この項目では、中国の有人宇宙飛行船について説明しています。大河渡 の小説作品については「神舟 (小説) 」をご覧ください。
神舟
試験中の神舟
製造
中国空間技術研究院 国
中国 運用
中国载人航天工程办公室 用途
有人宇宙船
仕様 設計寿命
183日 (中国宇宙ステーション にドッキングした状態において) 打ち上げ時の重量
7840 kg 乗員数
3 大きさ
9.25 x 2.8 m 体積
14.00 m3 備考
地球低軌道
製造 状態
利用中 製造
17個 打ち上げ
17個 故障
0 最初の打ち上げ
神舟1号 : 1999年11月19日(無人)
神舟5号 : 2003年10月13日(有人) 最後の打ち上げ
神舟17号 2023年10月26日 (有人)
神舟 (しんしゅう、拼音 : Shénzhōu シェンチョウ )は、中華人民共和国 が打ち上げた有人宇宙船 。「神舟」は「神州 Shénzhōu」(中国の美称の1つ)と同じ音である。2003年 に打ち上げられた神舟5号 によって同国初の有人軌道飛行に成功した。有人宇宙飛行 に自力で成功したのは世界でもソビエト連邦 、アメリカ合衆国 に次ぐ3番目で、42年ぶりとなった。
機体
ロシア のソユーズ 宇宙船を基本としている為、構造は非常に似ているがソユーズより全長が長く大型化が図られており、居住スペースも広くなっている。3つのモジュールから構成され、小型の太陽電池 パドルを備えた軌道モジュール、半楕円状の帰還モジュール、大きな太陽電池パドルを持った推進モジュールがある。地球に帰還するのは真ん中の帰還モジュールのみで、推進モジュールは使い捨てだが、中国固有の設計思想で作られた軌道モジュールは捨てずに周回衛星 とすることができるほか、次回の有人打ち上げの際に宇宙空間で回収、ドッキングできるように設計されている。これにより、軌道モジュールを使用した長期の無人宇宙実験ができ、また宇宙ステーション 建設の際の技術習得に繋がったと考えられている。
帰還の方式もソユーズ宇宙船とほとんど同じである。逆噴射を行った後、帰還モジュールを分離して再突入する。突入時のGは4-5G、高度10kmでパイロットシュートを展開し、続いてドローグシュートを展開した後、高度8kmで主パラシュート1枚を展開(非常時は予備シュートを展開するが、これもソユーズ宇宙船と全く同様)、高度6,000mで280kgのヒートシールドを投棄、投棄20秒後に座席のシート高を上げて着地時の衝撃に備える。高度1mで4基の固体ロケットを噴射して衝撃を緩和させる[1]
。
神舟計画の経緯
背景
1:40 模型「神舟1号 」
中国は米ソの宇宙開発時代初期にソ連 の援助で独自の宇宙開発計画を推進しようとしたが、1960年代 に両国の関係が悪化したため(中ソ対立 )、ソ連からの技術供与が中断した。このため同国は自力でロケットなどの開発を進めた結果、1970年 4月24日 、ソ連(現ロシア )・アメリカ ・フランス ・日本 に次いで世界で5番目に長征1号 ロケットで人工衛星 「東方紅1号 」の打ち上げに成功した。また、1975年 11月26日 には帰還式人工衛星 の大気圏再突入 に成功している。
1986年 から宇宙計画の大綱といえる「863計画」の中では有人宇宙飛行に初めて触れ、宇宙船の検討を行ってきた。アメリカ航空宇宙局 (NASA) が未来の宇宙機関として宣伝してきたスペースシャトル の様に、有翼式の再使用型宇宙往還機 を推す声がほとんどであった中、技術者たちは使い捨てのソユーズ 方式を選んだ。スペースシャトルのような宇宙往還機は非常に複雑な技術であり、当時の中国における技術水準では不可能だとして、堅実な方法を選んだのである。
1992年 4月に「神舟」計画(プロジェクト921)を発表する。この命名は、江沢民 党総書記(当時)によるものであるといわれる。
1993年 6月には、宇宙事業制作を統括する中国国家航天局 (中国航天)、ロケット・人工衛星の国営企業、中国航空航天総公司 を設立して高性能ロケットの開発に集中。
1995年 3月にロシア連邦 と有人衛星技術供与協定を成立させ、ソ連の崩壊後、外貨獲得のためにロシアが提供してきたソユーズ宇宙船の技術を研究し、独自の宇宙船の開発を行ってきた。また、モスクワ での宇宙飛行士の訓練を受けて打ち上げを目指してきた。2011年11月のThe voice of Russiaの報道によれば、ロシア機械技術研究大学の技術輸出部の部長と3人の職員がロシアの秘密技術を中国に違法に売った罪で2005年に5-20年の禁固刑を宣告されたということであり、ソユーズ宇宙船の技術が中国で使われている理由の一端が窺える[2] 。
1998年 5月2日に改良型ロケット試験機「長征2号丙 」の打ち上げに成功(長征2Fとなる)。
中国はアメリカにより国際宇宙ステーション (ISS) への参加を認められていないため、独自の宇宙ステーションを建設している(中国宇宙ステーション )。
神舟1号
神舟1号 は、1999年 11月20日、甘粛省 ・内モンゴル自治区 の境の酒泉衛星発射センター から長征 2F型ロケットによって打ち上げられた。地球周回軌道を21時間飛行した後、帰還カプセルが内モンゴル自治区に着陸した。
神舟2号
神舟8号以降の神舟号宇宙船の設計、ドッキングポートのデザインがある。
神舟2号 は、2001年 1月10日に打ち上げられた。サル 、イヌ 、ウサギ 、カタツムリ などの動物を乗せており、生命維持装置の実験を行った。軌道変更用エンジンを3度使用して軌道変更実験を行い、3月16日 に帰還カプセルの回収に成功した。軌道上に残ったモジュールもその後半年にわたって運用を続け、搭載した実験装置による宇宙実験を実施した。
神舟3号
神舟3号 は、2002年 3月25日に打ち上げられた。宇宙飛行士のダミー人形を乗せ、船内環境の計測と、独自開発した宇宙服の動作テストを実施。地球周回軌道を108周した後、4月1日 に帰還カプセルの回収に成功した。
神舟4号
神舟4号 は、2002年12月30日に打ち上げられた。有人打ち上げに向けた最終リハーサルを行い、打ち上げ数時間前まで飛行士が搭乗して準備を行った。3号同様に人形を乗せ、宇宙空間では搭載機器による実験を行う。翌2003年 1月5日 に帰還カプセルの回収に成功した。同時に打ち上げられた電子偵察衛星では、補助ロケット噴射で方向を逆転させ、一時的に軌道を離脱させる遠隔操作、衛星からの偽装物体放出など、軍事色の強い実験も行った。
神舟5号
神舟5号の帰還モジュール
神舟5号 は、2003年10月15日午前9時(現地時刻:UTC+8)、空軍の楊利偉 中佐(当時38歳)1人を乗せて打ち上げられた。高度343kmの円軌道 を約21時間(14周回)飛行した後、10月16日 午前6時23分(同)に同国内モンゴル自治区 の草原地帯に着地した。楊中佐は無事に帰還した。
神舟6号
神舟6号 は、2005年 10月12日に打ち上げられた。2度目の有人宇宙飛行に成功した。乗組員は、費俊龍 と聶海勝 の2名で10月17日 に無事帰還。打ち上げの模様がはじめて中継放送され、自信の程を世界にあらわした。
神舟7号
神舟7号 は、2008年 9月25日に打ち上げ[3] 。乗組員は翟志剛 、劉伯明 、景海鵬 の3人[4] 。9月27日に翟 志剛が15分間の船外活動 を行った[5] 後、翌9月28日に内モンゴル自治区中部四子王旗 の着陸場に無事帰還した。
神舟8号
神舟8号 は、2011年 11月1日に無人で打ち上げられ、無人の宇宙ステーション実証機天宮1号 とのドッキング試験を2回行った後、11月17日に帰還した。
神舟9号
神舟9号 は、2012年 6月16日に打ち上げられた。乗組員は景海鵬 、劉旺 、劉洋 (女性)の3人。6月18日、天宮1号 との自動ドッキング[6] 、6月24日午後、手動ドッキングに成功[7] 、6月29日午前中国内モンゴル自治区に着陸、無事帰還した[8] 。
神舟10号
神舟10号 は、2013年 6月11日に打上げられた[9] 。乗組員は聶海勝 、張暁光 、王亜平 (女性)の3人。天宮1号 とは6月13日に自動で、また6月23日に手動でドッキングをおこなった[10] 。6月26日午前、中国内モンゴル自治区内に無事帰還した[11] 。
神舟11号
神舟11号 は、2016年 10月17日に打上げられた。乗組員は景海鵬 と陳冬 の2人[12] 。10月19日、天宮2号 との自動ドッキング に成功した[13] 。11月18日午後、中国内モンゴル自治区 内に無事帰還した[14] 。
神舟12号
神舟12号 は、2021年 6月17日に打ち上げられた[15] 。宇宙ステーション「天和」に3か月近く滞在して2度の船外活動をおこない、9月17日に内モンゴル自治区内に帰還した[16] 。
神舟13号
神舟13号 は、2021年 10月16日 に打ち上げられた[17] 。飛行士は「天和」に6か月滞在し[17] 、2022年 4月16日に酒泉衛星発射センターの近くの東風着陸地点に帰還、飛行士3名の宇宙滞在日数は中国の有人宇宙飛行では最長となる183日を記録した[18] 。
神舟14号
神舟14号 は、2022年 6月5日 に打ち上げられた[19] [20] 。
神舟15号
神舟15号 は2022年 11月29日 に打ち上げられた[21] 。
神舟16号
神舟16号 は2023年 5月30日 に打ち上げられた[22] 。
神舟17号
神舟17号 は2023年 10月26日 に打ち上げられた[23] 。
脚注
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
神舟 に関連するメディアがあります。
外部リンク
無人 有人 中止 ハードウェア その他
カテゴリ
主要項目 応用 有人宇宙飛行
軌道・航行 打ち上げ
主な機関 その他