アダムズ山頂の平坦さは、伝説とは異なり、頂部が飛ばされたからではない。異なる火道からの円錐形成噴火の結果として形成された。偽の山頂が、半マイル (800 m) 近い幅のある頂部の南側に、高さ11,500フィート (3,510 m) で聳えている。真の頂上は約800フィート (240 m) 高く、北側にある穏やかな斜面の上にある。小さな溶岩の円錐が最高地点になっている。サクスドーフ尾根は長い壁であり、偽頂上から標高8,000フィート (2,440 m) まで降っている。この構造は更新世後期に繰り返し溶岩が流れて形成された。偽頂上の北西にあるピナクルはアダムズ氷河とホワイトサーモン氷河の浸食によって形成された。頂部のクレーターは雪で埋まっており、西部に口が開いている[5]。アダムズ山の頂上から晴れた日に見えるカスケード山脈の峰としては、北のレーニア山、南のオレゴン州にあるフッド山とジェファーソン山、西のセントヘレンズ山がある[10]。
氷河はアダムズ山表面の2.5%を覆っているだけだが、最終氷期には約90%が氷に覆われていた。万年雪は209か所あり、公式の名前を持つ氷河は12ある。氷に覆われた表面の総計は 24 km2 あり、実際に名付けられた氷河の面積は 20 km2 ある[11]。残っている大型氷河の大半(アダムズ、クリッキタト、ライマン、ホワイトサーモンの各氷河)は頂上の氷冠から出たものである。山の北西面にあるアダムズ氷河は一連の氷瀑にある険しい溝を流れ降り、その後広がって標高7,000フィート (2,100 m) で終わる。そこからシスパス川の支流であるアダムズ・クリークが始まる。東側の斜面は小さな氷湖であるエクストリア湖で終わる。東斜面にあるクリッキタト氷河は幅1マイル (1.6 km) の圏谷に始まり、頂部の氷冠から出た小さな氷河2個から氷が供給される。標高約6,600フィート (2,000 m) で止まり、クリッキタト川の支流であるビッグマッディ・クリークの水源となる。カスケード山脈の中で、アダムズ氷河はレーニア山のカーボン氷河に次いで第2位の大きさである[12]。
ポテトヒルは北面にある噴石丘であり、更新世後期に形成され、溶岩面から800フィート (240 m) 立ち上がっている[16]。その基底から流れた溶岩はシスパス・バレーに入り、後に氷河によって形を変えられた。アダムズ山南面の標高7,500フィート (2,300 m) にはサウスビュートがある。ここの溶岩はサクスドーフ尾根のものより若いが、氷河期末以前に置かれたものである[16]。
アダムズ山の北、数マイルにはゴートロックス原生地があり、アダムズ山よりかなり古く浸食が進んだ成層火山の残骸である。アダムズ山とは異なり、ゴートロックスは周期的に噴火し、250万年前の火山灰を積もらせ、それが固化して厚さ2,100フィート (640 m) の凝灰岩層になっている[17]。
ハイライン・トレイルがアダムズ山を囲んでおり、約35マイル (56 km) の長さがある[19]。このトレイルは「アラウンド・ザ・マウンテン」トレイルとも呼ばれる。そのうち8マイル (13 km) はヤカマ・インディアン居留地に入っており、特別許可を必要とする[19]。また一部はパシフィック・クレスト・トレイルに重なっている。
地質
アダムズ山は南北軸が長い直径18マイル (29 km) の基底に何層かの円錐が重なって形成され、投影面積は250平方マイル (650 km2) ある。この火山は容積85立方マイル (350 km3) あり、カスケード山脈の成層火山ではシャスタ山についで第2位である[5]。太平洋岸北西部海岸沖にあるファンデフカプレートの沈み込みによって造られた可能性がある。
更新世でも比較的後期に生まれており、幾つか溶岩を押し出す噴火によって成長した。それぞれの噴火は長い休眠期間によって隔てられて起こり、その間に氷河が侵食して9,000フィート (2,700 m) 以下の高さにしていた。カリウム-アルゴン法によって噴火の時期を2つ特定している。1つは275,000年から200,000年前に、もう1つは150,000年から100,000年前に起こった。これら噴火の大半、それ故に火山活動の大半はテフラの少ない溶岩流だった。アダムズ山の中核を作り上げている物質は角礫岩の溶岩である[5]。
安山岩と玄武岩が流れてアダムズ山の基底周辺に厚さ20ないし200フィート (6 - 60 m) の円盤を形成し、そのときにあった低地を埋め、バレーに広がった。火山の大半は安山岩であり、アダムズ山成長の初期に噴出していた幾らかのデイサイトや火砕流が入っていた。現在の円錐は最終氷期に頂部が氷河に覆われたときに形成された。噴出した溶岩は氷に触れたときに粉砕されており、それ故に円錐の内部はたやすく浸食される安山岩の破片でできている。その形成以来、常に熱と腐食性ガスを放出したので、岩の多くを粘土(大半はカオリナイト)、酸化鉄、硫黄分の多い化合物、および石英に変えた[20]。
現在、標高7,000フィート (2,100 m) より上にある円錐部は25,000年から10,000年前に形成された。その時から少なくとも7回は噴火しており、その全ては頂上から6,500フィート (1,980 m) 以上を形成した。最近の溶岩流はサウスビュートからであり、長さ4.5マイル (7.2 km) 、幅0.5マイル (0.8 km) のA・G・エイケン溶岩ベッドを形成した。この溶岩流は若く見えるが、セントヘレンズ山から放出された3,500年前の灰を乗せており、少なくとも3,500年以上経っていることがわかる。アダムズ山から噴出したことが分かっている最後の溶岩は、2,500年から3,500年前のマッディ・フォーク溶岩流である[3]。
トラウト湖マッドフローは、アダムズ山から最新の大きな土石流であり、最終氷期以降唯一の大きなものである。このフローがトラウト湖の堤を作り、ホワイトサーモン川バレーの25マイル (40 km) を覆った。堰き止められた水がトラウト湖となった。1921年の大地すべりはホワイトサーモン氷河の上部付近に始まり、有史のアダムズ山では最大の雪崩となった。この雪崩は約1マイル (1.6 km) 滑落し、ソルト・クリーク上流の約1平方マイル (2.6 km2) を覆った。この雪崩のときに蒸気道が3年間活動していたとされており、小さな蒸気爆発で雪崩が誘発されたと考えられている[20]。これがアダムズ山で記録にある唯一の土石流だが、火山泥流は5度起きたことが分かっている[21]。
1830年から1834年、ホール・J・ケリーがカスケード山脈をプレジデントの山脈と改名する運動を行い、山脈にある主な山も大統領の名前を付けようとした。アダムズ山についてケリーは知らず、その計画に入っていなかった。フッド山は実際にケリーがジョン・アダムズ大統領に因んで改名しようとしたが、地図制作者の誤りでアダムズ山をフッド山の北、セントヘレンズ山の東40マイル (64 km) に据えた。偶然の一致でその場所には名前を与えられるだけの大きな山があった。当時この山には公式の名前が無かったので、ケリーの付けた名前が付けられた。ただし他の山の改名は失敗した[31]。
多くのトレイルがアラウンド・ザ・マウンテン・トレイルにアクセスしている。南面ではショートホーン・トレイルがモリソン・クリーク・キャンプ場近くからスタートし、サウス・クライム・トレイルはコールド・スプリングス・キャンプ場をスタートしてサウス・スパーに向かう人気のある登山道である。西面では3つの登山道がある。スタグマン尾根トレイル、パシフィック・クレスト・トレイル、ライリー・クリーク・トレイルである。北面ではディバイド・キャンプ、キルン・クリーク、マッディメドウズの各トレイルがあり、ここでもパシフィック・クレスト・トレイルが下山道になっている。これらのトレイルは概して3マイル (5 km) から6マイル (10 km) の間に1,500ないし3000フィート (450 m - 900 m) 登ることになる。これらは初冬から初夏までほとんど雪に覆われている。その他人気のあるトレイルはルッキンググラス湖トレイル、ハイキャンプ・トレイル第10、ソルト・クリーク・トレイル第75、クロフトン・ビュート・トレイル第73、ライリー・コネクター・トレイル第64Aがある[36]。
アダムズ山レクリエーション地域のハイキング
南東面にあるアダムズ山レクリエーション地域では、バード・クリーク草原が野草の見事さで知られるピクニックとハイキングの適地になっている[37]。またアダムズ山とその氷河や南のフッド山も眺められる[38]。ヘルロアリング展望台に行くと、約1,000フィート (300 m) 下に開けるヘルロアリング草原や氷河バレーを見られる。ここから5,800フィート (1,800 m) 上のアダムズ山、クリッキタト氷河を望むことができ、氷河端部から下にある高い崖から落ちる様々な滝がある[39]。バード・クリーク草原には花のトレイルなど多くの巡回トレイルがある。草原、水流、クルックド・クリーク滝などの滝を巡る道もある[40][41]。標高6,821フィート (2,079 m) のリトル・アダムズ山は、ワンダーズ尾根の上にある対象形の噴石丘であり、ヘルロアリング草原やヘルロアリング・クリーク・バレーの北東端から立ち上がっている。山の東麓に続くトレイルがある。頂上に行くには岩がちの地形を通らなければならない。ハイカーが造ったトレイルもある[42]。
冬のレクリエーションでは、アダムズ山の南面にスノーモービルやクロスカントリースキーで人気のあるワシントン州のスノー公園が多くある。南斜面にはスノーキング、パインサイド、スミスビュートと3か所のスノー公園がある。特にA・G・エイケン溶岩ベッドはスノーモービルやスキーに人気がある。森林サービスの冬季予算に余裕がある限り、アダムズ山レクリエーション・ハイウェイは標高3,000フィート (900 m) にあるパインサイドやスノーキングの公園まで雪掻きされている。標高約4,000フィート (1,200 m) のスミスビュートは、雪が少ない年のみ行くことができる[49]。
^ abSpring, Ira; Manning, Harvey (1992). 100 Hikes in Washington's South Cascades and Olympics (second ed.). The Mountaineers. p. 112. ISBN0-89886-301-5
Harris, Stephen L. (1988). Fire Mountains of the West: The Cascade and Mono Lake Volcanoes. Missoula: Mountain Press Publishing Company. ISBN0-87842-220-X