第2次メイ内閣(だいにじメイないかく)は、2017年6月に行われた庶民院(下院)の総選挙の結果を受けて、女王エリザベス2世の要請により、2017年6月11日にテリーザ・メイが組閣したイギリスの内閣である。総選挙では、与党であった保守党が庶民院(下院)での単独過半数を失い、どの政党も過半数を得ていないハング・パーラメント(宙ぶらりんの議会)状態に至る結果となった。2017年6月9日にメイ首相は、北アイルランドの地域政党である民主統一党との協力協定 (confidence and supply) に基づいて、保守党の少数党内閣(英語版)を組織する意向を表明した。両党間の最終合意は、2017年6月26日に署名され、発表された[1][2]。
経緯
2017年の急な総選挙はハング・パーラメントという結果に終わり、保守党は下院議会庶民院で最多数の議席を獲得したものの、絶対多数(過半数)には届かなかった。民主統一党は、交渉次第では、保守党と連立政権を組むか協力協定 (confidence and supply) を結ぶ用意があることを表明していた[3]。2017年6月9日に、保守党のテリーザ・メイ首相は、民主統一党からの支持を得て、新しい少数党内閣(英語版)を組む意向を表明した[4]。両党は、この民主統一党による支持は、正式な連立内閣の組成ではなく協力協定 (confidence and supply agreement) の形態をとることを表明した。この保守党と民主統一党の合意に対しては、聖金曜日協定や贈収賄法に抵触するものとして、法的な異議申立てがなされている[5]。
6月10日に保守系ウェブサイトConservativeHome(英語版)の1,500人の読者を対象に行われた調査では、保守党の党員のほぼ3分の2はテリーザ・メイ首相の辞任を望んでいることがわかった[6]。1,720人のThe Sunday Timesの成人読者を対象としたYouGovの世論調査では、48%がテリーザ・メイ首相は辞任すべきだと回答し、辞任すべきでないと回答したのは38%であった[7]。メール・オン・サンデー(英語版)の1,036人の成人読者を対象にしたSurvationのオンライン世論調査によれば、49%の人はテリーザ・メイ首相の辞任を望んでおり、38%の人は辞任を望んでいないことがわかった[7]。
2017年6月10日に首相官邸は保守党と民主統一党との間の協定(英語版)は大枠で合意に達したとする声明を発表した[8]。その数時間後、この声明は「誤って発表された ("issued in error") 」として取り消され、保守党と民主統一党との協議はまだ継続中であるとされた[9]。ジョン・メージャー元首相は、「保守党と民主統一党との間の協定は北アイルランドの和平交渉を危険にさらすおそれがあるとの不安を抱いている」ことを明らかにした[10]。
ジョージ・オズボーン前財務大臣は2017年6月11日に、メイ首相について「歩く女の屍 ("dead woman walking") [注釈 1]」と表現した[11]。デイヴィッド・リディントン(英語版)はこれに異議を唱えた[12] 。労働党の複数の長老政治家は、早期に保守党の少数党政府に異議を唱え、女王演説に応えて、対案となる諸政策を提案することを考えていると述べた。ジェレミー・コービン労働党党首(影の首相)は「労働党が"共感している" ("is sympathetic") 多くの問題に対して、議会には多数派がいる」と信じており、Under-occupancy penalty(いわゆる寝室税)の廃止、年金に関する「トリプルロック」[注釈 2]および冬期燃料手当の維持が例に挙げられると述べた。6月11日に行われたインタビューで、コービンは一年以内にもう一度選挙が行われることを期待すると述べた[13][14]。
マイケル・ゴーヴは、少数党政府はおそらく緊縮(英語版)を緩め、公共サービスへの支出を増やすであろうと述べた[15]。雑誌『New Statesman(英語版)』のスティーブン・ブッシュも緊縮の緩和に期待している。ブッシュは、もし投票者がイングランド、スコットランドおよびウェールズで緊縮が続いていると感じたならば、政府が民主統一党との協定を維持するために北アイルランドで気前よく支出する間に保守党の評判は悪化するかもしれないと述べている[16]。首相官邸によれば、パブリックセクターの労働者に対する1%の報酬割合の上限は検討中であり[17]、それを終わらせたいと思う高い地位にある保守党員の数は増えている[18]。
6月11日の午後、テリーザ・メイ首相は新内閣の構成を最終決定した[19]。重要閣僚である財務大臣、外務大臣、内務大臣、EU離脱大臣の4つの閣僚ポストについては、現職の4名全員を留任させることが6月9日の時点で既に固まっていた。新内閣はボリス・ジョンソンとデイヴィッド・デイヴィスなどの卓越したEU離脱派の議員が留任されたが、2016年の国民投票でEU残留派を支持していたダミアン・グリーンとデービッド・ガウキ(英語版)の昇進人事もみられた[20]。翌日には下級大臣の人事も割り当てられ、6月12日に新しい内閣および政府の大臣の任命が完了した[21]。
2017年7月3日の世論調査では、6月8日の選挙以来、メイ首相の支持率は急落した。回答者の60%は選挙期間中よりもメイ首相に対する印象が悪化したとし、メイ首相に賛成すると答えた回答者よりも賛成しないと回答した人のほうが20%上回り、メイ首相の指導力に期待できないと答えたのが51%であったのに対し、期待すると答えたのは31%であった[22]。7月7日までに、YouGovは保守党より労働党に8ポイントのリード(46%対38%)を与えた。『New Statesman』の記事は、この優位にある要因は家庭の可処分所得が2011年以降で最も急速に下がっていることを示す国家統計局の統計にあると主張している[23]。
2018年7月、首相の穏健なEU離脱方針に反発して、欧州連合離脱大臣および外務大臣が相次いで辞職した[24]。また同年11月には離脱計画をめぐって欧州連合離脱大臣と労働年金大臣が辞職し[25]、それぞれステファン・バークレーおよびアンバー・ラッドに交代するなど、欧州連合離脱をめぐる軋轢が政権を苦しめた。議会はEUとの離脱協定案を承認することなく離脱は延期を繰り返し、2019年6月にメイ首相が退陣を表明。7月24日に終焉を迎えた。
閣僚の一覧
脚注
注釈
- ^ 「死刑を待つ人=死刑囚」を意味する定型句 "dead man walking" (死んだ男が歩くこと)をもじった表現
- ^ 「トリプルロック」とは、物価上昇率、平均賃金上昇率、2.5%アップの3つのうち、最も高いものを基礎年金の上昇率に適用し、基礎年金の上昇率を保証するもの。
出典