北京 東城区 の地壇公園 での旧正月
ロンドン のチャイナタウン での旧正月
旧正月 (きゅうしょうがつ、英 : Lunar New Year、Chinese New Year、Spring Festival)は、旧暦 としての太陰暦 (中国暦 )の正月 (年初)。太陰暦(中国暦)元日 (旧暦1月1日 )、または元日からの数日間のことである。太陰暦(中国暦)を使っていた中華圏 や、華人 や華僑 の多い国・地域で祝われる。中華人民共和国 (中国香港 、マカオ )、中国台湾 のほか、シンガポール 、韓国 、北朝鮮 、ベトナム 、マレーシア など、中華圏では国の祝日 として定められている[1] 。キリスト教 文化圏でも、現在の世界標準であるグレゴリオ暦 の基となったユリウス暦 の年初を祝う国・地域が僅かながらある[1] 。
以下では、系統の異なる東南アジア (上座部仏教 圏)やモンゴル ・チベット (チベット仏教 圏)の旧正月にも併せて言及する。
概説
ここで言う旧暦とは、狭義には中国 ・日本 ・朝鮮半島 ・ベトナム 等でかつて使われていた中国暦 およびその変種のこと(基本的に中華圏では時憲暦 、日本では天保暦 を指す)であるが、後述するように、広義にはモンゴル のチベット仏教 暦、東南アジア 諸国の上座部仏教 暦のように他の地域・文化圏の旧暦を含む場合もある。
旧暦1月1日は、通常雨水 (2月19日 ごろ)の直前の朔 日であり、1月21日 ごろから2月20日 ごろまでを毎年移動する。旧暦で平年 だった年は翌年の旧正月は約11日後退し、閏月 があれば約18日進む。
中国大陸 ・台湾 ・香港 ・朝鮮半島 ・ベトナム ・モンゴル ・ブルネイ 等では、最も重要な祝祭日 の一つであり、グレゴリオ暦 (新暦)の正月よりずっと盛大に祝われる。ほかに、シンガポール 、マレーシア 、インドネシア 、ミャンマー など中華圏 の影響の強い華人 (中国系住民)の多い東南アジア 諸国、世界各地の中華街 などではChinese New Yearとして祝われる。ただし日本 では、沖縄 ・奄美 の一部地域や中華街等を除けば、現在はグレゴリオ暦の正月が祝われることが多い。
なお、旧正月は全ての国や地域で同じ日とは限らない。これらについては後で詳細に述べる。
日本・ベトナム等の旧正月は、時差 により、中国標準時 を使っている他国と異なることがある。
モンゴルの旧正月は、中国暦とは別系統のモンゴル暦 (en )の年初なので、他国と異なることが多い。
一覧
漢字文化圏
日本語 - 旧正月 (きゅうしょうがつ)
中国語 - 春節 、新年、新春、大年、農暦年、農暦新年、旧暦年、元旦
朝鮮語 - ソルラル (ソラル)、ソル、クジョン(旧正)
ベトナム語 - テト (テッ、節)、テトグェンダン(元旦節)
英語 - Lunar New Year 、Chinese New Year、Chinese Lunar New Year、Spring Festival、Tet、○○(国名の形容詞) New Year
中国では、1911年の辛亥革命 後、翌1912年の中華民国 の成立時に太陽暦 が正式に採用され、元旦は新暦の1月1日へ移動し、旧暦1月1日は「春節」とされ現在に至る。
英語では、「Chinese New Year」は中国に限らず中国暦での旧正月の総称として使える。ただし、中国人 の春節に限定する用法もある[2] 。なお、モンゴルの旧正月は中国暦ではないので含まない。[3] [4]
「Lunar New Year」は、中国暦・モンゴル暦のみならずイスラム暦 などを含む、太陰暦 ・太陰太陽暦 一般の年初の総称である。各国の旧正月を特にいう場合は、「Korean New Year」「Seol」(ソルラル )などともいえる。ベトナムの旧正月は「Tết 」(テト攻勢 の「Tet」はこれに由来[5] )で通じる[2] 。
「Japanese New Year」は日本でのグレゴリオ暦の正月を意味するので、旧正月を意味するには「Traditional Japanese New Year 」と言う必要がある。
チベット仏教圏
モンゴル語のツァガーンサルは、「モンゴル暦(en )の年初」の名称であって、他国語での旧正月の名称とイコールで結ばれるものではない。
上座部仏教圏
下記の国では、新年の祭りを太陽暦の4月14 - 16日に行う。国によっては13日も休日になる。水掛け祭りを行う。
休日
旧正月が国の休日 となっているのは、中国・北朝鮮 ・ベトナム・シンガポール ・マレーシア ・インドネシア ・ブルネイ とモンゴル である。以下の国や地域では、休日は複数日にわたる。
風俗
中華圏
朝鮮半島
日付
中国の春節を基本にし、日本やベトナムで異なる年は注記する。
各国の状況
日本と中国、ベトナムでの日付の違い
中国暦は天体 の運行を元にしており、朔や中気 がどの日に起こるかで、月 の始まりや月名を決める。これらの天文現象が観測されるのは世界同時だが、時差により、世界中で同じ日ではない。それにより、旧正月が国によって違うことがある。たとえば、2007年の雨水の直前の朔が起こったとき、日本(日本標準時 、UTC+9 )や中国(中国標準時 、UTC+8 )ではもう2月18日だったが、ベトナム(ベトナム標準時 、UTC+7 )ではまだ2月17日だった。そのため、日本の旧正月や中国の春節は2月18日、ベトナムのテトは2月17日となった。このようなずれは、時差1時間あたり、平均して24年に1度ある。21世紀前半では、中国とベトナムの間では2007年と2030年、中国と日本の間では2027年と2028年に起こり、東側の国の旧正月が西側の国より1日遅れる。
ごく希に、旧正月が約1朔望月 (29日 - 30日)ずれることもある。これは、朔の前24時間以内に中気が起こるときにありうる。月名の決定を朔の瞬間と中気の瞬間の比較で考えるとこのようなことはありえないが、正確には朔の瞬間ではなく「朔日の0時」と中気の比較である。観測場所によって「朔日の0時」に時差があるため、中気が朔と同じ日なのかあるいは前の日(すなわち前の月の晦日 )なのか異なる場合があり、月名がずれることになる。
さらに、日本と他国の間では、中国の旧暦である時憲暦 (正確には1811年の修正以前の置閏法の時憲暦)と日本の旧暦である天保暦 (1811年に修正された後の時憲暦の置閏法を参考にして作られた)との間の置閏法 の違いが月のずれを引き起こすことがありうる。なお、天保暦(及び1811年に修正された後の時憲暦)の置閏法には欠陥があり、さらに日本では旧暦の公的管理がなされていないため、日本の旧正月については日付を決定するのが困難な場合がある(2034年、2148年 、2224年 など。旧暦2033年問題 参照)。中国においては、祝日である春節を決定するために旧暦の公的管理が、中国科学院 紫金山天文台 においてなされている[注 2] 。
日本とベトナム以外は、現地の標準時にかかわらず旧暦の計算に中国標準時を使っていて、暦法も同じなので、旧正月は常に一致する。
日本の旧正月
日本では、旧正月は祝日・休日ではない。ただし、「建国記念の日 」の由来となったグレゴリオ暦紀元前660年 2月11日 は「旧暦1月1日」である。
グレゴリオ暦(新暦)が採用された明治 時代以降も各所で旧正月が祝われてきたが、戦後 はグレゴリオ暦の正月に一本化されるようになり[注 3] 、2022年現在では沖縄県 (名護市 、糸満市 などにおける漁師町が特に顕著)、鹿児島県 奄美群島 以外では、一部の神社・寺院での祭典や各地域の行事[注 4] が残っている程度で、旧正月が特別に話題に上ることは少なかった。
2010年代になり中国人 を中心とした旅行客がこの時期に日本に集中するようになり、インバウンド消費 が拡大。この時期には航空券価格の高騰、秋葉原 ・銀座 などにおける電機店・百貨店での爆買い や温泉街・スキー場における混雑が日常的となった。この影響で日本の一般社会でも旧正月の存在が意識されるようになった。2015年2月の旧正月の時期には、訪日観光客数が単月過去最高の1,387,000人となり、中でも中国からの観光客が前年同月比約2.6倍の359,100人で、中国からの観光客数が初めて30万人を越えた。
モンゴルの旧正月
モンゴルでは、モンゴル暦 の年初であるツァガーンサルが国の祝日となっている。モンゴル暦は、インド の暦に起源を持つチベット の太陰太陽暦である時輪暦 の一種で、ラマ教(チベット仏教) の宗教行事などに使われている。
ツァガーンサルの日付は宗教的に決定され、前年に発表される。中国などの春節と一致する年も多いが、しばしば1日または1朔望月ずれる。常に朔日というわけではなく、少しずれることがある。
最近のツァガーンサルの日付は以下のとおり。
2000年2月5日
2001年2月24日
2002年2月13日
2003年2月2日
2004年2月21日
2005年2月9日
2006年1月30日
2007年2月18日
2008年2月8日
2009年2月25日
2010年2月14日
2011年2月3日
2012年2月21日
2013年2月10日
2014年1月31日
2015年2月19日
2016年2月8日
2017年2月26日
2018年2月16日
2019年2月5日
2020年2月23日
2021年2月12日
2022年2月1日
2023年2月20日
2024年2月10日
2025年1月29日
正教会の旧正月
正教会 のうち、ロシア正教会 、エルサレム総主教庁 、グルジア正教会 、セルビア正教会 、アトス山 などは1月14日を正月として祝う。これらの教会が採用しているユリウス暦 は現行のグレゴリオ暦 と現在13日の乖離があり、ユリウス暦の元日に相当する日付は西暦2100年まではグレゴリオ暦の1月14日である。この正月も日本では旧正月と呼ばれる。
脚注
注釈
^ 旧暦2033年問題 の影響を受けるが、日本でも2月19日 が有力。
^ 近年においては、2017年 5月12日 、推薦性国家標準 のひとつとして、中国暦による日付の算出方法や日付(年月日)の表記法を定めた『農暦的編算和頒行』が発布され、それに基づいて実施されている。
^ 愛知県 を例にとると、渥美郡 渥美町 (現:田原市 )では1959年に正月の行事を翌年(1960年)から新暦で行うこととなったが、各集落で意見が分かれ、結果として集落ごとで新旧入り混じっての実施となる(集落内でも新旧それぞれに分かれて実施されるケースもあった)等大混乱だったことを、杉浦明平 が自著で記している[6] 。また、知多郡 南知多町 の篠島 では、1973年から正月を新暦に移行している[7] 。
^ 旧正月を祝う準備のため人々が町へ買い出しに集まったのをきっかけに商人たちが露店を出した、三重県 亀山市 の亀山大市 (旧正月の時期に開催)[8] 等が例に挙げられる。
出典
関連項目
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