台湾の宗教 (たいわんのしゅうきょう、繁体字中国語 : 臺灣宗教 )では、台湾 の宗教的概況や特徴・法律・風俗・建築・彫刻などについて説明する。
概要
特徴
台湾では宗教が多様性に富み、「宗教博物館 」とも称されることがある[ 2] [ 3] [ 4] 。台湾の宗教はアニミズム 系の信仰を中心に、台湾原住民の信仰 [ 5] [ 6] 、古代の中国からの仏教 ・道教 、西洋からのキリスト教 、日本からの神道 、そして台湾の民俗信仰 [ 7] [ 8] という6つの信仰体系が台湾島 で融合し、宗教心の深い社会が形成されている[ 9] [ 10] [ 11] 。
2023年 米国政府 の公式サイトでの調査によると、台湾は漢字圏 の中でもっとも信教者数の割合の高い国だとされている[ 12] [ 13] 。
2019年 時点で台湾には、正統な宗派のある宗教施設 が1万5175所も存在し、平均的に計算すると、1572人の台湾人が1つの宗教施設を利用していることになる。そのうち、道教の宮廟 は9684か所、仏教の寺院 は2317か所、キリスト教の教会 は2845か所である[ 14] 。一方、特定な宗派のない民俗信仰系の宗教施設も3万3000所以上があり、平均で1km2当たり、ほぼ1つの宗教施設が存在しているため、宗教施設における人口密度 や空間密度 が非常に高い。
なお、台湾人 の宗教意識は非常に複雑だとされている。欧米 やイスラム圏 のように宗教が日常生活に深く根付いていて、信仰に従って生きる人もいれば、日本のように宗教を気軽に捉え、現世利益 を求める人もいる[ 15] 。日本と極めて似た点として、台湾では自然現象 (日、月、山、川、花、風、鳥など)を神格化 する「神」だけでなく[ 16] [ 17] 、すでに亡くなった慈善家 ・科学者 ・政治家 ・軍人 や、台湾社会に貢献をした外国人 でさえも本国の「神」として祀る風習も広く見られている[ 18] [ 19] 。
台湾の仏教と道教を、明確な境界を引くことは非常に難しくて、台湾人はこの2つの宗教を「古代の中国から伝わって来た宗教の一部[ 20] 」とみなされることが多い。現代の台湾人の多くは仏教と道教を同時に信仰しており、日本人 の神仏習合 とよく似ている。また、台湾では仏教の宗教施設は「○○寺」「○○院」と呼ばれ、道教のは「○○宮」「○○廟」と呼ばれるのが一般的であるが[ 21] [ 22] 、両宗教の神々が同時に祀られている例も少なくない。たとえば、観世音菩薩 という仏教の神様は、ほぼ台湾全土の道教の宮廟にも祀られているが[ 23] [ 24] [ 25] [ 26] 、わざわざその区別を試みる分析をする人は滅多に無い。
仏道以外、各宗教も台湾島ですでに深く混じり合っている。日本が大日本帝国 時代に行った「神道国教化 」や「廃仏毀釈 」のような特定の宗教を推進する運動も、中国の「文化大革命 」や「習近平思想 」のように宗教の有効性 を完全に否定する命令も、台湾ではほぼ起こられない[ 27] [ 28] [ 29] 。そのため、台湾の信教者数を正確に統計することは非常に難しく、結果には大きな差が見られることがあり、信教者数が重複したり、誤算されることもよくある。
しかし、この宗教的多様性は逆に台湾の最大の特徴ともいえる[ 30] 。台湾政府の『行政院 の国情紹介』によれば、台湾には22種類もの宗教施設が存在していることが分かる[ 31] 。台湾各地の街並みには、さまざまな神々を祀る寺院や宮廟が点在し、豪華絢爛な装飾が施されたこれらの建物は、異国情緒 を感じさせる観光地 として多くの外国人 を魅了している[ 32] [ 33] [ 34] 。
台湾人自身も宗教的多様性の良さを知り、1949年 以降、無神論 や共産主義 を掲げる中華人民共和国 が成立したことを背景に、台湾の中華民国政府 はその対比として「信仰の自由 」の政策を打ち出し、意図的に政治宣伝 へと転用するようになっている[ 35] 。こうして、いまの台湾は中国政府 が禁止・迫害している宗教、たとえば法輪功 やエホバの証人 ・モルモン教 などを包容し、町並みでは多様性のある宗教宣伝が普通に見られている。
宗教法
『中華民国憲法 』の冒頭部分において、「国民はどのような宗教を信仰しても自由であり、他人や政府がそれを干渉してはならない[ 36] [ 37] [ 38] 」と明記され、すべての宗教の立場が平等であること[ 39] 、布教の自由 [ 40] 、そして宗教団体からの退出の自由[ 41] も、法律で明確に保障されている。また、台湾は厳格な政教分離 制を採用しているため[ 42] 、そもそも国教 という概念自体が存在しない[ 43] 。
「日本の皇室 や神道 」と「日本という国」の関係とは大きく異なり、台湾では特定の宗教が国民の愛国心 や、政府の威信 と結び付けることが厳しく禁じられている[ 44] 。
現在、台湾の宗教団体は主に『中華民国憲法』および『寺廟監督条例 』の制限範囲内で活動している。この法律は中華民国政府 がまだ中国大陸にいる1929年 (民国18年)に制定されたものであり、伝統的な仏教や道教に関する簡単な規定が設けられているが、具体的な罰則規定は無い。このため、いくつかの邪教 が「信仰の自由 」を盾に、正当な法的調査を妨害する事例があり、台湾政府は何度も問題解決を図ってきたが、当時は具体的な解決策を打ち出せていない。
台湾国内でも意見が分かれており、小規模な宗教団体は自らが邪教と誤認されることを恐れ、台湾政府は過剰な管理を控えるべきだという意見がある。一方で、信者数の多い正統な宗派は、邪教を厳しく取り締まるべきだという意見もある。定義が曖昧すぎる「信仰の自由」や、邪教をどのように判別するかという課題があるため、邪教を抑制することを目的とした『宗教団体法草案 』は2005年 に台湾の立法院 で提出されたものの、いまだに成立していない[ 45] 。
信教人口の統計
下記の2種類の調査方法において、台湾の一神教 の信者は少ないが、キリスト教(カトリック とプロテスタント )やイスラム教 の信仰者の割合には、ほとんど変化が見られなかった。激しい変動があったのは、道教・仏教・民間信仰の3つの信仰のみである。台湾では一度に複数の宗教を同時に信仰する人が非常に多く、もし複数の宗教を同時に信仰できるとした場合、現在の台湾でもっとも信者が多いのは仏教だが、1つの宗教しか選べないとしたら、道教や民間信仰がもっとも多くなる。
この点は日本と似ているようで、しかも真っ逆の状態になっている。日本では、単一の宗教の場合、仏教徒 が最も多く、複数の宗教を選べる場合には神道の信者数が急増する傾向がある。これは台湾 と日本 の間に高度な「文化的類似性 」が存在し、世界のほかの国々とは大きく異なっていることを示す。
多重信仰で計算する場合
アンケート調査を行う際、「複数の宗教を同時に選択することができる」と特別に説明すると、次のような結果が出る:
2009年 の中央研究院 が発表した『社会変遷基本調査』によれば[ 15] 、42.8%の人が現在の宗教信仰の対象を「民間信仰」であると回答している。
2010年 の『The Global Situation』によれば、台湾では仏教、儒教、道教が融合して区別が難しく、これらの信仰が台湾の人口の約93%を占めています。キリスト教全派を合わせると4.5%、そのほかの宗教は2.5%を占めているとされている[ 47] 。
2019年 の米国国務省 が発表した『世界の宗教に関する調査』によれば[ 48] 、台湾の二大宗教として仏教と道教を掲示し、仏教徒が約548万人、道教徒が454万人と推計している。
2023年 の米国在台湾協会 が発表した『国際宗教自由報告~台湾部分~』によれば[ 49] 、台湾の人口は約2360万人であり、そのうち80%以上が台湾民間信仰を信奉し、仏教と道教を同時に信仰していると自認するである。
単一信仰で計算する場合
1人の台湾人は1つの宗教だけを信仰すると仮定して、統計された結果は:
台湾の信教者の割合
(1人が1つの宗教のみを信じる場合)
2009年の台湾内政部 の統計より[ 51]
宗教名
信徒数
宗教施設数
聖職者数
道教
792,664
9,249
-
プロテスタント
384,576
2,539
4,362
カトリック
177,641
746
1,785
仏教
168,331
2,308
-
一貫道
17,634
201
-
イスラム教
5,952
5
21
バハイ教
2,265
2
12
天理教
1,659
22
80
サイエントロジー
1,000
1
30
儒教
790
14
-
軒轅教
314
8
-
弥勒大道
267
2
-
天徳教
242
5
-
理教
212
6
-
真光教
100
1
1
黄中
39
1
-
天帝教
33
1
-
その他
957
≧ 6
≧ 15
台湾の仏教
仏教自体の起源
ほかの東アジア ・東南アジア 諸国と同様に、台湾も早い段階で仏教の理論・思想・価値観を受け入れ、台湾島全土に浸透していた。そもそも仏教の「仏 」は、台湾では繁体字 (旧字体 )の「佛 」と書かれ、これは「仏陀 」の略であり、古代インド のサンスクリット語 から音訳されたものであり、「覚悟」または「覚者」を意味する。
仏教は、釈迦牟尼仏 が開創し、紀元前623年 に古代インドとネパール の境界線で生まれた。1世紀 頃に中国に伝わり、18世紀 の清王朝を経て、漢民族 の移動と共に台湾島に伝わっていた。
台湾での起源と清国統治時代
清王朝 が中国全土を統治したあと、支配者である満洲人 も仏教を信仰していたため、中国全土の仏教信者の数が大幅に増加していた。当時の台湾島は清国 の一部であり、また住民の多くが福建省 南部の漳州 や泉州 からの移民で構成されていたことから、台湾も仏教の盛んな地域となった。
この時期、台湾の仏教寺院は「巖 (日本漢字:巌 )」と呼ばれ、仏教信者は「巖仔 (巌仔)」と呼ばれるようになり、以前の台湾人の信仰とは区別されるようになった。1835年 の『彰化県志 』には、「閩省漳泉南人謂寺曰巖 (福建省の漳州・泉州からの移民は寺を巖と呼ぶ)」と記録されており、当時から寺院を指す言葉として使われていたことが分かる。「巖仔」は、漳州語 で「giam ah」、泉州語 で「gum ah」と発音される。本来は「山洞」を意味するが、後に「山間部に近い廟や信者」を指す総称となった。
仏教の中では、観音菩薩 を信仰する人が多く、多くの仏教教義はこれに連れてきて台湾へと伝えられることになった。たとえば、1752年 に建立された芝山巌 (中国語版 ) や、1791年 に完成した宝蔵巌 (中国語版 ) などが、この時代の代表的な寺院である。当時、台湾の寺院建築は「寺」「宮」「閣」「堂」「壇」「庵」などさまざまな名称が使われており、地主が建てた大きなお寺を「寺」、村にある小さなお寺を「堂」とするような一般的な区分があったが、それ以外については明確な定義が無かった。
一方、18世紀 後半には、従来の道教や民間信仰も変化を遂げ、仏教を取り入れて、世俗化された道教が誕生した。その中でも特に有名なのは、「閭山派 (中国語版 ) 」や「斎教 」である。台湾の道教の廟にも、観音像が祀られるようになり、仏教と道教・民間信仰の融合が進んだいた。この段階で、宗教というものはすでに台湾人の日常と密接に結びつく、台湾島で「文化共同体 」としての性格を形成していた。
現代の台湾においても、観音が「絶対的な主神」として祀られることが多い。一般家庭には観音を中心に、その周囲に媽祖 、関公 、土地公 (中国語版 ) といった道教の神々が配置されている。また、18世紀 以降に建てられた観音信仰や仏教寺院は多くが、破壊されてなく現存しており、観光名所 としても知られている。代表的なものには、艋舺龍山寺 、蘆洲湧蓮寺 (中国語版 ) 、林口竹林寺 (中国語版 ) 、鹿港龍山寺 (中国語版 ) 、台南大観音亭 (中国語版 ) 、関子嶺碧雲寺 、鳳山龍山寺 、內門紫竹寺 (中国語版 ) などがある。
日本統治時代
1895年 、台湾の日本統治時代 が始まり、台湾総督府 は台湾社会を安定させるため、宗教を利用し、19世紀 から日本本土 で盛んに行われていた「国家神道 」の採用をできるだけ避けて、すでに台湾に根付いていた「仏教 」を選択した。観音菩薩に加えて、日本人に馴染みのある「地蔵菩薩 」の仏像も、台湾各地のお寺院に設置させて『地蔵経 』の教えを意図的に広まっていた。
日本統治の初期、つまり明治時代 には、日本仏教の各宗派と台湾地元の宗派との間では、信者獲得の争いが激化されていた。しかし、民主主義 の強い大正時代 になると、台湾人の中で本土の仏教も、日本の仏教も同時に信仰する人が急増していた。仏教は「一神教 」みたいの価値観では無いため、各宗派間の対立は徐々に収まり、互いに調和を保つようになった。
このアプローチ は、西洋諸国 が「強引に植民地にキリスト教 を押し付ける」というやり方とは異なり、台湾の原住民 や漢民族 は、日本という国に対して嫌悪感を抱くことはほとんど無く、積極的に日本の国民として同化していきました。1941年 、台湾の総人口は500万人を超え、そのうち8万人以上が日本仏教の宗派を信仰していた。禅宗 や浄土真宗 、本願寺派 、曹洞宗 、日蓮宗 、浄土宗 などが多くの信徒を擁していた。
一方で、台湾人も日本統治時代に日本にはない仏教宗派を開き、月眉山派 (中国語版 ) 、觀音山派 (中国語版 ) 、法雲寺派 (中国語版 ) 、大崗山派 (中国語版 ) という4つの派が創設されていた。これらは「台湾を鎮守する四大法脈 」または「四大道場 」とも呼ばれている。この四派はすべて実際の山を総本山 としており、総本山がある山は台湾で「四大名山 」として知られている。
中華民国時代と現代台湾の仏教
1945年 の太平洋戦争 と第二次世界大戦 の終結により、台湾は中華民国 の統治下に入った。その後、1950年代 に中国本土では中国共産党 による宗教迫害 や無神論 の採用により、多くの仏教の仏教大師が台湾に移住していた。それまでの観音菩薩や地蔵菩薩も、同じ「大乗仏教 」の系統に属しているため、台湾の仏教もこの時で統合され、台湾民俗信仰の仏教や日本統治時代の仏教はすべて「大乗仏教の傘下のもと」に吸収されるようになっている。
僅か20年の間に、1970年代 には大乗仏教は台湾全土で普及した。また、1980年代 半ばには台湾の経済 成長により、多くの無宗教のお金持ちの台湾人が「悟り 」や「宇宙の真理 」を求めて、仏教、とくに仏教の中の禅宗 に帰依するようになった。これらの仏教は、台湾で主流だった世俗化され、民俗信仰みたいの仏教とは大きく異なり、「正信仏教 」として自称し続けている。しかし、以前の仏教と道教が融合した信仰を否定することは一度も無く、台湾の宗教寛容 を示す証拠となっている。
現代の台湾仏教は、逆に日本の仏教に近い面があり、大乗仏教の「因果 、業力 、六道輪廻 、十二因縁 、七難即滅 」などの専門用語や、禅宗の「戒・定・慧の三学 」「瞑想 (禅定 )」「四聖諦 」「八正道 」などの修行方法は台湾全土に広まっていた。日本の仏教との唯一の違いは「台湾の出家した僧侶 が、純潔 な肉体 を求めるために結婚 せず、妻 も持たないこと」にある。
現在の台湾では、禅宗 、浄土宗 、そして従来の民俗信仰風の仏教が主流となっている。特に規模が大きい宗派としては、佛光山 、法鼓山 、中台山 、慈済 などの「四大教団 」がある。
漢伝仏教と法師仏教
1980年代頃、「台湾民主化運動 」によって台湾人の政治的自由 が拡大され、宗教の「無常性や神聖性」を否定し、現実世界で社会を良くするための「具体的な行動」に焦点を当てることを提唱する「法師仏教 [ 注釈 1] 」が登場した。この理念を最初に提唱したのは中華民国大陸時代 の太虚法師 であり、彼は「仏教団体が資金を活用して、社会奉仕や教育、医療、災害支援などの社会活動に力を注ぐこと」を明確に提唱していた。
彼の影響を受けて、台湾の法師たちもこうした活動を積極的に行うようになっている。その数多くの「善行 」の重ねにより、台湾の仏教徒の数は急激に増加している[ 15] 。主要な法師仏教としては、中台山 の惟覚法師 、法鼓山 の聖厳法師 、仏光山 の星雲法師 、霊鷲山 の心道法師 、慈済功徳会 の証厳法師 の5つの団体があり、これらは「台湾仏教五聖山 (五名山)」と呼ばれている[ 注釈 2] 。
チベット仏教
1949年 国民政府とともにチベット仏教 が台湾に渡来した。本格的にチベット仏教の布教が始まったのは、1980年代からであり、カギュ派 が先ず活動し、ニンマ派 やサキャ派 が続き、やがてゲルク派 も伝来した。ダライラマ14世 も1997年 、2001年 、2009年 に台湾を訪れている。
上座部仏教
ヴィパッサナー瞑想 に対する関心の高まりから、緩やかながらも上座部仏教 が浸透しつつあり、パーリ語 経典の漢語訳も進められている。
台湾の道教
道教の護符
媽祖
道教 は漢民族 の伝統宗教であり、西晋 末から明代 にかけて中国大陸全土に広まり南方の正一教 (天師教)と北方の全真教 の二大流派が形成された。台湾の道教は南方系の正一教であり、護符や呪文の宗教儀式を重視した内容となっている。
沿革
台湾の道教は清朝統治時代 、日本統治時代 をへて現代に至る間に大きな発展を遂げている。正一道正一派 (中国語版 ) 、符籙派 が仏教と融合し世俗化した福建道教の閭山派 (中国語版 ) が台湾における主要な道教信仰となっている。
1980年代 以前、漢伝仏教が印順 、聖厳 、星雲 、証厳 どの仏師により発展を遂げる以前は、正一派・閭山派が台湾の主要な宗教であった。1980年代の仏教の隆盛と、相対的な道教の衰退が見られたが、多くの宗教儀式を行いタブーを決定するなど生活の中に影響を与え、行天宮 に代表される廟も台湾内に数多く建立されている。
他の文化と同様に、中華人民共和国 では廃れてしまった道教系の祭礼儀式が今なお数多く残存している。旧暦の3月23日に行なわれる媽祖 の誕生祭 (媽祖誕辰 )や、1週間に渡って街を練り歩き、数千万円相当の木造船を焼却する5月10日の王船祭 (焼王船 、王爺を鎮める祭り)、旧暦7月15日の中元節 や旧暦10月22日の青山王の誕生祭 (青山王誕辰 )などが毎年華やかに催される。特に、大甲鎮 の鎮瀾宮 と新港郷 の奉天宮とを往復する「大甲媽祖の巡行」は、台湾で最大規模の宗教活動である。また、占いや祈祷を行う「尪姨 」(アンイー、巫女 )や「童乩 」(タンキー 、シャーマン の一種)も健在であり、媽祖の誕生祭を始めとする各種宗教儀礼に参加している。
葬儀や婚礼も大掛かりであり、特に葬儀では楽隊による行進が行われる場合もある。
仏教や儒教と習合しており、観音菩薩 が観音廟に祀られたり、儒家の創始者である孔子 像が、文昌帝君 と並んで文昌廟で祀られることも少なくない。
台湾のキリスト教
カトリック は天主教、プロテスタント は基督教と漢語表記される。台湾にキリスト教が伝わったのは、17世紀 初頭にスペイン とオランダ が原住民に宣教したのが最初であり、以降は欧米の宣教師によって本省人 や原住民の間で改宗が進み、なかでも長老派教会 が最も多く信徒を獲得した。現在の最大の教派は台湾基督長老教会 である。プロテスタントでは他に、台湾聖公会 などがある。
17世紀のオランダ統治時代、1624年 オランダ東インド会社 が上陸するのに併せて、キリスト教の宣教が開始された。やがてイギリス の熱心な宣教活動によって、本省人や原住民の間ではプロテスタントへの改宗が多くなった。また、台湾の長老派教会は反中 であるとともに台湾独立運動 に熱心であり、台湾語 の白話字(教会羅馬字、教会ローマ字)表記を成立させたり、1971年 に発表した国是声明では、台湾の将来は台湾人が決めるとしている。
1626年 スペインが台湾北部に上陸するとカトリックの宣教が開始されたものの、当時台湾南部を統治していたオランダがスペインを排除したため、カトリック布教は停止された。天津条約 締結後、1859年 ドミニコ会 のスペイン人 宣教師がフィリピン から高雄 に上陸したのが、台湾でのカトリック教会の始まりとされる。台湾ではプロテスタント、なかでも長老派教会の宣教活動が多くの信徒を獲得する中、カトリックは極めて少数派だったが、20世紀 後半に入ると中華人民共和国 での宗教弾圧を逃れた外省人 のカトリック信徒が多く台湾に移住した。現在は台北 に大司教区 があり、高雄 ・台中 ・嘉義 ・花蓮 ・新竹 ・台南 に司教区 が置かれている。2014年現在の台湾における最高指導者は台北教区大司教洪山川 である。
また、台湾に特異な教派として、ペンテコステ 運動の影響で、1917年北京 で張霊生によって創設された真耶蘇教会 がある。
台湾では極めて少数派であるが、正教会 の宣教も行われている[ 53] 。
一貫道
清 で創始され、1946年 台湾に伝来した。1950年 から1951年 かけて中華人民共和国 では、一貫道は反革命的な邪教(「反動会道門」)とされ、組織は徹底的に弾圧・根絶された上に、信徒は国民党のスパイとして糾弾され、多くが殺害された為、難を逃れた信徒は香港へ逃避した。
1954年 師母孫慧明が、香港から台湾に移住した為、台湾で盛んに活動するようになった。ただし当時の台湾では、宗教活動は制限されており、政府に公認されていたのは9つの宗教法人(道教、基督教、天主教、仏教、回教、巴哈尹教、天理教、理教、軒轅教)のみだったため、一貫道は台湾各地にバラバラに潜伏して地下活動をしていた。そのため、基礎組、発一組、宝光組、文化組、慧光組、紫光組、常州組、金光組、浩然組、法一組、明光組、安東組、師兄派などの多数の各派組が存在する[ 54] 。やがて台湾の民主化とともに思想・信仰の自由が進み、1987年 1月に公式に解禁された。
イスラム教
国民党 とともに、中国大陸から移住してきた回族 によってイスラム教も信仰されており、台北、高雄などに清真寺(モスク )が存在する。台湾のムスリム組織として、中国回教協会 (Chinese Muslim Association)がある。また、台湾人ではないものの、在台湾のインドネシア人 労働者によるイスラム信仰活動も無視できない規模となり、ハラール やサラート の扱いで台湾人社会と摩擦が生じている。
バハイ教
儒家の「大同」思想と相通ずるとして、当初は「大同教」と称された。現在はバハーイー(Baha'i)を音写して「巴哈伊教」と漢語表記される。1954年 イラン の商人のスルマン夫妻が台湾を訪れ、台南にバハーイーセンターを設立した。1967年に台湾総会が設立され、1970年に法人化された。
天理教
1897年 日本より伝来し、台湾伝道庁が設立された。日本統治時代の終焉とともに、一度は布教が停止されたが、1967年 に再開し、台湾民主化前の当時の宗教統制政策下でも、台湾政府が公認した宗教9法人の一つとなった。
民間信仰
籤詩。神と人の会話を表したもの
官將首の服装
台湾の民間信仰は儒教 、仏教 、道教 が融合したものであり、福建や広東からの移民を通して華南 地区より台湾にもたらされ台湾化したものである。台湾の道教徒の大多数が民間信仰と混同されており、先祖崇拝、巫術、鬼神、その他心霊及び動物崇拝が特徴となっている。
信仰の種類
台湾の民間信仰は多神教であり地域性によって区分される。福建漳州系の移民は開漳聖王 (中国語版 ) を信仰し、泉州同安系の移民は保生大帝 を、泉州三邑 (中国語版 ) 系は広沢尊王 (中国語版 ) を、安渓 系は清水祖師 (中国語版 ) 、保儀大夫 (中国語版 ) (保儀尊王)を、汀州 系は定光古仏 (中国語版 ) を、客家、 潮汕系は三山国王 (中国語版 ) をそれぞれ信仰している。
このほか救世主を意味する恩主 信仰もあり関羽 や八仙中の一人呂洞賓 、宋代 の将軍である岳飛 などが祭祀対象となっている。
更に海神信仰の玄天上帝 と媽祖 、瘟神 (中国語版 ) 信仰の王爺信仰 (中国語版 ) や青山宮 (中国語版 ) 、死者の鬼神が神格化された有応公 (中国語版 ) と義民爺 (中国語版 ) 、民間の刑罰府衙が神格化された八家将 (中国語版 ) なども信仰対象となっている。
そのほかの宗教
これ以外の宗教としてはサイエントロジー などが存在している。真光教、生長の家 、立正佼成会 、創価学会 、幸福の科学 などの日本を発祥とする宗教も活動している。原住民 の間では21世紀初頭でもなお伝統的なアニミズム 信仰が行なわれている。
脚注
注釈
^ 「じんかん」と読む。
^ 中国禅の五座山(岳泰山・西岳華山・南岳衡山・北岳恒山・中岳嵩山)に比した呼称
出典
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関連項目
外部リンク
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