ハクトウワシ (白頭鷲、学名 :Haliaeetus leucocephalus 、英 : Bald eagle )は、タカ目 タカ科 に属する大型鳥類 ・猛禽類の一種である。日本では特定動物 に指定されており、愛玩目的の飼養は許可されない。
分布
北アメリカ大陸 (アラスカ など)の沿岸部に広範囲に分布する。
迷鳥 としてアイルランド でも発見されたことがある[2] 。
日本 でも国後島 、北海道 [3] で発見されている。
形態
全長80-110 cm で、翼を広げると2 m を上回る大型のワシ である。体色 は褐色だが、肩から頭にかけての部分が白くなっているのが大きな特徴となっている。幼鳥は全身が褐色の斑点で覆われ、成長と共に頭部の白さがはっきりとしてくる。
分類
2亜種が存在するとされている。
Haliaeetus leucocephalus leucocephalus (Linnaeus、1766) アメリカハクトウワシ
米国南部、バハカリフォルニア半島
Haliaeetus leucocephalus washingtoniensis (Audubon, 1827) H. l. alascanus はシノニム。 アラスカハクトウワシ
米国北部、カナダ、アラスカ
生態
海岸 や川 沿い、湖沼 の近辺に生息する。主に魚類 を捕食するほか、水鳥 や哺乳類 、爬虫類 、動物の死骸なども食べる。水辺近くの樹上、岸壁、地面などに鳥類の中でも最も巨大な巣を作り、一度に1~2個の卵を産む。繁殖期は南部では10-4月、北部では4-8月。
保護現状
IUCN レッドリスト では、軽度懸念(LOWER RISK - Least Concern)とされている。
アメリカ合衆国 では、一時は乱獲、森林伐採による営巣地の減少、餌となる魚の農薬による汚染やポリ塩化ビフェニル (PCB) による汚染などによって分布域が縮小し、個体数も激減したが、継続的な保護活動により現在では個体数が順調に回復している。保護法規には、1940年 のハクトウワシ保護法(現・ハクトウワシ・イヌワシ保護法 (英語版 ) )と1918年 の渡り鳥保護条約法 (英語版 ) がある。合法的にワシの羽を採集するには、まず魚類野生生物局 から許可を得なくてはならない。1967年 に絶滅危機(Endangered)に分類された。その後、個体数の順調な回復と生息地の存続状況を受け、1994年 には絶滅危惧(Threatened)に変更。そして、2007年 には米国絶滅危機種リスト (英語版 ) から完全に除外された[4] 。
2005年にワシントン条約 附属書Iから付属書IIに引き下げられたことを受け、日本ではアラスカハクトウワシが種の保存法 の指定する国際希少野生動植物種から削除された。アメリカハクトウワシは渡り鳥条約 により、現在も国際希少野生動植物種に指定されている。
文化
アメリカ合衆国の国章
アメリカ合衆国 の国鳥 であり[5] 、アメリカ合衆国の国章 に描かれる。
アメリカ・インディアン
チョクトー族 インディアンの「鷲の踊り」。彼らにとって鷲は伝統的な聖鳥である。(ジョージ・カトリン 画、1930年代)
アメリカインディアン の多くの部族は、ハクトウワシを聖なる生き物と見なす文化を持ち、ハクトウワシやその羽を儀式や正装に用いる。インディアンによるワシの羽の利用は鷲羽法 (英語版 ) で規定されている。ワシの羽の採集許可証の申請をする者は、少なくとも祖父母の一人が純血のインディアンであることを立証しなくてはならない。
2005年3月、ワイオミング州 の「ウィンドリバー・インディアン保留地」内で、北アラパホー族 のウィンスロー・フライデーが、部族の伝統儀式「太陽の踊り(サンダンス)」のために、連邦の許可なくハクトウワシを殺したとして逮捕された。2009年10月5日、米国地方裁判所判事アラン・ジョンソンは、このアラパホー族男性の刑事訴追をアラパホー族の部族法廷に一任する裁定を下した。
「アメリカ連邦政府に無断でワシを殺した」としてインディアンが起訴されたワイオミング州でのこの一件は、「インディアンが宗教儀式のためにワシを殺すことに、どこまで連邦政府が関与し規定すべきものなのか」という、「インディアンの宗教の自由」という観点から大論争となっている。
様々なシンボルマークとして
スクリーミングイーグル
1782年 にアメリカ合衆国の国鳥に登録され、その特徴的な外見も手伝ってその存在は非常に有名である。アメリカ合衆国の国章 以外にも、多くの連邦政府 や法執行機関の記章 に取り入れられている(大統領府 から、連邦捜査局 や警備会社 に至るまで)。例えば、「teardrop with bald eagle 」(涙滴型にハクトウワシ)、「sunray maltese with bald eagle 」(陽光型マルタ十字にハクトウワシ)というデザインが定形として存在する。
1984年のロサンゼルスオリンピック のマスコットキャラクターであったイーグルサム (Eagle Sam、Sam the Olympic Eagle )や、MLB ・ワシントン・ナショナルズ のマスコットキャラクターのスクリーチ 、およびポケモン のウォーグル のモデルとなった鳥である。また、アメリカ陸軍 第101空挺師団 の師団章「スクリーミングイーグル」(Screaming Eagles )は、同鳥をモデルにしている。
史上初のアメリカ人ロードレース世界選手権 チャンピオン、ケニー・ロバーツ 、その息子のケニー・ロバーツ・ジュニア 、WGP 250ccチャンピオンのジョン・コシンスキー は、ヘルメット のカラーリングにハクトウワシをあしらっている。特に、コシンスキーは星条旗 を交えたデザインとしている、当時のアメリカ人バイクライダーの気概のようなものを感じさせる(オートバイレースはヨーロッパ 発祥の文化であり、アメリカ人は格下扱いされている時代が長かった)。
出典
参考文献
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関連項目
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