「アイル・ビー・オン・マイ・ウェイ 」(I'll Be on My Way )は、ポール・マッカートニー によって作曲された楽曲である。作曲者のクレジットにはジョン・レノン との共同名義であるレノン=マッカートニー が使用されている。マッカートニーがデビュー前に書いた本作は、バディ・ホリー からの影響が見受けられる。1963年にビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタス に提供され、4月26日にシングル『ドゥ・ユー・ウォント・トゥ・ノウ・ア・シークレット 』のB面曲として発売された。
4月4日にはビートルズ がBBCラジオ の番組『Side by Side 』(6月24日放送)用にレコーディングを行っており、当時の演奏が1994年に発売された『ザ・ビートルズ・ライヴ!! アット・ザ・BBC 』に収録された。
背景・曲の構成
「アイル・ビー・オン・マイ・ウェイ」は、ポール・マッカートニー が1959年の前半に書いた楽曲で、作曲者のクレジットはレノン=マッカートニー 名義となっている[ 注釈 1] 。ジョン・レノン は、1980年の『プレイボーイ 』誌のインタビューで、「完全にポールの曲。そういうふうに聞こえないかい?トラ・ラ・ラ・ラ・ラ(笑)田舎道をドライブしている時にポールが余興で作った曲さ」と語っている。マッカートニーは本作の作曲で初めて手にしたフラムス (英語版 ) 社のアコースティック・ギター を使っていて、『ザ・ビートルズ・アンソロジー 』内で「『ミッシェル 』や『アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア 』といった、僕が初めて書いた曲はすべてゼニスを使っている。このギターで『トゥエンティ・フライト・ロック (英語版 ) 』を習得して、クオリーメン に入った」と回想している。作曲当初はメロディのみであったが、ビートルズ のライブのレパートリーに加えられてから数年後に肉付けされた[ 注釈 2] 。
本作にはバディ・ホリー からの大きな影響が見受けられる。音楽評論家のイアン・マクドナルド (英語版 ) は、「少し速めのテンポで演奏すると、バディ・ホリーのシンプルな3コードの進行に対する恩義があらわになる」と述べている。エヴェレットも「デュエットのリフレイン」を引き合いに、これに同意している。ルイソンも本作について「Hollyesque (ホリーエスク)」と呼んでいる。歴史家のケネス・ウォマック (英語版 ) もホリーの「もうおしまい 」からの影響について言及している。ギターのイントロにおける半音階 のフレーズは、ザ・クリケッツ (英語版 ) のカバー曲「ドント・エヴァー・チェンジ (英語版 ) 」に由来する。11小節目以降、マッカートニーはレノンよりも3半音高い平行調 で歌っているが、これはホリーのボーカルのダブルトラッキング から派生した技法となっている。歌詞の中では「June light 」と「moonlight 」というかたちで韻を踏んでいる。ルイソンは「As the June light turns to moonlight (六月の光が月の光に変わるとき)」というフレーズを例に挙げ、シンプルで魅力的なメロディなのだが、歌詞には普段の彼らなら絶対に使わないようなフレーズが入っている と述べている[ 12] 。
レノンは本作でマッカートニーとともにリード・ボーカル を務めてハーモニー を加えているが、本作を嫌っていた。ルイソンはレノンの意思表示について歌詞が「この道をぼくは行くのだろう」の一節に来たときで、ジョンは突然顔をゆがめ、「せむし男 」のように背中を丸めてマイクのコードを巻きつけるという突飛な行動に出た。ポールは一緒に笑いに乗っかるしかなかった と書いている[ 14] 。
レコーディング
マッカートニーは、ビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタス によるレコーディングに向けて、本作のデモ音源を作成。ザ・ダコタスのギタリストであるマイク・マックスフィールド (英語版 ) は、デモ音源が収録されたアセテート盤 を所有していて、ビートルズのメンバー全員で演奏していることを主張しているが、この主張は未だに実証されていない。
1963年4月4日、ビートルズはロンドンにあるBBC のパリス・シアター (英語版 ) で、ブライアント・マリオットのプロデュースのもとで本作を録音。この時の演奏は、同年6月24日にBBCラジオの番組『Side by Side 』で放送された。エヴェレットは、著書の中でジョージ・ハリスン によるギターソロの特徴について、エルヴィス・プレスリー の「ジャスト・ビリーヴ (英語版 ) 」や「監獄ロック 」でのスコッティ・ムーア (英語版 ) 、ジェリー・リー・ルイス の「リヴィン・ラヴィン・レック」を引き合いに書いている。本作は、レノン=マッカートニーの作品でビートルズがBBCラジオの番組用にレコーディングを行った後に、スタジオでのレコーディングを行わなかった唯一の楽曲となっている。
リリース・評価
エヴェレットは、著書の中でビートルズによるレコーディングは、クレイマーのレコードの宣伝が目的であることを示唆している。ビートルズによる「アイル・ビー・オン・マイ・ウェイ」は、1970年代から1980年代にかけて複数の海賊盤 で流通し、1994年に発売された『ザ・ビートルズ・ライヴ!! アット・ザ・BBC 』に収録された。
マクドナルドは、本作の歌詞と音楽性について「嘲笑的なまでにうぶ」と評している。エヴェレットは、著書の中で本作の「This way will I go (そこへ行くよ)」というフレーズが、「アイル・フォロー・ザ・サン 」の歌詞と密接な関係にあると書いている。また、コード進行については「つまらない」と結論づけている。ピーター・ドゲット (英語版 ) とパトリック・ハンフリーズは、本作について「(これまで唯一未発表とされていたオリジナル曲であるため)『ライブ・アット・ザ・BBC』の発売に対する批判の対象とされていたことを不当に思う」とし、「誰もこの曲を大々的に宣伝しなかったが、当時2人が書いた多くの作品に引けを取らない」と評している。『オールミュージック 』にレビューを寄稿したリッチー・アンターバーガー (英語版 ) は、「初期のビートルズの楽曲としては弱いが、シングルのB面曲にはふさわしかったであろうかなり典型的な1963年初頭のレノン=マッカートニーの作品」とし、「『アスク・ミー・ホワイ 』や『サンキュー・ガール 』よりも優れたB面曲となっていたことだろう」と評している[ 20] 。
J-WAVE の『PIONEER TOKIO HOT 100 』では、1995年1月1日の週で最高位5位を記録[ 21] 。
クレジット
※出典
ビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタスによる演奏
ビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタス は、1963年3月14日と21日に「アイル・ビー・オン・マイ・ウェイ」のレコーディングを行なった。プロデュースはジョージ・マーティン が手がけた。こちらのバージョンは、ビートルズよりも速いテンポで演奏されている[ 20] 。
ビリー・J・クレイマー&ザ・ダコタスによる「アイル・ビー・オン・マイ・ウェイ」は、1963年4月26日にデビュー・シングル『ドゥ・ユー・ウォント・トゥ・ノウ・ア・シークレット 』のB面曲として発売された[ 24] 。アメリカでは1964年10月にシングル『フロム・ア・ウィンドウ (英語版 ) 』のB面曲として再発売された。その後、同年に発売されたEP『The Billy J. Kramer Hits 』[ 26] や、1979年に発売されたコンピレーション・アルバム『ザ・ソング・オブ・レノン&マッカートニー (英語版 ) 』[ 27] に収録された。
アンターバーガーは、「きらめく密集したボーカル・ハーモニー」や「イントロにおける独特の上昇進行」が含まれていないことから、「ビートルズのBBCでの演奏より劣っている」と評している[ 20] 。
シングル収録曲
7インチシングル(シングル『フロム・ア・ウィンドウ』、Imperial – 66051) 全作詞・作曲: レノン=マッカートニー。 # タイトル 作詞 作曲・編曲 時間 A. 「フロム・ア・ウィンドウ (英語版 ) 」(From A Window) レノン=マッカートニー レノン=マッカートニー 1:55 B. 「アイル・ビー・オン・マイ・ウェイ」(I'll Be On My Way) レノン=マッカートニー レノン=マッカートニー 1:40 合計時間:
3:35
脚注
注釈
出典
参考文献
The Beatles (2000). The Beatles Anthology . San Francisco: Chronicle Books . ISBN 978-0-8118-2684-6
Compton, Todd (2017). Who Wrote the Beatles Songs? A History of Lennon-McCartney . San Jose: Pahreah Press. ISBN 978-0-9988997-0-1
Doggett, Peter ; Humphries, Patrick (2010). The Beatles: The Music and the Myth . London: Omnibus Press . ISBN 0857123610
Everett, Walter (2001). The Beatles As Musicians: The Quarry Men through Rubber Soul . Oxford and New York: Oxford University Press. ISBN 978-0-19-514105-4 . https://archive.org/details/beatlesasmusicia00ever
Lewisohn, Mark (2013). The Beatles – All These Years, Volume One: Volume One: Tune In . Crown Archetype. ISBN 978-1-400-08305-3
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Sheff, David (2000). All We Are Saying: The Last Major Interview with John Lennon and Yoko Ono . New York: St Martin's Griffin. ISBN 0-312-25464-4
Winn, John C. (2008). Way Beyond Compare: The Beatles' Recorded Legacy, Volume One, 1957-1965 . New York: Crown Archetype . ISBN 0307452387
Womack, Kenneth (2014). The Beatles Encyclopedia: Everything Fab Four . Santa Barbara, California: ABC-CLIO. ISBN 0-313-39172-6
外部リンク