ラクーンシティ(Raccoon City)は、テレビゲーム『バイオハザードシリーズ』に登場する架空の都市である。
各作品の名称は、バイオハザードシリーズの登場人物に準じた形で略している。また、作品によっては原典の発表後の再登場やリメイクに際し、原典から変更された箇所も多々存在するため、本記事ではまず原典での詳細を記述し、その後に変更点を記述している。
アメリカ合衆国中西部に位置する、自然豊かな山々や森林に囲まれた架空の都市。元々は小さな田舎町であったが、アンブレラ社の工場が郊外に建設されたことで飛躍的に発展し、アメリカ有数の企業城下町となる。
市の名を冠す「ラクーン」 (Raccoon) とは、アライグマを意味する。
北部にはアークレイ山地と呼ばれる美しい山脈が連なり、有名な観光地となっているが、町は四方を山地に囲まれた山間部に位置し、市外との交通手段は市の北東へ伸びるハイウェイと郊外へ繋がる南部の幹線道路のみと、交通の便は良いとは言えない。市内には、サーキュラー川やマーブル川が流れている。
街の中心市街地はエナーデイル通り (Ennerdale St.) を隔てて、北側に存在する「ダウンタウン」と南側に存在する「アップタウン」の2つに区画が分かれている。中心市街の外郭にはシダー (Cedar) 地区や、ニューロックスクエア (New Lock Square) 地区、ローデスヒル (Rhodes Hill) 地区などが存在する[注釈 1]。
主要幹線道路には「セントラル通り」 (Central St.) や「ウォーレン通り」 (Warren St.)、「ラクーン通り」 (Raccoon St.)、「ミッション通り」 (Mission St.) などが存在する。また、隣町の1つにストーン・ヴィル[注釈 2]という町がある。
リメイク作品である『バイオハザード RE:2』(以下『RE:2』)および『バイオハザード RE:3』(以下『RE:3』)では、市中心部であるダウンタウンとアップタウンの街区構造が一新されており、R.P.D.など過去作の舞台となった施設が別の場所へ移動しているほか、複数の幹線道路が簡略化または削除、名称変更などの変更が加えられている。
なお、1998年に起きたアンブレラ事件については後述。
ここでは、ラクーンシティにある主な機関や施設に就いて説明する。『Biohazard archives Since 1960〜1998』に詳しい地図が掲載されているので、それも参照のこと。
アンブレラ事件とは1998年にラクーンシティで発生したバイオハザードと、それに関連する事件のことである。
バイオハザード発生から約1週間後の9月末、事態を懸念した大統領と連邦議会は滅菌策「コードXX(ダブルエックス)」を議決し、発令に移した。
10月1日早朝、日の出とともに「コードXX」が決行され、アメリカ統合特殊作戦司令部・通称“ヘブンズゲート”による指揮の下、戦略ミサイルによるラクーンシティへの核攻撃を実行。コールサイン“エンジェル”の攻撃機6機が燃料気化爆弾を搭載した巡航ミサイル“アロー”10基を発射し、中心市街地の破壊後に全市域を破壊する戦術核が使用され、ラクーンシティは地図上から消滅した。
作戦開始時点で市内に展開していたU.S.S.と一部のアンブレラ社員には滅菌作戦の旨が通達されていたが、U.B.C.S.のような末端の部隊にはほぼ伝達されておらず、街に残っていた生存者は暴徒もろとも死亡している。
この事実はテレビやラジオで報道され、同時にアンブレラによる生物兵器製造や人体実験、ウィルス研究なども明るみに出る[注釈 19]。
この件で政府はマスコミ、世論から激しく糾弾され、大統領が辞任にまで追いやられたと報道されている。
現在(『3』や『OB』シリーズのエンディング以降)、ラクーンシティの跡地は先のミサイル攻撃によってクレーターが生じ、荒廃している。滅菌作戦後においてもウィルス汚染は残存しており、ラクーンシティの周囲12キロメートル以内は立ち入り禁止となっているため、街の再建の目処はまったく立っていない。『OB』エピローグでは、ヘリポートと建屋からなる高層建造物が建てられ、その様子をアンブレラ社保有のF-22に撮影させておりアンブレラがこの状況を利用して何らかの実験を継続していることが示唆されている。後の作品ではアンブレラが崩壊して久しい旨が説明されているため、前述の実験は中止となったことがうかがえる。
「ラクーンシティ壊滅の原因はアンブレラによるもの」であることを一般に周知されぬように偽造工作を繰り返す一方、なおも生物兵器の実験を続け、研究所の事故や敵対組織の襲撃でバイオハザードを発生させるに到り、第二第三のラクーンシティを作っていくこととなる。
隆盛を誇ったアンブレラであったが、真実を知った事件生存者や反対組織の諸活動などによって徐々に衰退。2003年には、再起のための研究開発が行われていた「テイロス計画」がクリスとジルに阻止されたことで、企業としては完全に瓦解。2004年までにアメリカ政府によって全面的な業務停止命令を受け、株価は大暴落。事実上、崩壊した。
しかしながら、アンブレラの復活を目論む者が少なからず存在している。
ラクーン壊滅事件の影響で、世界各地でバイオハザードやバイオテロの危険が高まり、実際にそういった被害が以下の地域で発生している。
『I』『II』は主にラクーンシティが舞台になっているが、片田舎として描かれていたゲーム版よりもはるかに大規模な都市として描写されており、市街地シーンの撮影はカナダのトロントで行われた。
バイオハザード発生後はアンブレラによって隔離されたが、発生の翌日にはアンブレラのティモシー・ケイン少佐主導の下、アンブレラ社保有の軍用機から発射された5kt戦術核ミサイルにより滅菌された。しかし、滅菌を実行したにもかかわらずラクーンシティでの検疫を逃れた一部の人間を中心にT-ウィルスが全世界に拡散したと『III』で語られている。また、『IV』では、東京で新たな感染者が発生したのを皮切りに、世界各地へバイオハザードが拡散したことが明らかになった。
『II』では教会裏の墓場からゾンビが出現したことにより、バイオハザード発生以前からウィルスが漏れていたことが示唆されている(作中でアンブレラが流していたテレビCMにより、T-ウィルスを使った「皺取りクリーム」が販売されていたことなど)。
『ザ・ファイナル』では滅菌作戦後の焦土化したラクーンシティが登場し、荒廃した高層ビルなどを根城にする生存者の集団が登場している。
S・D・ペリーによるノベライズ版は、原作とは異なる世界観・物語展開であるため、市の設定等にも違いが随所に表れている。