Mリーグ2020-21(エムリーグ2020-21)は、競技麻雀のチーム対抗戦のナショナルプロリーグ「Mリーグ」の2020年シーズン。2020年10月5日に開幕し、2021年3月12日に閉幕した。EX風林火山が初優勝し、KONAMI麻雀格闘倶楽部の佐々木寿人がレギュラーシーズンMVPを獲得した。配信当時は「Mリーグ2020」という名称であった。
2020年7月27日、ドラフト会議が開催された。指名はMリーグ2019の下位から順に行うことができるが、前年所属の全選手が再契約となったため、所属選手が3名(定員4名)のチーム(EX風林火山・TEAM雷電・KADOKAWAサクラナイツ)にのみ指名権が与えられた。その結果、日本プロ麻雀協会(以下、協会)所属の堀慎吾[1]がサクラナイツに指名された。これにより、リーグ全体としては、日本プロ麻雀連盟(以下、連盟)16名・最高位戦日本プロ麻雀協会(以下、最高位戦)9名・協会3名・RMU1名・麻将連合-μ-(以下、麻将連合)1名という構成となった。
[1]
()内は、各選手の当時の所属団体。
10月5日に開幕したレギュラーシーズン序盤は、開幕2連勝を決めたドリブンズが勢いそのままに首位を快走し、同じく好調の風林火山がそれを追う展開となった。しかしドリブンズは11月頃に停滞すると、12月頭に大きな4着を3連続で引いたことにより一気に貯金を溶かしてしまう。代わって、開幕から好調の松本吉弘と日向藍子に率いられるABEMASと、佐々木寿人が個人ランキング首位を爆走する格闘倶楽部が上位に躍り出た。ドリブンズが落ちてきた一方、開幕から14戦連続トップ無し(前シーズンからの通算では、レギュラーシーズンのみでは21戦連続トップなし、セミファイナルも含めると15連続トップなし)の萩原聖人が記録的なマイナスを叩いていた雷電が、12月中盤に下位を脱出。同じく下位のサクラナイツも内川幸太郎がシーズンベストとなる7万6700点の大トップを記録し、年末時点でのボーダー争いはパイレーツも含めた4チームによる混戦模様となった。また、昨季躍進の原動力であった魚谷侑未と近藤誠一が不振に喘いだフェニックスは、この時点でただ1チーム最下位に置いて行かれる形となった。
親の役満・四暗刻を和了った堀慎吾による9万2900点の大トップで幕を開けた2021年は、1月後半にパイレーツが14戦、風林火山が13戦連続でトップ無しのスランプに陥る。これにより風林火山は400ポイント近い貯金をすべて溶かしてボーダー争いに巻き込まれ、パイレーツは復調したフェニックスと入れ替わる形で最下位に転落することとなった。
2月にはパイレーツが着実に負債を返済してボーダー争いに復帰する中、600ポイントを超えて独走するABEMASを除く全チームがそれぞれ1試合で入れ替わる順位に位置しており、1強7弱という史上稀に見るであろう大混戦となった。このままもつれると思われたボーダー争いだったが、年明けから絶好調の内川がMVPに迫る勢いの活躍を見せたサクラナイツがラスト10戦全てで連対を記録し、一足先にボーダー争いを脱出。サクラナイツは最終的に500ポイント近くまでポイントを伸ばした。
最終盤はマイナス圏にいる6チーム全てにレギュラーシーズン脱落の可能性が残されていたが、その中でも特に-200〜-300ポイントに位置する6 - 8位の雷電・フェニックス・パイレーツによる争いが激しいものとなった。3月5日には2回戦で近藤が一発高目ツモ裏条件を満たしてトップを獲得したフェニックスがパイレーツとの直接対決を制すると、翌日には雷電が4着-3着で最下位に転落し、フェニックスが6位に浮上する。しかし次の試合の2回戦で黒沢咲がチーム12戦ぶりのトップを決めて再び雷電がボーダー付近まで浮上すると、翌日の試合でフェニックスは近藤と茅森早香が痛恨の連続ラスを引いて最下位転落となった。
6位雷電と7位パイレーツが51ポイント差となって迎えた最終日前のドリブンズ・風林火山・格闘倶楽部・雷電による対決では、ドリブンズと風林火山は連続4着を引かなければ、格闘倶楽部は雷電の下に沈まなければほぼセミファイナル当確という条件の中、1戦目の南3局に佐々木がラスからトップになる倍満ツモを決め、そのままトップを守り切る。その一方、瀬戸熊直樹がラスとなり、他3チームは勝ち抜けが濃厚になった。雷電はボーダーと12.1ポイント差になったものの、2戦目で黒沢がオーラスに逆転トップとなるフリテンの満貫をツモり上げ、パイレーツに70.6ポイントの条件を突きつけた。
迎えた最終日、パイレーツはトップ2着、フェニックスは連続トップが必要となる状況で迎えた1戦目は、魚谷が▲6100点の大きなラスを引いたフェニックスが事実上終戦となった一方、パイレーツは石橋伸洋が3万4900点の2着を記録して可能性をつないだ。2戦目、パイレーツは3万5700点、フェニックスは14万7700点のトップを取れば勝ち抜けであったが、共にトップを取ることはできず、両チームのレギュラーシーズン敗退が決定した。
終始好調だったABEMASは、全員がプラスを記録するという充実したシーズンとなった。2位サクラナイツは昨シーズンチームを牽引した沢崎が不振に喘いだものの、新加入の堀がシーズンを通して安定した成績を残した他、エース・内川の終盤の好調にも助けられ、気づけば首位に迫る位置につけていた。
6位の雷電は、萩原がこれまでの記録を大きく更新するシーズン最低ポイントを記録してしまったものの、黒沢と瀬戸熊がそれに触発される形で好成績を維持し続けたことで辛うじて滑り込む形になった。一方で、結果的に2年連続で前シーズンの王者と準優勝チームがレギュラーシーズンで姿を消すこととなった。特にパイレーツは小林以外の3人が常にマイナスポイントであり、チームポイントに至っては開幕以来一度もプラス域に到達せず、不振の一年となった。
4月12日から始まったセミファイナルの序盤は、レギュラーシーズンの持越しポイントから大きく変化することがないまま、2強4弱の構図で進んでいった。
動きがあったのは4月20日セミファイナル6日目。この日の1戦目にドリブンズ・園田が6万点超えの大トップを獲得すると、2戦目には同じくドリブンズのたろうが役満・四暗刻を和了ってまたも6万点超えの大トップを記録。この1日でドリブンズが200ポイント近くまで浮上し、3強3弱の構図へと変わった。
さらに翌7日目には、セミファイナルではここまで不振が続いてきたレギュラーシーズンMVP・寿人がМリーグレコードとなる9万8200点の特大トップを記録。チームは0ポイント付近まで浮上し、この時点で共に-100ポイント付近にいた風林火山と雷電が置いていかれる形となった。
しかし4月27日セミファイナル10日目。この日連闘となった風林火山・滝沢が連続トップを決め、この日連続逆連対だった格闘倶楽部をかわして風林火山が4位に躍り出る。また、この日2試合目で4着を引いた雷電は最終日に連トップ条件を突き付けられることになった
迎えた4月29日セミファイナル11日目。この日で全日程終了となる格闘倶楽部と雷電が共にボーダー越えを目指す中、1試合目では東3局に倍満をツモった格闘倶楽部・前原が5万点超えのトップに到達するも、南3局にABEMAS・日向の親満に振り込んで痛恨のトップ陥落。前原はその後再逆転できず、2着で終了となった。また、この試合で黒沢咲が4着に終わった雷電はこの時点でボーダーと200ポイント以上の差がつき、事実上の終戦となった。2試合目では雷電・瀬戸熊が20万点超えの奇跡の大トップを、格闘倶楽部・寿人が連対での4位逆転を目指す形となったが、東1局にいきなり役満・四暗刻を自模ったABEMAS・松本が独走して9万点超えの特大トップを獲得。瀬戸熊はМリーグワーストとなる▲3万5600点を記録し、寿人も持ち点わずか500点の3着に沈んだ。これにより4位・風林火山と5位・格闘倶楽部との差が68.3ポイントに開いた。
4月30日セミファイナル最終日。上位3チームの勝ち抜けが濃厚となり、風林火山も4着・3着以下でなければ勝ち抜けという比較的楽な条件が残っていた。ところが1試合目、滝沢が900点の大きなラスに沈んでしまい、2試合目は一転して2着以上の条件を突きつけられる。その2試合目に登板した勝又は、一時ラス落ちするなど苦しい状況が続いていたものの、南3局に1000-2000ツモでオーラスに2000点条件を残すと、最後はトップに立っていたABEMAS・多井のアシストにも助けられて2000点を和了し、わずか200点差の2着に浮上。首の皮一枚つながる形で、風林火山がファイナル進出を決めた。
格闘倶楽部と雷電は、2年連続でセミファイナル敗退となった。雷電は黒沢が全選手中トップタイとなる3勝を挙げたものの、持ち越しの少なさとトップの小ささに苦しみ、最後は無理をする展開を強いられた中で急落した。格闘倶楽部はレギュラーシーズン大活躍だった寿人が不振だった一方、個人2位の成績を収めた高宮の活躍に支えられたものの、終盤で風林火山にまくられてあと一歩及ばなかった。
首位通過を果たしたABEMASは開幕から9戦トップ無しとレギュラーシーズンとは打って変わって不調に喘ぎ、一時はサクラナイツに首位逆転を許したものの、10戦目での多井のトップを皮切りに一転して7連続連対を記録。最終的なセミファイナルポイントも200ポイント超えと、他を圧倒した。
5月10日に迎えたファイナル初日は、4位の風林火山が勝又・滝沢と連続トップを獲得した一方、首位・ABEMASが連続逆連対に沈む波乱の滑り出しとなる。しかし翌2日目はABEMAS連続トップ、風林火山連続ラスという全く逆の結果になり、ファイナル日程の3分の1が終了した時点でセミファイナル終了時点とポイント状況はほぼ同じ状態であった。
5月13日ファイナル3日目、ABEMAS・白鳥に親番で大三元の和了機会が訪れるもアガリ逃しとなってしまい、これが響いてラスに終わる。続く松本も南3局にドリブンズ・村上とのめくりあいで跳満に放銃したことでラスに転落した上、総合2位のサクラナイツ・堀にトップラスを決められ、この時点でABEMASとサクラナイツがわずか7.8ポイント差で並ぶ熾烈なトップ争いの模様となった。翌4日目は全チームのポイントがほとんど動かない結果となったものの、両チームのポイントは0.6ポイント差まで縮まり、いよいよこの2チームによる優勝争い待ったなしかと思われた。
5月17日ファイナル5日目。唯一マイナス圏に沈むドリブンズは4連続トップが必須、上の2チーム双方に200ポイント近い差をつけられた風林火山も3トップは必須なうえ、ABEMASとサクラナイツを連続で揃って逆連対に沈めなければならないという非常に厳しい条件が突き付けられていた。しかし、この日連闘した勝又が連続トップを獲得した上、1試合目サクラナイツ3着・ABEMAS4着、2試合目ABEMAS3着・サクラナイツ4着という、これ以上ない並びを作ることに成功する。さらにこの結果、風林火山が僅差で首位に浮上し、最終日を前にドリブンズを除く3チームが20ポイント差以内にひしめき合う三つ巴状態になった。
迎えた5月18日ファイナル最終日、風林火山は好調のままに続投となった勝又が開局から跳満、親倍を連続でツモって大きなリードを作ると、そのまま逃げ切ってトップを獲得する。この時点でABEMASには風林火山とのトップラス条件、サクラナイツにはトップ3着条件を満たす必要が出た。
2戦目、1戦目から続投のABEMAS・多井とサクラナイツ・内川が共に条件達成を目指すものの、普通に打ち進めることを選んだドリブンズ・村上がトップを走る展開となる。南2局、多井が親番での巻き返しを図ったものの、内川が村上に満貫を放銃。これにより多井は親落ち、内川は親が残ってるものの900点のラスに沈んでいる非常に厳しい状況となり、両者はこの瞬間天を仰ぎ、うなだれた。その後1局で内川の親が落ち、逆転優勝の目がほとんど消えたことで、焦点はこの時点で1.7ポイント差となっていたサクラナイツとABEMASの2位争いに移った。ABEMASが2000点で2位浮上となる中、内川が2巡でテンパイを入れるものの、村上がダマテンで追いつく。内川がこれに放銃するとあわや3位転落というところであったが、その前に村上が自模り、順位変わらずでサクラナイツが2位、ABEMASが3位となった。
あわやセミファイナル敗退というところから勝ち上がった風林火山は、勝又の個人4連勝・5トップ・+274.2ポイントという鬼神のごとき活躍に導かれ、チームも12戦7トップという文句のつけようのない出来で見事な大逆転優勝を果たした。4位以下ならメンバー総交代という背水の陣を自ら敷いて臨んだ中、レギュラーの好調期を亜樹が牽引、セミファイナルでは滝沢、ファイナルでは勝又がポイントリーダーとなり、メンバー全員が要所で活躍して掴み取った優勝となった。
昨年のファイナルで0トップ7ラスとなり、首位から大きく陥落するという堪え難い屈辱を味わったサクラナイツは、今季2トップを獲得して2位となり一定の雪辱を果たしたものの、わずかに優勝には届かなかった。沢崎が最後まで不調から抜け出せず、レギュラーからファイナル序盤まで安定してポイントを稼ぎ続けた堀が最後に連続ラスに沈んでしまったことなどが痛手として響いた。
レギュラーから常に他を圧倒する勢いで好調を維持し続け、3度目のファイナルにして悲願の初優勝が濃厚かと思われたABEMASであったが、まさかの大失速で3年連続の3位となった。松本・白鳥がそろって連続で逆連対に沈み、首位が脅かされたところでエース・多井を5連投するという思い切った策に出たものの、その多井が5戦全てで逆連対に沈むというまさかの結果となってしまった。日向が個人ランキング3位で2シーズン連続全ラウンドプラスという偉業を達成したものの、他メンバーが個人ランキングで最下位の園田に続いて下から3人並んでしまうという、悲惨なファイナルとなった。表彰式では、多井が涙ながらに敗戦の弁を述べるシーンも見られた。
ドリブンズはラスこそ2回と少なく、大きくポイントを減らすことはなかったものの、とにかくトップが遠かった。11戦トップ無しで1チームだけ置いていかれる形となったものの、最終戦で村上がようやくトップを獲得し、ファイナル0トップを回避して有終の美を飾った。一方、親番が落ち、完全に目無しである村上がトップを取りに行った打ち回しは、南3局に首位チームゆえにまくりに来ないこと前提でラス親・2着の勝又に差し込んだことなどもあり、賛否両論を巻き起こした。
レギュラーシーズン / セミファイナルシリーズ / ファイナルシリーズ
[7]
[212]
[251]
AbemaTV麻雀チャンネルにて、19:00からリーグ戦の試合を生配信した。
開催曜日は、レギュラーシーズン・ポストシーズンともに、原則水曜日以外の平日で行われた。例外として、年明けとなる1月2日・1月3日については土日開催となり、1月5日まで4日間連続での試合・生配信となった。
中継番組での実況陣は、小林未沙(声優・元最高位戦、レギュラーシーズンにおいては主に月曜)、松嶋桃(協会、同じく主に火曜)、日吉辰哉(連盟、同じく主に木曜)が、昨年度に引き続き担当した。後述の通り、日吉は12月16日から1月27日まで手術の為休養に入った為、その間は小林・松嶋の2人でほぼ交互に担当した。
解説については、公式解説として土田浩翔(最高位戦)に加え渋川難波(協会)が加わり、開幕戦や各シリーズの終盤戦といった要所を含め、それぞれ概ね週1~2回を担当した。それ以外の日は、レギュラー中盤まではプレイヤー解説としてMリーガーから1名が、レギュラー終盤・セミファイナルにはゲスト解説として各団体のタイトルホルダーや河野直也(最高位戦、のちに公式解説に就任)から1名が、ポストシーズンの開幕日・2日目については1つ前のステージで脱落したチームから2名が担当した。
トップを取った選手へのインタビュアーは松本圭世がほぼ全日担当した(12月の2日間だけ伊藤友里が担当、翌年度より週1担当)。
各家の表記は、その局における家を示す。 各家の表記は、その局における家を示す。
和了者 放銃者
Mリーグの2020年シーズン開幕前にその前哨戦として各チームの監督・スタッフがトーナメントで対戦した[270]。