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チュルク語族 (チュルクごぞく、Turkic languages)、またはテュルク語族 (テュルクごぞく)・突厥語族 (とっけつごぞく)は、中央アジア 全体やモンゴル高原 以西にあるアルタイ山脈 を中心に東ヨーロッパ から北アジア (シベリア )に至る広大な地域で話される語族 である。
概要
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歴史学 の成果から本来このチュルク語族を話す人々 は中央アジア・モンゴル高原 からシベリアのあたりにいたと考えられる。
分布がチュルク語族と隣接するモンゴル語族 、ツングース語族 とはいくつかの言語の特徴を共有するため、チュルク語族とこれらとをあわせてアルタイ諸語 という説もあるが、多くの言語学者はその説を否定している[1] 。
アルタイ諸語の相互の系統関係は証明されていないが、もしアルタイ諸語を同一の祖語 を共有する「アルタイ語族」として認める立場に立てばチュルク語族はチュルク語派 と呼ぶべきである。
このような経緯から、単にチュルク諸語 (テュルク諸語)と呼ばれることが多い。
各語群内では言語間の共通性が大きく、意思疎通は容易であると言われる。
その分布の広大さに比べて言語間の差異は比較的小さく、チュルク諸語全体をひとつの言語 、「チュルク語 」と見なし、各言語を「チュルク語の方言 」とする立場もありうる。
特に3語群(オグズ語群 、キプチャク語群 、カルルク語群 )の話者はイスラム教 を受け入れた結果、アラビア語 ・ペルシア語 から多くの語彙を取り入れているため、語彙上の共通性が大きい。
政治的経緯から、トルコ語を除く諸言語はロシア語 からの借用語も非常に多い。
現在のブルガリア人 はスラヴ語派のブルガリア語 を用いるが、先祖であるブルガール人 は、バルカン半島 にやって来るまでは、ブルガール語派 (テュルク古語)を話すテュルク系民族 であった。なおブルガリア は、その後オスマン帝国 支配を受けた経緯により、トルコ語 の語彙が多く取り入れられている。
分類
テュルク諸語は、音韻などの特徴からいくつかの語群に分類される。以下に、各言語のうち主要なもののみを例示する。[2]
文法
日本語 と同じく、目的語や述語に助詞 や活用語尾 が付着する膠着語 で、母音調和 を行うことを特徴とする。文の語順も基本的に日本語に近く主語‐目的語‐述語になる言語が多い。
歴史
原郷
チュルク語族の原郷 は、トランス・カスピ海 の草原と北東アジア(満洲 )の間のどこかにあることが示唆されており[9] 、南シベリア とモンゴル の近くの地域がチュルク系民族 の「アジア内の原郷」であることを示す遺伝的証拠がある[10] 。同様に、ユハ・ヤンフネン 、ロジャー・ブレンチ、マシュー・スプリッグスを含む数人の言語学者は、現代のモンゴル が初期のチュルク語の原郷であると示唆している[11] 。
およそ紀元前1千年紀の初頭の間に、原チュルク人 と原モンゴル人 の間で広範な接触が起こった。 2つのユーラシア遊牧民 グループの間で共有されている文化的伝統はen:Turco-Mongol tradition と呼ばれている。2つのグループは同様の宗教システムであるテングリズム を共有しており、チュルク諸語とモンゴル諸語 の間には多くの明らかな借用語 が存在する。借用は双方向だったが、今日、チュルク諸語の借用語はモンゴル諸語の語彙の中で最大の外来語彙の構成要素を成している[12] 。
チュルク語族と、近隣のツングース語族 、モンゴル語族 、韓国語族 、日琉語族 (以前はすべていわゆるアルタイ語族 の一部であると広く考えられていた)の間のいくつかの語彙的および広範な類型的類似性は、近年ではこれらのグループ間の先史時代の接触を示すものと考えられている。北東アジアの言語連合 (英語版 ) と呼ばれることもある。
また、チュルク祖語 時代に中国語 と接触したことを示す借用語も存在する[13] 。
Robbeets (etal.2015、etal.2017)は、チュルク語族の原郷は満洲 のどこかにあり、モンゴル語族、ツングース語族、韓国語族(日本語族 の祖語を含む)の原郷に近く、これらの言語は共通の「トランスユーラシア語 」(Transeurasian) を起源とする[14] 。「トランスユーラシア語族」の証拠はNelson et al. 2020、Li et al. 2020 によっても提示されている[15] [16] 。
有史時代
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テュルク諸語の最古の文献は、第二可汗国 時代の686年 から687年 頃に建てられたチョイレン銘文 と呼ばれる突厥碑文 で、古テュルク文字 (テュルク・ルーン文字、突厥文字)で書かれた。その他の突厥碑文 は、モンゴル高原の各所に残る。745年 に突厥を滅ぼしたウイグル も古テュルク文字を受け継いだ。
モンゴル高原から中央アジア に移住した後、8世紀にはソグド文字 を改良したウイグル文字 を使用して古ウイグル語 が書かれた。
この言語は天山ウイグル王国 (856年 - 13世紀 )を建てると公用語となった。なお、古ウイグル語は後述のチャガタイ語に連なる現代ウイグル語とは系統が異なる。
イスラム教を受け入れたカラハン朝 (840年 - 1211年 )では、アラビア文字 でテュルク語 (トルコ語版 ) を書き取るようになり、『クタドゥグ・ビリグ 』のような文学作品が著された。その後、中央アジアではチャガタイ語 、アナトリア ではオスマン語 がそれぞれアラビア語・ペルシア語の要素を取り入れた典雅な文章語として発展した。
20世紀 に入ると文章語の簡略化が進められ、各地の口語を基礎とし、ラテン文字 やキリル文字 で書き表される新しい文章語が生まれた。しかし、依然としてイラン などではアラビア文字が使用されており、中国 でも一度ラテン文字化が進められたテュルク系諸言語が1980年代 にアラビア文字表記に戻されたので、現代テュルク諸語を表記する文字は大きく分けて3つ存在する。
ソ連崩壊後、旧ソ連のテュルク諸語ではキリル文字からラテン文字へ移行する動きが見られる(アゼルバイジャン語 、トルクメン語 、ウズベク語 など)。
ロシアのタタール語 などもラテン文字への移行を目指しているが、ロシア政府の介入によってラテン文字の公的使用は制限されている。
脚注
^ https://www.jstor.org/stable/41928378?seq=1
^ “turcologica ”. 2021年6月18日 閲覧。
^ (ロシア語) Гумилёв Л. Н. От Руси к России. — М.: Алгоритм, 2007. — С. 83. — 384 с.
^ アヴァール語 とは全く別の言語である。
^ Krymchak - Glottolog
^ Urum - Glottolog
^ Ili Turki - Glottolog
^ Ainu (China) - Glottolog
^ Yunusbayev, Bayazit; Metspalu, Mait; Metspalu, Ene et al. (2015-04-21). “The Genetic Legacy of the Expansion of Turkic-Speaking Nomads across Eurasia” . PLOS Genetics 11 (4): e1005068. doi :10.1371/journal.pgen.1005068 . ISSN 1553-7390 . PMC 4405460 . PMID 25898006 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4405460/ . "The origin and early dispersal history of the Turkic peoples is disputed, with candidates for their ancient homeland ranging from the Transcaspian steppe to Manchuria in Northeast Asia,"
^ Yunusbayev, Bayazit; Metspalu, Mait; Metspalu, Ene et al. (2015-04-21). “The Genetic Legacy of the Expansion of Turkic-Speaking Nomads across Eurasia” . PLOS Genetics 11 (4): e1005068. doi :10.1371/journal.pgen.1005068 . ISSN 1553-7390 . PMC 4405460 . PMID 25898006 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4405460/ . ""Thus, our study provides the first genetic evidence supporting one of the previously hypothesized IAHs to be near Mongolia and South Siberia.""
^ Blench, Roger; Spriggs, Matthew (2003) (英語). Archaeology and Language II: Archaeological Data and Linguistic Hypotheses . Routledge. p. 203. ISBN 9781134828692 . https://books.google.com/books?id=48iKiprsRMwC&pg=PA203
^ Clark, Larry V. (1980). “Turkic Loanwords in Mongol, I: The Treatment of Non-initial S, Z, Š, Č”. Central Asiatic Journal 24 (1/2): 36–59. JSTOR 41927278 .
^ Johanson, Lars; Johanson, Éva Ágnes Csató (2015-04-29) (英語). The Turkic Languages . Routledge. ISBN 9781136825279 . https://books.google.com/books?id=Z7i5CAAAQBAJ&q=turkic+mongolian+related&pg=PA76
^ Robbeets, Martine (2017). “Transeurasian: A case of farming/language dispersal”. Language Dynamics and Change 7 (2): 210–251. doi :10.1163/22105832-00702005 .
^ “Tracing population movements in ancient East Asia through the linguistics and archaeology of textile production ”. Cambridge University. 2020年4月7日 閲覧。
^ “Millet agriculture dispersed from Northeast China to the Russian Far East: Integrating archaeology, genetics, and linguistics ”. 2020年4月7日 閲覧。
関連項目
外部リンク
祖語 特徴 古代言語
学者
関連概念
?は諸説あるもの。