を保有している(これはダイムラー・クライスラー との協約上、デイムラー ブランドが使えない国での対策とされている)。同様に、一時期はランドローバー のレンジローバークラシック の最上級グレードの名称としても使用されていた。北米以外の地域では南京汽車 がその商標権を所有している。
車種一覧
プリンセス 3リッター
プリンセス 4リッター
プリンセス 4リッターR
プリンセス 1100 / 1275 / 1300
プリンセス 1500 / 1700 / 1800
脚注
^ ブランド別インポーターの移り変わり「バンデンプラス」 - 日本自動車輸入組合
関連項目
刑事貴族 (パート2以降、1991年 - 1992年) - 水谷豊 演じる主人公・本城の愛車がバンデン・プラ プリンセスMk-III 1300である。
誰かが彼女を愛してる (1992年) - 中山美穂 演じる主人公・高野つばさが愛車として使用していた。