リー・チャイルド (Lee Child 、本名:ジェームズ・D・グラント (James D. Grant) 、1954年 10月29日 - )は、イギリス の推理小説家 。
代表作は、ジャック・リーチャー ・シリーズ[ 2] 。
経歴
イングランド のコヴェントリー に生まれた[ 3] 。父親は公務員[ 4] 、兄弟が3人おり、その内の1人の弟、アンドリュー・グラント もスリラー作家である。4歳の時に一家でバーミンガム 北西部のハンズワース・ウッド に移り住み、より良い教育環境の中で育った[ 5] 。11歳まで地元の公立小学校に通った後、私立のキング・エドワーズ・スクール に進学[ 6] 。
1974年 、シェフィールド大学 で法律を学んでいたものの、法曹界に進むつもりはなく、学生時代は劇場のバックステージでアルバイトをしていた[ 4] 。大学卒業後は民放 のグラナダ・テレビジョン に就職し[ 7] 、プレゼンテーション・ディレクターとして[ 8] 、イーヴリン・ウォー の『ブライズヘッド再訪』をドラマ化した"Brideshead Revisited " や、"The Jewel in the Crown " 、『第一容疑者 』、『心理探偵フィッツ 』などの番組の製作に携わった。その他にも、数多くのコマーシャルや物語などを手がけ、40,000時間以上の番組に携わった[ 9] 。グラナダ・テレビには1977年 から1995年 まで勤め[ 4] 、最後の2年は労働組合 の代表を務めた[ 10] 。
リストラに遭い失業し[ 8] 、「エンターテインメントの最もピュアな形」である小説を書こうと作家への転身を決意[ 11] 。1997年 、処女作『キリング・フロアー』(原題:Killing Floor )を上梓し、翌1998年 の夏にアメリカへ移り住む[ 12] 。
ペンネームの“リー (Lee) ”は、家族がルノー のル・カー (Le Car) の発音を間違えたジョークに由来し、“チャイルド (Child) ”は書店のミステリの書棚でレイモンド・チャンドラー (Chandler) とアガサ・クリスティ (Christie) の間に並べられたいとの意図に由来する[ 8] 。
代表シリーズの主人公であるジャック・リーチャー の名前に“リーチャー (Reacher) ”を選んだ理由は、スーパーでの買い物中に妻が長身の夫に対して"'Hey, if this writing thing doesn't pan out, you could always be a reacher in a supermarket.' ... 'I thought, Reacher — good name.'" (ねえ、もし今度の仕事が上手く行かなかったら、あなた、このスーパーで高いところのものを取る係 (reacher) にでもなればいいわ。思ったんだけど、“リーチャー”っていい名前ね。)と言ったことに由来する[ 4] 。リーチャー・シリーズは一人称で書かれている作品もあれば、三人称で書かれている作品もある。チャイルド自身はシリーズをリベンジの物語としており、グラナダテレビからリストラされた怒りを原動力にしているという。チャイルド自身はイギリス人だが、あえてアメリカ風のスリラー作品を書くように心がけている[ 8] 。
2007年 、15人の作家がリレー形式で書き継いだ『ショパンの手稿譜』(原題:The Chopin Manuscript )に参加。同年9月25日から11月13日までアルフレッド・モリーナ のナレーションでオーディブル で放送された。
2008年 6月30日、同年11月から母校シェフィールド大学の客員教授に就任することが発表された。2009年 、52のジャック・リーチャー奨学制度を設立した[ 13] 。
2009年にはアメリカ探偵作家クラブ の会長に選任された[ 14] 。
2012年 、ジャック・リーチャー・シリーズ第7作『アウトロー』(原題:One Shot )がトム・クルーズ 主演で映画化 された。チャイルドもカメオ出演を果たした。
2012年1月、ウェールズ のブレコン (英語版 ) の山岳救助チームに新車購入のために10,000ユーロ(約16,000米ドル)を寄付した。前年に衝突事故により大破しており、自身の兄弟がそのチームの元メンバーだったことから寄付を持ちかけたという[ 15] 。
2020年1月、チャイルドはジャック・リーチャー・ シリーズの執筆から引退し、弟のアンドリュー・グラントに引き継ぎ、チャイルドという姓でシリーズのさらなる本を書くことを発表した。彼はシリーズ全体をアンドリューに引き継ぐ前に、今後数冊の本をアンドリューと一緒に書く予定。
2022年、Amazon Prime Video で配信されるドラマシリーズ『ジャック・リーチャー ~正義のアウトロー~ 』の最終回の最終盤において、リーチャーがダイナ―に入ったところですれ違いざまに声をかける男性客としてカメオ出演している。
1998年にアンソニー賞 、1998年と2005年にバリー賞 、2005年にネロ・ウルフ賞 を受賞した。
私生活
妻ジェーンはニューヨーク 出身[ 4] [ 12] 。
バーミンガムを本拠地とするサッカー・チーム、アストン・ヴィラFC のファンで[ 16] 、チームの選手の名前を作中で使ったこともある[ 17] 。
2013年 、『デイリー・メール 』がチャイルド自身の発言として「執筆中はマリファナでハイになっている、44年間、週に5日は大麻を吸ってきた。」とする発言を引用した[ 18] が、『アイリッシュ・イグザミナー 』や『ポスト・スタンダード 』に一部否定するなど釈明した[ 19] 。
作品リスト
ジャック・リーチャー・シリーズ
^ リー・チャイルドとアンドリュー・チャイルド共著
短篇小説
・No Middle Name(2017) ジャック・リーチャー・シリーズの中編2 作と短編10 作を収録
受賞・ノミネート歴
2009年バウチャーコン にて
作品
年
賞
結果
『キリング・フロアー』"Killing Floor"
1998年
アンソニー賞 新人賞
受賞
マカヴィティ賞 新人賞
ノミネート
バリー賞 新人賞
受賞
ディリス賞
ノミネート
2000年
日本冒険小説協会大賞 海外部門
受賞
"Running Blind"
2001年
バリー賞 長編賞
ノミネート
"Without Fail"
2002年
イアン・フレミング・スチール・ダガー賞
ノミネート
2003年
バリー賞 長編賞
ノミネート
ディリス賞
ノミネート
『宿敵』"Persuader"
2003年
イアン・フレミング・スチール・ダガー賞
ノミネート
2004年
ガムシュー賞 最優秀ミステリ賞
ノミネート
『前夜』"The Enemy"
2005年
バリー賞 長編賞
受賞
ディリス賞
ノミネート
ネロ・ウルフ賞
受賞
『アウトロー』"One Shot"
2006年
マカヴィティ賞 長編賞
ノミネート
"The Hard Way"
2007年
ガムシュー賞 最優秀スリラー賞
ノミネート
『消えた戦友』"Bad Luck and Trouble"
2008年
アンソニー賞 長編賞
ノミネート
ガムシュー賞 最優秀スリラー賞
ノミネート
2010年
バウチャーコン 功労賞
受賞
『61時間』"61 Hours"
2010年
イアン・フレミング・スチール・ダガー賞
ノミネート
2013年
ダイヤモンド・ダガー賞
受賞
作品の映像化
出典
^ “Index entry ”. FreeBMD . ONS. 2016年2月7日 閲覧。
^ David Smith (2008年6月22日). “Sacked at 40 and on the scrapheap. Now Brummie tops US book charts” . London: guardian.co.uk. http://books.guardian.co.uk/departments/crime/story/0,,2286980,00.html 2008年7月8日 閲覧。
^ Glass, Ben (2008年12月2日). “If you don't know Lee Child, you don't know Jack” . It's All About Coventry. http://www.itsallaboutcoventry.co.uk/newsstory_leechild.shtml 2013年1月12日 閲覧。
^ a b c d e “Interview in January Magazine, May 2003 ”. 2007年10月7日 閲覧。
^ Bob Cornwell. “A Reacher Moment...or Two ”. twbooks.co.uk. 2007年2月18日 閲覧。
^ David Smith (2008年6月22日). “Sacked at 40 and on the Scrapheap: Now Brummie tops US Book Charts” . London: guardian.co.uk. http://books.guardian.co.uk/departments/crime/story/0,,2286980,00.html 2008年6月22日 閲覧。
^ Claire White (2001年8月1日). “A Conversation with Lee Child ”. Writers Write. 2008年6月22日 閲覧。
^ a b c d Curtis, Bryan (2012年12月20日). “The Curious Case of Lee Child: Before Tom Cruise could become Jack Reacher, Jim Grant had to become Lee Child ”. Grantland.com. 2013年3月6日 閲覧。
^ “Lee Child ”. BookBrowse (2004年3月1日). 2008年6月22日 閲覧。
^ “Interview with Tangled web Books, 2005 ”. 2007年10月7日 閲覧。
^ Readers Digest. “Select Editions ”. RD.com. 2007年2月18日 閲覧。
^ a b “Interview in Writers' Write Journal, August 2001 ”. 2007年10月7日 閲覧。
^ Alison Flood, Students offered scholarships from fictional crimefighter, Jack Reacher, Guardian
^ "People and Publishing: Milestones", Locus , April 2009, p.8
^ “Author Lee Child's £10k to Brecon Mountain Rescue Team” . BBC News . (24 January 2012). http://www.bbc.co.uk/news/uk-wales-mid-wales-16682811
^ "Exclusive interview with ace author Child in matchday programme" . Aston Villa Football Club . 15 September 2011.
^ Interview with Simon Mayo on Radio 2 on 1 September 2014.
^ “'I've smoked cannabis five nights a week for 44 years and my dealer's on speed dial': Shock confession by bestselling thriller writer Lee Child ” (2013年8月17日). 2014年7月24日 閲覧。
^ “'Jack Reacher' author Lee Child talks Tom Cruise and marijuana before Syracuse lecture ” (2013年12月15日). 2014年12月30日 閲覧。
外部リンク