農業普及指導員(ふきゅうしどういん)とは農業改良助長法に基づく国家資格、及びこの資格を所持し協同農業普及事業に従事する都道府県職員のことである。分野が異なる同様の資格として、林業普及指導員、水産業普及指導員がある。
農家に直接接し、農業技術の指導、経営相談への対応、農業に関する情報提供などを通じ、農業者の農業技術や経営を向上するための支援を専門としている。また、国や都道府県の制度の周知や遵守等(農薬の適正使用の指導等)を技術面からサポートする役割を担っている[1]。
普及指導員資格所有者が普及指導員として活動するためには、各都道府県の農業職として採用された上で、普及指導センター等に配属される必要がある。しかし、普及指導員資格を有していなくても、普及指導員の監督下で農業等の技術についての普及指導に携わることは可能である[2]。
普及指導員の拠点である普及指導センターは「〜普及所」「〜普及課」等、都道府県によって名称が異なる。普及指導センターは日本全国で計361箇所(支所・駐在所を除く)、普及に携わる職員は7,293名、うち普及指導員の資格を持つ職員は6,102名である。(平成31年度当初の数値)[3]
以前は農業改良を目的とする農業改良普及員と専門技術を教える専門技術員があったが、2004年5月に改正された農業改良助長法に基づいて都道府県におかれていた普及職員が普及指導員に名前を統合されたことをきっかけに2005年からこの2つの資格を廃止し、普及指導員資格試験として都道府県がそれぞれ行っていたのを国が行うようになった。
農業改良助長法第8条第2項には、普及指導員業務内容として次のように定められている。
普及指導員資格試験を受験するためには、一定年数以上の実務経験が必要となる。 実務経験とは以下に該当する職務に従事した経験のことである。
実務経験について、最終学歴が大学院修士課程修了の場合は2年、大学等卒業の場合は4年、短期大学等卒業の場合は6年、高等学校卒業の場合は10年が必要。 ただし、大学院修士課程修了の場合を除き、 普及指導員(都道府県において普及指導員として任用されている者)の監督下で農業又は家政に関する技術についての普及指導に2年以上従事した場合は、必要な実務経験年数が2年短縮される。
改良普及員資格試験合格者は、学歴にかかわらず2年以上の実務経験が必要になる。
専門技術員資格試験合格者は、普及指導員資格試験に合格した者とみなされるため、改めて受験する必要はない。
試験は農林水産省が主催し、札幌市、仙台市、さいたま市、金沢市、名古屋市、京都市、岡山市、熊本市及び那覇市のうち、基本的には自分の所属する都道府県と同じ地域区分にある試験地で受験することとなる。
試験科目には書類審査、筆記試験と口述試験がある。
農業改良助長法施行規則第7条の規定により提出された業務報告書に記載された農業又は家政に関する実務経験について普及活動に必要な技能習得の合否判定を行う。
筆記試験の合格者が対象。 面接により農業現場における課題解決に必要な意欲、常識、態度、意思疎通の能力等を有するか否かを判定する。