太陽の沈まない国 (たいようのしずまないくに、英 : the empire on which the sun never sets , 西 : el imperio en el que nunca se pone el sol )とは、「ある領土で太陽が沈んでいても、別の場所では出ている」ということと「繁栄している」ということを掛け、世界全体に植民地 を有しており、当時覇権 を握っていた巨大な帝国 (帝国主義 に基づく場合もあり、政体 とは不一致)のことを指す言葉。太陽の沈まぬ国 ともいわれる。
歴史上、「太陽の沈まない国」と呼ばれるのは、ハプスブルク家 のスペイン王国 (スペイン帝国 ) と七年戦争 後のイギリス (イギリス帝国 )である。
スペイン帝国(スペイン・ハプスブルク帝国)
1790年 当時のスペイン帝国。
スペイン系ハプスブルク家、すなわちスペイン・ハプスブルク家 (エスパーニャ・アブスブルゴ)は、1580年 から1640年 にかけてポルトガル 王位を兼ね、ヨーロッパ大陸ではネーデルラント や南イタリアなどを属領とし、中南米 やフィリピン 、マカオ 、マラッカ 、ゴア およびアフリカ大陸 沿岸などの旧ポルトガル領などの海外植民地 を含めて「太陽の沈まない国」を実現した。これら本国、植民地、属領の総称としてスペイン帝国 と呼ばれる。
フェリペ2世 の在位中に最盛期を迎えるが、無敵艦隊 の壊滅を契機としてその勢力は下り坂に入り、八十年戦争 やフランス・スペイン戦争 (西仏戦争)に敗れてヨーロッパの覇権を失い、八十年戦争でスペインから独立したオランダ や宿敵ブルボン家 を擁するフランス 、無敵艦隊を破ったイングランド などの台頭もあって、衰退した。
イギリス帝国(大英帝国)
1921年 当時のイギリス帝国。ウェストミンスター憲章 の10年前にあたる。
オランダに対しては17世紀後半に3次にわたる英蘭戦争 を戦って勝利し、フランスに対しては17世紀後半から19世紀初めにかけてファルツ継承戦争 (北米ではウィリアム王戦争 )、スペイン継承戦争 (北米ではアン女王戦争 )、オーストリア継承戦争 (北米ではジョージ王戦争 )、七年戦争 (北米ではフレンチ・インディアン戦争 ) のヨーロッパ・北米の両大陸にまたがる一連の戦争(これら一連の抗争を第2次百年戦争 と呼んでいる)を戦い、七年戦争 の結果がアメリカとインド での植民地獲得競争での勝利を確定的とした。これにより、「太陽の沈まない国」が実現した。
19世紀後半のドイツ帝国 など新興国の躍進、20世紀前半の二度にわたる世界大戦 と旧植民地の独立、アメリカ合衆国 ・ソビエト連邦 の二大国化までイギリス帝国 あるいは大英帝国と呼ばれた。
なお、アメリカ独立戦争 により北米13植民地を失う以前を第一次帝国、失って以降を第二次帝国と呼ぶことがある。
現在の「太陽の沈まない国」
2019年 現在において、保有領土のうちいずれかで常に太陽が昇っている国としては、以下の2か国である。いずれも「ある領土で太陽が沈んでいても、別の場所では出ている」という事実においては該当するが、「覇権 を有する」という意味では該当しない。
また、高緯度地域においては白夜 という現象があるため、夏季においては常に太陽が昇っている(例えばノルウェー は北極圏にスバールバル諸島 を領有するが、北緯78度13分に位置する主要都市ロングイェールビーン では4月20日 頃から8月23日 頃まで日が沈まない。また、同諸島の最北端は80度50分に位置するため、さらに白夜の期間が長くなる)。これに加えてロシア の場合は、広大な国土が東西に広がっており、国土のいずれかに常に太陽が昇っている期間が長い。また、アメリカ についても米領ヴァージン諸島 (西経64度)からグアム (東経145度)までの範囲に国土が広がっていることから、1日24時間のうち20時間以上は国内のどこかで太陽が昇っていることになる。
関連項目