タイプ種Spectrovenator rageiはZaher et al. (2020)により新属新種として命名された。属名はラテン語で「幽霊」を意味するspectrumと「狩人」を意味するvenatorに由来する。この命名は、当時フィールドでプレパレーション中であったティタノサウルス類Tapuiasaurus macedoiのホロタイプ標本の直下から本属のホロタイプ標本が予期せず発見されたことにちなむ[2]。
特徴
保存の良いスペクトロベナトルの頭蓋骨には、本属がジュラ紀のアベリサウルス科と前期白亜紀のアベリサウルス科との中間的な分類群であることを示す特徴が存在する。本属は別の基盤的アベリサウルス科であるルゴプスと頭蓋骨の特徴を共有しており、系統樹において同様の位置にあったことが示唆される。より派生的な分類群は下顎の筋肉を収容するより幅広な空間を持つ適応を遂げているが、スペクトロベナトルはその適応を欠いており、頭蓋骨の側頭部に祖先形質(上側頭窩の間に存在する幅広な頭頂骨と、後眼窩骨の長く伸びた鱗状骨突起)が存在する。これらの形質から、スペクトロベナトルの咬合力がより派生的なアベリサウルス科と比較して弱かったことが示唆され、アベリサウルス科が進化の過程で咬合力を増大させた可能性が考えられる。Zaher et al. (2020)は、スペクトロベナトルが示す基盤的特徴の数に基づき、アベリサウルス科に特徴的な採食戦略のために必要な適応を示すアベリサウルス科の属がセノマニアン期以降に限られると結論した[2]。