サバーバン (SUBURBAN )は、アメリカ合衆国 の自動車メーカー 、ゼネラルモーターズ (GM)により製造、シボレー ブランドにおいて販売されるフルサイズ SUV である。1935年 から現在に至るまで、世界で最も長く製造・販売される車種である。
初代はフルサイズSUVの始祖 であり、GM内においても人気車種である[ 1] 。殆どの世代がGMC と併売されており、キャデラック ではエスカレードESV として販売される。1990年代 にはGMオーストラリアによりホールデン ブランドにおいて右ハンドル仕様 も販売された。
米国、カナダ 、メキシコ 、中米 、チリ 、ドミニカ共和国 、ボリビア 、ペルー 、フィリピン 、中東 (イスラエル を除く)において販売されており、GMC・ユーコンXL は北米 (米国、カナダ、メキシコのみ)と中東(イスラエルを除く)において販売される。
2018年 に実施されたISeeCars.com による調査では、サバーバンは1年間に最も多く運転される車に選ばれた[ 2] 。2019年 に実施されたiSeeCars.comによる調査では、サバーバンは長持ちする車の第2位に選ばれた[ 3] 。同年 12月 にハリウッド商工会議所は、サバーバンが「1952年 以来映画 やテレビ番組 1,750本に出演している」事に注目し、サバーバン用にハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム の星を除幕した[ 4] 。
初代(1935年 - 1940年)
1935年 に貨物用 のバン と乗用 のキャリーオール[ 5] (小型トラックのシャシ にステーションワゴンの車体を架装)を設定し、市販を前提とした量産 車として発売。機能性を重視したコンセプトで開発されており、車体は全金属製であり、現在のウッディワゴンとは多少形状が異なる。家族 で乗車でき、最大積載量 も当時のトラック程度と、十分なトランクスペース を確保した。フロントシートメタル(ボンネット )とキャビン等のフレームは1/2トントラック(ピックアップ)と共有する。
3-2-3の3列8名乗車が可能であり、背面には荷役 や乗降に便利なよう、観音開き 、または上下開き(跳ね上げ窓 とテールゲート の組み合わせ)のバックドアを設けた。
前史として、初代登場以前の1933年 から1934年 にかけて、シボレー・マスター (英語版 ) に1/2トントラック(ピックアップ )のフレーム形式 をベースとしたステーションワゴン を設定していた。こちらは州兵 や市民保全部隊 向けに開発されており、車体は木材 を多用しており、3-2-3の3列8名乗車を可能としていた。
2代目(1941年 - 1947年)
1941年 にモデルチェンジ 。戦時体制 下の1942年 から1946年 にかけては主に軍用 輸送車として生産、納入された。
先代同様8人乗りであり、メカニズムの多くをシボレー・AKシリーズトラック (英語版 ) と共有する。
型式はバックドアが観音開き のモデルが3106型、上下開きのモデルが3116型である。直列6気筒 のガソリンエンジン を搭載し、排気量 はシボレー仕様が216立方インチ、GMC仕様は228立方インチである。
3代目(1947年 - 1955年)
1947年 にモデルチェンジ。シボレー・アドバンスデザイン (英語版 ) のピックアップをベースとする。
1953年 に1954年 式 から両ブランド仕様共に4速ハイドラマチック(トルコン 式AT )を搭載する。先代同様、型式はバックドアが観音開き のモデルが3106型、上下開きのモデルが3116型である。
フロントベンチシートは分割式であり、運転席側に2席、助手席側に1席あり、前方にスライドさせ後席2列へ移動可能であった。2列目は 「2/3」シートであり、3列目にアクセスするには助手席と2列目シートを越えての移動が必須であった。
また、3代目はキャノピー・エクスプレスを設定した最後の世代となる[ 6] 。
1947年 式のデザイン は、半世紀 以上後に登場するシボレー・HHR のデザインにインスピレーションを与えた[ 7] 。
4代目(1955年 - 1959年)
1955年 3月25日 にモデルチェンジ。シボレーとGMCの他のトラック同様、ボンネットをより平たくし、フロントフェンダー をボディ同等の高さへ変更し、台形 グリルを採用した。V字型スピードメーター は他の乗用車 と共有する。
エンジンは直列6気筒 とスモール・ブロックV型8気筒 を搭載。シボレー仕様は265立方インチV型8気筒を搭載し、後に283立方インチCIDへ変更した。GMC仕様はポンティアック 製V型8気筒をベースとした。基本的な型式は先代から引き継いでいるが、1957年 に四輪駆動 車を設定した事により、バックドアが観音開き の四輪駆動車を3106型、上下開きの四輪駆動車を3116型と、型式を追加した[ 8] 。
また、「サバーバン」という名称は、1955年 から1959年 にかけて、GMC・100シリーズピックアップにも使用しており、サバーバン・ピックアップとして使用していた。なお、1958年 3月 にシボレー・カメオ/サバーバン・ピックアップのグラスファイバー 製ベッドサイドを代替するオールステンレス 製フリートサイドベッドをオプション設定した事により、シボレー・カメオと同時に廃止となった。これを最後に、サバーバンという名称は1/2トントラック(ピックアップ)に使用される事はなかった。また、火災 により記録が消失した為、現存はしていないが、サバーバン・ピックアップの生産台数は、1955年から1958年にかけての各モデルイヤーで300台以下と考えられる。
5代目(1960年 - 1966年)
1961年型
1966年型 次世代へと繋ぐスタイルとなった
1960年 から1961年 モデルは、1950年代のシボレー 車の特徴を踏まえていた。フロントグリル の上部にある大きな楕円形のエアインテーク がそれである。
1962年 以降、ボンネットの造形が穏やかになり、大きなエアインテークを廃止して、より近代的な外観に変更された。
1964年 、フロントウインドシールドが引き立って見えるよう変更され、ドアウインドウも拡大された。 このモデルは、当初4WDをオプションとしていた。2WDモデルは、トーションバースプリング を用いたフロントダブルウィッシュボーンサスペンション を装備し、リアはトレーリングアームとコイルスプリング のリジッドアクスル で構成されていた。 エンジンは直6 とV8 で、305立方インチのV6がGMC のモデルでは搭載可能であった。305エンジンはGMC の中型トラック向けに製造されたものを転用したもので、トルク は大きかったが、燃費 には大いに問題があった。同年、ブラジル ではシボレー・ヴェラネイオ(Chevrolet Veraneio) として登場し、一般乗用の他、警察・消防・救急・軍隊でも幅広く使用された。同国の工場で30年間生産された。
6代目(1967年 - 1972年)
シボレー・サバーバンC10
この世代はドライバー側1枚、助手席側2枚の、左右非対称のドア配置が特徴である。2WDと4WDとが用意されており、283、307、350立方インチのV8エンジンがラインナップしていた。
1971年 、フロント・ブレーキ がディスク 化され、1972年 は2WDモデルのリアサスペンションがコイルスプリングであった最後の年である。
7代目(1973年 - 1991年)
1980年型GMC・サバーバン
シボレー・サバーバン 概要 別名
GMCサバーバン 販売期間
1973-1991 ボディ プラットフォーム
C/K パワートレイン エンジン
ディーゼル 4.0 L I4 Maxion S4/S4T (Brazil) 5.7 L LF9 V8 (1978–81) 6.2 L Detroit Diesel V8 (1982–91)ガソリン 4.1 L I6 5.0 L V8 (1976–88) 5.0 L V8 (1973) 5.7 L V8 6.6 L V8 (1976–80) 7.4 L V8 変速機
マニュアル 3MT/4MTオートマチック 3-Speed THM-350 3-Speed THM-400 4-Speed 700R4 (1981–91) 4-Speed 4L80-E (1991) 車両寸法 ホイールベース
3,289 mm 全長
5,565 mm 全幅
2,022 mm 全高
1,829-1,933mm テンプレートを表示
7代目は当初、家族向け4ドア車であった。1970年代 の角の丸いボディスタイルは、最も製造期間の長い18年間の当世代を彷彿とさせるものである。2WDと4WDをラインナップし、ベースエンジンは、スモール・ブロック350立方インチで、400立方インチV8はオプションであった。454立方インチV8エンジンが2WDの3/4tモデルで最も一般的に搭載されていた。
オイルショック の影響から、1982年 以降のモデルでは6.2Lディーゼル V8エンジンが搭載されるようになり、これが後にヨーロッパ への輸出 モデルとなる。トランスミッションは、当初、3速ターボ・ハイドロマチック(オートマチック )が搭載されており、1/2トン・モデルにはターボ・ハイドロマチック350、3/4トン・モデルにはターボ・ハイドロマチック400が搭載された。各数字は最大許容トルクによるクラス分けを表す。また、ベース車両から上級グレードのシルバラードまで、3列シートがオプション 設定され、9人乗りとなった場合の最後列の居住性向上のため、リア・ヒーティング・システムもオプションで設定された。
1979年型シボレー・サバーバン 1986年 と1987年 、ガソリンエンジン の燃料 供給がキャブレター から電子フューエル・インジェクション に変更された。この変更によって燃費が向上し、排出ガス の浄化が実現した。燃費向上の一環として、700R4 (1/2tモデル)と4L80 (3/4tモデル)にオーバードライブ 付き4速オートマチックの搭載が可能となった。
8代目(1992年 - 1999年)
シボレー・サバーバン 概要 別名
GMCサバーバン ホールデン サバーバン 販売期間
1992-1999 ボディ プラットフォーム
GMT400 パワートレイン エンジン
6.5 L L56 & L65 Turbo Diesel V8 (2500のみ) 5.7 L L05 V8 (1992–1995) 5.7 L Vortec L31 V8 (1996–1999) 7.4 L L19 V8 (2500のみ) (1992–1995) 7.4 L Vortec L29 V8 (2500のみ) (1996–1999) 変速機
4AT 車両寸法 ホイールベース
3,340 mm 全長
5,560 mm-5,588 mm 全幅
1,869 mm-1,956 mm 全高
1,748 mm-1,895 mm 系譜 後継
GMCユーコンXL(GMCサバーバン) テンプレートを表示
シボレー・サバーバン(GMT400)
GMC・サバーバン(GMT400)
1992年 、GMT400プラットフォーム をベースとしたサバーバンが登場した。このプラットホームは1988年 の時点で完成しており、他のピックアップトラックのモデルチェンジに比較して、サバーバンへの採用は非常に遅いものであった。また、この代のみ右ハンドル仕様がホールデン ブランドで生産され、オーストラリア やニュージーランド で発売された(Holden Suburban(英語版) )
全てのグレードのベース・エンジンはスモール・ブロック350立方インチ (5.7L-V8) で、よりヘビーデューティーな2500シリーズには、ビッグ・ブロック454立方インチ (7.4L-V8) がオプションで搭載可能で、6.5Lターボ・ディーゼル・エンジンが全てのモデルにオプションで搭載可能であった。GMT400プラットフォームは、独立懸架のフロント・サスペンションが装備され、乗り心地が向上したことが特徴であったが、2WDではコイル・スプリング、4WDではドライブシャフト との干渉を避けるためトーションバー・スプリング が採用された。なお、全てのモデルで、リア・サスペンションはライブ・アクスルと板バネが採用されていた。この世代でも3列シートがオプションで選択でき、9人乗りが可能であった。
1996年 には、ボルテック・エンジンが搭載され、馬力 と燃費が向上した。
1998年 には、フルタイム4WDがオプションで登場した。
9代目(2000年 - 2006年)
GMT800
2000年 にGMT800プラットホームをベースとした新型モデルが発表された。1/2tと3/4tの2グレードが用意され、2WDの他、すべてのモデルでパートタイム4WDモデルのオプション設定があった。なお、この世代からGMC版はユーコンXL と改名した。
2001年 、6.0Lエンジンが20馬力アップし、8.1Lが3/4tモデルのオプションとして設定された。
2002年 には、アロイホイール 、パワーウィンドウ 、フロントパワー・シートなど、多くのオプションが追加された。また、Z71オフロード・パッケージが追加設定された。
2003年 は、不評の多かったインテリアについて、シボレー他車も含めて見直しが図られた。
2004年 にはタイヤ ・プレッシャー ・モニター 標準装備。
2005年 には1/2tモデルでスタビリティ・コントロール が標準装備となった。
2006年 、20インチ・ホイール、4WD、1/2tモデルに6.0Lを標準搭載して、LTZパッケージの販売が開始された。
10代目(2007年 - 2014年)
GMT900
2006年 1月のロサンゼルスオートショー でGMT900プラットフォームをベースとした2007年 モデルが発表された。タホ やユーコン と同様、モダンで、よりエアロダイナミクス を取り入れたスタイリングとなった。
インテリアはダッシュボード もシートも見直しがなされているが、過去のモデル同様、3列9人乗りの設定がある。
オプションで防弾 ガラスと装甲 と8889special を施すことができるため、アメリカのシークレットサービス が大統領 の警護 のために使用している。
大統領 来日時などの際には、要人警護用としてアメリカ合衆国 から在日米軍航空基地 などへ航空輸送 される。
日本国内では自家用車として所有されている例は非常に珍しく、ボディーガード や民間警備会社 などに使用されている場合が多い。
映画『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン 』にはシークレットサービス仕様の車両が登場。ディセプティコンのドレッズが変形する。
11代目(2015年 - 2020年)
GMT K2
2013年9月12日、11代目のサバーバンが一般に公表された。2014年2月には、テキサス州アーリントンで生産されたものが、GMT K2プラットフォームの2015年モデルとして発売された。
新開発のECOTEC3は355馬力を発生し、気筒休止システムや6速ATを採用することによりV8搭載モデルSUVにおいて最高の低燃費を実現しているとアナウンスしている。2WD、4WD(AWD)から選択可能で、LS、LT、LTZの3グレード構成となっている。
注目すべき点は、後部席の居住性が格段に良くなったことで、セカンドシートの足元が従来モデルに比べ50mm拡大し足元がかなり広くなっている点に加え、今まで跳ね上げ格納固定式で取り外しも少々困難だったサードシートが床下収納タイプとなった。さらに最高級グレードであるLTZのみパワーフォルディングサードシート(電動格納)が採用されている。
また、アダプティブクルーズコントロール、フロント&リヤパークアシストセンサー、サイドブラインドゾーンアラート(側方死角警告装置)、リヤクロストラフィックアラート(後方横断物感知警告装置)、レーンチェンジアシスト(車線変更警告装置)など様々な安全装置が標準となっている。
12代目(2020年 - )
シボレー・サバーバン (12代目)
概要 販売期間
2020年 - ボディ 乗車定員
7名[ 9] ボディタイプ
5ドアSUV [ 9] エンジン位置
フロント[ 9] 駆動方式
全輪駆動 [ 9] パワートレイン エンジン
ガソリン : 6.2L V型8気筒 OHV [ 9] 5.3L V型8気筒 OHV [ 9] ディーゼル : 3,000cc 直列6気筒 ターボ[ 9] 最高出力
ガソリン :6.2 V6 : 313 kW (426 PS) / 5,600 rpm[ 9] ディーゼル : 207 kW (281 PS) / 3,750 rpm[ 9] 最大トルク
ガソリン :6.2 V6 : 623N・m / 4,100 rpm[ 9] ディーゼル : 623N・m / 1,500 rpm[ 9] 変速機
10速AT [ 9] サスペンション 後
独立懸架サスペンション [ 9] 車両寸法 ホイールベース
3,407 mm[ 9] 全長
5,732 mm[ 9] 全幅
2,059 mm[ 9] 全高
1,923 mm[ 9] 車両重量
2,729 kg[ 9] テンプレートを表示
11代目に対して車体は新設計となるなど、全面刷新された[ 9] 。さらに11代目よりも、ヘッドライトや大型グリルの形状など、GMの新しいデザインテーマの影響が見られる[ 9] 。
脚注
^ “Everybody Loves the Suburban ” (英語). Popular Mechanics (2010年8月27日). 2024年9月14日 閲覧。
^ “Cars With the Most Average Miles Driven Per Year - iSeeCars.com ”. www.iseecars.com . 2024年9月14日 閲覧。
^ “The Longest-Lasting Cars, Trucks and SUVs To Reach 250,000 Miles and Beyond - iSeeCars.com ”. www.iseecars.com . 2024年9月14日 閲覧。
^ “The latest celeb to get a star on the Hollywood Walk of Fame is... the Chevy Suburban ” (英語). NBC News (2019年12月7日). 2024年9月14日 閲覧。
^ 元来は一頭立ての小型馬車 のことで、北米ではミニバスの意味で用いられる。マイクロバス ほどの定員は無く、大きめのミニバン か、欧州 のピープルムーバー 程度の大きさと定員数。この用途での日本の車名では、トヨタ・ハイエース の「コミューター」などの例がある。
^ “Directory Index: GM Trucks and Vans/1954 Trucks and/1954 Chevrolet Trucks ”. www.oldcarbrochures.com . 2024年9月14日 閲覧。
^ “2009 Chevrolet HHR Review: Chevrolet’s 1940s Suburban Throwback ” (英語). Green Car Reports (2009年7月1日). 2024年9月14日 閲覧。
^ “Chevrolet Suburban ” (英語). CarGurus (2011年10月18日). 2024年9月15日 閲覧。
^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 森本太郎 編『世界の自動車オールアルバム 2020年』三栄書房、8 Aug 2020、185頁。ISBN 978-4-7796-4170-1 。
関連項目
外部リンク