LK-99
3D構造
識別情報
[Pb+2].[Pb+2].[Pb+2].[Pb+2].[Pb+2].[Pb+2].[Pb+2].[Pb+2].[Pb+2].[Cu+2].O=P([O-])([O-])[O-].O=P([O-])([O-])[O-].O=P([O-])([O-])[O-].O=P([O-])([O-])[O-].O=P([O-])([O-])[O-].O=P([O-])([O-])[O-].[O-2]
InChI=1S/Cu.6H3O4P.O.9Pb/c;6*1-5(2,3)4;;;;;;;;;;/h;6*(H3,1,2,3,4);;;;;;;;;;/q+2;;;;;;;-2;9*+2/p-18
Key: KZSIWLDFTIMUEG-UHFFFAOYSA-A
特性
化学式
CuO25 P6 Pb9
モル質量
2514.17 g mol−1
外観
grey black solid
構造
結晶構造
hexagonal
空間群
P 63 /m
格子定数 (a, b, c)
a = 9.843 Å Å
特記なき場合、データは常温 (25 °C )・常圧 (100 kPa) におけるものである。
(a) LK-99の反磁性感受率測定、 (b) 磁石の上で部分的に浮遊するLK-99の試料
LK-99 (Lee‐Kim-1999から)は、韓国 の研究者が開発に成功したとする、常温常圧下において超伝導 を起こすと考えられていた物質である[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] 。後に、LK-99は超伝導体ではないことが明らかになった[ 5] [ 6] 。LK-99は、鉛アパタイトをわずかに変更した六方晶構造 である。
概要
韓国の高麗大学校 の付属研究機関「Quantum Energy Research Centre (Q-Centre)」に所属する研究チームが「室温かつ常圧での超伝導」を起こす物質LK-99を開発したとする論文を2023年7月22日にarXiv 上で発表した[ 1] [ 4] 。arXivはプレプリントを投稿するサイトであるため、LK-99についての論文は2023年7月29日現在、査読を受けていない。
LK-99の超伝導性は温度 や圧力 によるものではなく、僅かな収縮に基づく微小な構造の歪みに起因すると報告されている。
原著論文は、「長い科学の歴史から人類は物質の特性はその構造に由来すると学んできた。しかし、これまで超伝導と物質構造との相関関係はほとんど明らかになっていない。実際にこれまで発見された超伝導の主な要因は『温度と圧力』だけである」と指摘[ 7] 。さらに「低温、または高圧下では物質の体積が収縮する。この体積収縮が物質に微小な歪みを生じさせこれが超伝導を引き起こす要因になっている」とし、「LK-99は鉛アパタイトに銅をドープ(添加)することによりわずかな(0.48%)の体積収縮を起こし、この温度、圧力によらない体積収縮が超伝導性を引き起こしている」と述べている[ 7] 。
LK-99という名称は、発見者の李石培(朝鮮語 : 이석배 、英語 : Sukbae Lee )と金智勳(朝鮮語 : 김지훈 、英語 : Ji-Hoon Kim )の頭文字と発見年度(1999年)を合わせたもの。
室温で超伝導を実現したとされる論文は2020年にも別の研究者から提出されているが、不備が指摘され論文も撤回されている[ 1] [ 2] [ 8] 。
組成
論文では、ラナルカイト (Pb2 (SO4 )O )とリン化銅 (Cu3 P)をモル比1:1の割合で粉砕して混合物を真空排気した石英管に密封した上で925℃まで加熱すると化学式Pb10-x Cux (PO4 )6 OのLK-99が形成されるとしている[ 9] 。
社会の反応
科学界の反応
論文発表当時の超伝導の最高温度は170GPa (大気圧の約100万倍) という超高圧下という条件下で250Kであったため、「常温かつ大気圧下」で超伝導となるLK-99に対して、多くの材料工学 と超伝導の専門家は、懐疑的な反応を示していた[ 10] 。
2023年7月27日、サイエンス誌 は「論文の細部が不足して物理学者たちが懐疑感に包まれている」と学界の反応を載せた[ 11] 。
2023年8月4日、ネイチャー誌 も「注目に値する結果を実験的・理論的に再現しようとする初期の努力が失敗し、研究者たちは依然として非常に懐疑的だ」とする論説を載せた[ 12] 。
2023年8月16日、ネイチャー誌は世界各国の研究者が行ったLK-99の再現研究を紹介し、「研究者がLK-99の謎を解明したようだ。科学的な探偵作業を通じて、この物質は超伝導体ではないという証拠を発見し、実際の特性を明確にした」との記事を載せた[ 13] 。
2023年8月31日、韓国超伝導低温学会の「LK-99検証委員会」は韓国国内研究機関4ヵ所で「LK-99」再現実験を進めた結果、超伝導特性を表す事例はなかったと明らかにした[ 14] 。
2023年12月13日、「LK-99検証委員会」は『LK-99検証白書』を発表し、白書の中で「公開された論文データと国内外の再現実験の結果を総合考慮すると、LK-99が常温・常圧超伝導体だという根拠は全くない」とした[ 15] 。
2023年7月に世間の注目を集めた後、アルゴンヌ国立研究所 [ 16] 、南京大学 [ 17] 等いくつかの独立したグループや研究室が合成の再現を試み始めている[ 11] 。
経済界の反応
LK-99の発表をうけて、2023年8月1日の時点で世界的に超伝導関連株は軒並み上昇し、韓国市場では関連5銘柄がストップ高が続いたため、サーキットブレーカー の発動を受けた[ 18] 。同日、アメリカの電力送電インフラ大手「アメリカン・スーパーコンダクター」も1日で株価が60%上昇した[ 18] 。中国証券市場でも同日、超伝導体テーマ株に分類される光ケーブル企業の法爾勝と中超控股、百利電気などが10%上がるストップ高を記録した[ 18] 。
各研究機関における検証状況
2023年8月4日現在の進捗状況は以下。現時点で、常温常圧超伝導を再現したとする査読付き論文は存在しない。成功したという報告も誤解である可能性がある。
シミュレーションによる検証(理論検証)
未完成のままarxivへの掲載が行われたため、論文はLK-99 の超伝導メカニズムに対する理論的説明が不完全だとされた。このため、他の研究室による分析で、LK-99の電子特性に関して、スーパーコンピュータ等によるシミュレーションと理論的評価の追加が行われた。理論検証は一般に現実の複雑性をそぎ落とし、抽象化された仮想空間における仮定された現象を前提するため、決定的な証拠とはなりえない。加えてこれに際し、プリンストン大学 スクープラボは前提とする結晶構造の存在自体が誤っている可能性も考慮に入れるべきだとした。一方で、ある一定の評価は、少なくとも対象の研究方向の正当性を示している可能性がある[ 23] 。
論文
脚注
関連項目