最初の舞台出演はマリア・コネサ(英語版)のレビューで、「Oh Charley, My Boy」を歌い、シミーを踊った。1924年、ヴェレス姉妹の友人である若いピアニスト、アウシリオ・カンポスが舞台プロデューサーのカルロス・オルテガとマニュエル・カストロにヴェレスを推薦した。オルテガとカストロはリージス劇場でシーズンレビューの準備中で、1925年3月にヴェレスを雇い入れた。同年後半、レビュー「Mexican Rataplan」と「¡No lo tapes!」で主演を射止める。彼女の思わせぶりな歌と挑発的なダンスは観客の心を掴み、瞬く間にメキシコのヴォードビル界でトップスターの地位を確立した。最盛期には1日35ペソを稼ぎ、メキシコで最も稼ぎの多いヴォードビル出演者の1人になっていた。1年半後、マネージャーが昇給を認めなかったためレビューを去った。その後プリンシパル劇場に参加するも「攻撃的な態度」を理由に3ヵ月後に解雇された。しかし直ぐにリリコ劇場に雇われ、日給が100ペソにまで上がった[7]。移り気で利かん気な性格と、他の出演者との確執はしばしばメキシコのマスコミを賑わすと同時に、彼女の衆目を集める能力も開花した。1925年10月、メキシコの新聞ラ・プレンサは彼女がタレント・コンテストでヴォードビルのライバル、セリア・パディーヤの後塵を拝し2位に甘んじた後に自殺を図ったと報じた。記事はもっともらしく誇張され、メディアは数ヶ月に亘りパディーヤとの確執を報道し続けた[8]。
短編映画『Sailors, Beware!』で銀幕デビューを果した後、ローチのもう1本の短編映画『What Women Did for Me』(1927年)にも出演した。同年ダグラス・フェアバンクスの次回作『ガウチョ』のスクリーンテストを受ける。 伝えられるところによればフェアバンクスはヴェレスを甚く気に入り、直ちに契約を結んで共演者として雇い入れた。1927年の公開と同時に『ガウチョ』はヒットし、批評家は勇敢な演技と印象的なスタントで知られるフェアバンクスと並んで引けを取らないヴェレスの力量を順当に評価した[11]。
1932年2月、ブロードウェイの興行主フローレンツ・ジーグフェルド・ジュニアとミュージカルレビュー『Hot-Cha!』で「コンチータ」役を演じる契約を結び、映画の仕事を休業してニューヨークへと向かった[17]。ショーにはバート・ラー、エレノア・パウエル、バディ・ロジャース(英語版)も出演した。ショーは当初から問題が山積みであった。1932年当時、ジーグフェルドは世界恐慌と高額なブロードウェイの舞台に訪れる観客の減少により、財産の大部分を失っていた[18]。ジーグフェルドはショーの資金調達のためエディ・カンター及び2人の名の知られたギャング、ダッチ・シュルツとワキシー・ゴードン(彼らはショーに「Laid In Mexico」というサブタイトルを付けろと主張した)、から金を受け取る事を強要されていた[19]。3月8日にジーグフェルド劇場で初日を迎えたショーは、リンドバーグ愛児誘拐事件が大きく影を落とした[18]。ショーは脚本の弱さと極めて猥褻な構成を指摘され概ね批評家から酷評されたが、バート・ラーの演技とジョセフ・アーバン(英語版)の舞台美術は称賛された[20][19][21]。『Hot-Cha!』は119公演の後1932年7月18日に千秋楽を迎えた[22]。ショーはジーグフェルドの慢性的な放縦により黒字にはならず[19]、7月22日に亡くなった彼にとって最期の仕事となった[23]。
1932年末、『宣伝第一』でリー・トレイシー(英語版)と共演。1933年初め、ヴィクター・マクラグレン、エドマンド・ロウ(英語版)と共に『ホット・ペッパー(英語版)』に出演。同年後半、ミュージカル・レビュー『Strike Me Pink』でジミー・デュランテと共演するためブロードウェイに戻った。1934年、『頓馬パルーカ』と『Strictly Dynamite』でデュランテと共演。同年「Slim Girl」役で「Laughing Boy」役のラモン・ノヴァロと『砂漠の新月』に出演。この作品は、売春に言及し「違法な」性行為を描写していると考えられ「娯楽映画として明らかに相応しくない卑しく不道徳で汚らわしい物語」と見なす、映画検閲官ジョセフ・ブリーン(英語版)からの反駁を受けた。メトロ・ゴールドウィン・メイヤーはブリーンが不快であると指摘した箇所を差換えたが、粗悪な脚本がノヴァロの下落しつつある人気と相俟って映画は低迷した。『砂漠の新月』は静かに公開され、殆ど注目されなかった。映画を取り上げた数少ない批評は、作品自体は酷評したがヴェレスの演技は称賛した[24]。
1938年、コール・ポーターによるミュージカル『You Never Know』で最後のブロードウェイ出演を果たす。ショーは批評家からの評価は低かったが、ヴェレスと共演者のリビー・ホルマンとの確執のお陰で広く知れ渡った。ポーターがヴェレスのために書き下ろした歌にホルマンが不快を示した事から、直ちに2人の反発が始まった。ホルマンはヴェレスがショーで披露するグロリア・スワンソン、キャサリン・ヘプバーン、シャーリー・テンプルといった女優のものまねで注目を集める事にもイライラしていた[26]。またヴェレスがホルマンの楽屋入口の外で放尿したとも伝えられている[27]。この確執はニューヘイブンでの公演中、カーテンコールの際にヴェレスがホルマンを殴り、パンダ目にした事で頂点に達した。事実上2人の争いにより、ショーは終焉を迎えた[28]。
「From Bananas to Buttocks: The Latina Body in Popular Film and Culture」という書籍でローサ=リンダ・フレゴソ(英語版)は、ヴェレスは現代の道徳的慣例への抵抗で知られており、彼女が私生児を産む事を受け入れられなかったとは考え難いと書いた。フレゴソはヴェレスが人生最後の年に最大の熱狂と落ち込みの徴候を示したと考えている。続けてヴェレスの死が双極性障害のような精神病を放置した結果という可能性があると推測する[66]。
シットコム『そりゃないぜ!? フレイジャー』のパイロット版「全員集合!?」 (The Good Son) でフレイジャー・クレインの担当プロデューサー、ロズ・ドイル(英語版)は「不死に対する最終的な試みをすることに決めた」と言ったルーペ・ヴェレスの物語を話し、フレイジャーの人生に対する見解を改善しようと試みる。ロズはヴェレスの自殺の例の都市伝説を語り、「我々が計画したように物事は進まないにしても、それらは何とかして解決出来る」とフレイジャーに気付かせる。フレイジャーが「ルーペはどうやって解決したんだ?」と尋ねると、ロズは「彼女が望んだ事は記憶され続ける事だった」と言った。「貴方はこの物語を忘れられる?」[79]
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