参議院議員団(さんぎいんぎいんだん)は、政党の参議院における国会活動を審議決定し執行する、政党内に置かれる組織。
それぞれの政党所属の参議院議員によって構成される。
概要
ある程度以上の規模を持つ政党の場合、党首・党三役など執行部の主要な役員は通常衆議院議員が占めるため、参議院議員団は独自に政策部会や国会対策委員会を持つ。
その政治的影響力は長年、大きくないものとされてきた。ただ第一与党単独過半数割れの定着や度々発生するねじれ国会や政党内での衆参議員の拮抗から、政治的影響力を増している役職もある。
政党によって議員団及び役員の名称が多少異なるが、ここでは一括して扱う。
自由民主党
参議院議員総会
2024年7月31日現在
自由民主党においては党則において参議院議員総会を置き、その執行機関として参議院議員総会長(参議院会長)、参議院幹事長、参議院政策審議会長、参議院国会対策委員長など必要な役員を置く旨の規定がある。参院会長は参議院議員の中から選挙で選ばれ、その他の役員は参議院議員会長によって指名され、総会の承認を受けて決定される。参議院会長は閣僚経験者が就任する慣例となっている(橋本聖子と関口昌一は例外)。これらの役員は参議院議員団内部の手続のみで選出されるため、自治組織の体を擁しているが、現実には派閥の領袖が事実上決定するようなことがままある。
内閣総理大臣になる可能性が政治慣例上では現実的にない参議院議員[注 1]にとって、以下の階梯が出世コースとして慣例化していた。
- 参議院枠の国務大臣ないしは内閣官房副長官[注 2]
- 参議院幹事長
- 参議院会長
- 参議院議長
自民党においては、党総裁・党三役をはじめとする党役員および閣僚の大半はいずれも衆議院議員で占められるということもあり、重宗雄三を除いて参議院議員団の影響力はあまり大きくなかった。しかし、組閣においては、参議院議員団の入閣要望者リストを尊重するのが慣例で、これが政権と議員団(特に参議院幹部)との関係を良好にする上で必須とされた。派閥の影響力が低下した2000年代にあっても、その意思は尊重された。また自民党総務会における党所属の参議院議員の公選による者の選出は、実質的には参議院執行部が選出している[1]。
参議院議員団への閣僚割り当て枠は、参議院枠と呼ばれた。一時は1名のみ(第1次小泉内閣での片山虎之助)だったこともあるが、概ね2名が割り当てられた。また1974年以降、参議院議員団では入閣は一度であり、離任したら再入閣はないという不文律があった。但し例外もままある(森山真弓、井上吉夫、若林正俊、中曽根弘文、林芳正、丸川珠代ら)。
しかし、小渕内閣の頃から、参議院において自民党が単独過半数割れしている状況で野党にパイプを持つ村上正邦参議院会長・青木幹雄参議院幹事長(青木は小渕第2次改造内閣から一時内閣官房長官を務めた)体制の下参議院幹部の発言力が強まり、小渕首相危篤に伴う後任の決定に村上と青木が五人組の一角として森喜朗の擁立に関与するまでになった。結果として参議院議員団では、大派閥を後ろ盾にした参議院会長を頂点とする強力なトップダウン体制が実現し、参議院会長は「天皇」と奉られた。
民主党政権下での野党時代の2010年に、無派閥・若手に支援される形で、派閥に属さない議員である中曽根弘文が参議院会長に選出され、参院幹部からいわゆる“ドン”が排除された。しかし、人事や政策審議会運営を見直した結果、議員団内の対立が深刻化し、ある程度の妥協を余儀なくされている。
自由民主党参議院議員会長
公明党
参議院議員団
2024年9月28日現在
公明党には党規約において衆参に議員団を置き、参議院議員団に会長や参議院幹事長、参議院政策審議会長、参議院国会対策委員長などの役員を置く旨の規定がある。
なお、旧公明党(新進党結党の為分党する以前の公明党)時代は参議院議員団総会団長(参議院議員団長)と呼んでいた。
歴代の参議院議員団長・会長
立憲民主党
2020年結成の立憲民主党について述べる。2017年結成の立憲民主党については、以下の立憲民主党(2017)についての説明を参照。
参議院議員団
2024年10月9日現在[2]
立憲民主党参議院議員会長
日本維新の会
参議院議員団
日本維新の会の国会議員団には、役員として参議院議員会長、参議院幹事長などが置かれる。
日本維新の会参議院議員会長
日本共産党
参議院議員団
2020年2月6日現在
日本共産党には党規約に基づき、国会議員団が置かれている。役員として参議院議員団団長、参議院幹事長などが置かれる。
日本共産党参議院議員団長
国民民主党
2020年結成の国民民主党について述べる。2018年結成の国民民主党やその前身の民主党・民進党については、以下の国民民主党(2018)についての説明を参照。
参議院議員団
2024年10月1日現在[4]
国民民主党参議院議員会長
社会民主党
参議院議員団
役職
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会長
|
幹事長
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政策審議会長
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国会対策委員長
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氏名
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福島瑞穂
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-
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-
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-
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社会民主党には[1]に衆参それぞれの議員団に関する規定がある。参議院議員団総会の会長として参議院議員会長が置かれている。
1970年代後半から野党第一党から参議院副議長を選出する慣行ができたため、旧社会党時代の参議院議員会長は参議院副議長の登竜門的性格を帯びた。参議院議員会長は、参議院幹事長、参議院政策審議会長、参議院国会対策委員長を歴任した者が就任した。
しかし現在は小政党であるために参議院議員団の存在感や位置づけは曖昧になっている。
社会党・社民党参議院議員会長
過去の政党
国民民主党(2018)
ここでは、2018年結成の国民民主党だけではなく、法的に同一の組織である1998年結成の民主党、民進党についても記載する。
参議院議員団
国民民主党には、党規約第19条に、『参議院議員会長、参議院幹事長、参議院国会対策委員長、その他必要な参議院役員を置く。』(国民民主党規約第20条第1項より引用)ことが定められていた。
以下、民主党時代の話から進める。
民主党参議院議員団は労働組合や市民団体の出身者が多いため、民主党結党以来、党内でも左派(旧社会党系)の人物が要職を占めることが多く、労働組合の強い影響を受け易い傾向にあるとされた。民主党出身の参議院副議長は参議院議員会長経験者が就くのが慣例であったが、角田義一の不祥事による副議長辞任における後任には、慣例に反して今泉昭(当時参院幹事長)が選出された。2017年10月に衆院側が希望の党合流・立憲民主党結党と割れて以降、総評系労組出身者は立憲に移籍しており、国民民主党結成以降はその限りではない。
2007年の第21回参議院議員通常選挙で民主党が第1党になり、参議院議員会長の江田五月が民主党初の参議院議長に選出された。ねじれ国会の中、小沢一郎(当時代表)に近い後任の参議院議員会長輿石東が菅直人とともに代表代行に就任するなど参議院議員団の影響力が格段に高まった。
2011年8月に「参院のドン」とよばれた輿石が会長職を兼務のまま民主党幹事長に就任した。参議院議員が党幹事長に就任するのは、民主党では初めてのことで自由民主党でも前例がない。このことは西岡武夫死去後の参議院議長人事にも影響し、今泉の副議長選出の場合と同様、参院幹事長の平田健二が選出された。
自民党政権時代と同様、民主党政権にあっても、党参議院議員には3 - 4名程度の閣僚ポストが配分された。鳩山由紀夫内閣では、旧自民党系(北澤俊美)、旧社会党系(千葉景子)、旧民社党系(直嶋正行)が入閣しており、出身勢力や年功に配慮した人事とみられた。
民主党参議院議員会長
民進党参議院議員会長
代 |
氏名 |
所属グループ |
在任時の党代表
|
1
|
郡司彰 |
横路グループ |
岡田克也
|
2
|
小川敏夫 |
菅グループ |
岡田克也、蓮舫、前原誠司、大塚耕平
|
国民民主党参議院議員会長
立憲民主党(2017)
参議院議員団
2017年結成の立憲民主党には党規約に基づき、参議院議員団を置いていた。
歴代の立憲民主党参議院議員会長
脚注
- 注釈
- ^ 内閣総理大臣が事実上の権限を持っている衆議院解散において、自らの議員職を賭けない立場で衆議院解散を行うことについて否定的に捉えられていることや様々な法規定で衆議院の優越規定があることから、政治的慣例上として「衆議院議員が内閣総理大臣に就任することがふさわしい」という風潮が定着している。
- ^ 内閣官房副長官については1998年7月以降。
- ^ 立候補届提出前に派閥を脱会。
- 出典
関連項目